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※本記事は前編パートになります。
2022年10月に設立されたしずおかフィナンシャルグループ(以下、SFG)では、第1次中期経営計画における重要ファクターの1つ「データ利活用の高度化」プロジェクトを、2024年度より、りそな銀行をはじめとするりそなグループ・株式会社ブレインパッドの共同支援を通じ静岡銀行内で本格展開されています。
参考:静岡銀行におけるデータ利活用の高度化に向けた取り組みについて
参考:株式会社ブレインパッドと株式会社りそなホールディングスの資本業務提携について
そこでDOORS編集部は、本プロジェクトに携わる3社の主要メンバーを一堂に会して、静岡銀行のデータ利活用高度化プロジェクトの内容と地方銀行特有のDX推進の課題や将来展望などについてインタビューを実施しました。
※後編はこちら
【後編】静岡銀行のデータ利活用高度化の取り組み-「ビジネスに始まり、ビジネスに終わる」を、「あるべき姿」より「目指すべき姿」を徹底
DOORS編集部(以下、DOORS) 最初に簡単な自己紹介と今回のプロジェクトでの役割について教えてください。
静岡銀行・榎本裕己氏(以下、静銀/榎本氏) 経営企画部DX戦略担当部長兼DX戦略推進グループ長の榎本と申します。本プロジェクトを立ち上げた責任者です。
静岡銀行・鍋田直也氏(以下、静銀/鍋田氏) 経営企画部DX戦略推進グループデータサイエンス統括室の室長の鍋田と申します。データサイエンスに関する施策を統括する立場です。
静岡銀行・大村浩輔氏(以下、静銀/大村氏) 経営企画部DX戦略推進グループデータサイエンス統括室課長の大村と申します。プロジェクト開始当初から主要メンバーとしてプロジェクトを推進してきました。
りそなホールディングス・大西雅巳氏(以下、りそな/大西氏) データサイエンス部部長の大西と申します。りそな側の責任者として、本件に参画しました。
りそなホールディングス・澤田英樹氏(以下、りそな/澤田氏) データサイエンス部グループリーダーの澤田と申します。アドバイザーとして施策や組織に関する提言をいたしました。
りそなホールディングス・石井朝花氏(以下、りそな/石井氏) データサイエンス部の石井と申します。今回のプロジェクトでは、Tableauによるダッシュボード開発をサポートいたしました。
株式会社ブレインパッド・西村順(以下、BP/西村) 常務執行役員の西村です。今回のプロジェクトでは、ブレインパッド側のプロジェクト責任者を務めております。
株式会社ブレインパッド・荻原伸平(以下、BP/荻原) コンサルタントの荻原と申します。りそな様、ブレインパッド側のプロジェクトマネージャー(以下PM)として、現場のマネジメントをしています。
株式会社ブレインパッド・木下湧気(以下、BP/木下) コンサルタントの木下です。今回のプロジェクトでは個人顧客分析をご支援しました。
DOORS 今回のプロジェクトの概要について説明をお願いします。
BP/荻原 一言で言えば、静岡銀行様のデータ利活用の高度化を支援していくプロジェクトです。りそな様とブレインパッドが共同で支援するところが特徴的かと思っています。現状の課題やゴールを明確化する構想策定からスタートし、早速いくつかのデータ分析施策に実際に取り組んできました。今後は施策数や組織規模を拡大し、本格的なビジネス効果の獲得を図っていきます。
DOORS ブレインパッドとりそな様の共同プロジェクトは何件目になりますか。
BP/荻原 百十四銀行様の案件に続いて、2件目です。
【関連記事】
百十四銀行×りそなHD×ブレインパッド。「地銀DX」の裏側と、3社のパートナリングがもたらす地域経済活性化
DOORS 静岡銀行の親会社にあたるしずおかフィナンシャルグループ(以下、SFG)様では、第1次中期経営計画で、顧客接点や人財*等を変革し将来の成長につなげていくトランスフォーメーション戦略を掲げておられます。実現に向けた重要ファクターとして「データ利活用」を挙げているということで、本戦略の概要とデータ利活用の位置づけ、その役割について教えてください。
*SFGでは「人材」を「人財」と表現している。
静銀/榎本氏 SFGは、2022年10月に持株会社として設立された会社です。2023年度から開始した第1次中期経営計画において、「未来へつなぐ新たな価値を創造する課題解決型企業グループ」を目指すために4つの基本戦略に取り組んでいます。そのうちの1つが、トランスフォーメーション戦略です。
これはデジタル技術やデータ活用によって、グループ全体に根付いていた業務上のさまざまな制約を撤廃して、タッチポイント(顧客接点)、営業、人財、経費の4分野を変革していく戦略です。それぞれをタッチポイントX*、営業X、人財X、経費Xと呼んでいます。
