※ブレインパッドはBrandwatchの国内正規パートナーであり、本記事はBrandwatch(イギリス)の許可を得て翻訳転載しています。※翻訳元
ソーシャルメディアリサーチであれば、他の調査方法では困難で、コストがかかるようなコンシューマーに関するインサイトを容易に引き出すことができます。
この手法には、インターネット上の会話の量を活用して、定量的スケールで、定性的なインサイトを明らかにするというメリットがあります。
日々、インターネット上で発生している会話は何百万、何千万という量になるため、こうした膨大なデータ量に大抵の人は圧倒されると思います。
どんなデータを対象にしてリサーチするかをしっかり見極めておかないと、データの洪水に溺れることになります。
また、いいねやフォロワー、ファンの数など常に生成されているソーシャルデータに依存してしまいがちな傾向にも注意が必要です。
真偽、有効性を確かめ、経営判断に活かせる情報を見つけるには相応のスキルが必要です。筆者は先頃、Brandwatchのリサーチサービス部門長ベックス・カーソン氏(Bex Carson)にお会いし、ソーシャルメディアリサーチにおけるベストプラクティスの秘訣をお伺いしました。
ソーシャルメディアリサーチへのアプローチ
ビジネスアクションにつながる強力なインサイトを得るには、単なるソーシャル上の指標では不十分といえます。
実際のビジネスアクションを後押しできるような強力なインサイトを明らかにするには、誰に耳を傾けるべきか、どのようにトレンドを見極めるか、何が重要であるかを理解し、調査結果を文脈に反映することです。
大抵の人は、自分が知っているデータ項目からリサーチを始めがちです。
そのデータ項目で回答が出せる質問クエリを考え、それに基づいてリサーチ計画を立てる。しかし、その方法では制約が多く柔軟性に欠けています。
すでに知っていることから始めるが故に、最初から発見できる情報の可能性を抑えてしまうからです。
興味深い質問をしてみよう
優れたソーシャルメディアリサーチの基本は、適切な質問クエリを用意することです。このクエリの品質が悪いと、品質の低い回答しか得ることができません。
いったん、リサーチの実施方法は忘れて、何が課題なのかとその答えを出すためにどのようなクエリが必要か考えてみましょう。クエリさえ明確になれば、実施方法は後から決めればいいのです。
Brandwatchを使えば、どんなクエリでも必ず答えを出すことができます。ソーシャルメディアの醍醐味はその柔軟性にあり、Brandwatch Consumer Researchはそれに合わせて柔軟に機能構築されています。
(Brandwatch リサーチサービス部門長 ベックス・カーソン)
分析で使うクエリは具体的、かつその答えはビジネスアクションにつながるものでなければなりません。例えば、「50代の女性がファッションブランドから期待しているものは何か?」「我々のコンテンツは、対象とするカスタマーに訴求できているか?」などが好例です。
じっくりと時間をかけてクエリを考え、可能であれば他の人も交えて様々なアイデアを出し合ってみましょう。その際に、下記を考慮してみてください。
- このリサーチをふまえて、何ができるようになりたいのか?
- リサーチ報告を受取る方はどのような裁量・力量・権限を持っているか?
- 何をもって成功と判断できるか? 成功にはどのような特徴があるか?
- この対象者・オーディエンスについてすでに知っていることは何か?
- 決められた期間内に回答が出せるクエリか?
