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2023年7月、ブレインパッドは組織体制を大幅に見直し、インダストリーカットのユニットとソリューションカットのユニットが交差する、マトリクス型組織に生まれ変わりました。
ブレインパッドはこれまで、データ活用のバリューチェーンを網羅するソリューションを有し、データ活用支援において確たる地位を築いてきました。この組織再編において、各ソリューション・ケイパビリティを再定義し、お客様の課題解決によりクイックかつ的確に対応できる態勢を整えています。
今回、各ソリューションユニット長が一堂に会して、それぞれのユニットの役割と、それらの連携について座談会形式で語ってもらいました。データ活用のさまざまなソリューションを展開するブレインパッドにおいて、ソリューションユニットを統括する常務執行役員 CSO 安良岡の進行でお届けします。
株式会社ブレインパッド・安良岡史行(以下、安良岡) ブレインパッドでは、昨年の7月からマトリクス組織体制になりました(下図)。それまでは本部制で、ビジネス部門、データサイエンス部門、データエンジニアリング部門、プロダクト部門という形に分かれていました。それらを発展的に継承してソリューションユニットとして再編成し、マトリクス組織の横軸に位置づけています。
それでは、各ソリューションユニットについて、ユニット長の皆さんに聞いていきたいと思います。
株式会社ブレインパッド・押川幹樹(以下、押川) アナリティクスコンサルティングユニットは、データ活用コンサルタントとデータサイエンティストが別々の本部に所属していたのを1つに統合したユニットです。データ活用のコンサルテーションにおいて、データサイエンティストとコンサルタントの仕事の境界は、実はあいまいでした。ならば1つの組織にしたほうより大きな価値提供ができるということで、1つのユニットにまとめたというのが設立の背景になります。
まずコンサルタントがクライアントのデータ活用における戦略やテーマ、進め方をざっくりと描き、方向性を示します。それに基づいてデータサイエンティストがデータ分析の実行または支援につなげるのですが、どこかでばっさりと入れ替わるのではなく、グラデーションしながらつながっていく形になります。というのはデータ分析は一本道ではなく、トライアンドエラーを繰り返しながら、コンサルタントとデータサイエンティストの間を行きつ戻りつするからです。
安良岡 ACユニット副統括の原さん、コンサルタントとデータサイエンティストを1つのユニットに統合して良かった点やあるべき姿について実感ベースで教えてもらえますか。
株式会社ブレインパッド・原真一郎(以下、原) ユニットを統合したこと、データサイエンティストとコンサルタントの距離が近くなり、コミュニケーションが以前より取りやすくなりました。お互いのことを理解しやすくなり、仕事もやりやすくなったと言えます。
またキャリアパスにも変化が生まれています。これまでは、コンサルタントだったらコンサルテーションを極めていく、データサイエンティストだったらデータサイエンスを極めていくのが一般的でした。しかし社会の流れを見るに、単一のキャリアやスキルだけでは生き残りにくくなっていると考えています。今回一つのユニットに統合したことで、データサイエンティストとコンサルタントが相互に影響し合い、スキル面でお互いの領域にはみ出してプラスアルファの能力を身にけられるようになりました。このように、人材育成の観点でも効果が出ていると感じています。
安良岡 コンサルタントとデータサイエンティストがコラボレーションした直近の事例はありますか。
押川 お客様と一緒にDXを進めましょうということで、ビジネス的な観点でもテクニカルな観点でもお客様と一緒に議論しているプロジェクトがあります。データサイエンティストのプロジェクトマネージャーがジュニア・コンサルタントを指導し、さらにシニア・コンサルタントがその上位でスーパーバイズするといった混成チームを組みました。補完関係がうまくはまっていて、お客様に対してより高い価値を提供できていると聞いています。
安良岡 他社ではあまりやれていないことだという気がします。
押川 そうですね。テクノロジーに目が向いていないコンサルタントもたくさんいるし、ビジネスに目が向いていないデータサイエンティストもたくさんいます。しかし我々のデータサインティストやコンサルタントは、お互いに対して興味や関心を持っている人間が多いのです。したがってコンサルタントもデータテクノロジーに対してある程度の知識がありますし、データサイエンティストもビジネス的なコンテキストの中で議論を進めてきた経験がかなりあります。そこに強みがあるように思います。
