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※本記事は前編パートです。
全国有数の患者数と診療実績を誇る歯科病院であり、また専門性・先進性の高い研究・臨床を展開する臨床系講座と世界トップクラスの研究を推進する基礎系講座を併せ持つ「昭和大学歯学部」。同学部は、「至誠一貫」の精神のもと、真心と情熱を持ち、歯学を通して医療の発展と国民の健康と福祉に寄与することをモットーに掲げています。そのモットーを実現すべく、およそ10年前からAI活用の取り組みを模索してきましたが、その道のりは平たんではありませんでした。
本格的に動き始めたのは、昨年秋にブレインパッドとパートナー提携を経てからのこと。歯学部歯科矯正学講座・中納教授、芳賀准教授、関助教を迎え、歯学領域のAI活用における課題と現在地、および今後の展望についてお話を伺いました。
※後編はこちら
【後編】歯科領域のAI活用の推進で健康寿命延長につなげたい~短期的な収益にとらわれず長期的視点でバリューを生むことが産学連携の鍵
DOORS編集部(以下、DOORS) 昭和大学歯学部様と私たちブレインパッドは、昨年2023年の秋以降、共同研究プロジェクトに取り組んでいます。それぞれの自己紹介と今回のプロジェクトにおける役割を教えてください。
昭和大学・中納治久氏(以下、中納氏) 昭和大学歯学部歯科矯正学講座教授の中納です。本研究プロジェクトの発案者であり責任者です。
昭和大学・芳賀秀郷氏(以下、芳賀氏) 同講座の准教授である芳賀です。昭和大学側のプロジェクトマネージャーを務めています。
昭和大学・関美穂氏(以下、関氏) 同講座の助教の関です。今回のプロジェクトでは、アドバイザーとしてデータの抽出や収集を担当しています。
株式会社ブレインパッド・鵜飼武志(以下、鵜飼) ブレインパッドで主にヘルスケア業界をディレクションしている鵜飼です。AIおよびデータ活用をヘルスケア業界全体に広めていくために、1つでもユースケースを作れたらという想いでプロジェクトに取り組んでいます。
株式会社ブレインパッド・藤本海人(以下、藤本) 今回の研究プロジェクトに、ブレインパッド側のプロジェクトマネージャーとして関わっている藤本です。主に研究の方針策定やテーマ選定に携わっています。
株式会社ブレインパッド・飯田大希(以下、飯田) データサイエンティストの飯田です。主にプロジェクトマネージャーの藤本と連携しながら実働していました。また、技術調査やデモ画面のモックアップ作成なども担当しています。
株式会社ブレインパッド・千葉紀之(以下、千葉) データサイエンティストの千葉です。レビュアー兼アドバイザーとして参画しています。
DOORS さっそくですが、プロジェクトの概要を簡単に説明してください。
藤本 今回のプロジェクトは、昭和大学様と私たちブレインパッドの共同研究プロジェクトになっています。具体的には、昭和大学様が持っている歯科領域のデータ(例:レントゲン写真等)と、ブレインパッドが持つAI技術とを掛け合わせることで、何かしら新しい価値を生めないか模索しているところです。
DOORS 歯科領域のAI活用の現状と課題を教えてください。
中納氏 まず歯科領域のAI活用の現状としては、一部の大学等の研究機関でAI活用を進めているものの、実用化に至るまではもう少し時間がかかりそうという状況です。一方で、AIは注目されている領域のため多くの大学や研究機関が取り組んでいます。私たちのプロジェクトもその1つです。
AI活用の課題とは少し違うかもしれませんが、私が歯科領域で感じている課題が大きく2つあります。
1つが私たちが携わっている矯正歯科が一般的には「審美」のためのものと受け取られている点です。実際は「健康」に非常に関係ある領域なのです。したがって矯正歯科が子供や若い人だけではなくて、将来健康寿命の延長に役立つようにしたいと考えています。
もう1つが歯科領域の仕事の魅力が十分に伝わっていない点です。今回のAI技術のようにさまざまな先進的技術を使うことで、子供たちにとって歯科の仕事が魅力的な仕事だと啓発したいと思っています。
DOORS 歯科領域のAI活用が進むことで、患者様にとってはどのようなメリットがあるとお考えでしょうか。
