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6月16日に開催した、「DOORS-BrainPad DX Conference 2021」。
2000人を超える視聴申し込みをいただき、盛況のうちに幕を閉じた本イベントの模様をお伝えしていきます。
今回は、
による、「サスティナブルなDX」を目指すオルビスの未来と題したCross-Talk Sessionをお届けします。
ブレインパッド・草野 隆史(以下、草野) 小林社長は、2002年に当時の株式会社ポーラ化粧品本舗(現在の株式会社ポーラ)に新卒で入社され、2009年から社内ベンチャーのDECENCIAの取締役、翌年に代表取締役に就任。
2017年にオルビス株式会社の取締役、翌年に代表取締役社長に就任、現在に至ります。
ポーラ・オルビスグループ内での異動とはいえ、創業30年以上のオルビスで会社全体の変革やDXを推進されている小林社長のリーダーシップのお話を伺えればと思っています。
それでは、オルビスについて簡単にご説明いただけますか。
オルビス・小林 琢磨氏(以下、小林氏) オルビスは1987年に創業しました。
訪問販売、高価格帯のアンチエイジング化粧品を強みとする親会社のポーラとは違い、「通信販売」「シンプルさ」「低価格」で世に出たブランドです。
実店舗展開よりも1年早く99年にECを展開。日本のECのパイオニアである楽天の創業が97年なので、99年に自前でECを開設するのは非常に早かったのではないでしょうか。ダイレクトマーケティングやデジタルなどを早い段階から意識していたといえます。
バブルが崩壊して以降は右肩上がりの成長期に入り、年商が500億円近くまで到達したのですが、2000年代半ばからは成熟期、そして低迷期になり、伸び悩む状態が続いていた中で、私が代表に就任しました。
草野 就任からの3年間で、どのような課題と向き合いながら改革に取り組まれたのかを教えていただいてもよろしいでしょうか。
小林氏 就任当時、課題は山積みでした。成長期に伸びた「カタログ通販」というビジネスモデルの延長線上から全く抜け出せていなかったのです。
草野 レスポンスがいい商品に訴求を寄せていくというものでしょうか?
小林氏 そうですね。毎月お客さまにカタログをお送りして、購買データをRFM分析し、キャンペーンを適用し、レスポンスを得るというものです。
例えばABCDという商品を市場に投入して、CPOが安いものに投資を寄せます。「データドリブン」と言えば聞こえはいいのですが、そこに会社としての「意志」や「戦略」はあまり入っていません。
戦略のレイヤーではなく、「戦術のレイヤー」だけで物事を考えてPDCAを全部回していく場合、基本的に数字の良い方に寄せていくものです。既存のお客さまに対して「このチラシを適用するとレスポンスが高い」ということをどんどん最適化していきます。
一歩引いて、ブランドとして見ると何のブランドなのか正直わからなくなっていましたね。
また、値下げキャンペーンをどんどんと実施していった結果、利益率が下がっていったのです。2014年頃には、通販事業の売り上げの24%が値引きを行ったものになっていました。
草野 24%、かなりの割合ですね・・・。
小林氏 一般的に競合と言われるブランドは大体10%弱なので、キャンペーン体質、値引き体質の会社になっていたことがわかります。
数字を非常によく見ているのはいいのですが、会社としての提供価値や顧客体験価値がないままレスポンス率の良い方に訴求を寄せていく運用は、非常に課題でした。
草野 当社が創業間もない時、御社とお仕事をさせていただいたことがあるのですが、「数字に基づいて意思決定」することが徹底されていて、感動したのを覚えています。そうした姿勢がキャンペーン体質、値下げ体質となってしまい、あまり良くない方向にいってしまったということなのでしょうか。
小林氏 数字ありき、データドリブンでやることは非常に大切です。しかし、結果を見て結果が良いところだけが正しいのではなく、「どういった価値を提供したいか」「未来に向けてどうありたいか」という仮説との差異を見ないと、なかなか成長していきませんし、ブランドプレゼンスを発揮できないと思います。
草野 課題解決のために、具体的に何から着手したのですか?
