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顧客データを活用し、KGI達成に向けて定めたはずのKPIが業績に結びついていると断言できますか?本記事では、再現性高くKGIを達成することを目的としたKPIマネジメントの描き直し方について、具体例を交えてご紹介します。
※本記事は、【シリーズ】データの専門家による差別化のためのCRMの見直し方の第2回として、2023年10月17日にオンライン配信された、「<オンラインセミナー>KGI達成に向けたKPIマネジメントの描き直しとは?」の内容を記事用に再編集したものです。
連載記事
第1回 持続的な成長に向けたCRM全体像の描き直しとは?
第2回 KGI達成に向けたKPIマネジメントの描き直しとは?
第3回 KPI達成に向けた施策改善PDCAの描き直しとは?
株式会社ブレインパッドの竹野 雄尋と申します。外資系コンサルティング企業、AIベンチャー企業にてデータ活用による新規事業開発に従事後、2021年にブレインパッドに参画しました。現在は、消費者データを軸にした支援を中心にコンシューマーインダストリー領域のリードを務めています。
本記事は、データの専門家による差別化のためのCRMの見直し方と題したシリーズ企画で第2回目となります。
シリーズ第1回 持続的な成長に向けたCRM全体像の描き直しとは?でも触れましたが、CRM活動を始めて、施策を一通り実施し、効果検証を実施して顧客の反応を見ているものの、なかなか成果に結びつかないという方は多いのではないでしょうか。そして、CRM活動全体を整え、差別化に繋がる再現性ある活動がしたいと考えている方も多いかと思います。
そこで今回は、CRM活動における再現性の高いKGI達成を目的とした、KPIマネジメントの描き直し方についてお話しします。まずは、シリーズ第1回の振り返りです。
顧客ゴトをデータドリブンで捉え、差別化に繋げるためには、FACTから顧客理解を行う「データ資産化」、FACTに基づき顧客と会話する「データドリブンUX」、FACTから改善箇所を決める「全体診断」の3つを整える必要があります。
ただし、この3つを整えるにあたって陥りやすい課題があります。
例えばデータ資産化では、データが「バラバラ」で顧客理解が不十分な場合があります。この場合、顧客ゴトをデータ資産化し、繰り返し使えるように運用することが大切です。
またデータドリブンUXでは、企業の立場から「買って!買って」とだけ「エンエン(延々)」と伝えている場合があります。データに基づく顧客理解によって、再現性のあるユーザー体験を設計しなければなりません。
そして全体診断では、全体を俯瞰できるKPIがなく「ガチャガチャ」の状態になっている場合があります。データに基づく評価方法を定め、俯瞰した視点で改善運用を行う必要があります。
これらの課題を解決するために、私たちは短期・中期・長期のゴールを見据えて皆さまのCRM活動を支援しています。
このように、シリーズ第1回ではCRM活動の全体像についてお話ししました。第2回にあたる今回は、LTV&KPI(全体診断)を設定し、サービス全体の診断を整える部分についてより詳しくお話しします。
本記事をお読みの方には、KPIをすでに設定し、BIツールなどで顧客の見える化を進めている方もいらっしゃると思います。しかし、結果として業績に結びついていないケースも多いのではないでしょうか。
もちろん、マーケティングのみで業績が伸びるわけではありません。ただし、KPIを達成してもKGIに結びついていない場合は、KGI達成に向けたKPIの描き直しが必要です。
実際に「KPIを定めても、KGIとの紐づきがよくわからない」「KPIを定めても、数字を見ているだけで改善ができていない」といったコメントをよくお伺いします。
この問題を解決するには、“評価方法”と“改善活動”の2つを整えることが重要です。
“評価方法”と“改善活動”を整えるには、それぞれ3つの重要なポイントがあります。
まず、“評価方法”を整えるには、顧客軸での長期評価指標を作成することが大切です。ここでは、「コンテキスト価値」「サービス提供価値」「エンゲージメント」という3つのステップによって、指標を作成し整えます。
次に、“改善活動”を整えるには、数字を見るだけではなく、改善に向けた環境を整備することが大切です。ここでは、「データ」「業務プロセス&組織」「責任権限&評価」という3つのハードルを取り除く必要があります。
それぞれ詳しく解説します。
まず“評価方法”を整えるポイントについてです。「コンテキスト価値」「サービス提供価値」「エンゲージメント」の3つのステップで、全体の提供価値の測り方を整えます。
Step1の「コンテキスト価値」とは、顧客の背景から感じる価値のことです。
Step2の「サービス提供価値」は、顧客が商品やサービスを利用・経験して感じる「経験価値」と、一定期間でどの程度使うかを表す「継続価値」を掛け合わせて算出します。
Step3の「エンゲージメント」は、半年、1年、10年など、顧客が企業と付き合い続けたいと感じる関係性の価値のことです。
このように顧客の価値を評価しながら、LTV&KPI(全体診断)を設定していきます。重要なのは、“顧客が”どのような価値を感じているかという軸です。主語が企業にならないように注意します。
ここで、LTV&KPI(全体診断)設定の前提となるユニットエコノミクスとサービスドミナントロジックの考え方をご紹介します。
