事例のポイント
- 日用品メーカーの ライオンが「お客様が次に何を求めているのか」先行情報を幅広く収集し、変化を敏感に感じとっていくために、Brandwatchを採用。
- 「お客様の解決したい問題、実現したいコト」をより深く、速く理解するために、捉えられていないお客様の声を発見し、その背後にある真実を読み解くことで提案価値の仮説を導出し、発信。
- ソーシャルリスニング(SNS)では洗濯、掃除などの一般的なカテゴリの枠を超え、お客様の求めているコトを掴むために、Brandwatchの強みを活かした複数の分析軸の掛け合わせにより、お客様の真実に迫るアプローチ方法を導出。
- 「(1)Brandwatchのプロであるブレインパッド様から分析の型を学ぶ」「(2)その後自分なりの工夫をそこに積み重ねて発展させる」「(3)自ら新しいアプローチ方法を生み出す」という3ステップで分析のナレッジを蓄積し、社内での活用を浸透化。
ライオン株式会社のご紹介
米谷氏:ビジネス開発センター コンシューマーナレッジの私たちのグループでは、お客様の生の声を広く集めることで日々の生活の理解を深め、お客様の解決したい問題、実現したいコトを発見し、新しい提案価値に繋げることをミッションとしています。デジタル化の進展により、日々の生活から生み出されるデータを有機的に活用し、関連部門のメンバーともディスカッションしながら、データの背後にある真実を読み解くことでお客様の理解を深めることが、我々の重要な役割と考えています。また、マーケティングに活用されるデータは、これまでリサーチ部門が扱ってきたデータと比較しても、データ量が格段に多くなってきています。そのため、人手の作業では難しいデータ間の関係性、構造を探索的に掴むことにAI(機械学習)も活用し、アナリスト×AIのハイブリッドな分析アプローチにも取り組んでいます。
ソーシャルリスニング(SNS)を実践する背景
米谷氏:お客様の変化が速い時代には、過去のデータだけではなく、お客様が次に何を求めているのか、先行情報を幅広く収集し、変化を敏感に感じとっていくことが大切ではないかと考えていました。社会の動きや生活のトレンドなどを自分の目で直に見ることや 、なるべく生の一次情報に触れ、そこから「仮説」を導き出すことが大事だと考えています。ソーシャルメディア(SNS)上でのお客様の声もそのなかの一つの大切な声(情報)と捉えています。
ソーシャルメディアには、自社の製品・サービスとは直接的には関わらない社会、生活などの多面的なお客様の声も多く集まります。「家事」「衛生・清潔」など、製品・サービス軸だけでなく、より広く新鮮な情報を多面的に収集し、傾聴(リスニング)することでお客様の解決したい問題、実現したいコトをより速く捉えていくことが課題でした。
ライオンがソーシャルリスニングツール「Brandwatch」を採用した理由
お客様の解決したい問題、実現したいコトを捉える分析
清水氏:製品軸でお客様の声や反応を捉えていく分析では、カテゴリや製品についてどのようなことを投稿しているお客様が多いのかを把握し、気になる個々の文脈を理解するというアプローチ方法で問題ありませんでした。しかし、例えば「洗濯」というキーワードで投稿を見ていくと、製品軸とは比較にならない情報量のお客様の声が抽出されます。そこから、気になる文脈を探索し、個々の文脈を確認していくには多くの時間と手間もかかります。そこで、事前の仮説を切り口に、コト軸の文脈を分析する軸(例:洗濯×雨など)をスピーディに作ることができ、お客様の悩みに深く切り込むことができる機能を有するツールが必要であると考えていました。
米谷氏:製品軸でお客様の声や反応を捉えていくことに加え、お客様の解決したい問題、実現したいコトをより速く捉えていく課題を抱えていたとき、2019年にマーケティング領域の展示会でブレインパッド様のブースに立ち寄り、Brandwatchを紹介いただきました。試用期間経て、Brandwatchを本導入することとなり、清水がBrandwatchの活用を主導することで、社内に浸透していくようになりました。
ソーシャルリスニングの分析スピードと質を高められる
新しいツールが浸透するきっかけと取組み
清水氏:私は入社後にコンシューマーナレッジの現在所属するグループに配属となり、今回の「お客様の解決したい問題、実現したいコトを発見するアプローチ手法の開発」が、自分が主担当となる初めてのプロジェクトでした。そのため「失敗を恐れずに、お客様が今何を求めているのかを理解するために、新しいツールをマスターして、これを自分の強みにしよう」と考え、プロジェクトに取り組んでいきました。Brandwatchを活用したリサーチやアナリティクスについて何も知らなかったので、Brandwatchのイロハを飯塚さん(ブレインパッド カスタマーサクセス部)に徹底的に教えてもらいながら、ツールの習熟度を高めていきました。
