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2023年6月5日から6月16日にかけて開催された、日本最大級のDXオンラインイベント「DOORS-BrainPad DX Conference- 2023」。当イベントでは「DX」と「データ活用」の両輪で業界の最前線を走る企業延べ13社が集まり、DXとデータ活用による成功事例をDXご担当者様に直接語っていただきました。その一部始終をただいま記事で公開中です。
本記事では当イベントの「オープニングトーク」をテキストで収録しています。オープニングトークでは以下の内容について触れています。
▼本記事の登壇者一覧
※所属部署・役職は収録当時のものです。
株式会社ブレインパッド・近藤 嘉恒(以下、近藤) DOORSカンファレンスをご視聴いただきありがとうございます。今回は、今年のDOORSカンファレンスのメインテーマである『ビジネス価値創造につながる鍵はどこにある?経営と現場をつなぐ「データ活用の自走化」への挑戦』と題して、皆様にDX推進の鍵を見つけていただこうと思っております。
DOORSはブレインパッドのマーケティングブランドとして展開している状況です。年に一度行っているカンファレンスは「ブレインパッドが考えるDXの見え方」を表現する場としてお伝えしています。
さて、実際のセッションに入る前にまずはこれまでのDX変遷を振り返っていこうと思います。DXとデータ活用の有用性について、DOORSカンファレンスで4年間伝え続けてきたことを踏まえながら解説します。お話いただくのはブレインパッドの経営陣である高橋さん、関口さん。モデレーターは私、近藤が行います。
DOORSカンファレンスは2020年からスタートし、コロナの感染拡大も含め、時代の機微を取り入れたコンテンツを今まで発信してきました。
具体的には、次のようなテーマを発信してきています。
まずは、2020年2月の「DXで、どんな未来を開こう」から振り返っていきたいと思います。関口さんは、2020年を振り返り、印象に残ったコンテンツや印象に残った言葉などはありますか?
ブレインパッド・関口 朋宏(以下、関口) タイミングとしては、突然コロナの感染が拡大した時期であり、オンラインではなくリアルの会場を借りてイベントを行いました。とくに印象に残っているのは、DXとは何かという定義がなかったものの、DXは変革そのものであり、企業においてはXにあたるトランスフォーメーション(変換)を意識する必要があるというものでしたね。
また、「DXは成功確率が30%程度の手術を行うようなものだ」という一言は、各社が覚悟を決めてDXを行わなければならないということを意識する最初のタイミングだったと思っています。
近藤 2020年は、クラウドプラットフォームサービスなども技術的には可能性が広がることから、”「サービスを受ける企業」と「支援する企業」が一体となってDXに取り組んで行かなければならない”といった意識を、改めて各社が持った時期だと言えますね。
近藤 次は、2021年6月に開催したDOORS「経営者の隣にデータサイエンスを」を振り返っていこうと思います。「時代の変化に合わせて経営は変わっていく必要があり、DXがその中核を担う。そして、「DXを行うにはデータサイエンスが重要である」という視点をブレインパッドとしても謳いました。
では、高橋さんにお聞きします。2021年のDOORSカンファレンスで印象に残った部分やセッションなどはありますか?
ブレインパッド・高橋 隆史(以下、高橋) オルビス株式会社の代表取締役社長の小林さんとセッションを行った際の「顧客のニーズ理解のためにデータを活用していた」というお話は印象に残っています。文字通り、経営者の隣にデータサイエンスがある企業でした。
顧客のニーズを把握し、よりよいサービスや商品を届けるために顧客を中心としたデータやIT活用を行っている点が印象的だったと言えます。
近藤 顧客を中心としたデータ活用が印象的だったということですね。2021年、2022年と続けてブレインパッドは業務提携を行っている伊藤忠様とも対談していますね。関口さんはこのセッションで印象に残っていることはありますか?
関口 思ったことは、この2年間で「DXに対する意識」が、良い意味で劇的に変化している点です。まず2021年のセッションでは全体的に「DXは”目的”が重要。DXそのものを目的化してはならない」と主張していました。
そこからさらに1年が経ち、2022年のキーワードは「答えは現場にある」となりました。そして、事業の変革や業務の変革を行っていくタイミングでは、机上で考えるよりも現場にDXを考えるきっかけや解決の道筋があるとして、現場に入っていく必要があるというテーマのセッションとなっています。
近藤 ブレインパッドとしても、「経営者にとってデータサイエンスは不変なものである」と定義しつつ、2022年は「変化の時代データが巡る経営を」をテーマに変更した上で、データを現場に巡らせていくことを大切にしようといった内容でしたね。
2022年においても様々なテーマに触れましたが、高橋さんが印象に残ったセッションはありますか?
