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日本のヘルスケア進展に貢献してきたIQVIAソリューションズ ジャパン(以下、IQVIA)様は、活動の源泉としてデータ・テクノロジーなどを強みである「IQVIA CORE™」を活用してお客様をご支援するグローバルリーディングカンパニーです。
https://www.iqvia.com/ja-jp/locations/japan
そんなIQVIA様は、DXが流行する前の2016年からデータ分析基盤の構築に取り組んできました。DX推進が急務とされる現在においては、データ分析基盤の構築に取り組む企業は珍しくありませんが、当時このような取り組みをしていた企業はまだまだ少数でした。
IQVIA様はなぜ、このような早い時期からデータ分析基盤の構築に取り組まれたのでしょうか。
データ分析基盤構築の意図、背景、そして構築した基盤が現在、DX推進においてどのような役割を果たしているのか、IQVIA様、そして長年同社を支援しているブレインパッドの各担当者にインタビューを行いました。
■お話を伺った方
IQVIAソリューションズ ジャパン株式会社
テクノロジーソリューションズ
株式会社ブレインパッド
データエンジニアリング
DOORS編集部(以下、編集部) IQVIA様の事業内容、および西様が所属されているチームの役割について教えていただけますでしょうか。
IQVIA・西 裕志氏(以下、西氏) IQVIAには日本国内に4,000人超の社員が在籍しています。世界全体では100カ国以上の国と地域にわたって、ライフサイエンス企業の様々な課題解決をご支援しています。IQVIAが保有する膨大なデータは15万を超えるサプライヤーをソースとしています。医薬品のライフサイクルにおける臨床開発から販売後までをカバーするフルラインでサービスを提供し、すべての過程でデータ・テクノロジーを活用した様々な支援を行っています。
IQVIAでテクノロジーソリューションズを専門とするチーム(以下、テクノロジーソリューションズ)は、激変しているヘルスケア業界において、テクノロジーを主とした「IQVIA CORE™」を活用してお客様をご支援することで、業界全体のコスト削減とビジネスの進展に貢献してきました。
編集部 今回お聞きしたいテーマとして、「DX×データ分析基盤」があります。DXという言葉が流行する前の2016年からデータ分析基盤の構築に取り組んでいるそうですが、なぜこのような早い時期からデータ分析基盤の構築をされたのでしょうか。
西氏 企業ミッションである「ヘルスケアや人々の健康の進展に取り組む企業を支援する」ことへの責任感が大きな動機でした。
医薬品市場データや宣伝データなどを中心にIQVIAはクライアントへのデータ提供を行ってきましたが、近年、調剤レセプトデータを初めリアルワールドデータと呼ばれる匿名化された患者単位のデータ提供も加わってきました。これにより、売上データだけではわからなかった薬の実際の使われ方がわかるようになり、クライアントの活用ニーズも活用部門も広がります。このことは、ヘルスケア各社が患者さんに対して提供できるベネフィットの拡大につながります。
しかしながら、リアルワールドデータを扱うことは、それだけでもデータ量の増大を伴います。さらに処方の経緯の分析など患者単位で行うため、処理が複雑になります。
2016年時点でも、製薬メーカーをはじめとするライフサイエンス企業各社は、データを活用して自社のケイパビリティーおよびビジネス活動を向上することが求められていました。
これは現在ではDXと呼ばれることと変わりません。呼び方はどうであれ、変革を推進するために必要なことは意識改革と短期検証ができることだと考えています。
編集部 データ量が増大し処理が複雑になるだけでなく、それまで以上の高速処理が必要になり、新たなデータ分析基盤を構築しなければ、ミッションを真に果たすことができないという状況だったということですね。
ちなみに、「意識改革」と「短期検証」について詳しく教えていただけますでしょうか。
西氏 「意識改革」とは、デジタルを活用することでビジネスモデルの考え方と進め方を変え、いかにアウトカム(成果)を出すかを意識するようになることです。
また「短期検証」とは、アイデアを素早く検証して次につなげていくために、データをすぐに活用可能な形で取り出せる環境があるということです。短期検証ができれば、すぐに次の施策を実行し、その結果をまた短期で検証できるというPDCAの高速化が可能になり、結果としてアウトカムを早く生み出せます。アウトカムを早く生み出すことで様々な成功体験が積み重なり、意識改革が促進されます。短期検証は意識改革を進める上で重要な要因でもあるのです。
編集部 データ分析基盤構築において、どのような観点でパートナーを選定されたのでしょうか?
