DOORS DX

ベストなDXへの入り口が
見つかるメディア

バズワードに流されないAI活用 - ビジネスで勝ち残るために、人工知能をAdaptする -

公開日
2020.11.01
更新日
2024.03.14

こんにちは。アナリティクスサービス本部の多根です。

3月8日(水)にデータマネジメント2017(主催:一般社団法人 日本データマネジメント・コンソーシアム)が東京 目黒雅叙園で開催され、当社取締役 アナリティクスサービス本部 本部長の塩澤 洋一郎が講演をさせていただきました。本カンファレンスは「データが繋ぐ共創社会」を副題とし、データを活用した共創・コラボレーションを通して実現するイノベーションをテーマとしています。人工知能をはじめ、IoTやFinTechなど最新技術に関心の高いユーザー企業の方々が多数参加し、どのセッションもほぼ満席の状態で、カンファレンスは大盛況でした。

当セッションには100名を超える参加者が集まりました

塩澤の講演は、「バズワードに流されないAI活用、データ活用の実際について ~データ活用プロジェクトの現状と展望 事例を交えてご紹介~」と題し、注目を集める人工知能(AI)について、技術のトレンドを踏まえた本質的な人工知能のビジネス活用のポイントと、実際の適用事例をご紹介しました。
本ブログでは、その講演内容を抜粋してお伝えします。

当社取締役 アナリティクスサービス本部 本部長 塩澤 洋一郎

■現在の人工知能ブームについて

近年、一般的なビジネス誌においても人工知能に関連した記事が多く掲載されるようになってきましたが、人工知能の定義は様々です。講演時の内容を前提に本ブログでは、人工知能を、“データを与えることで知的な動作をし、疑問に答えたり、判断や予測をしたりするプロセスまたは機械”と定義します。

人工知能は、東京大学の松尾豊先生の定義をお借りすると、その技術的な特徴からレベル1~4に分類することができます。

<レベル1>
コーディングされたプログラムで制御されるもの。これは人間の思考、手続きをプログラム化したもので同じインプットを与えれば人間と同じ答えを出します。
<レベル2>
ルールを人間が覚えさせることによって推論や探索を行う人工知能です。
<レベル3、4>
機械学習やディープラーニングの技術を使ってルール自体をコンピュータが学習することができ、画像データから猫を判別したり、碁の勝負で人間に勝ったなどと話題も豊富な最先端の領域です。

ビッグデータ、ハードウェアの進化、先進的な機械学習技術の3つのドライバーにより、今まさに第3次人工知能ブームとなっています。

現在、最も注目され、研究・開発が急速に進んでいる人工知能はレベル3、4ではありますが、レベル2の人工知能もルールベースではありながらビッグデータから新たな知見を見出すことができたり、ハードウェアの進化により安く高速な計算機が活用できるようになったことで処理時間が短縮され、様々なビジネスに活用できるようになったことで、今改めて評価されています。

■人工知能のビジネス適用例

次に、当社が取り組んだ2つの事例を、人工知能のレベルとあわせてご紹介しました。

<人工知能レベル2> 組み合わせ最適化計算による配車最適化
日次の配送指示に基づき、最適な配車パターンを検討する事例では、人間が作成する配車パターンよりもコスト効率の良い組み合わせをスピーディに提示することができました。この事例では、人間が行っていた手順を覚えさせたのではなく、ビジネス上満たす必要があるルールを人工知能に教え、コンピュータはそのルールを満たす最適な配車パターンを算出しています。人間が教えたルールに従ってコスト最適化を行っているため人間が理解できない結果を出すことはありません。レベル2とは言うものの、その特徴を理解し、適所に利用することでまだまだ価値を十分に発揮できる人工知能です。

<人工知能レベル4> ディープラーニングによる良品・不良品判別
ディープラーニングを用いた画像解析で生産ラインを流れる製品の良品・不良品を判別する事例では、大量のサンプル画像をコンピュータに学習させることで、良品・不良品を見分けるルール(特徴)をコンピュータが自ら発見、学習します。これはコンピュータが良品と不良品を区別する特徴量を自ら学習しており、ルールを人間が教えていないことがポイントです。コンピュータは一定精度で持続的に業務を継続することができますし、ヒトの場合は人数に応じたトレーニング期間や費用がかかるのに対し、学習させた人工知能はクラウドで共有したり、他のシステムにコピーすることができます。これは、今まで人間を前提としていた業務の設計方法が根本的に変わることを意味し、ビジネスの投資対効果や展開スピードを劇的に変える可能性があります。

■ビジネス適用プロジェクトの成功要因

人工知能はデータを投入すればビジネスの成果や知見がすぐに出ると思われがちですが、多くの人工知能はデータを使って学習させなければなりません。また、目的によって使用する技術が異なるため、技術を組み合わせて使うことも多く、事前にグランドデザインをし、PoC(Proof of Concept:実ビジネス投入前の効果検証)を行ってから本格的な横展開を図る必要があります。以下に、4つのフェーズを設定した人工知能プロジェクトの進め方をご紹介します。

Phase1(構想策定):領域を見定め、全体を設計する。
Phase2(PoC):トライアルで人工知能をトレーニング、実験環境で実行して検証する。
Phase3(システム開発と適用):システムを開発し、実地検証および課題の解決を行う。
Phase4(運用と横展開):他の業務やグループ企業などへ横展開。学習に利用できるデータが増えるため、継続的な改善とセットと考えることが重要。

さらに、人工知能を作るよりも活用する、適用する、つまりAdaptするためにはどうすればよいかについて、プロジェクトの成功要因を“Adapters”というキーワードを用いてご紹介しました。このように、青写真レベルでもいいので、まず全体像を描いてみることが重要です。

■まとめ

講演の最後に塩澤は、
「人工知能は、ビジネスのどこに、どのように使うか、を設計することが重要です。現在は人工知能が出す結果を人間が見て判断し、ビジネスへ運用するような使い方もまだまだ多いですが、将来的には人工知能のアウトプットをそのまま使用する、つまりデータがビジネスとプロセスに直結することが当たり前のようになってくると思います。システムは人工知能を載せやすく、また人工知能をバージョンアップしやすいより疎結合な設計がさらに求められるでしょう。このようにビジネス、システム、データ分析、人工知能を同時併行で考えることが当たり前になり、ビジネスの勝ち残りのためにアナリティクスとエンジニアリングの融合がさらに求められることになるでしょう。」
と今後の展望を示して講演を締めくくりました。

会場の参加者からは「人工知能の違いの説明がわかりやすかった」「レベル2の再評価が興味深かった」「プロジェクトの進め方が理解できた」など、講演内容について高い評価をいただきました。


このページをシェアする

株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

メールマガジン

Mail Magazine