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6月16日に開催した、「DOORS-BrainPad DX Conference 2021」。
2000人を超える視聴申し込みをいただき、盛況のうちに幕を閉じた本イベントの模様をお伝えしていきます。
今回は、
による、対談から感じた「日本版DXの在り方」と題した、戸川氏がモデレーターを務めるClosing-Talkをお届けします。
日経BP・戸川 尚樹氏(以下、戸川氏) 本セッションでは、モデレーターという大役をお仰せつかりましたので、DXの先進リーダーとの対談を終えたお二人にお話を伺いたいと思います。
日経BPでもDXやデータ活用のテーマで色々なイベントをやっていますが、今回DOORSの趣旨に賛同し、面白いと思ったのは、「ユーザー事例が豪華」ということ、ただ成功事例として話すだけでなく、「対談形式で本音や苦労談を聞き出す」という形でコンテンツを作られているということです。
今回、DXの先進リーダーたちと対談を通して感じたことは何でしょうか?
ブレインパッド・関口 朋宏(以下、関口) ネット越しに普段顔の見えないお客様ともビジネスをしないといけないという環境において、データはお客様を映す写像になります。
つまり、見えないこと、やったことのないことをやろうとするときに確実性を上げようとすると、データの力はとても大きいということです。
このことに多くの方が気付き始めたと思います。そのため、DXも「デジタルでサービスをやればいい」というのではなく、「見えないお客様と向き合っていくためにデータを使っていく」ということの重要性が高まってきていると、対談を通して改めて感じました。
戸川氏 DXの取り組みの打ち手や優先順位は業種によって違うと思いますが、先進企業の共通項はありますか?
ブレインパッド・草野 隆史(以下、草野) あくまでもDXは手段であり、常に「お客様に新しい価値を届けるため」「より喜んでいただくため」という目的の部分は多くの会社に共通していると思います。
効率化・最適化の部分はビジネスモデルの深化・磨き込みであるのに対して、新しいビジネスモデル・変革の部分は探索行為であるため、一発で正解に辿り着くことはほとんどありません。折れそうになったり、「いつまでこんなにお金を使うんだ」と社内で言われることもあります。そのような場合、社内を説得し、自分を鼓舞するときに、やはりお客様を見ていないとやり抜くことは難しいのではないでしょうか。
戸川氏 DXをまずどこから着手するかについて。私自身、多くの企業に取材をしているとDXの1丁目1番地は、「データ活用」という話になります。
やはりデータを上手く使って科学的にアプローチすることが重要です。ただ、こうしたアプローチは企業のカルチャーチェンジにもつながるため、難しさもあります。
こちらは、去年11月に発表した『DXサーベイ2』の、ある調査結果です。
「DX関連の技術やソリューションで重要視しているものは何ですか?」という質問に対して答えを25個並べて、システム部門長の方などを対象に調査して重要度ランキングを作りました。
結果、1位が「Web会議」でした。ただ、これは昨年の7~8月頃に調査しているので時節柄まさにという結果です。2位は「クラウド」です。インフラとしてもPaaS、IaaSなど色々な文脈があると思いますが、クラウドにシフトして、スピード感を上げていきたいと思われている方が多いことが現れています。
興味深いのが3位に「データの収集・分析」があることです。インフラ作りや組織体制作り、人材育成など、さまざまなことが含まれていると思いますが、ブレインパッドさんの事業のバリューが高まっているのは間違いないと思います。
もうひとつ共有しておきたいのが、「DXに本気で取り組んでいて、成果が出ているかどうか」を聞いた調査結果です。
基本的に、成果を上げているという会社の50%近くが「データの収集・分析をやっている」と答えています。
逆に、成果が出ていない会社は、データの収集・分析が20%程度にとどまっています。データの収集・分析をすればDXで成果が上がるとは言えませんが、DXで成果を上げている会社の50%近くはデータの収集・分析をやっているという事実は興味深いです。
関口 その他、何か興味深い結果はありましたか?