*X:transformation(トランスフォーメーション)
その中でもタッチポイントXと営業Xを通じて、お客様への提供価値や業務生産性の向上につなげていきたいと考えています。
タッチポイントXでは、非対面チャネルの機能を拡充して、時間や場所を問わないサービスを提供し、お客様の利便性向上に取り組んでいます。たとえばスマホアプリやホームページの高度化・最適化など。
営業Xは、対面・非対面の各チャネルで収集した情報を分析して、お客様一人一人のニーズを把握し、最適な情報や商品サービスの提供につなげていきたいと考えています。
DOORS どのような情報を収集・分析しているのでしょうか。
静銀/榎本氏 ホームページへの訪問情報、対面チャネルで収集した情報、ネットバンキングのトランザクション情報などです。これらを組み合わせることで、お客様理解の解像度を上げていく取り組みをしています。法人顧客につきましては、S-CRMというSFAツールからのデータ収集・分析することで理解を深めていく取り組みを始めたところです。
DOORS 「業務上のさまざまな制約を撤廃し」とありましたが、具体的にはどのような制約があったのでしょうか。
静銀/榎本氏 例えば「紙の書類の提出」というような、いわゆる古い企業文化・風土です。また地方銀行では、営業の「経験」と「勘」を非常に重視する文化がありますので、それをデジタル技術でより確たる営業活動に昇華させることも含まれますね。
DOORS りそな様は、静岡銀行様のこういった取り組みに関して、どのように感じておられるのでしょうか。
りそな/大西氏 強く共感しています。当社の中期経営計画も昨年から3年間でスタートしていますが、考え方が静岡銀行様と似ていまして、「コーポレートトランスフォーメーション(CX)に取り組む最初の1,000日」と位置づけております。
その2大テーマとして「価値創造力の強化」と「経営基盤の次世代化」に取り組んでおり、データ利活用の領域は価値創造力の強化の一環になっています。
しかしよく考えてみると、データサイエンスはすべての分野に関わっていて、大きな意思決定や業務改革・改善のための基礎データにもなっています。つまりデータの利活用を通じて、銀行はその使命を果たしていくことができるわけです。地方銀行もデータ利活用を通じてトランスフォーメーションを実行することで、お客様や地域に対して新たな価値を提供し、それが世の中のためになっていくという意義があると感じています。それが共感している大きな理由ですね。
DOORS ブレインパッドを代表して、西村さんはどう感じていますか。
BP/西村 ブレインパッドは創業以来、「データの活用を通じて持続可能な未来を作る」というコーポレートミッションを掲げて活動している会社です。ですから、先ほど榎本さんがおっしゃった、トランスフォーメーション戦略を地域の活性化につなげていきたいということに非常に共感しております。データの活用に関する専門集団としての貢献を期待され、今回ご縁をいただいていると理解しています。
経験と勘による意思決定が間違っているということではなく、それらをデータで正確に裏付けながら細かく理解を進めていく。これを繰り返すことでより精度の高いアクションが起こせるようになっていく――こうした体験を通じて意思決定のプロセスを少しずつ刷新いただき、経営者の意思決定やデータ活用に触れる皆様の行動変容を促したい、貢献していきたいという思いで私たちも活動しています。
DOORS 今回のプロジェクトがりそな様とブレインパッドをパートナーとして行われることになった背景や経緯を教えてください。
静銀/榎本氏 第1次中計の実現に向けた施策検討をしていた2022年の11月、当社役員がりそな様開催セミナーに参加したことがきっかけです。セミナー講演者の伊佐真一郎さんの「重要なのは『ビジネスに始まり、ビジネスに終わる』ということ。データ分析というのはビジネス課題を解決する手段である」と言う発言に特に影響を受けました。
また、りそな様の取り組み拡大スピードにも着目しました。2019年に3名で立ち上げて、2023年には50名まで陣容を広げられていて、スピード感の伴ったりそな様の行動を参考にさせていただこうと思っていたんです。
その後、りそな様の取り組み内容についていくつかサジェスチョンをいただき、成果につながるデータサイエンスの取り組み領域をデジタルマーケティング、経営管理、営業推進などにしていこうと、方針が大まかに決まっていきましたね。そこからデータ利活用で目指すべき姿のイメージを検討し、課題の明確化へとつながりました。