原 一般的には、コンサルタントとデータサイエンティストは水と油と思われがちです。しかし押川さんが言うように、お互いの仕事や考え方に対して興味を持っている人たちがACユニットには数多く在籍しており、さらなるシナジーが起こる下地は十分あるのではないかと感じています
安良岡 次にデータエンジニアリング(DE)ユニットの秦さん、ユニットの紹介をお願いします。
ブレインパッド株式会社・秦健浩(以下、秦) データエンジニアリング、特にSIビジネスに注力した領域を統括している秦です。これまでと大きく変わったところは、機械学習エンジニアがジョインしたことです。以前は我々がデータを使えるようにしていき、使えるようになったデータを分析官が分析していくという、大きくこの2つに分かれていました。このたび機械学習エンジニアが加わったことによって、我々のユニットで機械学習モデルが作れるようになり、作ったモデルをアプリケーションとしてシステムに実装できるようになりました。またそれを動かすための基盤を構築することもできるという形で、我々のユニットで一気通貫にやれるようになりました。以前よりも簡単なコミュニケーションで目的のシステムを開発できるようになったということです。
またACユニットと同様に、エンジニアもエンジニアの仕事のみでは高い価値を生み出せません。ブレインパッドではデータエンジニアという職種を設定し、新卒でも採用しているのですが、実はデータエンジニアという枠では採用しておらず、ITコンサルタントとして採用しています。その理由は、データエンジニアとしての技術だけではなく、ビジネス思考も持ち合わせる必要があるからです。
上流から下流まで一気通貫で支援し、高い価値を生むためには、開発ができるだけではだめです。コンサルタントやデータサイエンティストが言っていることを理解しながら、目的を実現するためのシステムを作る役割を担う必要があります。コンサルタントほどのビジネス思考は必要ないとしても、それをバランスよく身につけていく必要があるユニットなのです。
安良岡 ブレインパッドでは、お客様から仕様がおりてきて、それに沿ってものづくりができればいいというような案件はまずありませんので、とても大事なことをおっしゃっていると思います。
秦 たとえばマーケティングだったらマーケティングでお客様の業務をしっかり理解して、プラスアルファとして経営まで視座を高めた会話ができるようになれば、SIerとは違った観点でシステム化ができます。「現時点での正解はこの形かもしれないけれども、こういう計画をお持ちで、このように成長をしていきたいと考えておられるのであれば、こうしたほうがいいですよね」と言えることが大事です。そこまで含めて考えられるところが我々の強みです。
安良岡 続いて、トランスフォーメーション(TF)ユニットについて佐藤さんからお願いします。
ブレインパッド株式会社・佐藤洋行(以下、佐藤) 私が担当しているトランスフォーメーションユニットは、人材の幅が広いユニットです。
データ活用人材育成だと、これまで実施してきた公開講座や企業研修を実施する人材が集まっています。顧客接点自動化やデータ活用自動化ではマーケティングオートメーションやパーソナライズレコメンデーションを実現するための弊社プロダクトの活用支援や、お客様のデータ基盤をマーケティングに活用するための支援をする人材がいます。さらに電通と作ったジョイントベンチャーの電通クロスブレインの出向メンバーも私のユニットに所属していて、彼らはクライアント企業のマーケティングデータ活用全般を支援するので、このサービスフロー全体に関わっていると言えます。
ここまで多様な人材が同じユニットにいる理由は、マーケティングに関するテクノロジーがきわめて複雑に組み合わさっているからです。この複雑さがマーケターを非常に多忙にしている原因でして、そこを効率的に運用できている会社は少ないのです。支援するブレインパッドも同様で、これまでは複数の本部からさまざまなスキルを持った人材が、個々のクライアントに別々にサービスを提供してきました。それを1つのユニットにまとめることによって、高効率な運用の実現をねらっています。現時点では、そのねらいを実現するために、複雑化したデジタルマーケティングの運用を効率化する方法を全ユニットメンバーで考えているところです。
安良岡 ではXaaSユニットについて、山崎さんからお願いします。
ブレインパッド株式会社・山崎清仁(以下、山崎) きちんとデータ活用ができる社会を作ることが、ブレインパッド創立の理念でした。特にデータが必要で、かつ具体的な活用方法もある程度見えていた領域として、マーケティング領域を主に手掛けてきた歴史があったと理解しています。その取り組みの中でRtoasterをはじめとする、マーケティング関連の自社プロダクトが生まれました。
