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DXは、特定の業種や職種に限られたものではありません。あくまでビジネスモデルや製品・サービスの変革につなげることがDXのポイントですので、論理的にはどんな業種・職種でもデータを活用し業務プロセスを変えることができるはずです。
そこで今回は、業種や職種を超えてDXを推進している事例を5つご紹介します。ケースによって業種・職種のみならずデータやAI・機械学習に求めるニーズも異なるものの、そこに共通する「目的意識」と「コミットメント力」をご理解いただければと思います。
JT様の課題は、データ活用にありました。既に「JTスモーカーズID」と呼ばれる会員サービスを提供し、その会員データも豊富に保有していたにもかかわらず、そのデータを十分に活用できていませんでした。例えば、ダイレクトメールの送付に際しても、顧客の行動履歴や主に吸っている銘柄の遍歴などといった重要なデータは使われていなかったのです。
ブレインパッドは、JT様のマーケティング施策にデータを活用するプロジェクトの支援を実施しました。会員の属性データはもちろん、オンライン行動履歴や過去のマーケティングキャンペーンにおける接触履歴などのデータをAIに投入して、どの会員がどの銘柄に転移しやすいかを予測する銘柄転移の予測モデルを構築しました。
この予測モデルを、他社銘柄を利用中の会員にJT銘柄をお薦めするダイレクトメールの配信対象の選定に活用したところ、人手で選定した場合よりも銘柄転移数が1.2倍多くなるという成果が得られました。金額に直すと、マーケティング施策1回につき20%程度の費用対効果の改善となりました。
今後は予測モデルを改善して利用者であるJT様に結果やそこに至るプロセスを理解しやすくするとともに、AI活用を商品の価値提案の内容分析やWebサイト上における最適なブランドのリコメンド機能の提供などに横展開していく予定です。
JT様の事例は、既に蓄積しているデータ活用の重要性を示していると言えます。データがあったとしても、データを何にどのように活用するのかを関係者が理解していなければあまり意味がありません。DX推進に際しては、既存のデータやITシステムの評価や全体像の把握がきわめて重要なのです。
セガ様の課題は、ゲーム開発工程におけるテスト作業の負荷の大きさにありました。ゲームを実際にプレイしてバグの有無やゲームバランスなどをテストする作業は、開発工程では必要不可欠なものです。このテスト作業の負荷はとても大きく、特に期間限定のストーリーや新キャラクターなどの追加配信を必要とするモバイルデバイス向けのゲームにおけるテスト作業はとても大変で、その工数削減はセガ様にとって大きな課題でした。
セガ様は、2017年よりテスト作業を効率化・自動化するAIシステムの独自開発をスタートさせました。その中には、AIにゲームをプレイさせて結果を確認し、ゲームバランスの調整をサポートするシステムがありました。このシステムによってテストの効率化を実現できたものの、AIによる学習時間が多くかかる点を問題として抱えていました。キャラクター変更などの条件変更を加えるたびに学習しなければならず、改善の余地を大きく残していたのです。
こうした課題を受けて、ブレインパッドをパートナーとしてAIシステムの改善計画が進められました。機械学習の中でも、データがなくてもAIが行動し結果を観測できる「強化学習」を用いて、ゲームの攻略法を自ら編み出すAIシステムの開発がゴールとして設定されます。
その結果、技術的な障壁を乗り越え6ヵ月の時間をかけてゲーム開発支援AIシステムが完成しました。条件変更のたびにAIがゼロから攻略法を学習する必要がなくなり、より短時間でゲームバランスの調整を加えることが可能となったのです。
今後は、ブレインパッドのサポートのもとで、新AIシステムをテスト工程のみならずゲーム開発の業務プロセス内に実装する作業が進められています。
八千代エンジニヤリング様の重要な業務の一つに、河川のコンクリート護岸の点検・改修があります。洪水を始めとした災害対策として設置されているコンクリート護岸は、定期的に点検と改修を必要とします。
