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本記事では、金融業界でのDX推進において鍵を握る考え方について、金融DXを通じて地方創生を図る「りそなホールディングス様」との対談形式でご紹介いたします。
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※本対談は、2023年6月5日から6月16日にかけて開催された日本最大級DXオンラインイベント「DOORS-BrainPad DX Conference- 2023」で配信されたものです。他にも収録されたコンテンツがあるので、読んでみてください。
▼本対談の登壇者一覧
ブレインパッド・関口 朋宏(以下、関口) ブレインパッドの関口です。本セッションでは、「金融機関が支える地方創生とDX」をテーマに対談させていただきます。
ゲストに、りそなホールディングス執行役兼グループCDIOの伊佐さんをお迎えしております。昨年、りそなホールディングス様とブレインパッドが資本業務提携を締結させていただいたことから、協業パートナーとしての目線から本セッションを展開できればと思っています。
その前に、りそなホールディングス様について。今年度から新しく「グループチーフオフィサー制度」が設けられたようですが、どのような意図があったのですか?
りそなホールディングス・伊佐 真一郎氏(以下、伊佐氏) まず、私の肩書にもある「CDIO」の「DI」は、「デジタルイノベーション」の略で、デジタルとイノベーションを掛け合わせてよりスピードを加速させていきたいという意図があります。。かつ、これをグループ全体に留まらず、社外のパートナー様を含めた全員で一緒に取り組んでいきたい思いもありました。
関口 もともとりそな銀行様で取り組まれてきたものを、グループ全体に広げたいというようなニュアンスでしょうか?
伊佐氏 おっしゃるとおりです。りそなホールディングスでは、全部で4つの商業銀行がグループとして存在しています。大阪・埼玉・兵庫を基盤としている、地域金融機関の関西みらい銀行、埼玉りそな銀行、みなと銀行でもデジタルを活用したビジネスを加速していくことを目標として、グループ内の横展開を図っていきたいと考えているところです。
関口 これからますます大変な時期に差し掛かるかと思われますが、ご活躍を期待しております!
では本編に入ります。
実は伊佐さんには2021年にDOORSカンファレンスに出ていただいており、当時はデータ活用のお取り組みについてお話しいただきました。そこから2年経った今のりそなホールディングス様の現状についてご紹介いただけますか?
伊佐氏 3年前に手探りでデータサイエンスの部門を立ち上げたわけですが、ブレインパッドの手厚いサポートもあり、少しずつ結果が出始めています。そこから、個人向けのバンキングアプリの領域から外に出て、さまざまな領域において少しずつチャレンジを行ってきました。
社内においては個人のバンキングアプリ以外の分野以外に挑戦したり、法人の領域にもチャレンジしたり、大きな目的であった「データから課題を発掘する」といったミッションにも取り組んだりしています。
人数も少しずつ増えており、現状30人以上の体制になっています。自立してデータサイエンスを駆使できる体制が整ってきました。
関口 グループアプリがDXにおける一つの柱となり、グループアプリの仕組みをうまく活用しながら、顧客視点に基づいた店頭作りもDXも進められているように思います。
今後もその取り組みは変わらず、顧客に向けたDXやデータ活用をより進めていかれるのでしょうか?
伊佐氏 はい。顧客向けのサービスや社内向けのシステムのデジタル化は、サービス及びビジネスプロセスの「改善」という側面が強いですが、「データ」の側面から見ると「良質なデータが多く増えれば増えるほど、顧客体験や従業員のビジネス解像度が上がり、次の一手が打てる」という、データを中心とした好循環が構築されます。
そういう意味でも、サービスを開発する意義がありますね。サービスと良質なデータをうまく組み合わせながら車輪を回すという動きに注力しています。
関口 顧客に喜ばれるサービスを提供しつつ、サービス提供側では良質なデータを収集できるという、両者にとって価値のあるサービスを設計されているのですね。
伊佐氏 そうです。例えばバンキングアプリで言うと、ただ商品を売るアプリケーションでは顧客は当然満足しません。便利で使いやすいものだけを提供しても、その先には何も生まれないです。
大事なのは「顧客にとって新しい体験・新しい価値があり、一方でりそなホールディングスにとってのビジネスにもなる。そこから次の一手のためのデータが集まってくる❝仕掛け❞を作っていく」ことだと考えています。
関口 今となってはもう、ブレインパッドのメンバーよりもりそなホールディングス様の方々がメインで動いていますよね。
グループアプリを通じて顧客にアドバイスを配信する仕組みを作るアルゴリズムが700ほどあり、かつすべてPDCAを回しているという、そういった体制が社内で構築できた点は非常に嬉しいです。
ここで少し上流のお話に移ります。りそなホールディングス様はDXをどのような位置付けで捉えられてるのか、教えていただけますか?
