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3月23日に開催した「DOORS-BrainPad DX Conference2022」。
3000人を超える視聴申し込みをいただいた本イベントの内容をお届けいたします。
今回は、
による、『「分析力の研鑽」を目指すニッセンのデータ基盤』と題した対談の詳細をみていきましょう。
ブレインパッド・草野 隆史(以下、草野) このセッションでは変革の礎というテーマで、ニッセンのデータ基盤構築刷新プロジェクトに関する、現状のビジネスの状態やどういう課題があってプロジェクトに取り組まれたかというお話を伺えればと思います。
では、登壇者のご紹介です。ニッセン様から栗山様と横手様にお越しいただきました。当プロジェクトに関わり当社メンバーである松永に同席してもらい、この四人で話を進めていければと思います。
草野 ブレインパッドは2004年に創業したのですが、創業当時も通販会社さんだけは突出してデータを活用している企業群でした。
その中でもニッセンは、最も突出しているリーディングカンパニーという印象があります。今回データ分析の基盤を刷新されたという背景には、どのような狙いがあったのでしょうか?
ニッセンホールディングス・栗山氏(以下、栗山氏) カタログビジネスを成長させるうえで重要なポイントは、「カタログをお届けするお客様をいかに増やすか」という点です。そのため、セグメンテーションと需要予測に力を入れることに当時は非常にこだわっていましたね。
しかし、EC企業の台頭やプラットフォーマーが出てきてお客様もECを使われるようになってきました。カタログのメディアとしてのパワーが落ち、弱くなってきたという流れがあります。
そのため、セグメンテーションというところに力を入れていても、あまり分析の価値が出せなくなってきたのを感じました。そのため、いろいろと考え方を変えないといけなくなったという点が1つの転機ですね。
そして、通販としてのシステムを支えるために分析基盤をはじめ、いろんなビジネスのインフラにも注目しました。通販事業として自前のシステムを活用する際、規模として大きなものになりやすいことから、その分コストもかかります。そこで、「コスト的にもう少し縮小し、その中でも価値を出せるような形にもっていきたい」というのが今回の基盤整備のもう1つの理由です。
草野 セグメンテーションの分析だとやや古くなってしまった、価値を出せなくなってきた、というのはどういうことを意味するのでしょうか?
栗山氏 過去のプロセスは、カタログをお届けしてお客様に買っていただくという流れで、電話やハガキの注文であれば「レスポンス」が明確にわかっていました。カタログをお届けした成果やリターンがすぐにわかるということです。
しかし、ECが増えてくると購入の「経路」「プロセス」が見えなくなってきました。お届けしたとしても、ダイレクトな反応が見えづらく、ロジックは考えて分析していましたが、実はカタログを送らなくてもいいお客様も増えてきているのではないかと。
新規顧客の開拓も、現在はECからどんどん入ってくるようになってきました。カタログ以外のいろいろ接点が増えてきた中で、「他にも最適化すべきものが増えてきた」というイメージですね。
草野 過去の成功パターンから、得意とした領域に対して、最適化したシステムが独自環境で構築されていたものの、時代にそぐわなくなってきたというところが大きな背景だったということですね。それに対してどういうコンセプトでやっていこうと構想されたのですか?
ニッセンホールディングス・横手 慎一氏(以下、横手氏) 先ほど言われていたビジネスモデルの変化や手法の変化がありました。その中で、弊社では分析手法そのものがレガシーになっていたということです。
レガシーになっていたからこそ、「そのシステム自体に新しいものが要らなかった」と。簡潔にいえば「その手法ではだめだ」となったとしても、現在のシステムではそれ以外の手法が使えない状態でした。
しかし、今回は「どういう風に入れ替えるか」ということを考えた中で、インフラ環境として、「GCP(Google Cloud Platform)」環境を選びました。
システムを選ぶ目的の1つは、柔軟性です。どんどん新しいサービスを利用し不要なものは捨てていけるという柔軟性が大切であることを重視しました。
もう1つは性能です。ハードウェアを入れ替えてきた経験から、データ分析が増えれば増えるほどシステム処理速度が貧弱化してしまうことがありました。そのため、簡単に追加できていくという基盤をどう探すかが刷新の目的になっています。
草野 オンプレ環境からのハードウェアの移行ですね。これからどういう分析をしていくかもわからないし、どんどん変えていかないといけないという意味でも、柔軟なインフラに大きくシフトしていかなければならなくなったと。
そして、これからの変化に対応していくことが大切ということが背景だったということですね。実際、システムに移行していこうという決断はビジネス環境の変化に影響するので、どのタイミングで意思決定するかというのは、なかなか判断が難しいと思います。
特にニッセンのように社歴が長い企業の場合、従業員の方も従来の分析手法に慣れている中で環境を変えるというのは抵抗があるのではと推測します。
この環境を変えるという大きな意思決定をされた「決め手」になることが、いまお話いただいた背景以外に何かあったのでしょうか?
