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ブレインパッドは、社長の経営モットーである「お客様に価値を、社員には成長機会を」の実現に向けて、多様性を尊重した働き方を日々模索しています。今回、子育て体験VRという面白い取り組みを実施しましたので、ブログでご紹介します!
みなさんこんにちは。データエンジニアリング本部アナリティクスアプリケーション部の鷲見です。
普段はアプリケーション開発エンジニアとして、配送最適化を実現する業務アプリケーションの構築に携わっています。
コロナ禍が始まってからというもの、半永久的に変わってしまったものは数知れませんが、その中の一つが働き方です。突然始まった在宅勤務に窮屈さを感じたり、満員電車に揺られずに済む日々に予想外の快適さを覚えたりした方も少なくないと思います。リモートワークやオンラインミーティングはすっかり毎日の仕事に溶け込み、働き方はコロナ禍を境に大きく変化しました。
そういった環境の変化によってますます多様な働き方が求められている昨今、組織におけるダイバーシティ、ないしDEI(Diversity/多様性、Equity/平等性、Inclusion/インクルーシブ)は、組織自体の生産性やビジョンに関わるテーマであることが明らかになってきています。今回はブレインパッド社内で開催したVRでの子育て体験の様子をお伝えするとともに、ダイバーシティが組織やプロダクトに与える影響を考察してみたいと思います。
子育て体験VRとワークショップを通して、職場でのアンコンシャスバイアスへの気づきから相互理解を深めるというのが、今回の企画です。東京大学が開発・研究している調査に参加しました。
みなさんは、内閣府が推進しているムーンショット型研究開発制度という仕組みをご存知でしょうか?
少子高齢化や気候変動といった問題に対処すべく大胆なイノベーションを進めようという政府の研究推進制度で、その中の目標の一つとして、「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」することが掲げられています。今回の研究はこのプロジェクトの中の一つであり、さまざまな問題解決にVRを利用しようとする試みの一端を垣間見ることができました。また、VRを使った職場におけるアンコンシャスバイアスへの気づきは経済産業省も着目しており、この研究は経産省の委託調査の一環でもあります。
ワークショップではいくつかのグループに分かれて、子育てをする社員の立場を体験してみたり、そんな参加者を隣で観察したりしました。
自分の番を待つ間、VRヘッドセットを装着した参加者の眼前に広がるVRの映像をデスクトップ上でも拝見していたので、シナリオは想定済みでしたが、いざVRに入ってみると、シーンが移り変わるたびに先入観なくすっと感情移入できてしまうことに驚きました。参加者それぞれの素朴な反応に、その人の人柄やこれまでの子育て経験が反映されているようで、ただ観察しているだけでも非常に興味深い体験でした。
今回のワークショップはVRとしての面白さや奥深さを堪能できたのはもちろん、VRという共通の体験があったからこそ、意義深い時間になったのだと思います。
リモートでのミーティングが多いポストコロナ時代の働き方において、職場で私生活や家族について話す時間というのは意識的に作らなければなかなか生まれないものです。同じオフィス、同じ部署、同じ案件、同じミーティング、といった場や時間を共有していたとしても、仕事上の共通項でしか繋がっていない方々と仕事以外の話を始めるのは勇気がいると感じる方は少なくないでしょう。
今回はVRを通じて、子育てをしている社員やその上司の視点を参加者全員が共有したことで、「家で子育てをしているときは、まさしくこんな感じなんです」「私はこういう経験もしたことがある」「今までずっと思ってたんですけど・・・」という発言の飛び交うディスカッションを実現することができていました。私自身、初顔合わせのメンバーがほとんどとは思えないほど、参加者との親密度が深まったように感じました。
このワークショップの結果からは、多くの示唆を得ることができます。
形式的にアイスブレイクの時間を設ける、とりあえず出社してみる、というだけではなく、全員が発言できるようにブレイクアウトルームを作成したり、仕事以外の近況共有をテーマに設定した朝のスタンドアップミーティングをプロジェクト全員で行ったりするなど、意識的に場や時間の共通項をデザインしてあげることで、多様なメンバーとのディスカッションの質は大幅に向上する可能性があります。
組織における働き方という観点からも、こうした体験は深い意味を持っているかもしれません。VRやメタバースといった最新技術がいま注目を浴びている理由の一つとしては、毎日オフィスに足を運ぶことが難しい方々にとっても働きやすい環境を整備できるのではないか、という期待感が挙げられます。IT人材が恒常的に枯渇している日本のマーケットにおいて、多様な働き方の選択肢があることは、雇用される側にとって魅力的なだけでなく、雇用する側にとっても必須の施策になっていくでしょう。