伊佐氏 りそなホールディングスが定義付けるDXは3つあります。
こうした目線でDXに取り組んできましたが、いわゆる「デジタル」「データ」「DX」の関係性が私なりに見えてきました(下図参照)。
DXを行うデジタルとデータが必要です先ほどのバンキングアプリで例えると、「デジタルのサービスを顧客に提供すると良質なデータが溜まり、良質なデータの分析を通じて新しいサービスを顧客に提供できる」サイクルが、結果としてDXになるイメージです。
デジタルとデータの上にDXが乗っかる関係性であると私は解釈しています。
関口 たびたび言われることですが「DXを目的化してはならない」ので、DXを実践するために何か新しい目標を強引に作ろうとすることは避けなければなりません。なのでむしろ、DXは手段であると「言い切る」ことも重要だと感じています。
そんな中で、あくまで手段として、サービスと顧客のCX(顧客体験)を向上させるサイクルをとにかく回されているのは非常に良い取り組みだと思いました。
伊佐氏 テーマによって、DXのあり方は変わります。目的に応じてDXという手段をどう応用するのか、どう組み合わせるのかを柔軟に考えることが大切ですよね。
関口 ここからは、りそなホールディングス様がDXを進めていく上でこだわっていることや取り組みの流れについておうかがいしていきます。
そこで、ブレインパッドが作った「DXピラミッド(下図参照)」をご覧いただきながらお話を進めます。
一口に「DX」と言っても、実にさまざまなものを指します。社内の業務プロセスに関するDX、顧客に向けたサービスに関するDX、既存の業務を変えるDX、新しいサービスを作るDXなど。こうしたさまざまなDXを5つのカテゴリーに分け、DXの目的や取り組みを整理できるようまとめたのがDXピラミッドです。
この5つカテゴリーで見たとき、りそなホールディングス様の一番最初の取っ掛かりとなったグループアプリは、2番目の「接点チャネルのデジタル化」にあたると思います。
そこから現在までの進化を、このDXピラミッドを用いて表現するといかがですか?
伊佐氏 DXピラミッドでのまとめ、素晴らしいですね。DXはバズワードという側面もあり、どうしても「結局DXを通して何を実現したいのか」が置いてけぼりになりがちなので、こういう表があると思考がクリアになりますよね。
さて本題に戻りますと、おっしゃる通り、りそなホールディングスはまず2番の「接点チャネルのデジタル化」から始まり、2番で培ったものを業務改善やコスト削減に活かせていることから1番「オペレーションのデジタル化」にも繋がり、新しいサービスの誕生から4番「サービス・製品のデジタル化」にも繋がったりしています。
関口 2番から方々に染み渡るような進化をされているのですね。
伊佐氏 はい。幸いにもバンキングアプリの顧客利用が進んだことが進化の源泉となっています。今後は5番「新規デジタルビジネスの創出」にもチャレンジする予定です。
関口 ちなみに、多くの企業様が1番の「オペレーションのデジタル化」に取り組まれているものの、ここから2番や4番に進化していくのはなかなか難しいじゃないですか。ここについて、何か伊佐さんが思うところはありますか?