中納氏 病気の「予防」や「早期発見」という点でメリットがあるのではないかと考えています。現在行われているAI研究のテーマは診断サポートが多いと思いますが、私たちが考えているのはそれだけではなく「予防」や「早期発見」にもつなげられないか、と考えています。
それ以外では、治療に関して過去のデータから他の患者さんと似た症例を発見し、適切な治療法を見出すサポートを施すこともメリットになると考えています。
最終的には、これらの取り組みを通じて健康寿命を延ばし、日本の医療費削減につなげたいと考えています。それが実現できていない現状が、一番の大きな問題だとも思っています。
DOORS 鵜飼さんは、中納先生と昭和大学様の取り組みについてどのように感じているのでしょうか。
鵜飼 チャレンジングなテーマに対しては、消極的な印象を持たれやすい医療業界で、中納先生のように新しい取り組みにチャレンジし、先進技術の活用方法を模索されている稀有(けう)な方と出会えたことをとても嬉しく思っています。
私たちは医療の専門家ではないですし、歯科領域に関しても素人ばかりですが、逆に素人目線だからこそ言えることもあろうかと思います。その上で他業界のユースケースをご紹介しながら、研究を形作っていくのが私たちのミッションだと考えています。
DOORS ブレインパッドとの共同研究を始めるきっかけを教えてください。
中納氏 AIの研究に関しては、10年ぐらい前からいろいろな企業を口説いたり、自前で画像解析をしたりしてきました。第3次AIブームが始まった頃かその少し前ぐらいからです。かなりの数のAI関連会社でプレゼンをしてきたのですが、当時はことごとく夢物語のように受け止められてしまい、門前払いも多かったんですよね。
その一連の流れを、昔からの知り合いに愚痴っぽく伝えたら、なんとその知り合いがブレインパッドに所属していまして(笑)。私のお話を真剣に聞いてくれて、それでブレインパッドとつながったとのでした。人と人とのつながりで、不思議なご縁をいただいたというのが正直なところです。
DOORS ようやく中納先生に時代が追いついたという感じですね。
中納氏 どちらかというと時代に取り残されていると感じます。自分が考えていたことが、他の大学や他の業界ではすでに始まっていたりとか、自分たちの子供世代がスマホネイティブで、話している言葉も私たちと変わってきていたりなど..あらゆる場面で取り残されていることを痛感しています。自分の価値観はすでに古くなっていて、スマホネイティブであればもっとすんなりと時代に合わせていけるのだろうなあ、と…。
DOORS たとえばどんな場面でしょうか。
中納氏 今の子供世代は、「プログラム」といった難しい言葉が自然に出てきます。また自分がスマホを使いこなせなければ、息子に渡して操作方法を教えてもらうこともあります。家族でもオンラインでの会話が普通に行われていて、そこで使われる言葉は私たちの世代とはかなり違うと感じます。
だから、若い世代が歯科領域に魅力を感じるためには、デジタルやAIの活用をもっと見出さなければなりません。そうすることで歯科領域も発展すると思うのです。
DOORS 昨年の10月にプレゼンをされたときには、ブレインパッドにどんな印象を持たれたのでしょうか。
中納氏 プレゼンの中身の話ではないですが、オフィスなどの環境面で自分たちとの違いを感じました。このような先進的な場所で働きたいと思いつつ、若い人たちが歯医者になりたいと思ってもらうために、まずは環境的な取っ掛かりが必要なのだろうと感じました。私たちはとても狭い世界の中で日々過ごしていますが、もっと外に目を向けた方がよいとも思いました。
DOORS 当時、多くの企業から「門前払いされた」とありましたが、たとえばどのようなことを言われたのですか。
中納氏 「需要がないので収益が見込めない」と言われました。プロジェクトを開始したパートナーもいましたが、途中で打ち切りになることがほとんどです。だからブレインパッドでプレゼンをしたときも、「研究費を持っていないので経済的にご迷惑をかけてしまう。それでも一緒に進めていただけますか。」と正直に申しました。この時もまた、門前払いは覚悟していました。
DOORS 基本的に予算がないことを知った上、過去に歯科領域のAI活用案件もなかった中で、ブレインパッドはなぜ共同研究を決意したのでしょうか。