より良い分析を行う
クエリに対する回答の引き出し方には主に2つのアプローチがあります。
一つ目は、クエリに対する回答を得るための指標を決めておくこと。
二つ目は、データをかき分けながらインサイトを発見するというより探査的なアプローチです。時間と予算が許すのであれば、両方のアプローチを併用すれば興味深い回答や強力な回答が得られるはずです。
ベストな結果をもたらすソーシャルメディアリサーチは、両方の手法の要素が取り入れられているものになります。両方の手法を使えば、一つ一つの質問に対する具体的な回答を取得できると同時に、オーディエンスに関する新たなインサイト発見ができます。
(Brandwatch リサーチサービス部門長 ベックス・カーソン)
構造化・計画化された分析
こうしたタイプの分析は、個々のクエリに対して回答を求める場合に利用しますが、そのクエリの結果を得るために必要な、具体的な指標を決めておく必要があります。
ブランドウォッチのルール、カテゴリー、タグなどのセグメンテーションの力を利用することで、具体的な答えを導き出すことができます。
この方法は、目的がしっかり定義された、客観的な質問に答えるのに最適です。
例えば、キャンペーンを実施した結果、知名度がすぐに上がったのかを知りたいのであれば、キャンペーンアセットに関するコメント(会話)と、ブランドのベースラインの両方について、時間の経過とともに投稿の推移を見ればわかります。
このような比較的簡単な質問をすることで、キャンペーンの成功を明らかにする指標が得られます。
パンくず分析をフォロー
このアプローチは探索的であり、会話をリスニング(データ収集)することでデータの中に潜むストーリーを発見するものです。
この手法を使うと、データ解析によって、異なるオーディエンスグループを発見したり、コンシューマーをより深く理解したり、トレンドを把握したりすることが可能です。
ただし、この手法は決して簡単ではありません。先入観を持たずプロジェクトを始め、分析結果を自らが期待する結論に誘導しない必要があります。
バイアスが掛かっていない、公平なリスニングによって根底にある会話のテーマを見つけるため、これはより高度なソーシャルメディアのリサーチ方法と言えます。
この手法にはメリットがたくさんあります。まずカスタマーの声に近づけること。会話のニュアンスや感情を理解するのに、カスタマーの発した言葉そのものを聞くのに勝る方法はありません。
機械では理解や分類できないことも、人間のアナリストならできます。
異なる単語が使われていても、同じ内容の会話をしていることだってあるでしょう。人間のアナリストは、その会話を読み取り、思いもしなかった話がされている事に気づき、それを使ってリサーチをさらに豊かなものにすることができます。
1. データセットの選択
クエリは特定のブランドではなく、会話の種類を分析することで幅広いトピックやテーマなどより興味深い結果にたどり着けます。会話のテーマの中でも、課題を明確に定義すれば、ターゲットとするクエリを作成し、データの中のノイズを削減することができます。
例えば、映画『ゴーストバスターズ』の新作を見た人の感想を知りたいとします。
ゴーストバスターズというクエリを書いただけであれば、出演者が全員女性だったことについて、もしくはレスリー・ジョーンズさんがツイッター上で批判されているなど、(あまり関係のない)多くの会話が見つかってしまいます。
人称代名詞や映画のブランド、「観たばかり」等々のコメントを含むクエリ文をしっかりと書けば、データを加工しすぎることなくノイズの無いデータセットを得ることができるはずです。
2. データのクリーニング
興味深く今まで知り得なかったコンシューマーのインサイトを引き出すには、データの品質管理がとても重要です。調査するトピックは一握りの話題性のあるテーマで埋め尽くされているので、そのようなテーマと比較すると隠されたインサイトを導き出せません。
トピックのクラウド/トレンド欄によく登場する事柄ではなく、ユニークな値を使って根底にあるテーマを浮き彫りにしましょう。
そのためには、まずは最初に行ったクエリの結果で人気のあるテーマを確認し、タグ機能を使ってそのテーマに触れているコメントや投稿を除外するのです。
ふるいを掛けたデータの中にこそ、自身が既に知っていること以外に他にどんな会話がなされているのかの情報が入っています。またこれは、リツイートを除外しオリジナル投稿のみを拾い出すにも有益な方法です。
3. ランダムサンプルの利用
自動化は便利なツールではありますが、ここで紹介している手法は、機械ではなく人が行うタイプの分析です。
そのため、そこで使うデータセットはデータ分析ができ、かつ人が管理できる詳細で十分なデータ量が必要です。サンプル全てを網羅するよう、読み込んだデータには印をつけて読み損ねがないように注意しましょう。
この作業をしておけば、次のステップに進めます….