伊佐氏 DXピラミッドを最初に見た時に思ったのは「DXは、どこ(何番)から取り組み始めてもいいのではないか」と率直に思いました。どこから入るかによって、次の一手の進め方が異なるだけですから。
例えば1番から入った時は、次の一手は2番が最適なのか、3番なのか、4番なのかは状況に応じて大きく変化します。
なので恐らく、1番から入った会社が、りそなホールディングスと同じプロセスを歩んだとしても同じ結果が生まれるとは言い切れないと思います。会社の目的や経営状況に応じて、どこから入るのがベストなのか・次の一手はどこなのかを見極める必要があるでしょう。
関口 「目的に応じて」と言えば、よく、DXの目的を語るにあたって「変革」「改革」「改善」という言葉があるじゃないですか。これらの言葉は曖昧あるいは雑に使われている時もあり、それぞれの意味を理解しながらDXに取り組んでいかなければ、誤った進め方になってしまうこともあります。
伊佐さんはこの3つの言葉の違いについて、どう捉えていますか?
伊佐氏 DXでは「X」が大事であるとよく言われますよね。デジタル化だけではなく、会社もしくはビジネスをトランスフォームすることが大事だという意味です。
ただこの「トランスフォーム」は、日本語に置き換えると色んな言葉が使われています。
辞書を調べると、変革は「物事を変えて新しくする」、改革は「基盤を維持し、維持しながらも制度を改める」、改善は「物事を良くする」と書かれています。これらを英語で表現すると分かりやすくなりますよね。変革は「チェンジ」で、改革は「リフォーム」、改善は「インプルーブ」。
大事なのは、これらのニュアンスの違いをメンバー全員の共通認識として持つことです。例えばリフォームの議論を行いたいのにチェンジの議論をしていても、前進することはありませんよね。
なのでりそなホールディングスでは、これらの言葉を全員で、あえて明確に定義付け、全員の気持ちを統一するようにしています。
関口 改革は「基盤は維持する」ので、家のリフォームで考えれば「骨組みは残した上で」取り壊さなければならない。しかし言葉の定義を認識できていなければ、間違って骨組みさえも壊してしまうような事態が起きかねない、ということですね。
伊佐氏 そうですね。会社として改革を行う場合、「骨組みを残したまま制度やビジネスを改めたい」のに、いつの間にか変革をやろうとして「骨組みがなくなってしまった」ようなケースも起こり得るということです。
こういった事態を防ぐためにも、メンバー全員が同じ認識を持ち、気持ちや考え方を擦り合わせることが大切だと思います。
関口 今のお話は、DXの方向性を意思決定する経営層の方々も明確に理解しなければならないですよね。改革するはずだったのに更地にしてしまったら意味がないですから。
関口 次のテーマ「地方創生や地域経済の発展に対する貢献」に移ります。
ブレインパッドがりそなホールディングス様と共に取り組み始めたのは「日本の経済界・消費者生活にとって意義あることに取り組んでいきたい」ことが大きなきっかけでした。
りそなホールディングス様の中で取り組んでいるものを種にしながら、「地域の金融機関をサポートしていき、その先にいる地域の経済と消費者に対してもサポートを広げ、社会課題の解決をしていきたい」という点が今回の提携の狙いの一つです。
そんな中で地方創生や地域経済には課題が出てきており、特に地域金融機関は収益力が下がっているとずっと言われている側面もあります。この状況を、地方金融機関の中心という立場でもあるりそなホールディングス様はどのように見ていますか?
伊佐氏 「地域」と言うと、どうしても議論が地域の中で閉じてしまうことがありますが、一方でデジタルやデータには境界線がありません。したがって、デジタルやデータを使って発見したものを地域に還元し、地域から出てきた課題を集めるという流れを作ると、情報やデータを上手く循環させることが可能です。
そうすることで地域に何が必要なのか・どうすればいいのかが発見できると思い、ブレインパッドと取り組んでいる状況です。
関口 私個人のお話になるのですが、最近、首都圏から郊外に引っ越しました。そこで気付いたのが、都心で考える課題の捉え方と地方の現場で見る課題の捉え方が大きく異なることでした。
都市部よりも課題は深刻です。ブレインパッドの目線で見ると技術者が不足しており、会社を支援する体制もマーケットも整っていません。つまり二極化が進んでいる印象です。
全国に拠点があるりそなホールディングス様から見ても、都心部と地方に差はあると思いますか?