Brandwatchは、SNSデータ全体を俯瞰的に見て、そこから初期仮説を基に複数の軸をつくって、生活文脈を絞り込んでいくことがスピーディにできます。気になる文脈を個別に確認することで、データの裏にある深層心理を読み解き、お客様の理解をより深めることができると感じています。個々の生活文脈における問題や、お客様があきらめている課題を把握し、全体の定量的な傾向とも比較しながら分析をすることができる高いユーザビリティを備えているので、私たちのグループのミッションを実現していくためにとてもフィットしていました。
Brandwatchを活用した分析ナレッジの蓄積と活用浸透化
ステップを分けて活用をすすめ、ノウハウを蓄積
米谷氏:「お客様の解決したい問題、実現したいコトを発見するアプローチ手法の開発と展開」をするツールとしてのBrandwatchを定着化させるアプローチ方法として、大きく3ステップで進めていきました。
(1)Brandwatchのプロであるブレインパッド様から分析の基礎や型として普遍となるものを学ぶ (2)その後自分なりの工夫をそこに積み重ねて発展させる (3)自ら新しいアプローチ方法を生み出すという3つのステップです。現在は、担当する分野ごとにBrandwatchを活用して分析レポートを作成し、ブレインパッド様とのレビューとディスカッションをさせていただきながら、ツール活用の習熟度と分析の質を高めるための取組を行っています。これにより、ツール活用と分析のナレッジを組織的に蓄積していくようにしています。
Brandwatchを活用し生活文脈理解の解像度を上げる
清水氏:全体俯瞰と具体的な生活文脈を行き来しながら、お客様のいま抱える問題を見つけるための分析の型をブレインパッド様と協働的に考え、つくっていきました。
実は、ブレインパッド様から「週に何時間くらい分析する時間が取れますか?」と質問をいただき、「その時の状況にもよるが、少ないと週に1時間程度」と答えました。このようなユーザ企業の状況やニーズを真摯に聞いていただき、ブレインパッド様側で、事前に分析のためのデータクレンジング、アラートの設定、カテゴリの追加などをおこない、分析の時間が週に1時間であっても、分析レポートまでアウトプットすることが可能か、事前に緻密に試行、テストいただき、提供してくださっていることを知り、感銘を受けました。
例えば、「毎日の洗濯について今どんなお困りごとがあるかな」という情報を収集すると、家事としての洗濯ではない「心の洗濯」などのデータなども含まれてしまいます。家事としての洗濯という行為に関する投稿だけに絞るために、100個以上のカテゴリを作っています。その後、洗濯機の話題なのか、洗濯物の乾燥の話題なのか、洗濯物の取り込みの話題なのかなど、洗濯ひとつとっても、どのようなシーンでの悩みなのかを柔軟かつスピーディに分類することがブレインパッド様のご支援で可能になり、分析の質だけでなく、効率もより高めることができていると感じています。
米谷氏:我々のチームは、課題の設定⇒分析設計⇒データ加工・集計⇒分析⇒レポーティングと、カバーする業務範囲が広く、特にSNSのデータは分析する前のデータ加工・集計の負荷が大きいと感じています。しかし、そこを疎かにするとお客様の深層心理にも近づけない。必ずしも目に見えない工程かもしれませんが、このようなデータクレンジングについてもブレインパッド様には真摯にノウハウを提供いただき、分析のためのデータの精度を上げていただけました。
清水氏:Brandwatchの活用は、既存事業領域だけでなく、新規事業の種の探索へも活用を広げています。特に新規事業はリサーチに多くのコストをかけられず、かつ決まった分析の型がありません。そのため、多様なデータへの切り口を作ることができ分析の柔軟性が高く、内製での分析ができるBrandwatchは適していました。生活のなかで実現したいコト、深い悩みを捉え、単に「○○という悩みがあります」だけではなく、「その悩みはこのようなセグメントに同様に感じられていそうだ」というところまで、定量的に伝えることができてきています。このような分析結果を関連部門へレポーティングしていくなかで、「担当する市場・カテゴリにかかわる領域でお客様がいま抱えている悩みなどをより理解し ていきたい」という会話 が社内でも増えていると実感しています。
Brandwatchの具体的活用方法
一般的なカテゴリの枠を超え、お客様の求めているコトを掴む
黄氏:私が担当しているのは「掃除」のカテゴリです。私はよく「掃除」以外の他のカテゴリも見るのですが、どのような切り口、軸で生活文脈のデータを深掘りしていくのが有効かはカテゴリごとに違います。その中から自分なりに分析軸を組み合わせ、今は自己流の型がつくれてきていると感じています。自分なりの使い方ができるのがBrandwatchの面白いところだと思います。
