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DX実現のためには、単なる最新技術の導入にとどまらず、データを活用した意思決定を可能としなければなりません。とはいえ、データを集めて分析し、何らかの知見を引き出して意思決定に活用するまでのプロセスを社内に定着させるのは、容易なことではありません。
経済産業省の最新資料(「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会 ワーキンググループ1 報告書」)には、データ活用の目的やプロセスが経営者向けにまとめられています。今回は、DXの❞What❞とは何か、さらに、どのようにデータ活用を進めていけばいいかをお伝えします。
まず DXの本質について知りたい方は、こちらの記事をぜひご一読ください。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?今さら聞けない意味・定義・事例をわかりやすく解説【2024年最新版】
ビジネスにおいてデータを活用するとは、どういうことなのでしょうか。まずは、データ活用の目的やステップなどの具体例について資料の内容をご紹介します。
ビジネスにおいては、「課題ありき」でデータを活用するのが本来あるべき姿です。「ビッグデータ分析が流行っているから、自社でもデータを使って何かやろう」ではありません。資料では、以下のような課題が挙げられています。
そして、データ分析によって以下のような答えが得られます。
このように、ビジネス上の課題に対してデータを活用して解決策を編み出すのがデータ活用のあるべき姿なのです。
データ活用は、単一の業務や会社内だけではなく、サプライチェーンやエコシステム全体など、会社を超えた最適化へと伸展しています。
たとえば、小売業ではカスタマイズサービスで得られた年代・性別などの属性ごとに人気のデザインのデータを、自社の商品開発に適用することはもちろん、他の企業に販売するようなビジネスが生まれています。
このように、会社を超えてデータ活用が拡大した結果、新たな価値の提供や新規ビジネスが登場しています。
データを無目的に集めても、活用にはつながりません。データの活用イメージを明確にして、分析や活用するために必要な種類のデータを収集し、適切な形式に加工したうえで蓄積していきます。
つまり、データ活用プロセスのゴールにあたる分析や活用のイメージから開始し、さかのぼる形でデータの収集・加工・蓄積のステップを検討するというわけです。ポイントは、データの収集から始めるのではないという点にあります。
DXを実現する企業は、データドリブンな形で意思決定を実現する企業とも言い換えられます。データドリブン企業となるための条件やステップについてご説明します。
資料では、データドリブン企業への3つのステップが挙げられています。
まず、部分的な成功体験を得る「小さなプロジェクトの成功」です。小規模なゴールを設定してチームを組織し、データ活用の有効性を社内に示します。この小さなプロジェクトを「PoC(Proof of Concept)」と呼びます。PoCを実施しつつ、データを活用する風土の醸成に努めるわけです。
次に、成功体験を全社的に展開するフェーズです。データ活用の専門チームを組織し、会社が直面する課題やビジネス課題の解決に取り組みます。データ活用の知見を集約して、ビジネスへの貢献を強く意識しながらデータ活用を実施する段階です。この段階で成功体験をさらに積み重ね、データドリブン企業を目指します。
最終的には、データ活用のプロジェクトチームだけではなく、社員一人ひとりがデータを活用し、ビジネス課題の解決に取り組むデジタルエンタープライズとなります。組織文化の中にデータ活用の気運が定着し、データによって新たな価値を創出するに至ります。
データ活用に際しては、こうした3つのステップを意識して進めましょう。
しかしながら、実際にはPoCで止まってしまう企業が少なくないと経済産業省は指摘します。PoCを繰り返すばかりで、全社的な横展開やビジネス課題の解決へつながらないケースが多いのです。
成功するPoCは、最初からゴールイメージを明確に持っています。経営層がそのイメージを定め、取り組むべきPoCの優先順位づけを行ってからPoCを実際に開始する櫃よいうがあります。このとき、全体最適の視点を持ち、ビジネス成長や組織文化の変革につなげる意識を忘れないよう注意が必要です。
データ活用を開始する前にゴールイメージを明確につかむことが必要不可欠です。PoCに際しても、ビジネスやユーザビリティの観点から検証事項を定めてIT開発を行う、すなわちビジネスとIT両輪の検証が求められます。
目的に加えて、PoCでは検証するスコープの明確化も必要です。たとえば、業務、組織内の関連する業務プロセス、組織を超えたエコシステムやビジネス領域、さらには社会など、スコープとして色々考えられるでしょう。スコープ次第で必要なデータが決まります。そのため、スコープを定めないと焦点がぼやけて、必要なデータが集まらないという失敗PoCとなるリスクが非常に高くなるのです。
データ活用の目的を定めたら、次は活用の準備に入ります。データの収集・加工・蓄積とデータガバナンスについて、経済産業省の記述を整理します。
データの分析や活用の目的を定めて加工・精製や蓄積の方法を検討し、収集とさかのぼる形で準備を進めます。
データの収集に際しては、既に社内に存在するデータを基盤としつつ、必要なデータを収集できる手段を構築したり、別々の部署やチームで管理されているデータを統合したりするケースもあるでしょう。いずれにしても、目的のためにデータを収集するのであり、データを収集してから目的を考えるのではない点に注意が必要です。
収集したデータに、加工や精製を行うケースも一般的です。たとえば、外れ値や異常値を除去するデータクレンジングや、複数テーブルを統合する際のデータの紐付け(名寄せ)、表記揺れや誤植の修正などを行います。
また、蓄積環境も活用用途を考慮して設計することが重要です。メンテナンスしやすい設計によって運用コストを抑えたり、セキュリティに関わる部分は責任者を置いたりと、システムと人材の両面で管理・運用体制を整えるようにしましょう。
データは新たな価値やビジネスを生み出す源泉であり、機械や不動産などと同じように会社の資産に他なりません。したがって、資産であるところのデータを守るためにデータガバナンスを強化する必要があります。データの定義やルール策定から始まり、ルールを守る仕組みやチェックできる仕組みの構築などを行います。
資料では、データガバナンスの組織例として、「データガバナンス運営委員会」、「データガバナンス評議会」、「データガバナンスオフィス」が挙げられています。データガバナンス運営委員会が全社的なデータガバナンスの監督・予算・支援に責任を持ち、データガバナンス評議会が具体的なデータガバナンスの取組や課題、報告事項を管理します。そして、データ定義とデータマネジメント標準に焦点を当てて調整を行うのがデータガバナンスオフィスです。
データを資産としてマネジメントし、そのための原理原則やポリシー、プロセスなどの決定、実行をするのがこれらの組織の役割となります。
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データ活用のためには、テクノロジーのみならずビジネス全体を踏まえたうえで企画検討を加えることが重要です。データ活用の目的を考え、小さな成功から全社的なビジネス貢献へ結びつけ、データ活用を社員一人ひとりが自発的に行うような組織がデジタルエンタープライズであり、そのためのプロセスや各ステップこそがDX推進の具体的なアクションなのです。
この記事の続きはこちら
経営者が理解すべきDXの❞How❞とは?ITシステム企画の勘所
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