さらに、2021年にFuture Forum by Slackが公開した報告書によれば、「リモートからフルタイムのオフィス勤務に戻る」ことを望む経営層の割合は、一般従業員の3倍近くに達するという報告もあり、経営層と従業員の望む働き方に大きなズレがあることがわかっています。したがって、従業員の本音を経営層に汲み上げるためにも、今回のようなワークショップは非常に有意義な場を提供できるように感じました。
ダイバーシティを尊重した組織の働き方を考えることは、単に働きやすい環境を作る、という建て前にとどまる話ではありません。組織のカルチャーがプロダクトにどういった影響を与えていくのかをエンジニア目線で簡単に考察して、本稿を締めたいと思います。
まず、デザイナーであれば誰しもが聞いたことがあるであろうものとして、ユニバーサルデザインという考え方があります。国籍や言語、年齢、性別などの垣根を越えた多くの人のための設計やデザインプロセスを指した言葉ですが、今日Webエンジニアに盛んに利用されているMaterial UIのようなJavaScriptライブラリは、Googleが策定したデザインシステムMaterial Designに則って作られています。このMaterial Designで利用されている何百種類というアイコンのデザインは、ユニバーサルデザインの考えのもと考案されたものです。
私たちの生活は、今やスマホなくして成り立ちません。iPhoneやAndroidを開発しているAppleやGoogleがユニバーサルデザインを土台としたUI(ユーザーインターフェース)を採用していくと、当然その中で動くモバイルアプリやWebアプリのデザインもそれに準じたより高いクオリティが求められるようになります。
では、どうしたらそのクオリティを実現できるのでしょうか? 私は、より多様な人々の目線に立ってプロダクトを作るためには、チームが多様であることが不可欠だと考えています。さまざまなカスタマーの要望を理解するための議論や意思決定がスムーズに行えるようになりますし、無意識的なバイアスに囚われる可能性も低くなります。
たとえば、ウェブアクセシビリティを考慮した開発をしようとした場合、スクリーンリーダーを使ったことがあるチームとそうでないチームとではスタートから大きく差が開くことは想像に難くありません。アクセシビリティはユーザビリティやインクルージョンとも重なる領域であり、Webマーケティングにおいてもだんだんと比重が大きくなっていくと予想されます。
機械学習の領域においても、インクルーシブなAIを推進する動きが広がってきています。Microsoftが公開している「In Pursuit of Inclusive AI」によれば、次のような5つのバイアスがあることを意識して、多様性のあるプロダクトやインクルーシブなチームを作り上げていくべきだと言います。
1. データセットによるバイアス
a.(例)学習過程で使われたデータが白人ばかりで、白人の識別が得意なモデルが出来上がる
2. 連想によるバイアス
a.(例)学習過程でモデルがパイロットは男性、客室乗務員は女性、という判断をするようになる
3. 自動化によるバイアス
a.(例)AIによる肌の美白アプリで、肌は白いほうが美しいという考え方が浸透する
4. 対話や交流によるバイアス
a.(例)人種・性別に関わる極端な考えを人為的に学習させたチャットボット
5. 確証・事実化によるバイアス
a.(例)カスタマーが過去に買った商品に基づいて商品を表示するレコメンドシステム
自分たちが作っているプロダクトは社会にどのような影響を与えるだろうか? そしてターゲットとなる人たちだけでなく、その周りの人々にどのような変化をもたらすだろうか? というふうにチームの一人一人が考えていくようになると、組織としても、DEIを広めていく第一歩が踏み出せるのではないかと思います。
ここまで、VRを用いた子育て体験ワークショップの様子と、さらに進んでエンジニア目線から見たDEIの重要性についてご紹介してきました。
今回のワークショップは子育てにテーマを絞った実験的なものでしたが、子育てに限らず、社内でのコミュニケーションのあり方や普段の働き方、さらには組織やチームでの開発などはどうあるべきか、という問題についてもヒントを与えてくれる格好の機会だったと思います。
私は入社前の数年間海外で生活していたので今でも痛感しますが、ダイバーシティに関する議論において、日本はまだまだ後進国だと思います。「この話やネタが通じる人たちと一緒だと安心する」という環境よりも、「どんな話でも受け止めてくれる器の広い人たち」と仕事できるほうがきっと誰もが気持ちよく働けると信じていますし、多様な人々に歓迎されるプロダクトは多様な社員を受け入れられる職場からこそ生み出されると思います。こういったささやかなワークショップ(とこの記事)を通じて、みなさんの視野を少しでも広げることができていたら幸いです。
本ワークショップの開催に向けてご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございました!
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