例えば、「カビ」「臭い」などは掃除カテゴリで一般的なワードです。そこにライフステージを組み合わせてみると、生活シーンのなかでのそれぞれの悩みが見えてきます。同年代女性でも妊婦と子あり女性では悩みが違うことがありますし、他にも、そのときの分析の目的や事前に持つ仮説をもとに、季節性や情緒を掛け合わせることで、お客様がいま家事や掃除のシーンで抱えるインサイトや、未解決になっている問題を捉え、社内に発信・共有していくことに取り組んでいます。
まだ社内で捉えられていない、気がついていない「お客様が次に何を求めているのか」を発信できるのが私たちの価値だと思うので、お客様視点になりきりお客様の求めている真実を掴むことを常に意識して分析に取り組んでいます。
まだ捉えられていないお客様の声を発見し、データの背後にある真実を読み解く
松本氏:私が担当しているのは「衛生・清潔」のカテゴリです。分析を始めた当初はお客様が真に抱えている悩みや問題を発見していくことに苦労していました。しかしある時、「衛生・清潔領域の多くの生活文脈があるが、これをくまなく見続けた先に、新たな発見が本当にあるのだろうか」と疑問を持ちました。
そのときに、担当のブレインパッド楠さんに「本当に捉えるべきお客様の悩みが埋もれないように、すでに捉えている文脈をキーワードで特定し、分類しながら分析おこなう手法がある」と教えていただき、実践していきました。
相関性が低そうな言葉を一括で特定して、それ以外の文脈をさまざまな軸で分析することで、お客様の深層心理、本当に悩んでいそうなコトに近づけている 実感を持つようになりました。
「条件を工夫して必要なものを取り出す」のではなく、「グルーピングして既知のものを除外する」という発想はなかったので、教えていただいて頭の中も、自分自身がやるべきこともクリアになりました。
キーワード分析
松本氏:最近面白かったのは、普段身につけるものをキーワードにした分析です。身につけるものの衛生に対する感覚が変わってきていると感じたためです。例えば、「衛生」×「スマホ」「めがね」などのキーワードで分析をしたところ、意外にも「外出先から帰宅したときの新たな顧客体験」の仮説が見えてきました。キーワードの掛け合わせからこれまで捉えられていなかった生活導線の仮説を見つけることができ、とても興味深かったです。
実は半年くらい前にも「手指消毒疲れ」という感覚が生まれているのではないかという仮説が社内であがり、分析をしたことがあります。その結果、確かに手指消毒を行うことにお客様は疲れていそうだということは分かったのですが、それ以上深く仮説を検証することは出来ませんでした。
しかしBrandwatch導入後の分析のなかでは、「手指消毒には確かに疲れているが、物の消毒の意識が高まっている」という仮説の深堀をすることができ、データの背後にある真実を深く読み解くことに近づけていると実感しています。
Brandwatch の評価と今後の展望
松本氏:私も以前、 事業部門でマーケティング実務を担当していましたが、業務内容は多岐にわたるため、お客様が普段どのようなことを考えているかデータをじっくり見て考える時間を十分に持つことはそう簡単ではないと感じていました。そのため、私たちが報告する生活者のリアルな声のレポートは社内でも有用だという声をいただけています。
清水氏:現在は生活者の今の悩みや、解決したいコトをメインで分析していますが、少し先の「未来の生活者の悩み」を捉えるにはどうしたら良いのかを考えています。
定量、定性の両アプローチを掛け合わせ、少し先の未来を捉えるような分析アプローチができたらと思っています。
黄氏:事業部門とも連携して、本取り組みと連動した成功事例を一つでも多く作っていきたいと考えています。捉えたお客様の悩みを実際に製品、サービスを通じて解決していくことにつなげていくことができて、初めて本当の意味での成果だと思うので、ここは拘って今後も取り組んでいきたいと考えています。
松本氏:今後社内のより多くの部門にお客様が今、そして次に何を求めているのかを発信、共有していきたいと考えています。製品に関する反応だけを見ていても見えてこないものがBrandwatchを活用した本取組みで発見できてきていると感じています。これが起点になってお客様への新しい価値提案に繋がり、それがお客様の生活にこのように寄与した、という成果が見えるよう、取組みを拡大していきたいです。
米谷氏:ライオンのパーパスである「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」を実践していくために、変化する社会課題に対応しながら、「お客様が次に何を求めているのか」を深く理解し、楽しく、前向きなより良い習慣を提案していくことに、本取組を通じて貢献していきたいと考えています。
掲載日:2023年3月3日
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