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金融業界のデータ活用の未来~FISC✕FDUAと語る、これからのデータ活用~

公開日
2023.11.07
更新日
2024.02.15

金融業界のデータ活用は重要性を増しています。最近では、生成系AIをはじめとする先進技術を積極的に取り入れるなど、データ活用がより身近になってきました。こうした状況を踏まえて、データ活用によるビジネスの効果を期待する動きも出てきています。

今回は、公益財団法人金融情報システムセンター(FISC)常務理事の照内太郎氏、一般社団法人金融データ活用推進協会(FDUA)代表理事の岡田拓郎氏をお招きし、金融業界のデータ活用の現状と未来についてディスカッションした内容をお届けします。

■登場者

  • 公益財団法人金融情報システムセンター(FISC)常務理事
    照内 太郎氏
  • 一般社団法人金融データ活用推進協会(FDUA)代表理事
    岡田 拓郎氏
  • 株式会社ブレインパッド 執行役員
    内製化/金融担当エグゼクティブエバンジェリスト
    FDUA標準化委員会 委員長代行
    神野 雅彦

※所属部署・役職は取材当時のものです。

登場者紹介

写真左から、株式会社ブレインパッド・神野 雅彦、
公益財団法人金融情報システムセンター(FISC)・照内 太郎氏、
一般社団法人金融データ活用推進協会(FDUA)・岡田 拓郎氏

株式会社ブレインパッド・神野 雅彦(以下、神野) 皆さん、こんにちは。ブレインパッドの神野と申します。本日は、金融業界のデータ活用の未来というテーマで、公益財団法人金融情報システムセンター(以下、FISC)常務理事の照内さん、一般社団法人金融データ活用推進協会(以下、FDUA)代表理事の岡田さんにお集まりいただきました。

まずは、照内さんから自己紹介をお願いいたします。

公益財団法人金融情報システムセンター(FISC)・照内 太郎 氏(以下、照内氏) 照内と申します。金融情報システムセンターにて、常務理事として調査研究活動全般に関わっております。本日はよろしくお願いいたします。

公益財団法人金融情報システムセンター(FISC) 照内 太郎 氏

一般社団法人金融データ活用推進協会(FDUA)・岡田 拓郎氏(以下、岡田氏) 岡田と申します。金融データ活用推進協会の代表を務めながら、デジタル庁の民間人材としても活動しております。よろしくお願いいたします。

一般社団法人金融データ活用推進協会(FDUA) 岡田 拓郎氏

神野 ありがとうございます。以降、それぞれFISC、FDUAと略称で呼ばせていただきます。

私はブレインパッドの執行役員で、FDUAでは標準化委員会の委員長代行を務めております。よろしくお願いいたします。

株式会社ブレインパッド 神野雅彦

現在、金融業界におけるデータ活用が急速に進み、各金融機関の取り組みも活性化しています。特に、FDUAの取り組みに関しては注目度が高い状況です。そこで今回は、金融業界の攻めと守りの立場から、データ活用の現状と未来について、ディスカッションできればと思います。


FISCの組織概要と位置づけ

神野 それではまず、FISCの組織概要と位置づけについて、照内さんからご説明いただけますでしょうか。

照内氏 FISCは、テクノロジーの現状やシステムの利活用、管理態勢、あるいは脅威など、金融情報システムに関する幅広い事柄について、課題や将来の発展のための方策などについて調査研究を行う組織です。1984年に設立された公益財団法人で、2024年で設立40周年を迎えます。

また、FISCは会員組織でもあります。銀行や証券、保険といった金融機関に加えて、ITベンダーやFintech企業など、約670社の企業に会員としてご支援いただいております。

FISCの活動は、会員企業からの派遣者を中心とするスタッフによって支えられています。金融当局はもちろん、国内外の金融機関、ITベンダー、決済機関、研究機関、さらには学者など、幅広い関係者と活発に交流しています。

金融機関のシステムに関わる方にとっては、「コンピュータシステムの安全対策基準」が最も馴染み深いのではないでしょうか。我が国では、金融当局ではなく中立的な機関であるFISCが安全対策基準を作り、金融機関やITベンダーなどで幅広くご利用いただいております。あらゆる業界の関係者の議論によって策定する、いわゆる自主基準の格好は、国際的にもかなり特徴的です。

