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現在、Webサイトでは数多の商品・サービスが販売され、消費者は時間と労力を費やして適切なものを探し出さなければならない状況にあります。こういった状況で「どのようなプロセスで商品やサービスを選び購入するのか」という顧客体験の向上が必須の課題となっています。
最近では強調フィルタリングやAIを使ったレコメンデーションが発達し、ユーザーにマッチした提案ができるようになってきました。
野村不動産ソリューションズ株式会社様はユーザーに寄り添った新たな検索軸をWebサイトに実装することで、ユーザーの潜在ニーズを可視化し、よりスムーズな営業活動を実現させています。取り組みの背景や、今回リリースされた「ハッシュタグ・間取り図検索」と、今後のCX戦略の全体像などについて伺いました。
■登場者
※所属部署・役職は取材当時のものです。
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株式会社ブレインパッド・東一成(以下、東) みなさま、こんにちは。この度はブレインパッドのセミナーをご視聴いただきましてありがとうございます。本日のモデレーターを務めますブレインパッドの東と申します。よろしくお願いいたします。
本日のセッションは野村不動産ソリューションズ株式会社から小国(おくに)様、佐野様をお招きしてセミナーを始めたいと思います。みなさまどうぞよろしくお願いいたします。
野村不動産ソリューションズ・小国実樹氏(以下、小国氏)、佐野洋佑氏(以下、佐野氏) よろしくお願いします。
東 弊社では2016年から野村不動産ソリューションズ様のご支援しております。
現在はWebサイト上でのお客さまの体験向上は当たり前で、非常に重要になっています。不動産業界に限らず人材紹介業やECは、紹介したいものが数万、数十万とあり、消費者が時間と労力を使って適切なものを探し出さなければなりません。よって非常に苦労がある現状です。
そこで最近では強調フィルタリングやAIを使ったレコメンデーションが発達し、ユーザーにマッチした提案ができるようになりました。
そのような中で野村不動産ソリューションズ様はユーザーに寄り添った、新たな検索軸をWebサイトに実装されました。なぜそのような取り組みに至ったのか、今回リリースされたハッシュタグレコメンド、さらには今後のCX戦略の全体像についてお伺いしたいと思います。
では最初に小国様から野村不動産ソリューションズ様のご紹介をお願いします。
小国氏 はい、かしこまりました。弊社野村不動産ソリューションズは、個人のお客様の居住用不動産や企業オーナーの投資用不動産から上場企業・学校法人等の事業用不動産まで、さまざまなニーズにワンストップでお応えする総合不動産流通の仲介会社です。
2001年に野村不動産より分社独立して以来、不動産情報サイト「ノムコム」を運営しております。
東 はい、ありがとうございます。20年以上Webサイトを運用されていて、これまでお問い合わせいただいた数多くのお客さまがマンションや不動産をお探しにいらっしゃっている、ということですね。
続きまして、それぞれ簡単に自己紹介をお願いいたします。では小国様から。
小国氏 はい。私は2003年に入社いたしました。営業から始まりまして、営業企画・情報システム・人事・ホールディングス出向と、さまざまなレイヤーから当社のICT業務に関わり、 業務標準化や効率化、お客さまとのデジタル接点強化や体験価値向上などの課題に取り組んでまいりました。現在はリテール部門での営業企画で業務システムの利活用を推進しております。
東 ありがとうございます。20年にわたってほぼ全ての業務を見ていらっしゃったということですね。
小国氏 はい、結果としてはそうですね(笑)。
東 ありがとうございます。では佐野様、よろしくお願いします。
佐野氏 ありがとうございます。私は2015年に野村不動産ソリューションズに入社いたしました 。入社から2021年の9月までの約7年間、個人向けの仲介部門で営業活動をしておりました。現在はデジタルマーケティング推進部で、ノムコムの運用、特にSEOをメインに担当しております。もともと当社のデジタル部門に携わりたいという思いもありまして、営業からデジタルマーケティング推進部に異動になったときは非常にうれしかったですね。2年前ですが今でも覚えています。
東 ありがとうございます。7年間営業を現場でされていて2年前にデジタル部門に異動されたのですね。
佐野氏 はい、そうです。
東 小国様は営業企画、佐野様はデジタルマーケティング推進部の所属ということですが、「デジタルビジネス・ラボ」という横串の組織で連携しながらCXに取り組まれていると伺っております。
「ノムコム」でのCX戦略であるパーソナライズについてお伺いします。Webサイトにはさまざまなチャネルがあります。そういった中でユーザーが流入して、ノムコムの物件の詳細情報にいかにたどり着いていただくかが大事かと思います。
不動産情報サイトであれば問い合わせをもらったり、物件を見に来ていただいたり、ECサイトであれば購入していただくことが大切です。目的が問い合わせや物件を見ること、購入になりますので、いかにコンバージョンを上げていくかが重要になります。
SNSで欲しいものを探したり、Webサイトを見たりと、最近は消費者の行動変化が起きています。物件の価格もどんどん変動し、東京だと価格が上がりっぱなしなど、行動変化の難易度が上がってきていると思います。
このような中でCXの改善をして詳細ページの導線を増やしたり、サイト内をより回遊していただいたりするためにノムコムではどのような工夫をされているのでしょうか?