高橋 「TOYOTA(トヨタ)様」とのセッションです。車作りではない事業へチャレンジされましたが、そこにブレインパッドも伴走させていただいたことで、感謝のお言葉をいただきました。。顧客の声が拾いにくくなっている中で現場の声を拾えたと感じられ、印象に残っています。
近藤 2023年のテーマは「経営と現場をつなぐ”データ活用の自走化”への挑戦」となっています。今回は13社の企業に協力を仰ぎながら、ブレインパッドが取り組んだ実例についてセッションを展開していく予定です。
そして、今回は13の事例を5つのテーマに設定した上でコンテンツを展開します。
1つ目は経営と現場をつなぐ「最適化ビジネス実装」の実践例としています。データ活用の根管部分として、最適化のビジネス実装は大切な要素であり、その実例にふれていく予定です。
2つ目は経営と現場をつなぐ「データ戦略」の実践例です。戦略をどのように実践していくのか、机上の空論ではなく現場の実務に落としていくためのアプローチをテーマとしています。
3つ目は経営と現場をつなぐ「人材育成」の実践例です。今回のテーマの中心となる自走化のための人材育成についてセッションを行います。
4つ目は経営と現場をつなぐ「顧客理解」の実践例です。BtoC、BtoBどちらでも顧客理解をどのように進めていけばいいのか、直接見えない顧客を相手にデジタルを用いてどのように補足していけばいいのかといった内容になります。
5つ目は、経営と現場をつないだ先にある「日本のデータ活用の未来」についてです。現在の日本の状況を踏まえて、一歩進み、俯瞰的に日本のデータ活用をどう変化させていくのがベストなのかを議論するセッションですね。
テーマごとに非常に面白いコンテンツが多いため、ご視聴いただければと思います。
近藤 DOORSカンファレンスは今年で4年連続です。では、関口さんにDOORSカンファレンスを4年連続で開催する意義についてお聞きしたいと思います。
関口 一度始めたものは続けたいという思いがありますね。また、毎年雰囲気や環境が変わってきていることから、今を届けようとする場合は毎年開催する必要があります。例えば、2022年の位置付けと現在のDXに位置付けは変化しているといえるでしょう。
社会環境として、円安の問題や政治情勢は変化しており、コロナの状況などに関しても今はマスクを外しても問題なくなりました。そのため、企業にとってのDXの在り方やテーマも変化する必要があり、変化の状況を見ることが重要だと感じています。
ブレインパッドとしても「学びの場」として認識しており、毎年続けることに意義があると感じています。
近藤 ブレインパッドのイベントメイキングとして、こだわっているのはブレインパッドの顧客であることですよね。高橋さんからすると、一緒に取り組んだ実例から見えてきたことや気づいたこと、データ活用の手触り感などに対してどう思いますか?
高橋 共通していることは「目的としてのデータ活用ではなく、手段に落とし込んだ上でデータやITを利用している」点です。顧客のビジネスの状況・構造・ステージによって、データの使われ方には多様性があります。その上で、ブレインパッドが顧客の求めるものに応えられている点は誇らしいと感じています。
また、ブレインパッドとして、コロナの影響から顧客と直接会話をする機会は多くない状況でした。そのため、1年に1回であったとしても感謝の言葉を伝え合う機会を得られている点は価値を感じていますね。
関口 DXに関する情報はニュースも含めていろいろあるものの、コロナの影響によって現場を見ることができない中では表面的なものも少なくありません。しかし、本当に大切なのはその苦悩や裏側、乗り越え方です。生々しい苦労話をクライアントと共に届けることに意味があると感じています。
近藤 ここからは、これまでの10年を振り返っていきたいと思います。ブレインパッドが創業してからは19年、上場してからはちょうど10年です。データの総合サービスの企業として、様々な業界・規模・シチュエーションの顧客にデータサービスを提供してきました。そうした状況から、関口さんは、ブレインパッドと日本のデータ活用の現在地をどのように感じていますか?