鵜飼 短期的な収益や持ち出しコストの回避を重視すれば、プロジェクト開始は困難でした。しかし私個人の考えも含まれますが、医療・介護・教育などの領域は日本を支えるインフラだと思うので、これらの領域のデータ活用を活性化することは「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」というパーパスを持つブレインパッドにも適合すると考えました。社会的な意義が高い領域に対してパーパス・ミッションに基づき活動を行なえることは、中長期的な企業価値の向上にも貢献すると信じているので、推進したいと決意したのです。
その上で気を付けたいことは、「良い取り組みだからといって自己満足で終えてはいけない」ということです。成果を対外的に発信していくとか、何かを形作って世の中に広めていかなければならないという使命は、強く意識しています。
DOORS ブレインパッドの経営サイドの反応はどうだったのでしょう。
鵜飼 今お話しした思考や信念をはっきりと伝えたので、全員が背中を押してくれました。アカデミア系に関心があったり、産学連携に興味があったりする社員が多いので、そのような社員への良い刺激になるのではないかと、ポジティブな意見ももらいました。チャレンジすることに対して寛容な点も、ブレインパッドの大きな特徴だと思います。
DOORS 共同研究を始めるにあたってどのような体制を組まれたのでしょうか。
中納氏 まず、准教授である芳賀に声をかけました。一方、関と私は埋伏歯の研究にずっと取り組んできました。埋伏歯とは、歯が骨の中に埋まっているものです。埋伏歯の研究をしていく中で、発見が遅れて歯が駄目になった症例を数多く見ていて、AIの活用で早期発見につなげたいと考えていたのです。そこで、関にもプロジェクトに入ってもらいました。
この3人で始めて、今はもう1人、開業医のメンバーもいます。その人はデータ収集と分類を担当しています。博士論文を書きたいということで研究プロジェクトに参加しました。開業医なので本日は参加できません。今後は、大学院生も巻き込んで、あと2名ぐらいメンバーを増やしたいと考えています。
DOORS ブレインパッド側はどういう体制ですか。
藤本 私がプロジェクトマネージャーで、飯田がメンバーです。通常はプロジェクトメンバーは会社からアサインするのですが、今回はアカデミア領域に関心があるメンバーを募りました。それに手を挙げてくれたのが飯田でした。実際に大学時代に研究で似たようなデータを扱っていたのです。
DOORS どういう研究ですか。
飯田 りんごの品質管理に関する研究を行っていました。歯科領域では歯の状態を把握するためにX線CT検査をすると思われますが、私も食品の状態を把握するためにX線CTを用いていました。そのような経緯の中、社内で本研究の公募があり、これまでの経験を活かせるだろう!と思い、手を挙げました。
DOORS 千葉さんはどのような関わりですか。
千葉 歯科領域や医療領域のAI活用では、画像や3次元データ解析が肝になります。私の専門領域がそれだったというのと、3年ほど前に歯科系企業の案件に少し関わったことがあり、ある程度の専門用語も知っていたため、プロジェクトにアサインされました。
DOORS 続きまして共同研究の内容に入っていきたいと思います。共同研究ではどのようなテーマを設定されたのでしょうか。
中納氏 やりたいテーマは正直たくさんあったのですが、その中で私たちが持っているデータをすぐに活用できるという観点で提案してくれたのが、マルチモーダルAIによる検索システムと、埋伏歯早期発見システムの開発でした。
DOORS マルチモーダルについて説明をお願いします。
藤本 マルチモーダルAIは、複数の形式のデータを扱えるAIです。従来のAIは画像だけやテキストだけなど、基本的に1つの入力形式に限られていますが、マルチモーダルAIは複数の入力形式を扱うことができます。
医療領域では画像データやテキストデータなど様々な種類のデータがあるので、それらを同等に扱えると便利です。歯科領域で言えば、患者様に関する情報をカルテという形式で持っていたり、症例を表すようなテキストがあったり、レントゲン写真や口腔(こうくう)内写真という画像データがあったりします。