戸川氏 データの活用・分析・収集という部分で起きている一番の変化は、「データの活用人材を増やそう」とする会社が増えているということだと感じます。
関口 データの専門チームを作ってそこに専門知識をアサインするというのも当然ありますが、データ活用は「みんなわかった方が良い」という流れにシフトしてきていると感じます。
戸川氏 「データ活用の民主化」ということですね。
草野 大学教育も「データサイエンス必修化」という動きに舵が切られています。『シン・ニホン』の安宅和人さんも提唱されていますよね。これにより、データサイエンスやAIの基礎を理解した人間がどんどん輩出されると思います。逆に受け入れる企業側は、データに基づいた意思決定ができていなければ、こうした人材からそっぽを向かれてしまうでしょう。
戸川氏 データ活用の人材を増やそうという機運は大事だと思いますが一方で、そういう人が増えてもそれを活かせる組織風土やルール、経営や業務の意思決定の方法など、中を変えていかないと、結局宝の持ち腐れになってしまいます。
草野 『DXサーベイ2』の調査結果でもあったように、データ活用をしている会社は成果を出しています。データを貯めて、それに基づいた意思決定をすると、サイクルが回ります。ファクトベースで議論するカルチャーにもなっていくので、経営者もデータに基づいて意思決定をできる体験をした後に、それができなくなると不安になると思います。
戸川氏 確かに、今までデータ使って決めていたのが、急に明日からデータ活用をやめるとはならないですね。一度定着すれば後退はしないということですね。
関口 「データをビジネスに繋ぎこめる人」がいればサイクルは回るはずです。どうしてもデータ分析人材というと、アルゴリズムを作れる人が必要なのではないかと考えがちですが、まずはベーシックなスキルを持った人を増やすのが大事だと思っています。
戸川氏 IT部門と、データ活用をする部門は断絶しがちです。IT部門の人たちは「セキュリティをやらないといけない」「データインフラもやらないといけない」と言ったり、データ活用したい人たちは「IT部門はスピーディではないから、なかなか進まない」と言ったりと、それぞれが断絶している会社は少なくありません。その状況をどのように考えていますか?
草野 経営トップがその重要性を理解し、垣根を越えさせるための工夫をしないといけないと考えています。今回DOORSにお呼びしている方の中でもさまざまなパターンがありますが、「経営者直轄のプロジェクト」としてDXを進めている点は共通しています。
データは結局、ITとビジネスの両方を反映しているところがありますので、両方をわかっている人、両方に対して発言権がある人でなければ使いこなせません。
関口 セッションに登場いただいた皆さんが、「データは繋いでこそ意味がある」という話をされています。しかし、データのオーナーの部署が違うという会社の事情もあります。「部門を飛び越えた方が良い」と口で言うのは簡単ですが、大変なことです。
結局、部門を越え、会社を越えてデータを連携させる場合、「繋げることができるのは経営の人」しかいません。
戸川氏 高い目標のために垣根を取っ払い、喧嘩なく、チームワーク良くやっていく。一枚岩になってやれるかどうかは経営者の責任ですよね。
草野 オルビスの小林社長との対談でとても印象的だったことがあります。
オルビスはECのシステムと店舗のシステムが違っていました。小林社長が着任した時点で、店舗事業と通販事業がビジネスとして別々になっていたのです。着任早々、「お客様には関係ないから」という理由で、改革を行い、今ではシームレスな顧客体験を築かれています。
この取り組みによってお客様のことがデータ越しにもわかりやすくなり、経営を回しやすくなるという循環がありました。やはり「経営者がどこまで覚悟を持ってやるか」ということがすごく大きいと思います。
戸川氏 まさに、このイベントのテーマである「経営者の隣にデータサイエンスを。」を象徴するお話ですね。
大事なことは、今回のようなイベントを通して、経営者の方にDXをしっかりやっている会社があるということを共有することだと思います。
非常に勉強になりました。ありがとうございました。
DXの本質について改めて知りたい方は、こちらの記事もぜひご一読ください。
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