まず、顧客の価値はユニットエコノミクスを前提に評価します。ユニットエコノミクスとは、ユーザーあたりの経済性、つまり1ユーザーから得られる利益のことです。
ユニットエコノミクスは、LTV(顧客生涯価値)とCRC(ユーザーあたりのコスト)に分解できます。そして、LTVはマネタイズとエンゲージメントに、CRCはコストとユーザー数にさらに分解可能です。つまり、顧客生涯価値だけで評価せずユーザーあたりのコストも加味して評価することを前提とします。もちろん、ビジネスモデルに合わせて、それぞれ算出する必要があります。
前述のユニットエコノミクスに加えて、LTV&KPI(全体診断)設定には、サービスドミナントロジックも前提とします。サービスドミナントロジックとは、有形・無形にかかわらず、すべての経済・経営活動をサービスとして捉える考え方です。
サービスドミナントロジックにおいて、商品・サービスの価値は顧客が利用してはじめて生み出されます。つまり、価値は顧客と企業が一緒に生み出す、共創するものだと考えられているのです。補足ですが、サービスドミナントロジックの対照的な考え方としてグッズドミナントロジックがあります。グッズドミナントロジックは、価値を創出する主体は企業になります。売り手である企業が商品(グッズ)の価値(価格)を決定して顧客に提供・販売し、顧客がその対価(金額)を支払って商品を獲得することで「価値交換(所有権の移転)」が行われるという考え方です。
ここからは、ユニットエコノミクスとサービスドミナントロジックの考え方を前提に、LTVの設定方法について詳しくお話しします。
Step1の「コンテキスト価値」を測るには、価値を感じているユーザー支持層を整えます。
ここで重要なのは、今あるデータからユーザー支持層を区分し、測れるようにすることです。顧客情報がリッチであれば、顧客の特徴から支持層を区分できます。顧客情報が不十分な場合も、直近の利用や年間利用回数などで顧客をセグメント分けすることにより、支持層を区分します。
ここで、顧客情報がリッチな場合の具体例をご紹介します。
まずは、年齢、性別、既婚/未婚、居住地域、節約志向といった支持層の顧客特徴を確認します。そこに、購買回数、購買数量、購買拠点(直営/卸)、購買時間、購買場所(距離)といった支持層の購買特徴を掛け合わせることで、ユーザー支持層が明確化されます。
例えば、20代女性、昼間働いている会社員、嗜好品は節約しない、都心在住といった顧客特徴があるとします。こういった特徴の人たちは、年間何回以上購入するのか、プレミアム商品を何個以上購入するのか、直営店で購入するのか、最後に購入したのは直近3か月以内かといった購買特徴を把握することで、顧客の背景を理解できます。
ぜひ、サービス形態やビジネスモデルに合わせて考えてみてください。
Step2の「サービス提供価値」を測るには、顧客がサービスに感じている価値を整えます。
前述の通り、「サービス提供価値」は、顧客が商品やサービスを利用・経験して感じる「経験価値」と、一定期間でどの程度使うかを表す「継続価値」を掛け合わせて算出します。
例えば、20〜30代の忙しく働く女性が、時短ベネフィット、わくわく感、お得感といった「経験価値」を感じているとしましょう。この商品が年間でどの程度購買されているかという「継続価値」を掛け合わせることで、ターゲット顧客層の年間売上が算出できるのです。
また、時短ベネフィットを求めている、プレミアム商品を購入している、クーポンを頻繁に利用しているといった顧客理解をもとにセグメントを分け、それぞれの売上を単価と回数に分解することで、サービスの対価を測ることもできます。
このように、顧客がどのような価値を感じているかを分析しながら、顧客理解を進めていくことが大切です。
Step3の「エンゲージメント」を測るには、顧客との関係性を整えます。
顧客がどの程度の期間、企業と関係を継続しているかを測り、年間売上と掛け合わせることで、ターゲット顧客層の生涯売上推定値を算出可能です。
こちらは、お客様の分析を踏まえて、初年度からの稼働率の推移を確認した例です。年単位で確認するか、月単位で確認するかはビジネスモデルによって異なります。水準が落ち着くタイミングで範囲を指定し、関係性が継続している期間を分析します。
このように、3つのステップで価値を組み合わせることで、顧客視点のLTV&KPI(全体診断)ツリーが構築できるようになります。
例えば、働く女性のLTVは「一人当たりの年間売上額」と「継続利用年数」の掛け算で求められます。
「一人当たりの年間売上額」は、「さっぱり」「しっとり」「美白」など、顧客が得ているベネフィットごとに売上を分解できます。さらに、それぞれの売上を単価と利用回数に分解することも可能です。「継続利用年数」は、会員制度があれば「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」などに分解できるでしょう。
最終的には、Step1〜3で設定した評価指標を時系列で確認しながら、施策の良し悪しを判断できるようになります。
こちらの図では、良いポイントを青枠、悪いポイントを赤枠で囲んでいます。こうすることで、どこが良くなっていて、どこが悪くなっているのかがわかるようになります。そして、悪くなっている部分については、経験価値が下がっているのか、コミュニケーションが不足しているのか、ロイヤリティが下がっているのか、アクティブな顧客が減っているのかなど、顧客の価値ベースで課題を特定し、施策の改善を目指すことができます。