佐野氏 おっしゃる通り、Webサイト上でのユーザーの動きも変わってきています。
昔は不動産購入相談、物件お問い合わせ、見学予約など、お問い合わせにもいくつかの種類がありました。以前は資料の一括請求が多く、1ユーザーが何件も資料請求し、資料を受け取ってからどの物件を見学するか判断されていました。
最近はWebサイト内をご自身で回遊されて、物件の詳細ページに飛び、その中である程度判断をしてから気になった物件に対して見学予約を入れていくという動きに変わりました。
ノムコムとしては写真、コメント、動画コンテンツが充実しているという強みがあります。ノムコムの中で情報を収集して、ある程度判断ができているのではないかなと思っております。
東 はい、ありがとうございます。資料を請求して紙でじっくり見比べるスタイルから、デジタルツールで動画を見たらすぐ予約するといった消費者の行動もだいぶ変化してきているのでしょうか?
佐野氏 はい、そうですね。
東 ありがとうございます。そういった中では、物件の見せ方が重要かと思いますが、Webサイトにおける魅力づくりはどのようにされていますか?
佐野氏 そうですね。Webサイト上でユーザーがある程度判断をするようになってきた点があります。当初からノムコムの強みである豊富な写真やコメント量と、動画コンテンツで部屋をきれいに見せていくという2点を強化する必要があると感じております。
物件を探し始めたばかりのお客さまから購入・売却後のお客さままで、どのステージにいるお客さまに対しても役に立つ情報を掲載中です。例えば、コラムコンテンツもかなり充実させています。私自身、SEOを担当しており、検索ニーズの高いワードをうまく絡めたコンテンツを実装しています。
東 ありがとうございます。物件購入後は住宅ローン控除の方法など、不動産サイト様の発信している記事が非常に役に立ちますよね。そういったコンテンツを充実させていらっしゃるのかなと思います。
SEOをされているということでしたが、逆にお客さまに合った情報を提示するパーソナライズという観点で何か工夫されていることはありますか?
佐野氏 弊社で行っているのは「あなたへのおすすめ物件のレコメンド」です。もちろん(ブレインパッドの)Rtoasterの「レコメンド機能」を使わせていただいています。過去のお問合せ履歴と近い物件が販売されたときはお知らせが届くようになっています。また、サイトに訪れたユーザーの希望条件をご登録いただくことで、条件の近しい物件を表示させご提案しております。
あとはできるだけユーザーが考えることなく「こんな物件もあるのか」と、なんとなく見ていただけることが非常に重要だと思っております。
このあと新コンテンツとして話をします「ハッシュタグ・間取り図検索」はWebサイト内を回遊しながらお客さまが自分でも気づいていないニーズを引き出すコンテンツです。また後ほど説明させていただ きます。
「レコメンド機能」を入れたことでお客さまの閲覧履歴のデータをもとに、表示コンテンツが最適化され、サイト内の回遊率が上昇しています。また、さきほど申し上げた「あなたへのおすすめ物件メール」の配信回数も増え、顧客接点の増加につながりました。
東 ありがとうございます。かなりいろいろな工夫をされていらっしゃいますね。やはり買ったあとに「もっといい物件があった」とならないようにされているのだと思います。
東 次にWebサイト訪問者には問い合わせや資料請求といった行動を取ってもらうということが必要だと思います。例えば、途中で一度検索が止まり、離脱された潜在的な新規顧客がいるとします。ゼロベースで来るお客さまよりも一度Webサイトに訪れたお客さまの方がコンバージョンしやすいので、潜在的顧客へのアクセスが非常に重要だと思っております。
潜在的顧客へのコミュニケーションはどのようにされていますか?