ここまでテーマが大きくなると、やはりその道の専門家が必要であると考え、2023年7月からりそな様・ブレインパッド様に参画いただき、構想策定からスタートしました。
その過程で、りそな様からは成功体験をおうかがいしただけでなく、成功するまでに多数の失敗を繰り返してきたこと・小さな成果を愚直に積み重ねてきたこともおうかがいしました。かつ、それらを経営陣に理解してもらわなければサステナブルな取り組みにならないことも教わったのです。
金融機関の間では、こういったリアルな情報はなかなか共有されないので、私としては大変感激してしまいまして。そういった経緯で、りそな様とブレインパッドの両方から支援してもらうことが最速だと考えた次第です。
DOORS 大村様、補足することはありますか。
静銀/大村氏 りそな様は失敗した事例等の他行に話しづらい内容を含め、本音レベルでお答えいただいている熱がとても印象的でした。そこから私たちの方向性がクリアになったのもあると思います。
外部のパートナーを検討しているときも、りそな様とブレインパッド様が業務資本提携をしていることと、りそな様からもブレインパッド様の良い評価を聞いたことがブレインパッド様を選んだ理由として大きかったです。
静銀/榎本氏 他のベンダーやコンサルファームからもお話を伺い、様々なご提案をいただいておりましたが、早期に金融機関実務で成果を挙げるといった点で、一番リアル感があったのが、りそな様とブレインパッド様の提案でした。
BP/西村 いま、静岡銀行様は「目指すべき」というキーワードをおっしゃられましたが、私はこの言葉がとてもいいなって思っていまして。このような改革テーマにおいてはよく「あるべき」という言葉を使うケースが多いと思うのですが、「あるべき」はあまりにも理想的すぎてどのように進めれば良いのか分からないケースが多い。全員に”野球人なら大谷翔平があるべきだ”と主張しても、言われた側は具体的な努力のイメージが湧きません。同様に、どの企業にも同じ「あるべき」を振りかざすのは簡単ですが、それだけでは体も気持ちも動かない、というのが持論です。我々も普段社内で「あるべき」と「目指すべき」は明確に使い分けるように、と話をしています。
とはいえ、ブレインパッド単体で「目指すべきもの」を提案しても、なかなか腹落ちしてもらえません。実際に自分ごととして経験し、プロジェクトの落とし穴や、失敗してもその先にポジティブな変化があるというリアルなお話ができるりそな様と一緒に提案できることで、「目指すべき」提案がより説得力を持つものになるのですね。そこにりそな様と私たちが協業する大きな意味があると考えています。
DOORS りそな様が他行を支援している理由を教えてください。というのも、銀行同士で協業するケースはあるにはあると思うのですが、基本的には「競合」の立ち位置になることが多いです。にもかかわらず、支援する立場としてプロジェクトに参画された理由は何なのでしょうか。
りそな/大西氏 私たちの目指す姿の1つに「金融デジタルプラットフォーム」という考え方があります。これは、私たちのお取引先の皆様だけではなく、地域金融機関およびそのお取引先の皆様、優れたソリューションをお持ちの企業様等、あらゆる関係者と協業したい、という考え方です。システムに加え「思想」としての意味も含む共創型のプラットフォームです。
もちろん同じ金融機関として競合する場合もあるかもしれませんが、それは各々の商圏で各々の特長を出していけば良いと思っています。それよりも私たちは、今回の取り組みのように「共創」によって大きなインパクトを生み出せる領域もあると信じているんです。りそなが先に経験した失敗も含めた取り組み事例を共有することで、他行もスピードアップでき、生まれた時間を使って付加価値を生んでいければ、日本全体の活性化やサステナブルな社会の実現につながっていくと思うのです。金融デジタルプラットフォームには、こういう大きな構想がまずあります。
そのうえで、当プロジェクトに参画したことによるりそなのメリットを3つ実感しています。1つは、当プロジェクトに携わった当社人財の育成につながったこと。2つ目は、他社の組織に入り、他社の事例を間近で見て、私たちの組織としての取組みに新たな自信をつけられたこと。3つ目は、私たち自らの組織をより客観的に評価できたこと。
これらはたいへん貴重な経験となりますので、当プロジェクトに関わらせてもらったことをとてもありがたいと思っています。
DOORS 惜しみない情報共有が、実はりそな様にとっても恩恵が得られるのですね。
りそな/大西氏 私たちだけでなく、銀行業界全体で恩恵が受けられると思います。例えば、そんな銀行は存在しませんが、仮に「紙の伝票しか扱えない銀行」があったとしたら、それは私たちの余分な手間が増えることになります。ステークホルダーのうち一方が非効率的になると、全体的な非効率につながるのです。