横手氏 レガシーな手法を変えることによる組織・人のネガティブな感情というのは長年、ずっとありました。今回は、去年の7月〜8月にいろいろな話をしていく中で、会社の状況なども含めて意思決定のきっかけになっています。
その時使っていた環境の更新や切り替え時期は必ずあり、それに合わせた中でいろいろなことをできないかという検討はずっと続けていました。偶然、Googleとブレインパッドの提案が非常に課題に沿ったものでした。
そこで、栗山と相談しながら、「一歩踏み出さないとこれは未来を変えられない」と思い、ちょうどいいタイミングであると考え決断しました。
草野 本当になかなか変えられるものでもなく、変えたから必ずうまくいくという保証もない中で、どのような葛藤がありましたか?
栗山氏 分析のメンバーは属人化しているというよりは、できるメンバーが何人かいてそのメンバーが業務を支えています。ずっと自分が作ってきたものに対して内製化してやってきたので、それなりに拘りがあるというか、それを守りながら発展させていきたいという考え方を抱いていました。
その中で、大きくシステムを変える提案をすると反発もありました。私も長年ずっとデータベースマーケティングを行ってきたため、それらを運用するメンバーの気持ちもわかります。
しかし、この機会を逃すと変えられないかもしれないなと考え、思い切ってやってみようと判断したという流れですね。
思い切ることができたのは、システムがレガシー化していったという話と、「何を判断するにもまずデータを見たいという会社の体質」があったからです。
例えば、商品開発もデータを見て判断したいということで、いろいろな帳票とかデータを提供していました。しかし、振り返って考えてみると、無駄や疑問がある点も多かったように感じます。カタログからECが中心になっていくと、極端な話、「どんどんリアルタイムで判断」していかなければなりません。
草野 実際ビジネスのEC化・IT化が進めば進むほど、「意思決定の頻度」が増えてきますね。そのため、従来型の意思決定の頻度では追い付かなくなってしまうというところがあったことが把握できました。
開発に関しては、短い期間での開発になった記憶があります。ここはそういう意味でいうとやるなら急ぎたい、システム刷新のタイミングに合わせたいというのが一番大きな背景だったのでしょうか?
横手氏 コストが二重にかかる期間をどれだけ短くできるかという点と、これを逃すと次の更新時期である2年後、3年後になってしまうというのが大きかったといえます。
草野 松永さん、プロジェクトをどれくらいの長さで行いましたか?
ブレインパッド・松永 紘之(以下、松永) 提案の時から、およそ4〜5カ月でリリースを迎えなければならない状況でした。「歴史が長く、ノウハウが大変詰まっている環境」であったため、蓋を開けてみないとどんなロジックが埋まっているかというのは見えない状況でした。そのため、まずはその全貌をクリアにすることに力を入れました。
最初の2カ月は、プロジェクトメンバーでシステムの全量を把握し、これをどういう機能に移していこうかというところに重点的に時間をかけ、ニッセンも巻き込んで議論した覚えがあります。
草野 今回、GCPを選ばれたポイントはどのようなところですか?