一方でデータサイエンティストを中心とするデータ分析サービスがあり、ブレインパッドとしてはプロダクトと分析サービスの大きく2本の柱がありましたが、ここにきてソリューション・サービスフローに沿った形でプロダクトも見直していかないければならないというのが今のブレインパッドの課題であり、その解決のために組織変更したと考えています。
これまでの話を受けてお話しすると、我々はお客様のデータ活用の課題を解決するために一生懸命汗をかいています。そうした中で、お客様ごとにデータ活用の成熟度には差ができているように感じています。以前に比べて、我々が支援しているお客様の成熟度は上がっており、お客様が内製化を進め始めています。そのようなお客様に対しては、我々のアナリティクスコンサルティングのメンバーが支援し続けるのではなくて、その代わりになるツールが課題を解決し、お客様が運用するという姿を目指していくべきだと考えています。その1つとして、データエンジニアリングがSIとして、お客様のシステムやデータ基盤を構築して、それをお客様で運用してもらう事もありますし、我々が提供するプロダクトを使っていただくという事もあると思います。XaaSユニットではお客様のデータ活用の進化に伴い、最終的にお客様が楽になるところを目指せばいいと考えています。
安良岡 プロダクトを自社で持っていることは、お客様に価値提供するにあたってかなり大きな強みだと思います。それについて山崎さんの想いや考えを伺っていいですか。
山崎 仕入販売をしないと決めているわけではないので、たとえばトランスフォーメーションユニットがこういうツールの組み合わせが必要だと言えば、それを調達してくることはやぶさかではありません。ただ核になる重要な機能は自社開発のプロダクトとして取り組んでいきたいという思いがあります。
サイトにタグを入れれば簡単にデータ収集ができ、その裏側でレコメンドもできるRtoasterは、市場で一定の価値が認められています。そのようなプロダクトを自社で作れて、提供できていることはやはり大きな強みになっており、同じような核になるプロダクトを今後も作っていかなければならないと思っています。
安良岡 各ユニットの紹介が終わりましたので、ソリューションユニット全体の取り組みについて考えていきたいと思います。今、企業にデータ活用を根付かせるために共創型のアプローチが求められていると言われています。なぜでしょうか。
押川 これまでコンサルテーションでもデータ活用でも、単独のアプローチで問題が解決できていた時代もあったのですが、今はさまざまなものを重ね合わせて解決しなければならない事象が増えてきています。お客様のドメイン知識や業務の中で培われてきたノウハウ、ルールも組み入れながら、問題解決をしていかなければならなくなってきたということです。
簡単にパッと解けるような問題はほとんど残っていなくて、複雑な要素を考慮しながら解かなければならないときに、我々だけで出す解では足りません。お客様も一緒に汗をかきながら取り組むことで、より価値の高い解が出てくるのではないでしょうか。
そのためにお客様側が場に立てるようにTFユニットにトレーニングをしてもらって、お客様と我々の境い目を薄くしながらともに考えられる体制を作っていくということになるかなと思っています。
佐藤 話をマーケティングに限ると、もう1つかなり大きな要因だと思うのは、ユーザーに関するデータが爆発的に増えたということです。お客様にも膨大なデータをどう扱えばいいのかという知見がありません。しかし当然ながらお客様はずっと自社の製品やサービスについて一生懸命考えてきているわけで、それらについてはクライアント企業のみなさんに勝るものはありません。
一方で海外でもマーケティングは専門分化が進んでおり、日本でも同じようにマーケティングにおいて企画する人と実施・運用する人に大きく分かれています。分かれながらも全体的なことを一緒に考えなければならなくなってきているわけで、マーケティング分野では共創は当然の流れになっています。
安良岡 別に我々の力を借りなくても、お客様の中だけで共創もやってしまえばよいし、むしろやりたいと思うのではないかなと思うのです。しかし我々なりの価値があるからこそブレインパッドに依頼してくるのではないでしょうか。
ところで、各企業のデータ活用の現状について、秦さんはどのように感じていますか。