逆に銀行業界全体が効率化されれば、社会全体が最適化され、より良い社会の実現が図れます。そうすると私たちにも当然、何らかの還元があるはずなので、その信念を曲げずに取り組んでいます。
静銀/榎本氏 楽天様やヤフー様など、もとは他業種だった企業グループが続々と金融領域に参入していて、金融機関のコンペティターがもはや金融機関だけではなくなったのも大きいですね。金融機関全体のプレゼンスを上げていかないと、他の業界には勝てません。これもまた、銀行業界全体の効率化を図らないといけない理由ですね。
DOORS ここからは、プロジェクトの内容についておうかがいさせてください。プロジェクトはどのようなステップで進んでいったのでしょうか。また、それぞれの会社の強みを生かすために、どのように役割を分担されたのでしょうか。
BP/荻原 フェーズ0、フェーズ1、フェーズ2の3つに分けて進めており、現在はフェーズ2に入ったところです。
フェーズ0は「構想策定」です。現状を理解するためのアセスメントから始めて、りそな様をベンチマークにしたフィット&ギャップ分析を実施。その上で「目指すべき姿」を明確にし、計画に落とし込みました。
役割分担としては、ブレインパッドがプロジェクト全体の設計やディレクションを担い、りそな様からは、施策事例や成功/失敗エピソードを提供いただきました。
DOORS フェーズ0でのアセスメントは今回のために独自に設計したものですか、それとも既存の定型的なアセスメントを活用したものですか。
BP/荻原 アセスメントで調べるテーマは体系的なものですが、ただその中でディスカッションする内容や見出される課題は独自のものになりますので、目指すべき姿や計画の内容は当然変わってきます。
DOORS わかりました。続けてフェーズ1の説明をお願いします。
BP/荻原 フェーズ1は「施策実施」です。短期間で企画から実行まで通せて、結果を確認できそうな施策をいくつか実施しました。
また、必要なタイミングで研修プログラムを提供したり、機械学習のための分析環境を立ち上げたりしました。
役割分担としては、ブレインパッドが分析施策の伴走、研修講師、環境整備の立ち上げを担いました。りそな様には、自行で取り組み実績がある施策の分析伴走を担当いただきましたが、その際、ダッシュボードのデザインやモデルの設計内容などを惜しみなく提供してくださったおかげで、高品質なボードやモデルを短期間で構築することができました。
DOORS 実績のある施策とは、たとえばどんなものでしょうか。
りそな/澤田氏 たとえばNISAの需要予測です。必要なデータは入出金データ等銀行にとって一般的なデータなので、確実にデータ活用ができると思いました。また、最初の打ち手ということもあり、スキルトランスファーするのに適切な施策であるとも判断したので、このあたりはかなりこだわりましたね。
DOORS フェーズ0から1についての概要は理解できました。では、フェーズ0の構想策定ではどのような課題が洗い出されたのでしょうか。また、課題を洗い出すまでの過程についても教えてください。
静銀/大村氏 りそな様とブレインパッド様の2社から、データ利活用関連部署に、計17コマのヒアリングを実施してもらいました。1コマあたり1時間半~2時間で、施策・組織・人財・IT環境の4つの軸で現状の把握に努めました。
それ以外にも裏で個別にミーティングをしたり、正直、良い意味でしつこいなあと思うぐらいのヒアリングを受けましたね(笑)。その後課題を洗い出し、りそな様という明確なベンチマークを置いてフィット&ギャップ分析を実施したという流れです。
そこで洗い出された課題ですが、まず施策面では組織横断的、チャネル横断的な施策を企画・実行する体制ができていないことが挙げられました。基本的に部署単位や商品単位で施策をスポット的に実施していたので、そこは変えていく必要があるだろうと。
組織面では、データ利活用の全体戦略を描く部署がない点です。戦略部隊がいなければ、全体最適がなされません。
人財面では、データ分析や利活用を進めていく専門人財のスキル要件、評価基準、キャリアパス等が未整備で、体系化されていない点に言及いただきました。必然的に専門人財の採用・育成も課題に含まれました。
IT環境面では、現状利用している分析ツールから見られるデータベースが限られている等、システム環境の更なる改善をご指摘いただきました。
ちなみにこれら4つの中で、りそな様と最も大きなギャップを感じたのは「人財」です。 量と質ともにかなりの差があると痛感しましたし、できるだけ早く追いつかなければならないという危機感を、以前よりも増して抱きました。