横手氏 1つはインフラ面として考えたときに、今までのオンプレミス環境の問題点から考えるとデータベースが必ずボトルネックになることがわかっていました。そのため、データベースをいかにスケールアップしていけるのかという点を意識しました。いろいろ検討した中でもGoogle BigQueryの使い勝手、契約のわかりやすさも1つの理由でした。
しかし、クラウドを選択するときのシステムでの問題点には、回せば回すほどコストがかかる従量課金制のデメリットを検討しなければなりません。結果として、コストがどれだけかかるか見えなくなるというのはコスト試算がなかなかできないため、経営的にもすごく難しいところだと感じています。Google BigQueryでこういった課題も解決できた点は良かったと感じました。
草野 通販会社における分析は、それが失敗するとメールが送れない、カタログが送れないということになりますよね。生命線・オペレーションそのものを短期間でというのは、改めてものすごく大きなチャレンジだったと思いますが、何が決め手だったのでしょうか?
横手氏 最初は、リスク分析やリスクの洗い出しを重点的にやっていただきました。最初の一カ月くらいは、リスクの問題ばかりを話していました。
また、コロナ禍の状況だったため、東京と京都という位置もあり、頻繁にオンラインでのミーティングを行いました。逆にそれがよかったのかなと思っています。その時間だけ抑えればすぐに会議が開けるという環境になり、社内で会議を開くような手軽さで松永さんとも毎日のように会議ができる状況でした。また、最初のリスクの分析が本当にスムーズにいきました。途中の意思決定もかなり早くできたのですごく良かったです。
もう1つはブレインパッドがあまり「隠し事をしなかった」点が印象的でした。間に合いそうにない、大きな工数の問題が出た場合に解決策がない状態の時なども、かなり早い段階で教えていただきました。そのため解決策を考えながら、「どれだけ工数を省くか」という検討を一緒に行うことができました。
草野 コロナ禍という特殊な事情がプラスに働いたということですね。信頼関係はリアルで会うことが大切で、私も社員にはそう話しています。しかし、今回は圧倒的に短い納期の中で、コミュニケーションをとらないとまずいという背景がありました。そのため、警戒心をスキップして関係性が作れた大きな理由かもしれませんね。
「健康な関係」というのは、一方的に何かを押し付けられたり、どちらかが我慢しているような関係だったりすると困難になります。特にこういう緊張感の高い状況の中だとよく爆発したり、どちらかが破綻したりすることにつながります。しかし、今回はお互いに申し上げたことがプラスに働いたようでよかったです。
草野 実際に、このシステムは期待に応えるものでしたか?
横手氏 まだプラットフォームとして「刷新した」というレベルです。そのため、これから、もともと目的として考えていた柔軟性を出すというステップに入っていきます。
今、DX推進担当という役割で当時プロジェクトをやっていた頃と違う役割を担っています。そのため、いろいろ考えていくうえで、ビジネスプロセスの変革やデジタル化することがDXではないというのはすごく実感しました。
中でも、今社内でビジネスモデルがいろいろ出来上がっており、考えが浸透している中で、「実際のプロセスがそのまま適用できるものではない」という感覚も少しずつ生まれてきています。そのため、社内のプロセスを変えながら、データ分析の役割自体も変えていく必要があります。ただ、その変えるハードルが1つ無くなったと思っています。
草野 当初の目的としていた柔軟性の確保はできたということですね。その他、プロジェクトで苦労した点はありますか?
松永 短納期でゴールを目指すというところは、常々チームとも共有していかないといけませんでした。絶対に全量を把握してからでないと、間に合わないなというのは常々各メンバーからも言われていましたから。
決断をするのであれば早く、そして、なるべく情報をオープンにしました。意思決定をしていただくうえで、必要な情報をちゃんと会議前に準備して挑むところは工夫していましたね。
草野 そういう意味はブレインパッドにとっての成功体験になります。他のお客様との関係性も、何か変わったりしているのでしょうか?
松永 今までやってきたことも積み重ねだと思います。会議を行う前に事前準備をいかにできるかという点はどのプロジェクトにおいても共通して言えることかなと。
今回はリスクを隠さず、ニッセンと共有し、解決方法を常に議論できたため、スピードにつながったと感じました。
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【後編】「分析力の研鑽」を目指すニッセンのデータ基盤 ~BrainPad DX Conference 2022~ テーマ別 企業DX対談
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