西氏 データ量が増大し、処理が複雑になるにも関わらず、高速処理を実現したい——これには高度かつテクニカルなスキルと、大量かつ複雑で項目も拡大し続けるデータを統合管理するノウハウが必要です。
それだけでもデータの取り扱いに長けた専門性の高い企業の協力が不可欠となります。
編集部 最終的にブレインパッドに決めた理由はなんでしょうか?
西氏 高速処理のアプローチとしてSparkによる並列分散処理が候補に挙がっており、我々が求める高速化が実現可能かどうかを検証するためにPoCをまず実施することにしました。各社にPoC提案を依頼したのですが、遂行できるだけのテクニカルスキルだけでなく「データ分析基盤の将来構想もチームの一員となって一緒に考えてくれること」も選定の付帯条件にしました。その結果、ブレインパッドさんを選定させていただきました。
編集部 PoCではどのようなことがわかったのでしょうか?
西氏 我々もデータを扱っている会社なので、一緒に仕事をすることでブレインパッドさんがデータ活用に強みを持っていることがすぐにわかりました。また我々が相談したことに対しては、「こんなところまで考えておかないといけないのか」という回答をもらうことが多く、そのことで信頼度が大きく高まりました。
編集部 どのようにプロジェクトを進めていったのか教えていただけますでしょうか?ブレインパッド・西尾さんにお聞きします。
ブレインパッド・西尾 陽子(以下、西尾) 私はPoC完了後のデータ分析基盤構築の要件定義フェーズからプロジェクトに参画し、現在もデータ分析基盤、特に並列分散処理に関わる保守案件を担当しております。
PoCで一定の成果が出たので、その後2016年秋から2020年夏までの4年間をかけて、大きく3つのSTEPでデータ分析基盤の構築とアプリケーションの移行を実施しました。現在は、既存機能改善やさらにアプリケーション移行を進めるフェーズになっています(下図参照)。
STEP1では、まずAWS上にデータ分析基盤を構築し、一部アプリケーションサービスを移行しました。具体的にはデータレイクとして各ソースシステムからデータ連携・格納する仕組みや加工処理機能としてSpark on EMRによる並列分散処理の仕組みを構築しました。
これらにより最新断面として品質が保証されたデータに簡易にアクセスができ、高速なデータ加工処理を容易に利用できる環境が整いました。
STEP1が完了した後はIQVIA様独自で別種類のデータもデータ分析基盤に移行されました。我々のサポートをほぼ必要とされなかったため、ブレインパッド側は同時期に並行してSTEP2以降の開発を進めていきました。
編集部 IQVIA・佐藤様にお聞きします。このような進め方は混乱を招くことが多いものですが、まったく問題は起こらなかったのでしょうか?
IQVIA・佐藤 光一氏(以下、佐藤氏) 円滑に進んだと思います。
理由は2つありまして、1つは早い段階で、データレイクの構成を含め運用ルールを明確に決められていたから。どのパスに何をどういう名前で配置するというルールがしっかりしていたので、独自にサービスを載せる際にも、迷うことなく効率的に進めることができました。
もう1つは、IQVIAが自走するためのスキルトランスファーがブレインパッドさんからSTEP1の後半でしっかりと行われたからです。
私も含めた運用メンバー全員に対して、しっかりと時間をかけたスキルトランスファー研修をしてくれました。資料はとてもわかりやすく、説明も丁寧でした。私からメンバーに伝えなくても、直接スキルの底上げをしてくれて本当に助かりました。
編集部 STEP2以降について、教えていただけますでしょうか?
西尾 STEP2では、クライアントが事前指定した条件でデータを抽出・加工する月次サービスをデータ分析基盤に移行しました。それまで丸々1週間かかっていたような処理が、並列分散処理化により、1日以内に完了するようになりました。
STEP3では、クライアントおよびIQVIA様社内のユーザーがWebのUIを通じてリアルタイムで分析条件を指定し、データを抽出・分析することができるアプリケーションサービスをデータ分析基盤上に構築しました。この結果、クライアントも社内ユーザーもそれまでより迅速かつ柔軟にデータを活用できるようになりました。
編集部 こうしたSTEPにおいて、パートナーであるブレインパッドはどう貢献したと思われますか?