この他にも、様々な調査研究レポートを作成し、セミナーなどで情報発信しています。

神野 ありがとうございます。私たちもFISCの安全対策基準や各種レポートを利用しております。


FDUA参画の経緯と目的

神野 FISCは、2023年1月にFDUAの賛助会員として参画されました。私が推進している標準化委員会でも、アドバイザーとして検討会にご参加いただき、貴重なご意見をいただいており、議論の活性化に貢献していただいています。ここで、FDUA参画の経緯と目的についてお伺いできればと思います。

照内氏 かねてより金融機関では、マーケット分析における取引データの活用や、与信取引における資金移動データの活用など、様々な業務やビジネスでデータを取り扱ってきました。

ただ最近では、これまでとは異なる大きな変化が生じています。まず何より、デジタル・ITが非連続かつ大幅に進展していることです。その中で、大量かつ多様なデータを入手できるようになり、ハンドリングできるデータの規模が拡大し、計算も高速化しています。これらに加えて、機械学習やデータサイエンスなどの分野も大きく進展していることで、金融業界におけるデータ活用の範囲や可能性が拡大しています。

FISCでは、データ活用が、データウェアハウス・データレイクなどのシステム基盤の整備や、分析のためのアプリケーションの開発というようなITの活用とセットだと認識しています。つまり、金融情報システムの安全かつ適切な活用に関係する課題であると認識し、これらデータの活用やAIの活用を調査研究テーマとして取り上げています。

そうした中で、FDUAの設立を知り、2022年より岡田さんをはじめとする協会の方々と意見交換をしています。この意見交換を通じて、「金融機関の実務目線に立ち、AI・データ活用の推進に取り組み、業界の発展に貢献する」というFDUAの趣旨に共感しました。さらに、FISCの活動にも資するものだということで、賛助会員として入会しました。

神野 金融業界のデータ活用が進んでいく中で、デジタル・ITの中核を担うFISCに参画いただけたことは、本当に心強いです。

続いて岡田さんの立場から、FISCの参画によって期待することをお話いただけますか。

岡田氏 期待すると言うと大変おこがましいですが、FDUAの設立以来、とにかくFISCさんと一緒に活動したいという思いがありました。

FDUAは、金融機関各社がバラバラでデータ活用に取り組むのではなく、「業界横断で一緒にやっていこう」という思いを持った理事や委員会メンバー、会員が集まっています。ただ、熱い思いがありすぎて、正直守りが疎かになっている部分があります。サッカーで例えると、フォワードやトップ下ばかりが集まっているイメージです。しかし、ビジネスとして組み立てていくには、守りの部分を知らないとデータ活用が進みません。

FISCさんは金融情報システムを長年受け継いできた歴史があり、ノウハウが蓄積されているので、標準化委員会でも多くのアドバイスをいただいています。FDUAの熱い議論が「どこに向かっているんだろう」というときも、最後に上手く纏めてくださるので非常に助かっています。

神野 FDUAの取り組みはこれからも続いていくので、引き続きFISCから色々なご意見をいただきたいと思っています。

金融業界のデータ活用における攻めと守り

神野 ここからは、金融業界のデータ活用における攻めと守りについてお話できればと思います。

まずは、攻めのお話です。現在、ChatGPTをはじめとする生成系AIをビジネスに活用する動きが急速に進んでいます。金融業界でも注目度が高く、社内のプラットフォームとして自前で構築する流れもあります。先進技術を積極的に取り入れることで、データ活用がどんどん身近になっているのです。

【関連】生成AI(ジェネレーティブAI)とは?ChatGPTとの違いや仕組み・種類・活用事例

このように金融業界のデータ活用の動きが変化していることを踏まえて、照内さんからご意見をいただけますでしょうか。

照内氏 ChatGPTをはじめとする生成系AIは、社会や生活に変化をもたらす可能性のある技術として急速に普及しました。実際に、金融機関で使われる事例も増えてきています。私もプライベートで使っていますが「こんなに色々なことができるのか」と驚くばかりです。

FISCも生成系AIには大いに関心を寄せていて、情報収集を続けています。ただ、あまりにも動きが速いので「果たして追いつけているのだろうか」というのが正直な感想です。

ところでFISCでは、金融機関におけるAI活用の現状や課題についてのアンケートを毎年実施しています。ここで、2022年度のアンケート結果を一部ご紹介します。

まず、AI活用が進んでいるかどうかについてです。2021年の時点で、AIに何らかの形で取り組んでいると回答した金融機関が全体の4割弱と、ここ数年で大きく増加しています。内訳としては、都市銀行やクレジットカード会社では100%、地方銀行でも50%以上がAI活用に取り組んでいる状況です。足元では、さらに割合が高まっていると予想されます。