佐野氏 一度離脱したお客さまに対しては「あなたへのおすすめ物件」メールの配信、過去の反響があった物件に近い物件情報を配信しております。それによって顧客接点の増加を図っており、ノムコムがお客さまの目に留まるよう有益情報をお届けしております。
2021年にCRMのシステムを変更し、見込み顧客と営業現場で別々に管理していたデータを統合しました。それにより、反響の見込み顧客が一元管理できるようになり、営業自身でメール配信等の見込み顧客へ向けた情報発信が可能になりました。結果的に顧客接点の増加に加え、お客様ニーズに合った鮮度の高い情報を届けられるようになっております。
東 ありがとうございます。データを統合することでデジタルが営業担当の「相棒」になっているのですね。
例えば、日用品だと頻繁に購入するので周期的な予測可能という点があります。しかし、不動産となるとかなり長いサイクルになります。通常のマーケティングとは違ったご苦労をされていると思うのですが、この点はいかがでしょうか?改善はどのようにされましたか?
佐野氏 はい、そうですね。「なかなか決めきれない」「物件のどこを見たらいいのかわからない」「どうやって探したらいいのかわからない」という方に対しては、ノムコムがこだわって実装した「ハッシュタグ・間取り図検索」を紹介しております。
検討する期間の長短は様々で、「あら、素敵」と即決する方もいらっしゃれば、数年悩まれる方もいらっしゃいます。物件ありきで判断される方に関しては物件情報をいかに多く掲載できるかが重要だと思っております。
一方、物件をどう探していいかわからない方に関しては、Webサイト上でユーザー自身の「気づき」を創出できる様に、自分の希望条件をより多く具体化する流れを作っています。
東 ありがとうございます。「何が欲しいかわからない」と悩むユーザーのために気づきを促す――。なかなか大変な仕組みをチャレンジされていると思います。
東 今回、ハッシュタグを使って住まいや暮らし方のこだわりを言語化という仕組み作りをされました。新しい検索軸の開発について小国様にお伺いします。
最初にハッシュタグ(#)検索という新しい検索軸を開発した、組織横断の「デジタルビジネス・ラボ」についてお伺いします。「デジタルビジネス・ラボ」を立ち上げた背景について教えてください。
小国氏 「デジタルビジネス・ラボ」は7年前に始まった組織横断型のプロジェクトチームです。前身は「ICT活用ラボ」という組織で、「ICTを活用して何か面白いことはできないか」と役員の声かけがあり、若手社員や中堅社員が集まりました。ラボではデジタル技術を活用してR&D的に中長期的な課題に対しアイディアをみんなで持ち寄ることを続けております。
4年ほど前に「デジタルビジネス・ラボ」と名称を変えCX戦略やお客さまのデジタル接点強化に重点をおくラボになりました。昨年度は8テーマを立ち上げ、テーマごとに担当役員とリーダーを置き活動を進めてまいりました。活動内容や進捗については、月に1度の役員への報告と、3カ月に一度の経営会議で、テーマごとに報告する場がございました。
今回の「ハッシュタグ・間取り図検索」の他にも、「デジタルビジネス・ラボ」では次のような成果が上がっております。
まず「マンションデータPlus」は、マンション所有者の方へのリーチと現場での査定業務の効率化、負荷軽減に着目したコンテンツです。オフラインでのリーチが多かった法人向けのコンテンツ「CRE-NAVI」や、コロナ禍でデジタル接客のあり方を模索し、ウェビナーを開催するなどといった活動結果が出ております。
東 お話を聞いて非常に良いと思ったのが役員の声掛けで新しいことをやってみようという点ですね。組織が統合されており、上からの声なので当然やれる。7年前、さらに4年前から実務に応用してきちんと定期的に報告しフィードバックを行っています。
役員の声かけで7年続いているというのは、新しいことを始めようという会社様の参考になるのではと思いました。
東 では、次に新しい検索の仕方として弊社のRtoasterを使った「ハッシュタグ・間取り図検索」について伺います。このサービスはアイディアや仮説などがあったと思いますが、どのような目的があって生まれたのですか?
小国氏 もともと物件検索の新しい可能性を探索していたという経緯がありました。「ノムコム」ではお住み替えをしたいお客さまの希望を実現させてきました。その一方で、中には自分のこだわりがうまく言語化できず、欲しいものがまだ見つからないというお客さまもいるのではないのかと考えました。
そこでお客さまの「こだわり」を言語化できないか検討したところ、物件の画像に着目しました。画像AI技術を活用して間取り図を解析し、特徴を抽出し、それを言語化した形でお客さまにご提案するサービスを作ろうと企画が進みました。
東 どうしてもわれわれが物件を探すときは「3LDK」「インターネットつき」「ベランダつき」などスペックで探します。何がベストなのかわからないまま探しているので、それを言語化したら良いのではないかという仮説から作られたのですね。
例えばこだわりとか好みとかがあるかと思いますが、具体的に進めていくうえでどういった課題がありましたか?
