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関口 デジタルネイティブで最初からデジタルビジネスをされてきた皆さんにとって、日本で加熱しているDXの状況は率直にどう見えますか?
佐々木氏 データは昔から、それこそ江戸時代から使っていた気がするのです。当時の商人は、お客様の好みを台帳に書いて、覚えて、「こんな感じの人はこれが好き」といったようにレコメンドしていたでしょう。
また、「職人の技術伝承」もAIに似ています。何かを作るコツがあり、それを弟子に教え、伝承していく。特徴を学習してモデルを作り、展開していくAIと似ています。
このように、根底に通じる考え方は、これまで何百年やってきたこととさほど変わらないと思います。DXは、完全に今と昔で分断されたのではないし、どこからどこまでがDX、AIというものでもないと思います。要するに、そんなに特別なものではないから、特別に考えなくてもいいのではないでしょうか。
関口 経済産業省からDXレポート2の中間版が2020年末に公表されましたが、前回と比べてかなりトーンが変わりました。
2018年の第一弾では、「レガシーなITシステムを刷新する」「戦略的なIT投資をする」ことが中心になっていましたが今回は、デジタル云々と言うより、「変わる」「伝承する」、つまり組織変革の重要性が大きく取り上げられています。
技術の進歩で、AIが簡単になった面は確かにありますが、やはりその手前で、「変わる」ために「何をしたいのか」「どうしたいのか」「どのようなデータを持っているのか」をちゃんと考えてやらないと、簡単にはいきません。
佐々木氏 簡単にいかないですね。まずは問題設定、何をしたいのか明確に持つべきだと思います。我々も含めてですが、「こういうことを解決したい」という目的があった上での手段となるわけです。
普通のシステム開発と同じで、それなりに大変で、それなりの結果が出るものであると認識して進めるべきだと思います。システム開発も、お金を払ったらポンと出てくるわけではありません。AIもDXも同じだと思います。
関口 大型のシステム開発であったり、色んな会社で新しいサービス事業を展開するときに、事業計画を立てて、どれくらいのリターンがあるのかという話は必ずしますが、DXやAIとなるとあまりそのような議論をすることなく始めてしまいがちに思います。
佐々木氏 「DX」という言葉に踊らされることなく、ちょっとした改善の積み重ねを一つひとつ地道に続けていくことが大事だと改めて思います。
関口 Zホールディングスは、多種多様なマーケットおよびさまざまな消費者の方々のコミュニケーションに入り込むようなサービスができる状態になってきていて、ますます情報量が増えていくと思います。
皆さんが果たす役割は非常に多いと思いますが、どのようなことを今後やってみたいですか?
佐々木氏 数年前までヤフーはオンライン企業であり、オンラインのデータはたくさんありましたが、オフラインのデータは持ちようがありませんでした。
この何年かでZOZOやPayPayなどが増え、オンラインとオフラインの境界がなくなりつつあります。
ユーザーとのコミュニケーションの部分もLINEでカバーされてきているため、ユーザーの皆さんとの接点は非常に広がっていると思います。
私たちがデータソリューション事業を始めたモチベーションと同じですが、「この情報を企業や自治体の皆さまに出せば、もう少し日本がよくなる」と思っています。
データを上手く統計化して、プライバシーに配慮した形で世の中に出していくということに関しては、貢献できると思っています。
関口 消費者の方々が便利になれば経済もより活気が出るので、その材料を皆さんがどのような形で提供されるのかということに非常に興味があります。
突っ込んだ質問をしていきたいのですが、Zホールディングスが連携しやすい、組み易いのはどんな企業ですか?
佐々木氏 私はAIやデータサイエンス担当なので、その観点で言えば、「データが多いところ」がやりやすいですね。
例えば、何かを分析して「結果が出るのが5年後」といった長いサイクルだとやりにくいですね。やはり「サイクルが早く大量に物が売れるところ」とは組みやすいですね。
関口 今後、「Zホールディングスだからできる」ことは何でしょうか?
佐々木氏 多くのグループ企業があり、その中でほぼ日本のネット人口をカバーできているというのは非常にありがたい話です。ユーザーとの接点が広くなっているので、できることの範囲は非常に増えていると思います。
例えばメーカーと組んだ場合には、メーカーの商品開発にまず貢献します。ヤフーのデータソリューションの情報を使って「今こういうものが求められています」「今、あなたの製品に足りないところはここです」という、検索からわかることを伝え、商品開発側に貢献するのです。
次に営業戦略にも貢献します。販売としての広告、売り場としてのECです。実売場としてのPayPayもあるため、色々なところでサポートできるのは良いと思います。
チャネルをつなげることで、データも分析しやすくなります。
関口 消費者にとって、チャネルが分かれていることは企業側の都合です。その垣根をどう超えるのかは大きな課題ですが、そこで大切になるのは徹底した消費者目線でしょうか?
佐々木氏 そうですね。ユーザーの皆さんからすると「チャネルや部門は関係ない」と思いますよね。そのような企業の皆さまのサポートができればと思いますね。
関口 まだまだ聞きたいこともたくさんありますが、あっという間にお時間が経ってしまいました。
当社はヤフーと長らくお仕事をしています。DXに関して、私たちなりにやれることを考えていきたいと思っていますが、長いお付き合いをしている佐々木さんから見て、今後、私たちに期待するところはどこでしょうか?
佐々木氏 先ほどデータソリューションのお話で、なるべく労働集約型にならないようにしたかっというのがありました。ツール系をなるべく出して、私たちが一人ひとり対応しなくてもいいようにしたのです。
内部的な話で言うと、我々のデータサイエンティストがあまり多くない中で、ブレインパッドは非常に高いレベルでサポートいただけるパートナーだと思っています。
参画いただくデータサイエンティストの方は、非常に高いレベルで分析いただいています。また、さまざまな企業・業界を支援されているからこそ、広い視野を持っているのが良いと感じています。
DXやAI、データは正しく世の中に伝えた方が良いと考えています。「データ分析は魔法ではない」ことをきちんと伝えなければいけないということです。
「正しく使うと世の中や会社を変える原動力になる」と思っています。ブレインパッドはさまざまな企業をサポートされていますので、「データ分析の正しいあり方」を世の中に広めていただけるとありがたいと思っています。
関口 ありがとうございます。我々の責務は大きいと思います。
私たちが詳しくてお客様が全くわからない状態よりは、お客様がそれなりに知っていて、私たちも知っているという状態の方が盛り上がると思います。データサイエンスの裾野を広げていくということを頑張っていきたいですね。
佐々木さん、どうもありがとうございました。
まず DXの本質について知りたい方は、こちらの記事をぜひご一読ください。
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