DOORS 課題が明確になると、嬉しい反面、これだけたくさんの課題が挙がれば正直心が折れそうになりませんか。
静銀/大村氏 いえ、むしろ心が晴れました(笑)。プロジェクトに取り組む前は、現状を変えなければならない焦燥はあったものの、具体的に何に問題があるのかが明瞭ではなかったんです。それがこのフェーズ0を通して、課題が明確に言語化されました。どこに向かって前進すればいいのか、道しるべが見つかった感覚です。
静銀/榎本氏 このプロセスにおいて苦労する場面も多くありましたが、そのおかげで、今まで個別最適で良しとしていた各部署が「こういう課題もあるよね」とか「ああいうこともできないかな」と相談・提案を持ちかけてくれるようになったんです。こういった一コマから組織横断的な変化を少しずつ感じられましたし、そのきっかけはこれまでの取組みプロセスにあり、かつそれをブレインパッド様が支えてくれたと感じています。
静銀/大村氏 榎本の言う通りで、ブレインパッド様は業務所管部への相談にも同行してくれたので非常に心強かったです。私だけが何かを言っても共感が得られない場面も多くありますが、ブレインパッド様が一緒に汗をかいてくれたので、その分、業務所管部も話を聞いてくれたのだと思います。
DOORS 先ほど静岡銀行様からいくつか課題を挙げられましたが、りそな様も同じような課題は当時お持ちだったのでしょうか。
りそな/澤田氏 はい。私たちが前身のデータサイエンス室からデータサイエンス部に格上げとなり、本格的にデータ活用の取り組みを始めたのは3年前ですが、当時は同じような課題を抱えていました。他のお客さまでは「データ分析を手掛けなければならない。ついてはまずPythonを覚えよう。」とおっしゃるケースが多いんですね。しかしPythonを覚えても、いざ現場で使うとなると使えないことが往々にしてあります。その理由はいくつかあって、そもそもビジネス課題を解くノウハウがないとか、システムが個別最適で連携していないとか、それ以前にシステムを連携する重要性が浸透されていないこと等が挙げられます。
Pythonしか勉強していないので、システムの構成もよくわからないし、当然つなげるノウハウもないということで、結果的にスケールしないことが非常に多いようです。
その点、今回の静岡銀行様のプロジェクトでは、戦略と戦術に分けて、各テーマの課題についてバランスよく議論ができた。今もサポートを継続していますが、なんとなくシステム投資をしようといった、全体感が分からない中で予算を立てるといったことがありません。フェーズ0で土台ががっちり構築されたからこそ今があると思います。
DOORS まさに、りそな様のかつての苦労が活きたわけですね。
りそな/澤田氏 間違いないです。私たちは何度も何度も失敗に見舞われ、行っては戻ってを繰り返していました。静岡銀行様は1年以上サポートをさせてもらっていますが、当時のりそなと比べるとかなり進捗が速いですよ。
静銀/榎本氏 「課題が解けるようになってからデータ環境整備に着手すればいい」と考える会社が結構多いですが、並行して進めることがすごく重要だと思っています。お金をかけて環境が構築されても、使いこなせる人間がいなければ意味がありません。かと言って、先に人を揃えても環境がなければ何もできません。そういうことが、りそな様の苦労された経験をうかがって手に取るように分かりました。
BP/西村 当プロジェクトの進め方には、私たちが過去苦しんだ経験から得た教訓が反映されています。通常社内でデータの利活用を浸透させようとすると、『①まず外部のベンダーに小さく分析をさせて施策実行してみる』『②その結果が良かったら自社の社員でも実施して広げる』という手順を直列に繋ぎます。こうなると、①⇒②の過程で、分析をスケールさせるには分析環境を整備しないといけなかった、社内に引き継げるケイパビリティが無いので育成をしないといけない、と課題が次々に見つかり、時間ばかりが経過してしまいます。クイックウィンは非常に大事なのですが、課題を出たところベースで潰していく形になるので社内に定着するまでに非常に時間を要してしまいます。
その点、今回の静岡銀行様のプロジェクトでは、りそな様をベンチマークとしたフィット&ギャップ分析を行ったおかげで、最終的には内製化するというイメージができあがっていました。そのため、施策実行、人財育成、環境構築を同時並行で行うことになったのです。それが大きなスピードアップにつながったと言えます。
▼後編へ続く
【後編】静岡銀行のデータ利活用高度化の取り組み-「ビジネスに始まり、ビジネスに終わる」を徹底、「あるべき姿」より「目指すべき姿」を重視
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