従来は人間による目視主体で劣化状況を点検していたのですが、設置時期や地域などによって整備の形式が異なるのに加え、点検や改修には熟練の技術が求められることから、手間やコストが膨大になっていました。また、当然ながら劣化状況の判断基準が属人的であり、担当者によってまちまちであることも課題でした。
ブレインパッドは、コンクリート護岸の撮影画像から劣化を検知するアプリケーションを構築しました。ディープラーニングを用いたアルゴリズム(ニューラルネットワークモデル)を実装しており、人手による点検と遜色ない精度を実現することに成功しています。その結果、現場での対応工数を1/5へ削減でき、さらに全区間の評価を行うことで人よりも高い精度の定量的な評価を可能としました。
このアプリケーションはクラウド上でWebアプリケーション化されているため、機械学習エンジニアでなくても日常的に利用できる環境になっています。今後は劣化検知の判定プロセスをシステム化するとともに、河川のコンクリート護岸以外の社会インフラ分野への展開も検討される予定です。
三井化学様では、運営する化学プラントにおける省エネルギー化が課題となっています。既にプラント内の必要蒸気量、電力の自家発電量、燃料コストをリアルタイムで監視するシステムを開発し、最適なプラントの運転手法を提示するシステムが運用されていましたが、次のステップとして電力や蒸気量の近未来予測がありました。
消費燃料を最適化して省エネルギー化を実現するためには、データを基に近未来に起こる電力や蒸気量の変動を予測し、最適な運転手法を事前に決定することが必要です。ブレインパッドは、三井化学様の中核工場である大阪工場において、稼働・非稼働データと蒸気の使用実績データの関係を分析・学習することにより、近未来の蒸気の需要量を予測するモデルを構築しました。
三井化学様では、このモデルを活用することで工場内に発生する蒸気ロスや過剰な燃料消費を抑制して省エネルギー化を実現するとともに、燃料、電力、給水等にかかるコストを最適化することを目指しています。
DXを実現するためには、データを分析してビジネスの意思決定に役立つ洞察を引き出すことが必要不可欠となっています。しかしながらデータ分析のためには統計学やプログラミングを始めとした幅広いスキルセットが求められます。また、分析結果の意味を理解してビジネスにつなげるためには、専門のデータサイエンティストだけではなく一般社員もデータ分析の基礎知識やノウハウを習得することが欠かせません。
三菱UFJ銀行様は、通貨取引のレコメンドや資金取引の予測など、過去のデータを役立てられる場面が存在することを認識しつつも、社員のデータ活用意識が高くないことから、担当者の経験や勘に依存する部分が多いという課題を抱えていました。これでは加速するFinTechの潮流を捉えることも困難ですし、業務効率化の妨げにもなります。
そのため、ブレインパッドの人材教育サービスを利用して、データ活用人材を全社的に育成する試みに着手しました。統計検定2級・3級の知識レベルをターゲットとして、事前にヒアリングした部署の業務内容から逆引きする形で必要なスキルを浮き彫りにし、eラーニングのコンテンツを作成しています。その後、その結果を受けて集合研修の内容を決めるというステップとしました。
eラーニングは2019年10月までの7ヵ月間で1500人が受講する人気コンテンツとなり、集合研修も予想以上の応募であったことから受講者を抽選で決めることになりました。研修によって三菱UFJ銀行様のデータ活用は活発化し、パブリッククラウド上にデータ活用の共通基盤を整備したことでデータ活用のPoCを開始した部門やレポーティング業務の改善に取り組む部門が出てきています。
今回ご紹介した事例は業界・業種もニーズも異なるものの、どの企業もAIやデータを活用した業務・ビジネスモデル変革への強い意思を持っていた点だけは共通しています。「AIを使ってなにかやろう」ではなく、「目前の業務課題を画期的に解決するには、AI/データをこのように活用できるはずだ」という形で、ビジョンや仮説を設定したうえで取り組むことが求められます。自社のDX推進の参考にしていただければ幸いです。
DXの成功事例については、こちらの記事も是非ご覧ください。
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