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【後編】「データサイエンス」で変える金融DXの未来~DOORS BrainPad DX Conference 2021~ #Cross-Talk Session

公開日
2021.08.06
更新日
2024.06.04
本記事の登場人物
  • 経営
    関口 朋宏
    会社
    株式会社ブレインパッド
    役職
    代表取締役社長 CEO
    早稲田大学理工学部卒業。アクセンチュア株式会社に入社後、戦略コンサルタントとしてさまざまな業界の事業戦略、大規模な組織再編、人事戦略の立案・実行を支援。2017年4月にブレインパッドに参画し、ビジネス・コンサルティング組織の立ち上げを行い、収益拡大を牽引。2019年9月より取締役に就任し、大手企業との資本業務提携や大規模プロジェクトの実行責任者を務めると共に、2021年からはプロダクト事業を統括し、株式会社TimeTechnologiesの子会社化を推進。2023年7月、創業者2名より経営を承継し、代表取締役社長CEOに就任(現職)。

「チーム組成」の考え方

関口 銀行の中だけでは、アプリケーションを開発し、UX/CXを理解してデザインをし、これだけのスピードでサービスを提供するというのは難しいと思います。「どのようにパートナーシップを作っていったのか」。パートナーを選ぶ際のポイントや、信頼関係づくりについて教えてください。

伊佐氏 先ほどもお話しましたが、「社内には答えがない」のです。

スマホアプリは、お客さまが見て、ボタンを押せば動き、サーバーサイドに電文が飛ぶという一連の動きが連動しないと機能しません。

この短いプロセスだけでも、ビジネスオーナーやデザイナー、サーバーサイドのエンジニアなどさまざまなプレーヤーがいます。一人が全部というわけではなく、議論しているテーマに最も詳しい人間がリーダーシップを取って、判断をしていくことを意識していました。

それぞれの強みを持った人たちでチームを作ることが大切だと思います。

関口 伊佐さんが大事にされている言葉に、アプリ開発は「ものづくり」だというものがあります。そこに込められた思いを教えてください。

伊佐氏 デジタルであっても、作り手はパーツごとに作っていきます。ものに例えれば、さまざまな材料、部品があって、それらを組み上げてチューニングし、稼働に至ります。あえて「ものづくり」と言っているのは、日本人が得意なことだからです。

IT、フィンテックでは欧米が先行しているような報道等がありますが、しっかりと向き合って、ものづくりの精神を忘れなければ、いいものができるのです。

これを自分に言い聞かせる意味でも、「ものづくり」という表現を使っていますね。


「データサイエンス部」設立の意図

関口 アプリケーションを進化させていく中で、「信じられるのはデータだけ」というお話がありました。データサイエンス部を立ち上げられて、メンバーも増え、大所帯になってきましたよね。

データサイエンス部を銀行内に作った狙いや、意識されていることをご紹介ください。

伊佐氏 いきなりデータサイエンス部を作ろうという議論はありませんでした。

アプリケーションビジネスでは、どんどんデータが溜まります。

アプリを作る段階で、その後のデータ分析を見越したデータの持ち方や、ログ収集の方法を考えた結果、データに触れる機会も増えてきたのです。

さらに、マーケティングシナリオのPDCAを回す中で、中長期的な活動としてデータの領域を捉える必要があると考えました。こうした考えのもと、部に昇格するタイミングになったと思っています。

関口 データ分析の専門チームを立ち上げるということで、伊佐さんは内製、自走できるようということを強く意識されましたよね。

これは当社にとっても非常に意義深いと思います。私たちはデータ分析の専門家としてサービスを提供している立場ですが、お客さまにもデータに対するリテラシーが高い方がいらっしゃった方が、よりパフォーマンスが上がりますし、一歩踏み込んだ仕掛けができます。私たちにとっても、心強い取り組みだと思っています。

「内製化、自走化へのこだわり」はどういったところにあるのでしょうか。

伊佐氏 データ分析だけではなく、「ビジネスとどのようにつながっていくのか」と一体に考えたときに、我々自身のビジネスを知っている人が一定数いなければ、データサイエンスの領域も、上手く連動してお客さまに価値をお届けすることはできないという考えから、内製化にこだわってきました。

関口 伊佐さんからの「内製化するので一緒に手伝ってもらえないか?」というお話からデータサイエンス室立ち上げのご支援がスタートしました。今では分析官として独り立ちされている方が何名もおられ、私たちも非常に嬉しく思っています。

データ分析の力を養い、育っていく社員の方々を見て、どう思われますか?

伊佐氏 ブレインパッドさんのご支援のおかげだと思っています。やはりお客さまと向き合ったり、短期的に結果が出ない場合でもしっかり我慢し、しっかりと道の真ん中を歩いていれば、ゴールにたどり着けると思っていました。そんな信念を持って向き合ってきましたし、社員もそう思ってくれているのではと思いますし、素直に良かったと感じるところです。

株式会社りそなホールディングス 執行役 DX企画部担当 カスタマーサクセス部担当 データサイエンス部担当 伊佐 真一郎氏(写真右)
株式会社ブレインパッド 取締役 ビジネス統括本部長 関口 朋宏(写真左)

金融におけるDXの未来

関口 さまざまな会社がDXに取り組んでおり、さまざまなDXの考え方がありますが、「金融業界におけるデジタル活用やDX」についてどのような未来を考えられているのかお聞かせください。