一方、AI活用に関する課題として、全体の8割以上が、費用や人材、スキルを挙げていました。そして3割強が、データの取得、モデルのメンテナンス、データの量を課題としています。AI活用を進めるにあたって、直接的に制約となり得ることを課題に感じているようです。

また、AIの倫理面の問題が指摘される事例が、国内外で発生しています。例えば、AIの顔認証技術を用いた結果が一種の人種差別だと批判された事例や、AIを活用したチャットボットが差別的な発言をするようになった事例などが挙げられます。先進的なテクノロジーを活用することで、これまでにないレベルの事務効率化やビジネスの高度化が期待される一方で、新しい課題も発生している典型的な事例です。

FISCでは、2023年2月にAIと倫理についての調査研究レポートを公表していますので、興味があればぜひご覧ください。

そして、生成系AIについても同様の課題があると考えています。例えば、個人情報保護を含む情報セキュリティの課題や、著作権の問題が議論されているのはご承知の通りです。金融機関では、モデルに投入するデータの種類、アウトプットに対する評価、あるいは活用について、慎重に検討し取り組んでいると理解しています。

今後も、金融機関がAIを活用して業務を変革したり、新しい商品の提供を拡大したりといった動きが続くかと思います。だからこそ、その内容や影響度に応じた適切な態勢を整備する必要があります。金融機関だけでなく、サービスを提供するITベンダーにおいても同様です。FISCとしても、生成系AIは重要な調査研究テーマとして、引き続き取り組んでいきたいと考えています。

神野 ChatGPTをはじめとする生成系AIを、いかにリスクを抑えながら使っていくかという貴重なご意見だったと思います。

これを踏まえて、岡田さんからもコメントをお願いします。

岡田氏 攻めの立場としても、生成系AIに非常に注目しています。

FDUAの前身組織でコミュニティ活動をしていた2020年頃は、ディープラーニングのブームが終わりかけのときでした。当時は、AI・データ活用が一部の人に限定されていましたが、生成系AIの登場で一気に民主化が進んだと感じています。金融機関の営業店や事務部署の人でさえ、生成系AIをどのように活用すべきか試行錯誤しています。ただ、使う人が増える分、リスクも増大していくので、リスクマネジメントの視点は非常に重要だと思います。

また、生成系AIの黎明期は去ったと実感しています。2023年3月〜4月頃は「生成系AIがあれば銀行業務が大きく変わる」という期待値のピークでした。しかし、できることが意外に限られていて、やり方を工夫する必要があることが明らかになったのです。流行りものに食いつくだけでは結果が出ず、金融データ活用の基礎となる要素が重要だと再認識している方も多いでしょう。

標準化委員会の「金融データ活用組織チェックシート」では、金融データ活用のあるべき組織の標準をまとめているので、生成系AIの活用にあたってぜひ再評価いただきたいです。そして、「実はここができていない」というテーマを強化することで、生成系AIの活用をもう一段推進できると思います。

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神野 全然違う論点ではありますが、生成系AIのブームは、10年ほど前のチャットボットブームに近しい感じがします。金融機関が一斉に導入したものの、実際はあまり役に立たず、残念な結果で終わった印象です。デジタルがまだまだ浸透しておらず、AIが学習する情報が足りなかったからだと思います。

ところが今、急速にデジタル化が進んだので、AIが学習する情報は精度を問わずたくさんあります。そのため、結果がすぐに分かるようになり、数か月でブームが落ち着いたようです。まさしく、攻めとしては使えるものの、守りをしっかり固める必要があるというのが大きな論点になるかと思います。

ここからは、守りのお話です。金融業界では、守らなければいけないガイドラインがたくさんあります。特にデジタル・ITに関しては、安全対策基準など、FISCのガイドラインが必ず出てきます。このガイドラインに基づき、情報の取り扱いを安定化させているため、信頼度が非常に高いのです。

このように、業界として目線を合わせながら新しい取り組みを発展させていくことが重要です。そして、生成系AIの活用と標準化委員会など、攻めと守りを融合させることで、前衛的な取り組みが実現できると考えています。

「守りを重視すると、動きが悪くなる」と言われることもありますが、実はそうではありません。攻めるための動きが、安心・安全にできるようにすることが大切です。これにより、金融業界のデータドリブンを実現できると確信しています。

これらを踏まえて、照内さんからお話いただけますでしょうか。

照内氏 金融機関には、幅広い業態・業種がありますが、例えば銀行では資金・証券を決済するという業務の特性があるほか、取り扱う情報の内容などから、金融情報システムの安全性に関する目線や期待は他の業種に比べて高いと認識しています。