マルチモーダルAIを使うと、たとえば「埋伏歯がある患者様」とテキストで検索した場合に、それに関連した形式の異なるデータ(画像など)を検索できたりします。
DOORS 過去データの検索は、これまではどうしていたのですか。
中納氏 画像を検索しようと思うと、何らかのラベルを付けておかないと検索できませんでした。ドクター全員がきちっとラベル付けをするかというと、そんなことありません。そうすると治療中はデータが患者さんのために有効活用されているのですが、治療が終わってしまうと「遺産」となって埋もれてしまうわけです。その遺産を活用できないかというのが、今回の研究の基本的なアイデアだったのですが、あらためてラベルを付けるのも大変な苦労を要するので、マルチモーダルAI活用の実現に動きました。
鵜飼 実は、以前弊社が漫画の編集者向けに開発したソリューションを歯科領域にも適用できるのでは、と検討した上のテーマ提案でした。このような、業界を越えたソリューション適用も今回の事例の興味深いところではないかと思っています。
漫画編集者は常に過去の数十~百を超えるコミックを、度々全部読み直し、毎回、設定やコマ割りを考えたり見直したりしているらしいのです。その過程をもっと効率化できないかと以前相談を受けたのですね。「見開きで敵を斬っているシーン」とか「女性が背中を向けていて、その向こうに敵がいる」といったざっくりとしたテキストで検索すると、該当する過去のコマ割りを全部出力できないか、というご要望でした。
それはすなわち、画像に意味を持たせて検索できるようにするという点で、今回の共同研究と大きな親和性があるのではと考えました。エンターテインメント業界と歯科領域は相容れないイメージがありますが、その結び付けの支援を私たちがさせてもらっていることに喜びを感じます。
DOORS 共同研究の鍵を握る技術的なアプローチが、まさにマルチモーダルなのでしょうか。
千葉 そうですが、もっと言うと、その基礎となっている技術が鍵だと思います。現在の第3次AIブームのAIは、大量のデータを集めて学習させることが必要でした。
近年、大量のデータで事前学習された多数のタスクに利用可能な基盤モデルと呼ばれる注目されています。多様な形式のデータを扱える基盤モデルは特に「マルチモーダル基盤モデル」と呼ばれます。基盤モデルは、適応したい領域に特化した比較的少ないデータでチューニングできるのが特徴であり、今回の技術的な鍵でもあります。大量のデータを1から用意して学習する必要がないわけですね。
そして、マニアックだと考えていた歯科領域のレントゲン画像について、マルチモーダル基盤モデルを利用してみたところ、ある程度レントゲン画像の内容を認識できていることを確認しています。
こちらについては、正解となる情報を付与した画像データをマルチモーダル基盤モデルに読み込ませることで、認識精度を向上できないか検討しています。
DOORS いわゆる追加学習とかファインチューニングとか言われる学習で、歯科領域に特化したかなり精度の高いモデルが作れるということで、そこが今回の技術的アプローチの核心なのですね。
DOORS マルチモーダルAIや追加学習といった技術は、以前に検討・実施したご経緯はあったのでしょうか。
中納氏 近いことは考えましたが、活用したことはありません。
過去に実施したAI関連の取り組みで言うと、そのうちの1つにアライナー矯正があります。マウスピース矯正とも言いますが、これについてはデジタル活用がかなり進んでいます。すでに3次元データの歯の模型から半自動的に抽出して、マウスピースを作成する装置があります。10年ぐらい前までは、手作業で作ることが一般的でした。
当時私は、マウスピース作成の自動化をテーマに企業と共同研究をして、歯形のクラスタリングを手掛けたのです。しかし、24時間を要していたのがわずかに時間短縮できたくらいのインパクトだったのと、精度にも問題があったので実用化には至りませんでした。そこで打ち切りに。
とはいえ必要かつ需要ある技術であることは間違いなかったので、他の企業が開発に着手し、現在ではデジタル技術を応用して半自動でできるようになり、かなりの時短を達成しています。
もう1つは埋伏歯の研究の一環で、口腔の写真データから埋伏歯を自動的に抽出する研究をしていました。これは共同研究プロジェクトのタスクの1つとしても挙がっていますが、スマホで撮影した写真から埋伏歯の存在を推察できないかというものです。これもパートナー企業の収益につながらず、途中でストップしました。