関口 2013年であれば、ITの世界ではパッケージソフトを導入し、様々なものを標準化しようといった流れが強かったと思っています。実際に、パッケージソフトを導入する流れはピークであり、それに伴って業務のあり方も変えていこうという流れになりました。
ただし、そのようにして業務をパッケージに合わせたとしても、「結果としてどこまでビジネスに良い影響があったのか」と言われた場合は、疑問の方が強いですね。実際に日本の経済をその後も追ってみると、、引き続き苦しんでいた10年でした。
パッケージソフトを使用したとしても事業がプラスにならなかったという結果を目の当たりにし、その際に導入したソフトウェアから得られるデータがあるということに気づき始め、「データそのものを活用する」という流れになってきたといえます。
事業においてデータを活用することは当然になりつつあり、IT投資の費用をデータ活用で行うといった狙いもあるでしょう。そのような流れに対して、ブレインパッドがどこまで貢献できたのかは試される問いだと思っています。
近藤 日本のデータ活用という意味では、世界デジタル競争力ランキングだと日本は29位です。決して高くない数字ですが、高橋さんはこのランキングについてどう思われますか?
高橋 注目してみてみると、ランキングされている国々の中でも「データ活用による意思決定」が日本はできていないということになります。調査対象の国が63カ国あるなかで、63位ということは最下位ですよね。
私の所感を伝えると「この日本の状況を何とかしようと思って会社を作ったけれど…、ごめんなさい。引き続き、頑張ります。」という思いです。日本の経営に関しては、他の調査でも良い順位になることはなく、データ活用と経営のアジリティ(機敏性)が低いという結果が出ている状況です。
全体として、経営が変わっていかなければならないという非常に大きな問題を抱えているといえるでしょう。ブレインパッドを創業した当時は、現場にデータ分析の力を届ければ世界や会社が良くなっていくと思っていました。しかしそれだけではなく、顧客のITの使い方を根本的に変えるところも支援していかなければなりません。
ここ10年でみれば、コンサルティング事業が伸びており、人員も強化してきました。データサイエンスやエンジニアリングのスキルや能力の提供だけでは、この状況を変えられないためです。なのでコンサルティングも含めて、ビジネス面のサポートも強化していく所存です。
トレンドそのものは今回のランキングに限らず、ずっと続いていることであり、ブレインパッドとしても4年前からより本格的な対応ができるように舵取りを行っています。
近藤 市場に求められるケイパビリティをブレインパッドは網羅してはこれたけれども、、それらをブーストできるような強みをもっともっと持つ必要がありそうですよね。
関口さんから見て、日本の現状をどのように思いますか?
関口 高橋さんが悔しいとおっしゃっていましたが私も同感です。ブレインパッドは、日本の企業活動を支援する立場でもあるものの、結果として成績が伴わなかったと言われたケースと考え方は同じだといえます。
ただ、データ活用に関してはまだまだ改善の余地があります。ここ数年ではAIブームが巻き起こっており、既に投資や取り組みを行っている企業も少なくありません。その上で、どの領域や技術に投資を行うべきだったのか、どのビジネス領域にデータ活用を浸透させていくのかといった「狙い・予測」はもう検討すべきだと感じています。
その部分をブレインパッドとして、他の企業と共に探していきたいですね。これまでとは異なるチャレンジを行いたいと思っています。
近藤 4年間のDOORSカンファレンスを通じて、ブレインパッドと顧客の実例を紹介できた点も含めて、私もまだまだ伸びしろがあると思っています。ブレインパッドとしても2023年の今のタイミングでは、どのように前に進んでいくのかといったポイントを考えていく所存です。
近藤 ここからは、お二人にこれからの10年をお聞きしたいと思います。市場に対して、ブレインパッドが顧客と取り組むべきポイントについて関口さんはどう思われますか?