4. グループ化したカテゴリーを使って読み込み/コード化する
正しい方法というのがあるわけではありませんが、データに依存するところが大きいです。これはデータの中からインサイトを探し求めるディスカバリーのジャーニーなのです。
まずはテーマやトピックのグルーピングから始めましょう。
最初に、発見できると思われるカテゴリーを作成します。前出の『ゴーストバスターズ』の例では、ポジティブな意見の「すごく良かった(loved it)」やネガティブな意見の「がっかりだった(hated it)」そして、そのどちらでもない様々な意見がが存在するだろうと考えられます。
カテゴリーの作成は初めの一歩にすぎませんが、必ずデータ主導であることがポイントです。データを分析し、新しいテーマが見えてきたら、それを追加します。
人による分析であれば、怒り、不満、ユーモア、歓喜などの感情分類も可能です。これは自動化された機械でなく、アナリストだからできることです。
投稿者タイプでカテゴリーを設定しておけば、様々な俳優に関する会話も理解することができます。
ブランドウォッチはカテゴリーをグルーピングすることができるので、各々の感情や投稿者のコメントは、サブグループとして親グループの配下に設定することができます。この階層構造は分析に便利です。
データを読み込んでいると、その全てのデータについてカテゴライズしたくなります。その際に、多数意見のカテゴリーだけを作成すると、データセットの最後になって初めて重要なトピックに気づくことになります。少数意見のカテゴリーも作成し、分析の最終過程で削除すれば、見逃さずにデータ分析できます。
5. 分析と可視化
ついに、可視化して分析する段階になりました。
まず最良の方法として、標準的なグラフを作成し、データにフィルターを適用します。
その標準グラフへ様々なカテゴリーを掛け合わせ、興味深いパターンや分析結果を見つけます。
親カテゴリーを交差させることで最も有益なインサイトが見つかることもあります。1つの軸に投稿者タイプ、もう1つの軸に感情を入れてみると、様々な投稿者の違う根性タイプを可視化することができます。
ソーシャルメディアリサーチにおけるゴールデンルール
1. 全てを比較し、常に違いに目を向ける
ソーシャルメディアリサーチの最も基本的なルールは、違いに気づくことです。悪いことを見なければ良いことを知ることはできません。ささいな違いではなく大きな違いを探しましょう。データに多少の違いを発見したからと言って大がかりな変更をせず、好奇心をもって探査を続けましょう。
面白い分析をやりたければ、興味関心を持ち続けることです。
(Brandwatch リサーチサービス部門長 ベックス・カーソン)
2. 好奇心を持ち、理由を問う
違いに気づいたら掘り下げて行きましょう。そしてさらに掘り下げ、なぜその違いが存在するのかの説明が付くまで掘り下げ続けましょう。
なぜそのデータがその値になっているのか理解できなければ、そのデータを基にしたビジネスアクションを推進することはできません。
(Brandwatch リサーチサービス部門長 ベックス・カーソン)
3. ソーシャルメディアリサーチの結果報告
まずリサーチの結果報告をしているときはストーリーを話している事を意識しましょう。
リサーチ報告書は複数の人や部署が読むことも考えられます。全員が同じ時間をかけて報告書を読むわけではありませんし、興味を持つ箇所もそれぞれ違います。
報告書の透明性を担保するためにリサーチ手法から書き始めてもいいのですが、まずは主な結論やコンシューマーに関するインサイトを述べましょう。
順次、データストーリーを展開しながら、図表や分析を使って各インサイトをより詳細に説明していきます。
テキスト量の多い文書にインサイトが埋もれてしまっていたのでは、苛々の原因になりますし、せっかくのリサーチが高く評価されないリスクにもなります。
最後に、ここで語っているのは自身のストーリーではなく、あくまでも自身が耳を傾けて聞いたコンシューマーのストーリーであることを忘れてはなりません。必ずカスタマーの声を報告書に含めるようにしましょう。SNSへの投稿例や実際のカスタマーのプロフィール写真等も報告書に含めておくことで、ソーシャルメディアリサーチがより身近でリアルなものになります。
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