小林氏 基本的なことからです。
ということを考え、忠実に実行していったのです。
草野 ブランドコンセプトを整え直すのは、時間をかければいくらでもかかってしまいそうですが、短期間で決められたポイントは何でしょうか。
小林氏 短期間で実施できたのには、2つポイントがあります。
1つ目は、創業時の精神を拠り所にしたことです。
会社が伸び、知名度が上がり、人も増えると、オペレーション体質になったり、既得権益が生じがちです。そうしたときに最も拠り所になるのが創業時の精神なのです。
ブランドを変革する際に、ブランドを丸ごと変えてしまう方法もありますが我々は、「どういうスピリットや哲学でこれまでやってきたか」ということに徹底的に立ち返ったのです。
2つ目は、30歳前後の社員を中心とした割と小さなチームで私がトップに立ち、議論しながらどんどん決めていったという点です。
草野 もっと年齢層が上の方も社内にいたと思うのですが、それよりも若い方たちを中心にして決めていった理由は何ですか?
小林氏 今から作るブランドコンセプトは、10年先、20年先を見据えて議論したかったので、将来を担う人材を中心にチームを組みました。
草野 小林さんが代表に就任後、「店舗とECを統合した顧客体験」を積極的に作られているように見受けられます。これも、早い段階から着手されたのですか?
小林氏 代表に就任したタイミングで、チャネル別の組織だった通販事業部、店舗事業部などを一気になくしました。
顧客視点に基づいた意思決定がなされていかないと意味がありませんから。
それまでオルビスは、通販事業と店舗事業が完全に分割された「カンパニー制」のようになっていました。例えば、通販のカタログで推している商品と、店舗で一番重要な位置で推している商品が違う。これは顧客視点ではないですよね。チャネル視点、メーカー視点、会社視点でしかないのです。顧客体験の中にチャネルを区切る意味が全くなく、顧客視点に切り替えていかないと、ブランドとして顧客価値の向上にはなかなかつながっていかないのです。
草野 その後は、どのようにプロダクトをリニューアルされたのでしょうか?
小林氏 そうですね。結局、ヒット商品を出さないとブランドプレゼンスは上がりません。ヒット商品をいくつか出して、ブランドの顔にしたいのはスキンケアです。
ダイエット食品や下着など色々なものを売っていたのですが、やはりビューティのブランドとして我々が一番得意なスキンケアを中心としてプレゼンスを出そうということをやりました。
幸い、「オルビスユー」や、「オルビス ディフェンセラ」などヒット商品を連発できたので、プレゼンスが上がっていきましたね。
ただ、商品の差別化だけでの優位性というのは相対的には徐々にプレゼンスが下がっていくので、体験そのもの全体で顧客価値をどう高めていくかということをやらなければいけません。
その体験価値の中にアプリコアの事業戦略というものを作り、アプリへの投資を強めていきました。
草野 短期間での変革は、社内で相当な抵抗があったと思います。変革を実行したモチベーションやマインドはどういったものですか?
小林氏 ブランドを絶対に残すべきと確信していたからです。オルビスのスキンケア商品は、「肌が本来持つ力を信じて、引き出す」ことを信念とし、「あなたらしさ」を引き出していこうとするもので、この考え方は豪華さやリッチさが求められたバブルの時代から存在しています。
創業以来、オルビスが大切にしてきたのは、「本当にここちよいとは、どんなこと?」です。商品の提供はもちろん、配送やサービス、シンプルなボトルのデザインなど、常識にとらわれずに業界の“当たり前”を覆してきました。こうした創業時のスピリット、不変の思いは、今のようなVUCA(ブーカ)と言われる時代には最も必要だと思います。
※後編では、オルビスのDX・データ活用に深く迫ります。
この記事の続きはこちら
【後編】「サスティナブルなDX」を目指すオルビスの未来~DOORS BrainPad DX Conference 2021~#Cross-Talk Session
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