DOORS 医療領域のAI活用は、人の問題や資金・収益の問題で打ち切りになるケースが割とあるのですね。医療領域は潤沢なイメージがあるので、意外でした。
鵜飼 恐らくですが、断固たる意志のある人が先頭に立って引っ張らないと、プロジェクトが進みづらい傾向があると思います。更に、その意志のある人が諸事情でいなくなると、プロジェクトも停滞・打ち切りになることは結構多いのですね。
中納氏 もう1つ取り組んでいたテーマがありました。これは学会で賞もいただいたものです。歯の一部から全体像を推測するというテーマでした。決して多くないデータから、なかなかの精度が出たのです。もっとデータを集めて精度を高めようという段階で、そのプロジェクトも打ち切りとなりました。欠けた歯を作り直す際に活用できる技術なので、続けたかったのですが…。
DOORS 現在の共同研究の成果で予算が出るようになれば、再開したいとお考えですか。
中納氏 はい。絶対に世の中に歓迎されると私は思っているので、再開するためにもコツコツと実績を積み上げていきたいと考えています。
DOORS こうした最新技術を歯科領域に応用することが、これまでは難しかったのはなぜなのでしょうか。
千葉 大きく4つの原因があると思っています。1つは中納先生もおっしゃっている通り、お金の問題が大きいです。
2つ目はデータの問題です。基盤モデルをベースにすればデータ量は少なくてよいと言いましたが、そもそものデータが少ない上に、AI向けに整備がされていません。
3つ目は、医療系における根本的な問題として、データが個人情報の塊(かたまり)ということがあります。それも機微の高い「要配慮情報」が多い。そんなものを企業のような外部組織に出せるのかという話があって、慎重な医療組織からはそもそもデータがもらえません。
4つ目は人材の問題です。一部の歯科領域でしかAI活用は取り組まれていないのが実情なので、歯科領域におけるAI活用人材はなかなか見つからないと思っています。
今回の共同研究プロジェクトでは、この4つの原因がある程度クリアされていると思っています。今後中納先生が課題と感じていることが徐々に解決されていけば、さらに進めやすくなっていくでしょう。
いずれにしても、ようやく歯科領域で最新のAI技術を適用できる環境が整ってきた、というのが現在地だと思います。
DOORS 中納先生が長年追われていた夢や目標が、ようやく現実味を帯びてきたと言ってよいかと思いますが、共同研究自体は今どのようなフェーズに入っているのでしょうか。
藤本 テーマ選定と技術的な事前検証は終了しています。ようやく実データが使えるようになるので、PoCの実作業にこれから着手します。基盤モデルに昭和大学様のデータを付加し、実際に精度が上がるのか等を検証していく予定です。
中納氏 週に1回必ず対面でミーティングをして、タスクを粛々とこなしている状況です。
ハードルが高かったのは、千葉さんが言うように個人情報を提供することでした。昭和大学の倫理委員会で、それがようやく先週通りまして、かなり制約はありますが、実データの活用ができるようになりました。これは非常に大きな前進です。
デジタルでの研究はいずれ必ず取り組むことになると確信していたので、2004年から毎年、およそ1,000人の患者さんの初診と治療後の診療で用いた検査データを保存してきました。3次元データに関しても2010年ぐらいからずっと集めています。コーンビームCTという、歯科用に開発された被爆が少ないCTで撮影した画像を3次元データに変換するのが昭和大学の強みなのですが、そのデータもずっと集めているのです。
DOORS 研究開発のフェーズとしては、どこまで進んでいるのでしょうか。
千葉 今後は大学院生もプロジェクトに参入いただくことになるので、研究フェーズとしては論文の作成という段階にも進んでいきます。
※後編へ続く:【後編】歯科領域のAI活用の推進で健康寿命延長につなげたい~短期的な収益にとらわれず長期的視点でバリューを生むことが産学連携の鍵
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