“評価方法”を整えるにあたって、陥りがちなケースが3つあります。
1つ目は、評価指標が単純な因数分解となっているケースです。売上を単価と回数に分けるだけでは、顧客が受け取る価値を測ることができません。
2つ目は、顧客エンゲージメントの観点が不足しているケースです。足元の売上だけを見ていては、顧客の生涯価値に繋がりません。
3つ目は、支持層の顧客像が不明瞭となっているケースです。データが不足していると、顧客がどのような背景でどのような価値を感じているのかの分析も曖昧になってしまいます。
この3つに注意しながら、“評価方法”を整えるところにぜひトライしてみてください。
次に、“改善活動”を整えるポイントについてです。LTV&KPI(全体診断)には、「データ」「業務プロセス&組織」「責任権限&評価」の3つの観点で「バラバラ」が存在しています。
まず「データ」に関しては、お客様のデータを取得するタイミングや、表現しているデータの断面がバラバラの場合があります。
また「業務プロセス&組織」に関しては、データが格納されている場所がバラバラの場合、データの集約に苦労するでしょう。また、部署間でデータの定義がバラバラで、同じ言葉を違う意味で使っている場合もあります。さらに、KPIのモニタリング後のプロセスがバラバラで、改善活動が実施できない場合や、同じ施策だけを繰り返してしまう場合も見受けられます。
そして「責任権限&評価」に関しては、目標数値の認識がバラバラで、KPIを設定できなかったり、設定できても部署間で認識にズレが生じたりするでしょう。また、KPIを達成したときの責任や評価対象部署がバラバラになっている場合もあります。
「責任権限&評価」については、特にテコ入れが難しい観点ですが、バラバラになっていないか確認し、まずは整理しておくことをおすすめします。
例えば、申込フォーム情報、購買情報、トラッキング、アンケートなどの各種データを統合し、KPIのデータマートを作って分析するとします。
このとき、取得データの時系列断面や、統合するタイミングがバラバラにならないように整える必要があります。
また、各データの参照先や、統合・解釈の定義、分析後のアクションもバラバラにならないよう整えておきましょう。
ここまで、“評価方法”と“改善活動”を整えるポイントについてお話ししました。どちらか一方だけでなく、両方を整えることで、KGI達成に向けて伸ばすポイント・課題を診断します。
最後に、LTV&KPI(全体診断)を踏まえたCRM活動の全体像についてお話しします。
左側の「戦略構築」は、CRM戦略をどのように構築し、どのように考え、どのようにPDCAを回していくかのサイクルを表しています。
右側の「施策実行」は、CRM戦略に基づいてどのように施策を実行し、どのように考え、どのようにPDCAを回していくかのサイクルを表しています。
「戦略構築」は中長期的に、「施策実行」は短期的に考えることが大切です。この2つのサイクルを回していくことで、差別化に繋がる再現性あるCRM活動を目指します。
今回は「戦略構築」の中でも、顧客体験・顧客育成、KPIマネジメントについて詳しくお話ししました。
KPIツリーを設定し、マーケティング施策を実行したのち、全体評価とロイヤリティ・ブランディングの評価を行います。さらに、市場分析・ポジショニング、競合分析を実施することで、改めて顧客体験・顧客育成の方針を確立させるというサイクルを回していくのです。
また、このサイクルをうまく回していくためには「施策実行」のサイクルも重要です。
「施策実行」では、KPIをもとにターゲットを選定し、メディアの予算配分を行います。その後、ターゲットとなる顧客を分析し、施策を実行したうえで、効果測定と要因分析を行います。そして、また「戦略構築」に戻るというサイクルを繰り返すのです。
施策実行(データドリブンUX)の詳細は、シリーズ第3回 KPI達成に向けた施策改善PDCAの描き直しとは?の記事でお話しします。
KPIマネジメントにおいては、“評価方法”と“改善活動”の2つを整えることが重要です。
“評価方法”を整えるには、「コンテキスト価値」「サービス提供価値」「エンゲージメント」の3つのステップで、顧客軸での長期評価指標を作成します。
“改善活動”を整えるには、「データ」「業務プロセス&組織」「責任権限&評価」という3つの観点でバラバラを取り除き、改善に向けた環境を整備します。
また、CRM活動の全体像としては、LTV&KPI(全体診断)を整えたうえで、「戦略構築」と「施策実行」のPDCAサイクルを回していくことが重要です。
今回の考え方を、お客様に一番近い方が主体的にご活用いただくことで、顧客が受け取る価値は確実に増加します。いろいろなハードルがあり、決して簡単ではありませんが、足元でできるところから諦めずに進めましょう。
KGI達成に向けたKPIマネジメントについてご相談がありましたら、ぜひブレインパッドにご連絡ください。
【シリーズ】データの専門家による差別化のためのCRMの見直し方
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【シリーズ】データの専門家による差別化のためのCRMの見直し方 第3回 KPI達成に向けた施策改善PDCAの描き直しとは?
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