佐藤氏 日々の運用業務をどうすれば楽にできるかは大きな課題です。またシステムの拡張を考慮に入れた運用設計をしていくことも重要です。ブレインパッドさんは、このような課題についてしっかり考慮した提案をしてくれるのでありがたく思っています。
IQVIA・林 恒一郎氏 技術的な面だけでなく関係者が多いという意味で、進め方が難しいプロジェクトでしたが、ブレインパッドさんのサポートのおかげで、オンスケジュールで遂行できました。要所要所で現時点での課題や検討事項を整理してまとめてくれたので、スムーズな課題解決ができました。我々の質問や相談に対しても的確に回答してもらえました。
西尾 IQVIA様はクライアントに最高のものを提供したいと高い意識をお持ちの企業様だと思います。そのため様々なご要望をいただきます。弊社はそれらを叶えたいという想いはもちろんあるものの、外からの視点としてそのご要望は目的に沿っているか、システムとして持続性・拡張性があるか、プロジェクトとしてのコストや期間を意識するようにしております。
これまでの取り組みを振り返ると、IQVIA様からのご要望や発生した課題に対して、必ず何らかのご提案をしてきました。さらにIQVIA様からもブレインパッドだけでは考え付かない案を頂戴することも多々あり、双方でディスカッションして最終的には当初案よりもより良いものが作れたと感じられた場面が多くありました。
IQVIA様と一緒に考え、実現に向けて伴走するパートナーとしてブレインパッドはみられているのかなと自負しております。
編集部 このようなデータ分析基盤を手に入れたうえで、どのような取り組みに着手されているのでしょうか?
西氏 今年から、「機械学習モデルによる売上予測サービス」(※)の提供を開始しました。
開発期間はPoCを含めて1年足らずです。このような短期間に売上予測という難易度の高いサービスを実現できたのは、必要なデータを簡便かつ迅速に取り出せるデータ分析基盤がなかったら考えられないことだと思います。
※IQVIAソリューションズ ジャパン×AI開発ストーリー対談
編集部 業界におけるデータ活用の現状はどうなっているのでしょうか?
西氏 業界では、自社でデータを集める入り口としてCRMやオウンドメディアの整備を進めてきました。そこに我々が提供するデータや自社の売上データなども加わることで、データは十分に集まってきていると言えます。
集まってきたデータをどのように統合し、アプリケーションをどのように組み合わせて活用し、アウトカムをいかに素早く検証するかが命題として重要になっています。
そして、我々テクノロジーソリューションズが今後提供していく価値には、3つの要素として説明できます。
3つの要素をクライアントに提供しつつ、クライアントと一緒にテクノロジー活用のロードマップを作成し、クライアントと一体となってDXを推進していきたいと考えています。
編集部 DX推進の案件化を進めるために、ブレインパッドにはビジネスパートナーとしてどのようなことに期待していますか?
西氏 データ基盤構築への引き続きのサポートはもちろんのこと、共同でクライアントに提案をしていただきたいと思います。そのように考える理由は、データ分析基盤構築プロジェクトを通して一貫していた「チームメイトとして一緒」に考えてくれてきたことによる信頼感が大きいと言います。それだけではなく、データ分析家集団としてのブレインパッドさんのスキルおよびノウハウと、自社製の各種アプリケーションの存在が大きなアドバンテージだと付け加えさせてください。
編集部 では、安良岡さんに。今後、どのようにIQVIA様を支援していきたいと考えていますか?
ブレインパッド・安良岡 史行 クライアントに本当に役立つものを届けることで『ヘルスケアや人々の健康の進展に取り組む企業を支援』したいという志を持つ会社様と一緒に仕事ができることをありがたいと思っています。
私たちも様々な切り口でデータを活用することで、多方面にビジネスを広げていきたいと考えていますので、ぜひとも一緒になってIQVIA様のビジネスを発展させるご協力をさせていただければ幸いです。
編集部 本日はありがとうございました。
※DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧下さい
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