秦 データ活用が進んでいるところと進んでいないところが両極端になってきていると感じています。我々がターゲットにしているお客様については、DXやデータ活用に対して投資するだけの予算を持っている規模の大きい会社が多いです。ただ日本全体を考えたら、進んでいる会社・業界とそうでないところが明確に分かれている実感があります。
進展度合いに関わらず、我々DEユニットがプロフェッショナルサービスで解決していくようなところもあれば、XSユニットがプロダクトを使ってうまく対応できるところもあります。その両輪でブレインパッドは貢献できると考えています。ただ現在持っているソリューションだけですべてをカバーするのは難しく、日本全体に貢献するためには、さらにプラスアルファの武器が必要だろうと感じています。
安良岡 原さんは、データサイエンティストとして10年以上やってきています。入社当時と現在とでは、お客様からのオーダーも変化したと思うのですが。
原 私が入社したのは11年ぐらい前ですが、その頃はデータ分析どころかデータをためている会社さえほとんどない状況でした。集計や可視化だけで十分価値がある時代だったのです。ところが今はその程度のことならツールが自動でやってくれます。求められることの難易度がかなり高くなりました。
また、企業の中で分析業務を内製化していきたいという要望がどんどん高まっている実感もあります。我々データサイエンティスト自身が価値を出すだけではなく、お客様側のデータサイエンティストと協働しながら、かれらのスキルアップも図るといった複合的な役割も求められてきつつあります。求められることの内容や質も大きく変わっています。
安良岡 今回ACでデータサイエンティストがコンサルタントと同じユニットで働く意味も、データサイエンティストにさまざまなケーパビリティが求められるようになったからということでしょうね。
では山崎さん、プロダクトも市場もニーズも進化しているデータ活用の現状について、プロダクトの観点から一言お願いします。
山崎 データはたまってきたのだけれども使い方がわからない「ライト層」が今かなり出てきているのかなと感じます。データをためることがあたりまえになった中で、ではどう使おうかと悩んでいる会社が増えているということで、我々が活躍できる場がかなりあるはずです。ライト層をプロダクトで支援し、ビジネスを良くしていくのはこれからだと思っています。ライト層は今まで我々のターゲットでなかったセグメントなので、新規開拓のチャレンジをしていかなければと考えています。
安良岡 お客様との共創というテーマで考えを伺いました。続いてブレインパッド内部での共創について考えたいと思います。まずデータ活用コンサルタントがで果たしている役割や動き方について教えてください。
押川 どういうフォーメーションでお客様の課題を解決していけばよいかを考えるのが、データ活用コンサルタントの最初の役割となります。データ分析やシステム構築などはそれぞれプロフェッショナルに任せていくわけですが、進める中でお客様の業務がどう変わるのか・変わるべきかといった議論になったときには、薄く伴走する形で入っていきます。導入や開発が終わったら、その後の新しい戦略や戦術を練る必要があります。そこでまたデータ活用コンサルタントが再登場するイメージです。
安良岡 他のコンサルティング会社は構造は似ていても、コンサルタントはズバッと決めて、「あとはよろしく」といったフェーズ分けになっていることが多いと感じます。そこをブレインパッドは意識してうまく共創しようとしているわけですが、その際にコンサルタントとしてはどういうことを意識しているのでしょうか。
押川 広義のテクノロジーに対する知見をコンサルタントがある程度持っているという大きな前提があります。また他のプロフェッショナルに対する敬意が必要で、敬意があるがゆえに一緒に仕事をしているのだと思っています。それぞれの仕事がいかに難しくプロフェッショナリズムが必要なものかを認識したうえで、仕事をお願いし、お願いされる――この関係性は他社にないブレインパッドの強みではないでしょうか。それを感じられるがゆえにブレインパッドに中途入社する人が多いと感じます。また新卒でもそのような考えに共感できる人を採用し、そうなるように育成しています。
原 上流部分に関しては、データサイエンティストは専門ではないので、コンサルタントが入ってくれたおかげでより効率よく進められるようになりましたし、一緒に働くことで上流工程の知見を吸収できるようにもなっています。また案件全体をハンドリングしてくれるので、仕事自体がとてもやりやすくなりました。
安良岡 コンサルタントとの役割分担はどうしていますか。
