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DXは単なるITシステムの導入ではなく、ITシステムを活用してビジネスモデルや製品・サービスを変革する試みであり、全社的に取り組む必要があるものです。そのため、経営者の強力なリーダーシップが欠かせません。
経済産業省は、日本企業のDX推進が停滞している理由の一つを経営者のDX理解不足であると認識しており、DXの加速に向けて経営者に対する提言を資料にまとめています。今回は2020年末に公表された中間報告の中から、経営者にDXの❝Why❞説明した資料を抜粋して整理します。
残りの❝What❞ ❝How❞については、以下の記事を参照ください。
【関連】経営者が理解すべきDXの❝What❞とは?データ活用の目的とプロセス
【関連】経営者が理解すべきDXの❝How❞とは?ITシステム企画の勘所
DXが必要となる背景として、デジタル技術の進歩が挙げられます。経済産業省は、新たな技術が「新たなビジネスモデル=デジタルビジネス」を生み出し、デジタルビジネスを拡大させるデジタルエンタープライズとなることを企業に求めています。まずは、デジタルビジネスとデジタルエンタープライズの「新しさ」について説明します。
経済産業省は、かつてのITが業務効率化や生産性向上を目的として使われてきたと整理しています。入出力端末、ホストコンピュータ、プリンタなど、業務の自動化・省力化を中心に導入されて成果を上げてきました。
時代を経て技術や大きく進歩し、業務効率化のレベルは進化しています。また、スマートフォンの普及やIoT化の拡大、それに伴うパーソナルデータやセンサデータの収集・蓄積・分析などのように、人では担いきれない業務をデジタル技術が担うことにより、新たなビジネスを創造することが可能になりました。
つまり、デジタル技術がビジネスに変革をもたらし、新たな価値を創出できるようになったのです。こうした新たなビジネスを「デジタルビジネス」と呼びます。そしてDXを完遂しデジタルビジネスによって変革を続ける企業を、資料では「デジタルエンタープライズ」と名付けています。企業にとってDXの目的は、自社をデジタルエンタープライズとして生まれ変わらせることにあるのです。
デジタルエンタープライズとは、ビジネス戦略とITシステムを迅速かつ柔軟に対応させていく企業のことです。事業部門がビジネスを担い、IT部門がITの運用・管理を担うという役割の切り分けはなされず、両者が一体となって戦略の立案と検証を繰り返し、ビジネスを創出していきます。そしてデータを活用し、デジタルビジネスを拡大させていきます。
デジタルエンタープライズにおけるデジタルビジネスの特徴は、ビジネスサイクルの早さにあります。ビジネス戦略に基づいて事業計画が立てられ、すぐさま開発に移し、実行。同時に、データという形で市場からのフィードバックを受け、それを基に戦略や計画を再考し、システムに反映・・・・・・といったサイクルを回しながらビジネス領域を拡大していきます。
デジタルエンタープライズは、ビジネスに対するフィードバックを素早く得られるため、短いリードタイムで施策を講じることが可能です。こうしてビジネスの刷新スピードを速めることが、企業の成長につながると資料では主張しています。
デジタルエンタープライズのシステムには、従来の基幹システムが担ってきた業務効率化のような役目に加えて、動きの速い市場に適応可能なアジリティが求められます。
市場に合わせて顧客側のシステム領域も変更・拡大していくため、機能拡張が容易であり、データ連係が可能なシステム構成でなければなりません。
多くの企業が中期経営計画などに「DX」の文字を入れるようになりました。しかし、DXは単なる経営目標ではない、というのが経済産業省の考えです。あらためて、DXの定義や実現に向けたプロセスを理解しましょう。
デジタルエンタープライズになることがゴールだとすると、DXはそれまでのプロセスです。DX自体を目的化してしまうと、AIやRPAのような技術を導入するだけで終わってしまったり、特定の部門だけが形式上だけDXに取り組んでいたり、といった失敗に陥ってしまいます。
だからこそ、ビジョンが重要です。経営者が将来のビジネスを見据えて、取り組みの方向性としてのビジョンを指し示し、全社で共有していくこと必要があります。
DXのステップとして、ゴールの設定・DX計画・DX推進の3つが挙げられています。ITシステムにおいても、ビジネスビジョンに基づいたゴール設定は欠かせません。デジタルエンタープライズとしての目指す姿を描き、それを実現するために必要なシステムの転換を行うことがITシステムのDXなのです。
ゴール設定の際には、DX推進指標の活用も有効です。DX推進指標は経済産業省が定めた自己診断用のツールで、DXの進捗度のチェックやDX実現のためのアクションプランの洗い出しなどができます。DX推進のための実践的な指標です。
DX推進指標の詳細については、以下の記事を確認してください。
【関連】DXを推進するためのアクションプランは?経産省「DX推進指標」を参考に
経営者は、ビジョンを策定して社内外に発信することが求められます。そして、ステークホルダー間の対話の中心として関係者を引っ張るリーダーシップも必要です。
ビジョンがなく、経営者のリーダーシップやコミットメントを欠いたDXは「絵に描いた餅」でしかありません。「ITには詳しくないから」とIT部門に丸投げすることなく、ITへの理解を深めてプロジェクトをリードしていくのがDX推進における経営者の役割です。
ほとんどの企業では既に何らかのITシステムなりツールなりを使用しており、DX実現に際してはこうした既存システムの棚卸しが必要となります。既存システムに潜む問題点について、経済産業省の認識を紹介します。
DX推進に際しては、既存システムを検討の対象に含めることになります。検討段階でどのような役割を担っているのか、DX実現のために何が欠けているのかを把握し、ビジョンの達成に向けて既存システムの改善や刷新を行うわけです。
特に、既存システムが「技術的負債」となりうる場合には注意が必要です。「技術的負債」とは、個別最適の観点から場当たり的にシステム開発を続けてきた結果、長期的に保守費や運用費が高騰している状態のことを指しています。膨らんだコストが企業の体力を削ぎ、新たな投資を困難にする要因となっているケースも少なくありません。
安定稼働していて、一見すると問題ないように見えても、ビジョンの実現を妨げてしまうリスクがあるのが技術的負債と化した既存システムなのです。
既存システムは、新規構築するシステムと相互に連携しながら見直す必要があります。段階的に刷新(不要な機能は廃棄も考えられます)を加えて、目的であるデジタルエンタープライズの実現を目指します。
「革新」という言葉に囚われすぎて、既存システムを無視することは推奨されていません。ビジョンの実現に向けて、既存システムを含めてDXを検討する必要があります。まずは既存システムの全体像を把握し、必要な機能と不要な機能とを仕分けることが重要です。
この際、既存業務を変えないことが前提とならないよう注意しましょう。業務自体もゼロベースで見直しを加えることにより、大幅に既存システムの機能を削減しコストを下げられる可能性もあるからです。
経営者の中にはITの知識や経験を持たず、DXという言葉は知っていても具体的な中身まで理解したり、ましてやDX推進プロジェクトのリーダーになったりすることを避ける方もいるかもしれません。
しかし、DX実現には経営者の理解とビジョンの策定・発信が必要不可欠です。今回の資料は、細かい技術的な説明をせずにDX理解を可能とするものです。関係者は目を通して、DXに対する認識の共有を図っていきましょう。
※DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧下さい
【関連】「DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?意義と推進のポイント
この記事の続きはこちら
経営者が理解すべきDXの❞What❞とは?データ活用の目的とプロセス
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