伊佐氏 我々はデータの分析において、銀行のアプリケーションを中心に始めましたが、ネットバンクになる戦略は持っていません。分析した結果を、短期的には「リアルな世界にどのように融合させるか」という部分に注力することが大切だと思っています。

非対面・デジタルでのお客さまに対するサービスの提供です。結果として対面ビジネスに対して、デジタルが側面的にサポートしながら提案できたり、お客さまへのサービスを向上させていくものになります。

一方で、りそなグループの社外、「他の地方銀行さんや他の業界の方々とコラボレーション」しながら、広い意味でのDXを今後考えていきたいと考えています。

関口 金融業界が変わっていかなければならないと声高に叫ばれている昨今ですが、りそなさんも、「グループアプリを他の銀行に提供する」ということを始めましたよね。このチャレンジについて教えてください。

伊佐氏 銀行業界の中で捉えた場合、お客さまのニーズも非常に多様化しており、我々だけではニーズに応えきれません。言い方を変えれば、他の銀行さんと一緒にやることで、「より多くのデータで、より多くの分析を重ね、より良いサービスを提供できる」と考えています。

関口 データ分析をしている立場からは、同じ分析をする場合でも、データの出元、形、精度が違うと、毎回データをきれいにする作業が発生します。そのため、同じ仕組み・プラットフォームであれば、圧倒的にデータ分析のスピードが上がると思います。データ分析という世界から見ても、仕組みの統一には意義があると思いますが、どうでしょうか?

伊佐氏 おっしゃる通りですね。いわゆる「データクレンジングがほぼ不要」となり、他の銀行さんが行った分析の差異を分析することで、「お互いの強みをシェアする」という考え方もできます。

関口 まさに「共創」ですね。地方の銀行さんと連携を取って、共創でマーケットを盛り上げるために、このアプリをもっと多くの銀行さんに使っていただくことを目指すのですね。

伊佐氏 思いを持った他の銀行さんと共創することによって、価値が生まれるものだと思っています。銀行さんだけでなく、パートナー企業さんとも議論を重ねて進めたいと思っています。

「データサイエンス」へのさらなる期待

関口 データサイエンス部の取り組みについて、先ほども簡単に話題に上りましたがもう少しお聞かせください。

りそなさんの「データ分析の内製化」を目指す。これは私たちもチャレンジでした。

通常、お客さまの分析したい内容を、弊社の分析官やコンサルタントが入って分析します。一緒にチームになり、座学を重ね、同じテーマを一緒に取り組むことはチャレンジでした。

実際に当社と一緒にやってみていかがでしたか?

伊佐氏 実は、「内製化をしたい」とお願いをさせていただいたのも、我々がやり方をわからなかったためで、甘えてしまったと思っています。結果として、御社の社員と当社の社員が机を並べて、議論をする機会があったので、非常に良かったと思っています。

分析する環境そのものは、苦労しましたし、今でも課題がたくさんあります。しかし、環境の整え方も、現場レベルで相談させていただき、こういうやり方があるのではないか、違う会社ではこういうやり方をしているなどご紹介いただきながら、議論できました。

最短距離で走れたのかについては自信がありませんが、なんとか形になってきたのかなと感じています。

関口 また、銀行のシステムでデータをつなぐ苦労があると思います。このあたりは、今後どうされていくのですか?

伊佐氏 誤解を恐れずに言いますと、「できるところからやっていこう」と思っています。バケツの議論がありますが、きれいに整えてからと考えると、整えるまでに時間と労力がかかるので、できることからスタートすることが大切です。

結果として、上手くいった領域のデータを、より深く、多くということにつながっていくと思いますし、まさに「データ分析のアジャイル」が今後より重要なのではないかと感じています。

関口 日本でDXのブームとなったきっかけが経済産業省のDXレポートでした。「既存のレガシーシステムを刷新せよ」というテーマがメインでしたが、銀行でこれをやっていたら、何年かかるのかわかりません。したがって、伊佐さんのおっしゃるように、できるところから少しずつというのは大切だと思います。

セッションを振り返って

関口 私はかねてより、「伊佐さんと深いお話をしたい」と思っていたので、非常に有意義な時間が過ごせました。改めて振り返ってみるとどうですか?

伊佐氏 2018年にリリースしたりそなグループアプリが今日のお話の中心だったと思います。振り返ると、我々だけでは当然なし得なかったことが数多くありました。チームワークのお話もさせていただきました。

特にブレインパッドさんには、このアプリケーションのリリース前からアドバイスを頂戴し、ずっと温かく見守っていただき、2019年からはデータサイエンス部の立ち上げにも手厚くサポートしていただきました。今日、私の考えとして発言したことも、実はブレインパッドさんから学んだことが多数あります。「データの価値」というのは本当に大きいと感じているところです。まだまだ入り口に立ったばかりだと考えているので、ブレインパッドさんと共に、データの世界を追求できたらいいなと思っています。

その先に新しい価値が必ずあると信じています。

関口 ありがとうございます。

「データを価値に転換する」のは本当に簡単ではありません。分析という技術だけではなく、データサイエンス部がやられているような、「ビジネスとデータをつなぐ感性や考える力」はセットでなければできないと思います。

今後も皆さんと共に、このようなチャレンジさせていただければと思います。

今日の対談で印象に残ったことがあります。後で数えようかと思っていますが、伊佐さんのお話に「お客さま」という言葉が何回出てきたのかということです。それくらいお客さまを第一優先にしてサービスを設計すれば、社内をきっちり動かせるというお手本だと思いました。

非常に勉強になりました。ありがとうございました。

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株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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