原 ここからここまでがデータサイエンティストの役割、と明確に決めてはいないですね。具体的なデータの扱いや分析そのものについてはやはりデータサイエンティストが強いので、そこはデータサイエンティストがやることに決まってはいます。課題を分析に落とし込む設計部分や開発したシステムの運用方針に関しては、コンサルタントと適宜話をしながら、具体的な内容を詰めています。
安良岡 データエンジニアやクラウドエンジニアとの関わりや役割分担は、データサイエンティストから見るとどうなりますか。
原 我々が作ったモデルをシステム化するときに関わってくる人たちですが、そこもかなり役割がかぶっています。システムの使い勝手やデザインについては、コンサルタントやデータエンジニアと一緒に話をしていくことが多いです。またシステムにモデルを載せる上で必要となるリファクタリングについても一緒に打ち合わせながら考えます。関わる機会については、DXが流行りだしてから増えたと思います。
安良岡 秦さん。エンジニア目線で他ユニットとの共創について教えてもらえますか。
秦 データエンジニアは基本的にデータを提供する側だと思います。データを活用するための基盤作りなど、データを適切に使える環境を提供するのが最も大きな役割です。
また押川さんからも話があったように、データサイエンティストがモデルを作るのですが、システムに関しては安定して継続的に使えるようにしないといけません。品質の保証の仕方や可用性などの機能面以外も考慮して改めて実装する必要があります。リファクタリングなどもしながら、モデルをシステムに載せることも負けず劣らず大きな役割です。
データサイエンティスト側の要求やビジネス側の要求をしっかり理解しながら、この大きな2つの役割を果たさなければなりません。バリューチェーンでいえば、DEユニットは下流工程を主に担当にすることになりますが、上流側の意見をよく聞いて、それを理解した上でものづくりをすることになるので、そこにさまざまな共創が発生するというイメージですね。
安良岡 DEユニットにも「ITコンサルタント」がいますが、いかがでしょう。
秦 システム化のためにビジネスを言語化するのはかなり難しいことです。それがうまくいくかいかないかでシステムの品質が決まってきます。システムは作ったらOKではなく、ビジネスに価値をもたらすことが最も重要です。価値をもたらさないのならば、どんなにたいそうなものを作っても意味がなく、逆にチープなものでもお客様のビジネスが成長すれば意味があるのですよね。
そこをしっかり理解した上で、ふわふわした要件をコンサルタントとエンジニアが一緒になって、とことん突き詰めていく。その際にさまざまな共創が発生するのです。単に言われたことをまとめるだけではまったく要件定義ではなくて、その先にある潜在的なニーズや派生的な要件などの掘り起こしが必要です。そういった勘所を働かせるには、ふわっとしたところから解像度を高めていく力が絶対に必要になります。
安良岡 そうですね。データ基盤や分析基盤を我々と同じように構築できる会社はありますが、作った先のことあらかじめ考慮できている会社は少ないように感じます。。ブレインパッドは先をかなり意識しているので、できあがってから使ってもらえるシステムを提供できていると思うのです。
秦 私自身もSIerにいた期間がかなり長いので、SIerとの大きな違いを指摘すると、SIerの要件定義の相手は情報システム部門なのです。情報システム部門は、ビジネスサイドと話した結果から自分たちができる範囲のことを羅列するだけということが多い。その羅列した内容を聞き出すだけというのがSIerの要件定義です。したがってユーザー側が欲しいものを作れているかとなるとかなり不透明なのです。
一方でブレインパッドはビジネスサイドと直接対話しますし、その中にエンジニアも入っていきます。エンジニアが生の声を聞ける立ち位置にいるので、ビジネスをシステム化することがやりやすい。ただ先ほども言ったように簡単なことではないので、ビジネスを言語化できる人材が必要なのです。
安良岡 山崎さん、XaaSあるいはプロダクトの観点ではどうでしょうか。
山崎 DEユニットではお客様ごとのシステムを構築していきます。その中から他でも広く使えるところを抽出して、サービス化していくのがXaaSユニットの役割です。
Rtoasterをはじめプロダクトありきで使っていただき、お客様と共に成長していくのが現在のXaaSユニットのスタイルです。しかしお客様のデータ活用の成長過程を考えると、まずデータ活用が促され、それがあたりまえになり、継続するという流れになると思うのですが、あたりまえになった直後にXaaSユニットが登場するような形になればいいなと考えています。