そのため、守りの視点は大変重要で、決して崩せません。守りの視点をベースに、FISCは「安全対策基準」を策定していますが、我が国の金融機関は高い期待に応えられていると思います。

一方、金融機関が業務やサービスを効率化・高度化する過程で、デジタル・ITを積極的に活用することの重要性もよく理解しています。また、金融機関でデータや先進技術の活用が進み、業務やサービスのあり方が変わっていく中で、新たな課題も出てくるかと思います。

FISCでは、データや先進技術の安心・安全な活用方法について、金融機関をはじめとする関係者の意見を集約し、ガイドライン等に反映して、ガイドラインそのものをブラッシュアップしていくことが重要だと考えています。そのため、金融情報システムを取り巻く課題の変化に遅れることなく、「安全対策基準」をはじめとするガイドラインを定期的にアップデートしています。

生成系AIについては、まだまだ日進月歩の状況で、日々新たな論点や留意点が出てきています。今後は、必要なタイミングで、システムの安全な活用という観点において、関係者と議論していくのであろうと考えています。

神野 続いて、岡田さんからコメントをいただけますでしょうか。

岡田氏 私もFISCさんの安全対策基準は常にチェックしています。AI・データ活用の守りを理解することで、どこまで攻めていいかが分かるようになるからです。

FDUAでも、守りの視点で「生成AIワーキンググループ」を立ち上げました。新しい技術に関しては、金融機関の皆さんが実務上の課題を持ち寄り、お互いの知恵を共有することが大切だと思っています。金融機関で働いていると、なかなか他の金融機関の情報を知る機会がないでしょう。しかし、お互いに知恵を出し合うことで、共通の課題が解決されるのは間違いありません。

新しいガイドラインができたときに、金融機関の実務担当者が「やりづらいな、不便だな」とおっしゃる場面が多くあります。しかし、文句ばかり言っていても解決しません。代わりにどのようなガイドラインにすべきか、自分たちで考え、官民で対話していくことが生産的であると考えています。

また、これを各々の金融機関で行うと非常に負担が大きく、実務が偏るリスクもあります。そのため、金融機関同士が集まり、知恵を出し合って、業界全体で形式知化することで、官民の対話に継続的に活用したいと考えています。

熱い思いを持つ方々と「生成AIワーキンググループ」を組成し、まずはガイドラインのたたき台を作って、生産的に業界を盛り上げていきたいです。

金融業界のデータ活用の未来

神野 ここからは、金融業界のデータ活用の未来についてお話できればと思います。

FISCでは、データ活用に関して今後どのように活動していくのか、照内さんからお話いただけますでしょうか。

照内氏 岡田さんのお話にあったように、金融機関が生成系AIを活用するにあたって、横の連携をとりながら自ら考える姿勢は非常に重要だと感じています。

データ活用に関しては、提供する情報が正しく使われているのか、分析アウトプットが恣意性のない合理的なものなのか、また、そもそもデータが正しいのかといった課題があります。

このような課題については国際的にも議論されていて、例えばEUでは、「欧州データ戦略」や「データガバナンス法」といった規制が既にあります。しかし、規制の有無に関わらず、いわゆる「データガバナンス」が重要だと考えています。データ活用においては、データそのもの、データを取り扱う人や組織、データを処理するツールやアプリケーション、そしてシステム基盤のそれぞれが信頼できるものでなくてはならないからです。

そして、データガバナンスの信頼性は、誰かが担保してくれるのではなく、自分で担保していくものです。FISCの「安全対策基準」には、「〜が必要である」という文言があちこちに記載されていますが、全体として一貫しているのは、リスクベースアプローチの考え方です。

リスクベースアプローチとは、システムを取り扱う主体が、業務にどのようなリスクが存在するのかを評価し、「安全対策基準」に照らし合わせて対策を作り上げていくというものです。したがって、誰かが作った基準を表面的に満たせばよいわけではないのです。

現在、多くの金融機関や関係団体が、適切なデータガバナンスの整備に向けて取り組んでいると推察しています。FISCとしては、金融機関のデータ活用の実務に沿った取り組みについて、様々な会員のご協力を得て、事例・実態を把握していくつもりです。また、FDUAと引き続き意見交換をしながら、調査研究活動の結果や我々の見解を適時・適切に発信していきたいと思っています。