小国氏 プロジェクトを進めていくうちに、物件の特徴を言語化するだけでは、まだお客さまが希望の物件までたどり着けないのではないかという課題が見えてきました。
例えば、「この物件はシューズインクローゼットがありますよ」とお客様にご提示するだけではこだわりを言語化するには足りません。営業担当が現場でご提案をするとき、乳幼児のお子さんがいらっしゃるご家庭には「シューズインクローゼットがあればベビーカーを収納できるから便利ですよ」といった、プラス要素を話しています。
また、玄関から洗面所に直行できる間取りであれば、コロナ禍においては「家族の感染対策ができる間取りですよ」といった、物件の特徴をより暮らしのこだわりに落とし込んだ提案します。そこで初めてお客さまは「自分のこだわりがここなんだな」とわかるのではないかと考えております。
さらに当社はブレインパッドさんにご相談して、こだわりをランキングで表示できるようにいたしました。これによって、見れば見るほど自分のこだわりがランキングで出てくるようになります。さらに言うと「こういったところもあなたには気になりませんか?」「こういったところにこだわりがありませんか?」と関連タグを表示できます。これにより自分の中のこだわりを取捨選択できるのです。「これが優先度高いな」というこだわりが可視化される――。このような今までにないような検索体験をすることでお客さまの抱えている課題、つまりどう検索していいかわからないという課題に落とし込んでいけるのではないかと考えました。
東 検索していくうちに次第に気づきを得られていくのが非常に良いと思いました。シューズインクローゼットの例のように、これがあることで日常生活がどのように便利になるか、ベネフィットも一緒に提示されていらっしゃるのですね。
小国氏 営業担当など不動産のプロからすると、間取りの特徴によるベネフィットが当たり前につながります。ただ、一般のお客さまからすると、ベネフィットをよりわかりやすく補足をしないとつながらないことも見えてきました。そのベネフィットの補足部分をコンテンツにしたのです。
東 ありがとうございます。実際に新しい検索軸を試行錯誤して開発されたということですね。
さらにハッシュタグ・間取り図検索の取り組みについてお伺いします。実際にどういった仕組みなのか、ご説明いただけますでしょうか?
佐野氏 今回「ハッシュタグ・間取り図検索」の専用LPを制作しており、「ハッシュタグ検索」と「間取り図検索」の2つのコンテンツから成り立っております。
まずハッシュタグ検索について説明します。不動産サイトには条件検索があると思いますが、ノムコムにもこだわり条件検索というのがあり、それをハッシュタグに変えました。例えば、カウンターキッチン、シューズインクローゼット、高層階などの条件がハッシュタグになっております。ハッシュタグを選択すると、カウンターキッチンが含まれている物件一覧に飛べるなど、サイト内を回遊できる仕組みになっています。
検索窓もあり、文字を入力すると関連するハッシュタグが画面上に出てきます。検索バーの下には「みんなのこだわりハッシュタグランキング」があり、アクセスランキングが表示されます。そのページ下には「あなたがよく見ているハッシュタグランキング」と「あなたにおすすめのハッシュタグ」を見られるようにしました。この2つはRtoasterを利用し、ランキングを出しております。
初回訪問のユーザーは、最初は何も表示されません。ただ、物件をいくつか見ることでおすすめ関連のハッシュタグが出てきます。
次は、間取り図検索について説明します。物件の間取り図にハッシュタグがついています。例えば「テレワーク・学習に集中しやすい間取り」というハッシュタグをクリックしてもらうとタグづけされた物件の一覧画面に移ることができるので、サイト内を回遊していただけるのです。
間取り図は部屋や壁などの領域と動線についてAIで解析しています。AIで物件の特徴を解析・判定し、今度はラボのメンバーがユーザーの生活を想像してハッシュタグを考えました。
例えば、「#乳幼児と暮らしやすい間取り」「#家事導線がスムーズな間取り」「#テレワーク・学習に集中しやすい間取り」というように、マンション・戸建てそれぞれ11個のハッシュタグを作っています。
東 ありがとうございます。探せば探すほど自分のこだわりが可視化して探しやすくなっていくということですね。
ハッシュタグ検索によってどういったユーザー体験ができるのでしょうか?
小国氏 今回狙いの一つとして若年層へのリーチがあります。スマホでタップすれば、物件探しができるようにしました。
また中長期的にずっと探し続けているお客さまや、どこを見ていいのかわからないお客さまなどは楽しみながらウィンドウショッピングをしていくような感覚で物件探しができます。
そうやって物件を見ていくと次第に理想の物件がわかってくる、という見せ方ができたらいいなと思っております。
東 探せば探すほどフィードバックを得られるということですかね。
パーソナライズすることでお客さまにとって良い体験を築き上げていくということですね。今の消費者は時間がないので迷ったりする時間があまりありません。後から「こちらの物件のほうが良かった」といったことが最小限に防げるのではないかと思います。
東 次に、顧客体験向上についてお伺いします。やってみたいことや他社との優位性とかはいかがでしょうか?