そのためには、課題の抽出力が弱いと感じています。汎用化するためには個別を知らないとできないので、とにかくまず個別を知るために動かないといけない。お客様の1つ1つの悩みの中から汎用化されたものが出てきます。過去にそういう動きができていなかったという反省もあって、今やらないといけないというメッセージをメンバーには発信しています。それを他のユニットと連携しながら進めていきたいのです。
安良岡 TFユニットはまだまだこれから領域を広げていくところだと思うのですが、これからやろうとしているところは、一連のバリューチェーンを回すところでかなり重要だと思っています。佐藤さんとして、今はこうだけれど将来的にはこうしていきたいといったことはありますか。
佐藤 コンサルタントとセットで動くスペシャリストとして、マーケティングテクノロジストとでも呼ぶべき人材が必要だと考えています。
マーケティングテクノロジストには2つのタイプがあります。1つはデータエンジニアに近いタイプです。個別のクライアントに特化し、多忙なマーケターにかわって、お客様のやりたいことを実行するために用意するデータとそのデータを投入するツールを選び、ベンダーと調整してお膳立てをするのが役割です。「マーケターは自分がやりたいことだけ考えていればよく、実行は我々がしますよ」というタイプですね。
もう1つは、施策の企画と効果測定を得意とするタイプです。ある施策を実行して、結果の良し悪しだけを判断して終わりではなく、効果分析から次に取るべきアクションを企画して提言できる人です。マーケターは自分の企画だけで動いているわけではなく、周囲がさまざまな企画を実行している中で自分も企画を出し、さらに周囲から頼まれたこともやっています。その上で、自社の顧客のことを知らなくてはいけないし、テクノロジーも使いこなさなくてはいけません。交通整理をする人が必要です。「今ここではこういう施策が走っていて、こちらでは別の施策が走っていますよね。だとするとこの施策も追加するのが良さそうですよね」とか「この施策はこの前実施したこの施策と矛盾しますけれど、本当にやりますか」といった整理をし、「では、このテクノロジーを採用しましょう」とお膳立てもします。
こうした2種類のマーケティングテクノロジストがTFユニットに必要な人材だと考えています。
安良岡 我々の同業他社でこれだけの多種多様な人材がおり、お客様のいろいろな部署と付き合っている会社はなかなかないと思っています。これはブレインパッドの大きな価値のひとつではないでしょうか。以前よくあったのが、マーケターとシステム部門が犬猿の仲なのを我々がつなぐといったことでした。今だとデータ活用推進部門と一緒にデータ活用を全社推進しましょうといったこともあるでしょう。他にも同じようなことはあって、
たとえばBrandwatchだと調査部門では使っていますが、マーケティングでは使っていない会社もあると思うのです。そこにデータサイエンティストが入っていくことによって他の活用を提案ができるようになる。そうすることでBrandwatchの価値を高めていくことが、我々ソリューション・ユニットが連携することでできていくと思います。
いろいろな部署を知っているからできるのではないかという頼り方をしてもらえる会社でありたいと常々思っていたし、今日もみなさんの話を聞いていてそうなれると改めて考えた次第です。
佐藤 相談すれば、なにかしらデータ活用の可能性を広げてくれる会社ですね。
安良岡 先ほどの秦さんの指摘を聞いて、確かにブレインパッドとSIerとの違いはそこだなと思っていて、我々はユーザーサイドからの相談から始まる案件がほとんどではないですか。お客様の中のいろいろな部署を回って、直接サポートできている。それは他社と大きく違うところだな思いますね。
押川 逆に、我々はERPの導入はできないし、物流オペレーションを細かいところまで詰められるわけでもないし、その他できないことは多々あります。ただデータを活用するアジェンダに関しては、かなり打ち返せるものがあると思うのです。「なんでも取りあえず全部できます」と言う会社はあまり魅力がありません。
佐藤 そうですね。「何でもできる」ではないんですよね。ただ「データ活用のところだけなんだけど、データ活用に関してはいろいろな問題に対応できる」。ここがブレインパッドのおもしろいところだと思います。
安良岡 新卒の採用をしていて、「うちはデータ活用に特化してやっているのですよ」と言うと「狭い」と捉える人と、「広い」と捉える人に分かれます。ただ実際にはデータ活用に特化していると言っても相当幅が広いのです。バリューチェーンの川上から川下までを、より高度にカバーしていけるように頑張っていきたいですね。
本日はみなさん、お忙しい中ありがとうございました。
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