神野 実はブレインパッドがFISCに入会したのがつい最近なので、お恥ずかしい話ですが、今後とも攻めと守りの表裏一体で取り組んでいきたいと思います。また、テクノロジーのトレンドを押さえながらデータ活用を進めることが重要だと思っているので、引き続きよろしくお願いいたします。

続いて、FDUAの今後の活動について、岡田さんからお話いただけますでしょうか。

岡田氏 FDUAでは、2023年に力を入れていきたい取り組みが3つあります。

1つ目は、金融機関に役に立つ具体的な成果物を出していくことです。ミートアップを開催して横の繋がりを作るだけでなく、具体的な成果物を出すことで、金融機関のデータ活用が少しでも底上げできればと考えています。そのため、ホームページで公開している「金融データ活用組織チェックシート」のチェックがまだの方は、是非ご提出いただきたいです。YouTubeの協会チャンネルには金融AI成功パターンについての解説動画もあげています。人材育成、発掘のためのデータコンペも、第2回を2024年の1月〜3月に開催する予定です。

2つ目は、大手だけではなく、規模の小さい金融機関の方にも協会の取り組みにご参加いただき、日本全体でデータ活用を盛り上げていくことです。銀行はもちろん、保険、カード、リースなど、業種を問わずご参加いただきたいと思っています。

3つ目は、外部との連携をより強化することです。金融機関だけでは業界全体での変革が難しいので、FISCさんやブレインパッドさんにも引き続きお力添えいただきたいですし、SIer、スタートアップ、そして官公庁の知見もお借りしたいです。

神野 業界へより貢献できるよう、皆さんと協力して盛り上げていきたいと思います。

ここで、ブレインパッドとしての考えもお話しさせていただきます。FDUAは、内外に関係なく、金融業界を盛り上げるためにどうすべきかを本音で話し合える協会です。特に、標準化委員会はすごく盛り上がっています。とはいえ、まだまだ足りない部分もあるので、引き続き貢献していきたいと思います。

FDUAは、いわゆるコンソーシアムや勉強団体のような場ではなく、金融庁やFISCも交えて組織化を実現し、しっかりと成果を出しているところが非常に魅力的です。極論を言えば、日本を変えられるような取り組みだと思っています。ブレインパッドとしても、取り組みを強化しつつ拡大できればと思います。

最後に、金融業界のデータ活用に向けてそれぞれコメントをいただければと思います。まず、照内さんからお願いできますでしょうか。

照内氏 繰り返しになりますが、デジタル・ITが発展する中、データを十分に活用することで、金融機関の業務やサービスを変革し、新しい経済価値を創出できると考えています。

一方、金融情報システムの守りの視点や、データガバナンスの視点も重要です。先日、FDUAが出版した書籍を拝読し、データの定義が必ずしも揃っていない中でどうハンドリングしていくかという、泥臭い仕事もあるのだと実感しました。こうしたことを含めて、今後は攻めと守りのバランスがますます重要になってくると感じています。攻めと守りのバランスをとった形で、金融業界のデータ活用が進んでいくことに期待しています。

FISCとしては、FDUAと意見交換を継続しながら、引き続き調査研究を行い、色々なアウトプットをしていきたいと思っています。

神野 続いて、岡田さんからお願いできますでしょうか。

岡田氏 金融データ分野に携わる立場として、生成系AIの登場は追い風だと感じます。今まで注目されてこなかった人や業務が注目されるようになったので、ブームで終わらせずうまく活用したいです。

一方、ChatGPTがOpenAIの技術を活用しているように、日本の金融機関が最先端のテクノロジーをリードするのはなかなか現実的ではありません。海外の技術を活用する流れが加速していく中で、金融機関同士が争っている場合ではないと思います。特に、生成系AIなどの最先端のテクノロジーに関しては、非競争領域が広がっているので、業界横断の取り組みにもう一歩踏み込んでいきたいです。

その際、守りの視点が疎かになると、誤った方向に進んでしまうため、本当の意味での攻めができなくなります。したがって、FISCと情報交換しながら、困ったときには原点となる安全対策基準に立ち返って、金融業界全体で進むべき道を見定めていくことが大切だと思います。最後は硬くなってしまいましたが、明るく楽しく金融業界のデータ活用を盛り上げていきたいです。

神野 本日は、FISCの照内さんとFDUAの岡田さんに、金融業界のデータ活用の現状と未来についてお伺いしました。金融業界のデータ活用を盛り上げていくという意味では、同じベクトルだと思います。ブレインパッドとしても、標準化委員会やデータガバナンスの連載などを通じて、金融業界のデータ活用に大きく貢献していきたいです。

本日はありがとうございました。


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株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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