小国氏 「ハッシュタグ・間取り図検索」でお客さまのこだわりがデータ化され蓄積されていきますので、今度はそれを不動産の売却を検討されている売り主さまにも活用したいです。お客さまにとって大切な不動産ですので、その魅力を最大限にアピールできるよう活かしていき、あわせて営業現場では提案やヒアリングに活用していきたいと考えております。
東 ありがとうございます。ただコンピューターに膨大なデータを保存しておくだけだとコストがかかってしまいますが、営業現場でも利用することで、データを有効活用されていかれるということですね。
佐野様が次にやってみたいことは、どのようなことでしょうか?
佐野氏 サイト内での情報をさらに充実させてWebサイト上でお客さまが希望物件にたどり着く導線を整理し確保していければと思っております。
物件探しだけではなく、必要な情報を必要なときに引き出せるWebサイトとして立ち位置を確立していきたいと考えています。
東 CX戦略、パーソナライズ、新しい検索などお話いただきましたが、チャレンジをしたり、新しいテクノロジーを利用したりすることで何か気づきはありましたか?
小国氏 デジタルビジネス・ラボの活動を通してお客さまの気持ちにより深く気づくことができました。ノムコムも検索に関しては、改善を繰り返しており、探しやすさといった点で問題はないと思っていました。一方で、成約されていないお客さまがいらっしゃるので、すぐに希望条件がクリアになっているわけではありません。
今回のように顧客視点でのコンテンツを制作することの重要性を強く感じました。この「顧客視点で」という観点はこの先も色々なシーンで大切ですし、こういった目線で活動していかないとこの先のCX戦略が描けないと感じております。
東 ありがとうございます。もう一つお伺いしたいのは、テクノロジーとかAIが全てやってくれるようになって、自分で仮説をあまり立てなくなるのではないかという懸念点があります。データを蓄積していくことで得られた知見はありますか?
小国氏 エンドのお客さまと現場の常識にかなり隔たりがあることに気づきました。それは非常に新鮮な発見でした。我々も隔たりに気づかないまま営業活動をしがちです。お客さまが何を考えていてどう困っているのかということを一歩下がって見る目線が必要です。こういった気づきがあちこちに眠っているのではないかと思いました。
東 ありがとうございます。消費者側と売主側では認識にギャップがあることを再認識されたということでしょうか?
小国氏 そうですね。世間は物件検索をノムコムからではなくて、Googleからスタートしているとか、ユーザーはどこから始まっているかなどの気づきは大きかったです。
東 佐野様はいかがですか? 気づきだったり、得られたりしたことなどはありましたか?
佐野氏 営業時代はノムコムが弊社の一番の強みという確信もあり、「こういう風に使われているはずだ」という考えがありました。
サイト内でお客さまが回遊してそのまま成約までいく、というのが理想ではあるものの、運営する立場になってみると、そこまでの判断ができないお客さまが多くいらっしゃることがわかりました。
普通のECサイトと違い不動産業の場合は、営業スタッフに会って実際に物件を見てという流れになりますので、サイト内である程度物件選びをしていただけるよう、コンテンツの充実が非常に重要だと考えております。
物件に対する判断基準がまとまっている方が営業スタッフに伝えやすいし、担当も対応しやすいので一石二鳥だと思います。
言うならばお客さまとの関係づくりですね。ノムコムでお客さまに選択の道筋を作っていきたいです。
東 ありがとうございます。ノムコムのCX戦略によって営業フェーズでは昔との違いが出ていますか?
佐野氏 サイト内で物件を詳細に見ている方が増えてきたので、問い合わせが少なくなっていることが挙げられます。Webサイトの質は上がってきていると思いますので、具体的に物件を考えている方が見学予約に進んでいる、といった声を営業担当から聞いています。
東 消費者は可能な限り自分で情報を集めていて、なるべく営業担当に連絡するのは面倒というところがあるのではないかと思います。今のお話をお伺いすると、消費者に欲しい情報をきちんとお届けしているかと思います。自分で意思決定できる情報を届けているので、テクノロジーの使い方としてはいい形だと思いました。
今日は貴重なお話をしていただきました。小国様、佐野様、本当にありがとうございました。
小国氏・佐野氏 ありがとうございました。
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