伊佐氏 はい、思います。現状を見つめ、この状況を受けてここから、りそなホールディングスは何を行わなければならないのかを見直さなければならないです。
都心部と地域が経験してきたことはそれぞれ異なりますし、これから起こることも異なるはずなので、そのあたりを見極めていく必要がありますよね。
関口 地域には地域の経済圏があり、そこには必ず地域の主要な金融機関があります。金融機関がより力を発揮できるようになれば、地域全体が良くなる。
そう考えたとき、地域金融機関の果たすべき役割が今後どのように発展していく必要があると伊佐さんは思いますか?
伊佐氏 一般的に経済を良くするには「人・モノ・金と情報を回す」と言われています。
地域金融機関が地域の中心にいることは変わらないとすれば、地域の金融機関とりそなホールディングスが連携しながら、「人・モノ・金と情報の流れをどうしたら良くできるのか」という点から一緒に議論していく必要があります。そこから、必ず何か改善できるヒントがあると信じて取り組んでいきたいですね。
関口 地域の金融機関や企業様とお話しすると皆さん、危機意識を持たれているのを感じます。
こういうとき、「何かしなければならない」けど「何をしたらいいか分からない」ために、「とにかくDXをしよう!」という焦りの思考に陥りがちです。こういった課題をどのように解決していくのか、どんな行動をしなければならないのか、どこで頑張るのかを決めることは重要ですよね。
伊佐氏 DXを実践するには「何をどうしたいのか」をきちんと整理する必要があります。時折「DXに取り組みたい」と相談を受けることがありますが、具体的に何をどうしたいのかをと聞くとはっきりした答えが出てこないケースも少なくありません。
例えば、学習でも「頭が良くなりたい」と思っても、じゃあその方向性が「国語」なのか「算数」なのかによって、勉強の方法や課題は全く違いますよね。単にデジタル化を目指すのではなく、何をしたいのかをよりはっきりした上で議論に入っていくことが大事です。
関口 同じ科目であっても高校生レベルなのか、小学生レベルなのかによってでも、学ばなければならないことは大きく違います。必要とされる能力が変わってきますから。
そのため「今どの科目をどのレベルで実現したいのかを決める」ことを、私たちが一緒に考えていくことが大切なのかもしれないです。
伊佐氏 そうですね。外部のパートナーに「DXやりたい」「データサイエンスしてくれますか?」とふんわりお願いしても、先方を困らせてしまいます。
だから、「分からないことを伝える」のも大事ですよね。それで言うと、りそなホールディングスがデータサイエンス部を立ち上げた際は「何も分からないので、一から教えてください」とブレインパッドにお願いしたところからスタートしましたから。
そこから非常に丁寧に解説してもらったり、一つひとつの質問に答えてもらったりしながら、3年かけて少しずつりそなホールディングスのデータサイエンスも動き始めました。こういった実体験も踏まえると、今の現在地の見極めは重要ですね。
関口 確かに、伊佐さんと私が最初に話した時の議題は、DXを実践するにあたっての「目的」や「最初のターゲット」といった前提部分のお話でしたよね。「どうなりたいのですか?何をしたいのですか?どこをどうしたいのですか?」とたくさん質問させていただいたような記憶があります。
ただ今思ったのは、こういった会話や議論を私たちだけに閉じずに、色んな地域の方々と行えばいいのではないか、ということ。「やりたいことに対して今どの立ち位置なのかをちゃんと知る」必要があるためです。
伊佐氏 そうですね。課題は「現在地」と「目指す姿」の差分です。現在地を把握することで、目指す姿に到達するための次の一手が見出せるようになりますから。
関口 では次のテーマ「りそなホールディングスとブレインパッドで仕掛ける地方創生」に移ります。地域金融機関において、旧来型の金融ビジネスだけではうまくいかなくなってきている危機感があります。
このような状況下でも、金融機関が持っているアセットやサービスを駆使できれば軌道に乗れるのではないか?と思っているのですが、このあたり、金融機関の立場でいらっしゃる伊佐さんからはどう見えていますか?