関口 ブレインパッドがDXについてお話する際は常々「世の中の97%のデータはほぼ使われていない。無駄が大きすぎることから、無駄を活かすためにもデータ活用には意義がある」という主張を展開し続けてきましたが、その考え方は広く浸透してきたかなと思います。そしてこれからはデータを「どういう場面で使うのか」「どのように活かすのか」というところを試されるタイミングが来ていると思っています。
もちろん「意思決定をする場合は必ずしもデータを使わなければならない」というわけではないです。しかし、意思決定には
の2つが存在し、この意思決定の質を上げるためにどこまでデータを活用できるかが重要だと考えています。
例えば、データを活用して「ビジネスを伸ばすために”戦略A”を実行するのがベターらしい」という答えを一つ導けたとします。この時の選択肢は二つあります。
ここで後者を実行する場合、「計算上”戦略A”が良いと分かった上で、あえて”戦略B”を選択できる」というのがデータ活用における大事なポイントであって、これが最初の段階から「なんとなく”戦略B”を実施しよう」というふわっとした意思決定と比べると、同じ意思決定でも意味が大きく異なります。
このような「進化した意思決定」をするためにも、データから導き出せる「確からしい答え」を把握できるかどうかがより大切になるといえます。
したがって、必然的にブレインパッドに問われるのは「意思決定を支えるデータ活用・データサイエンス・仕組み」であり、それに対し明確にアンサーを返していかなければならないと思っています。そこをクライアントの皆様と共に探していきたいですね。「意思決定にこだわったデータ活用」をこれからの10年で実施していきたいです。
近藤 では、高橋さんが考えるこれからの10年はいかがでしょうか?
高橋 「データサイエンス」という言葉が最近では当たり前のように使われるようになってきています。大学の必修科目になっているケースも増加しており、若い人たちからの関心も高まってきているんじゃないかなと。
つまり「データに基づいて意思決定を行う」という意識を、若い人たちは当然のように持って社会に入ってくるようになります。その時に彼らが失望しないような社会を、ブレインパッドは作りたいです。
もちろん、データがあれば正しい決断ができるというわけではありません。そうではなく、「データを見ずに思い付きで走り出す」ことを、社会全体としてやめていかなければならないと思っています。
全員でファクトを見た上で意思決定ができるというリテラシーを、ブレインパッドを通して社会全体で高めていきたいと考えています。
近藤 より日本が良くなるためにブレインパッドが取り組むべきことは何だと思いますか?
高橋 より良い成功事例を、あらゆる業界で作っていくことだと思います。すべての業界や企業を成功に導くには無理だとしても、ひとつひとつの成功事例を作っていくことができれば、社会全体が「ちゃんとデータを活用すればうまくいくんだ!」という「希望」を見出してくれるんじゃないかと。これはブレインパッドだけが取り組むというよりは、皆様と一丸となって作り上げていきたいですね。
最近だとChatGPTが良い成功事例の一つです。「今の技術でチャットAIサービスを開発できる」事実を「知る」ことで開発に拍車がかかり、ChatGPTを超えるための開発がまた生まれたりします。
ブレインパッドが社会の希望となるような突き抜けた成功事例を、早い段階で、あらゆる業界でどれだけ作っていけるかが問われることになると思います。
関口 ChatGPTのお話が出ましたが、業務やオペレーションの自動化という観点でChatGPTのようなAIの活用はどんどん実施していった方がいいと思います。そしてさらに私がポイントだと思うのは、次の2つです。
「ChatGPTのような既にある技術やツールとソフトウェアを組み合わせて業務に適用していく」
「意思決定を行うために必要な情報やインサイトを見つけてどのように意思決定を行うのかを決め、人間のクリエイティビティを支える」
どちらも行わなければならないものであり、ソフトウェア化するものに関しても使えるものは使っていくという意識が大切ですね。
企業として、自分たちのオリジナルの製品を作らなければならないというジレンマはあったと思われます。しかし、チャットAIに関しては既にあるツールで十分な受け答えが可能という結果から、使用しつつ業務を進めて行くことが求められるといえるでしょう。
ブレインパッドとしても今あるツールや技術を使用する前提でのサポートを行っていくと想定しています。
近藤 ブレインパッドが元々目指している「データ活用の促進を通じて未来を作っていく」ことを実現するためには、「データサイエンティストにしか創出できない価値を提供すること」「それをソフトウェア化した形でサービスを展開すること」が大切な要素だと言えますね。
関口 データサイエンティストが必要だという声は多くあるのは事実です。ただ、本当に求められているのは、高度なデータサイエンティストではなく「データを使用したソフトウェアを上手く使いこなす人たちが増加していくこと」かと感じています。また、自社の社員にそうなってもらうことが内製化や自走のポイントの一つでもあります。
日本の労働人口がどんどん減っていくこともふまえて、自分たちができることはツールやデータも使用しつつ、自分たちで活発的に行うという動きを目指していく必要がありますね。
近藤 今の関口さんのお話にあった部分は、今回のコンテンツや様々な事例で展開しています。今後ブレインパッドもそういった部分をサービス化し、提供できる仕組みを作っていく意向です。
では、オープニングトークはここで終了です。お二人ともありがとうございました。
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