伊佐氏 日本を循環するお金には「商流(企業向け)」と「家計(個人向け)」が存在しますが、この商流と家計の組み合わせに着眼することで、新しい課題が発見されるのではないかと思います。先ほど申し上げた「人・モノ・金と情報」フローに着眼するイメージと似ているかもしれません。
関口 BtoCビジネスとBtoBビジネスって、一般的には分けて考えられることが多いですよね。そこを繋げるというのは割とチャレンジングであると思いますが、「データ」観点で見ると実現できるということなのですか?
伊佐氏 まだ答えはないので「可能性を探りたい」のが正直なところです。ただ、りそなホールディングスがこれまで行ってきた組織設計は現状うまくいっているので、地方金融機が今の体制を大きく変える必要は全くないと思っています。
一方で、新しい領域の発見やチャレンジが遅れる可能性もありますよね。横断的・機能単位ではない流れ・フローで新しいことに挑戦する機会をうかがいたいです。
関口 支援会社がBtoC企業を支援する場合、その企業のC(消費者・顧客)に対する理解を、企業だけでなく支援会社も深めなければ、高品質な支援はできないです。同じように、金融機関がtoC企業をサポートする場合は、その企業がターゲットとするCを理解することが一つの武器になると思っています。
そうすると消費者の動きやお金の動きが把握できるようになり、結果的に先ほど伊佐さんのお話にあった「商流と家計を繋げていく」考え方に近づくと思いました。
伊佐氏 おっしゃる通りです。似たような議論を私もよくします。法人顧客にただ単に商品を供給するのではなく、法人顧客(クライアント)がターゲットとする顧客(C)とに一緒に向き合い、売上をどのように伸ばすのかを考えていく必要があります。
関口 りそなホールディングス様のグループアプリは「会えていない顧客に会うための一つの大きなチャネル」でもあると、伊佐さんはおっしゃっていたと思います。
一般的に、顧客の情報収集を試みようとする場合は、「新しいチャネルを作らなければならない」「新しい情報を取得する手段をどこかから買わなければならない」と考えますが、りそなホールディングス様においては、りそなグループアプリを顧客に使用してもらうことで見えない顧客の情報の流れを手に入れられます。
そうすることで「データから課題に気づきサービスに転換することが可能」になりますよね。これがりそなグループアプリを使っていただく一つの価値だと思いました。
伊佐氏 はい、非常に有効な武器となると感じています。例えば個人の日常の決済データ(例:ショッピング)を集積・分析すると、各地域や業界で何が起きているのかが発見できるようになります。
こういったリアルなデータを直接扱えるので、この情報をもとにクライアント様を支援することも可能になります。こうして法人と個人をうまく組み合わせながら、新しい仕掛けを展開していきたいです。
また、グループアプリのような金融デジタルプラットフォームを通して、同じような考えを持った仲間を増やしていきたいですね。
関口 ブレインパッドはりそなホールディングス様のパートナーとして一緒に取り組んでまいりましたが、金融機関の再編というアプローチではなく、地域の金融機関が持つブランドやアセットを有効活用しながら、足りないものを補っていくという「ホワイトラベル」に近い発想にこだわられていると思いました。
これは私も共感するところが多いです。地域を都会化していくのではなく、地域には地域の発展の仕方があるという考えなのだと思いますが、そのようなスタンスを取られた理由や思いを教えていただけますか?
伊佐氏 課題を各地域単位もしくは銀行単位で解決していても、業界としてスピードが上がっていかない可能性があります。そのため地域間で手を組めるのであれば手を組んでそれぞれの地域に持ち帰り、結果を出すといったサイクルが大事です。
そのためにも3年前からブレインパッドとデータサイエンスに取り組んでおり、そのプロセスで得た学びや失敗を業界のために横展開・共有し、その先に結果が出て、結果をもう一度持って帰ってくることでまた次のサイクルが始まる。こういった取り組みを共にしたいという思いが強いです。
関口 日本の課題感で言うと、育成する時間的余裕がない法人もあります。したがって、高度な人材がいなくても息を吸うようにデータを活用できる環境が、デジタルやITを駆使して創られればいいですね。
将来的には、例えば、データを使った与信のアルゴリズムや、リスクヘッジのアルゴリズムを共同で使えるような世界観をイメージしています。
伊佐氏 私もそのようなイメージです。地域単位で見た時には、デジタルやデータの領域は非競争領域だと思っています。そのためノウハウはシェアしても問題はなく、「仲間が多ければ多いほど早く答えが見つかる」ことから、みんなハッピーになれると思うんです。
データサイエンスに関しては、今は難しいイメージがまだあるのかもしれません。しかし20年前に遡れば、もともと電卓で計算していた時代があり、最初のエクセルが登場した時にも「なんだか難しそうだ」といった空気感がありました。
しかし20年経ってみれば、当たり前のようにエクセルを使っている状態です。データサイエンス領域も同じだと思います。今は難しくても、遠くない将来には、教育・プログラミング含め、データサイエンスが当たり前の世界が来ると思います。この間をどう埋めていくのかは、一つの大きなテーマですね。
関口 最近の学生の方々って、当たり前のようにデータを使いますよね。難しいと思っているのは一部の世代であって、若い世代にとっては当たり前になってきていますし、「難しいものである」とみなさないようにしたいですよね。
関口 さて、締めのお時間です。
DXは大企業や都市部が中心となって進んでいきがちですが、それでは経済発展に貢献できません。これはりそなホールディングス様もブレインパッドも同じ考えだと思います。この共通認識を持ちながら一緒に取り組みを進めていきたいです。
ちなみに、伊佐さんはよく「ナイス失敗」とおっしゃいますよね。成長するためにはチャレンジを行い、挑戦する中で生じる試練や悩みを乗り越えてこそ成長に繋がることから、チャレンジしなければなりません。
一方で大企業の場合、DXの推進を任されつつも失敗は許されないような状況が多く、よって二の足を踏んだり丁寧に進めすぎてスピードが遅れてしまったりするようなケースはよく耳にします。このあたり、DXを大きく推進されてきた伊佐さんはどう思われますか?
伊佐氏 「ゴールの手前には必ずストレスがかかる環境が発生」します。DXを成功させるにあたり、関係者がストレスを感じるのは当然であり、それをどう乗り越えるかが非常に大切ですが、失敗を恐れているとストレスがかかる状態にまで辿り着きません。
一歩踏み出してストレスをかけ、「このストレスをどう乗り越えていくか」という議論にどれだけ早く持っていけるのかが鍵を握ると思います。
関口 失敗を恐れる現場や部門メンバーの方とコミュニケーションする際に、意識することはありますか?
伊佐氏 リスクが取れる範囲であれば、むしろ失敗してもらった方がいいとも考えています。なので私はたまに「いったん議論はやめて、まずは取り組んでみよう」と声を掛けることがあります。そうすることでスピーディに取り組めますし、仮に失敗しても改善点がすぐに分かります。「ダメージコントロールを意識しながら、早くマーケットに出して一回失敗してみる」ことも大事にしています。
関口 最近は日本の経済環境のコンディションが良くないため、色んな企業様が少し保守的になっている流れを感じています。それでもまずはいったん、飛び込んでみた方が良いということですよね。
伊佐氏 シンクビッグ(Think Big)を使う必要はありません。ただし、スタートスモールは徹底的に意識すべきです。早く動けることに加え、早く動いた結果から修正点も早く見つかるためです。
外部環境は全員共通の環境であるため、変化している事実には対応しなければなりませんが、しかしそれによってスタートスモールせずにいれば競争上の優位性を失う恐れもあります。
関口 どんな環境でもスタートすることが大切だということですね。失敗したとしても、失敗してみなければ分からない結果もありますから。
伊佐氏 りそなホールディングスも決して全部が順風満帆ではなく、転んで失敗しながら少しずつ前進していきたいので、これからもよろしくお願いいたします。
関口 本セッションはこれにて終了いたします。皆様、ご視聴ありがとうございました。
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