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日本で最も月間利用者数が多いメディア(※)である「Yahoo! JAPAN」。
検索、ニュース、動画、天気、メール、eコマース、地図…
読者の皆様も何かしらヤフーサービスを利用したことがあるのではないでしょうか。
このような多様なサービスから得られるマルチ・ビッグデータを、自事業においてさまざまな方法で活用してきたヤフー様は、企業や自治体にもヤフーのビッグデータを活用してほしいと考え、2019年10月に「データソリューション」事業を開始しました。
「日本を可視化する」「データの力で日本を元気に」と掲げるデータソリューション事業の全貌、それがどんな未来を作るのかについて、
そして、長年にわたり同社のデータ事業を陰で支えている、
も交えて、話を聞きました。
※出典:ニールセン デジタルコンテンツ視聴率 2020年4月 Monthly Total(トータルデジタル=PCとモバイルの重複率を除いた数値)
現時点においてYouTubeはレポート対象外
PCは2歳以上、スマートフォンは18歳以上の男女
タグの挿入状況におけるPartial SDKはブランド内の一部のコンテンツのみを計測
DOORS編集部(以下、編集部) ヤフー様は、2018年に川邊社長が「データドリブンカンパニー」になると宣言され、その後2019年秋に「ヤフー・データソリューション」として、ビッグデータ活用サービスの提供を始めています。ご提供に至った背景をお聞かせいただけますか。
ヤフー・寺田 幸弘氏(以下、寺田氏) データドリブンカンパニーを打ち出す以前から、ヤフーはビッグデータを活用したソリューションを提供していましたが、その分野でGAFAなどのテック・ジャイアントと戦うにはどうしたらよいかという課題がありました。
GAFAとヤフーの違いは、GAFAのそれぞれが独占的なサービスに強みを持っているのに対して、ヤフーは数多くのサービスを提供しており、その中には日本でトップクラスのサービスがいくつもあり、すべてのサービスがYahoo! JAPANIDで繋がっています。
つまり日本のユーザーをさまざまな視点から分析できるマルチ・ビッグデータを持っているということです。そこにGAFAにない強みがあり、勝ち筋があるのではないかと考えました。
編集部 「日本のインターネットユーザーを一番知っている会社」ということですね。
寺田氏 はい。データソリューションサービスは、そのユーザーからお預かりしているビッグデータを活用して、「おもてなし」をするイメージです。ただヤフーはメーカーではありません。食品メーカーを例に取ると、彼らはスーパーやコンビニなどさまざまなチャネルで商品を販売していますが、いつ・どこで・誰が・どういう理由で自社の商品を購入したかを知るすべがあまりありません。
しかし食品メーカーもヤフーの統計データを見ることで、それらを知ることができ、より良い商品を企画・提供できるようになります。これが、ヤフーのビッグデータがもたらす価値です。
ヤフーとしては、ヤフーのビッグデータを企業や自治体などで広く活用していただくことで、日本企業のDX推進に貢献したいと考えています。多くの企業や自治体がこれからの時代にデータ活用は必須だと認識しています。しかしそもそもデータを取得できない、あるいはデータがあっても活用のためのコストを割けない組織が多いのが現実です。このような課題を持った組織に、ヤフーのサービスを利用していただけるようにすれば、広い意味で日本全体をサポートできるのではないかと考えているのです。
編集部 それでは、ヤフー・データソリューションの具体的なサービスについて教えてください。
寺田氏 DS.INSIGHT、DS.API、DS.ANALYSISの3つのサービス・ラインナップがあります。DS.INSIGHTはヤフーの検索データや位置情報データを統計化し、ブラウザで分析できるリサーチツールです。DS.APIはヤフーのビッグデータとユーザー企業のシステムをAPI経由で直接連携するサービスです。これら2つが汎用的なサービスであるのに対して、DS.ANALYSISはヤフーのマルチ・ビッグデータをオーダーメイドで活用していただくサービスです。クライアントの要望を伺い、データ分析した結果をレポートし、さまざまな提言をします。
編集部 DS.ANALYSISは、ブレインパッドのようなデータ分析支援企業が提供しているデータ分析の受託サービスと似たのものと考えればいいですか。
寺田氏 はい。意思決定のためにどのような調査が必要なのか、それをどのような手法で行うのかをクライアントとしっかり検討し、ヤフーのビッグデータと必要に応じてクライアントが用意したデータと組み合わせて、さまざまな分析をします。
その意味では受託分析サービスと似ていますが、ヤフーのビッグデータの存在が大きなセールスポイントになっている点が違います。
DS.INSIGHTも意思決定のためのサービスですが、こちらは日々の現場での意思決定をサポートするものと位置づけています。DS.ANALYSISは新規出店や製品開発企画など、より大きな意思決定をサポートします。
編集部 ヤフー・データソリューション全般に関する質問です。ターゲットとしている業界や、どのような用途に向いているのかを教えてください。
寺田氏 ヤフーのビッグデータとの相性もあるので、何にでも使えるとは言えませんが、特定の業種・業界をターゲットとはしていません。特に向く用途は、生活者の興味関心を可視化することと、エリア特性とそこに訪れる人の属性や特徴を可視化することです。これだけでも多くのビジネス課題に対応できると考えます。
編集部 ヤフー・データソリューションが日本の産業や公共サービスにもたらす価値を教えてください。
寺田氏 公共サービスに関して言うと、自治体はデータ分析にコストも人材も配分しづらい面があります。そこでヤフーがデータを取り扱う専門家として、こんな分析をすれば地域のトレンドやニーズが見えますよと提案することで、コストも人材も大幅に肩代わりすることができます。つまり自治体としては、低コストで最小の人員でデータを活用でき、データ分析による良質な意思決定ができることに大きな価値を見出すのではないでしょうか。
企業に関しても同様のことが言えますが、具体的にはユーザーが可視化できるところに大きな価値があると考えます。これは個人情報を企業に提供するということではありません。自社商品がどのようなシーン、文脈で使われているのか、新商品を発売する際にどのようなペルソナに訴求するのがよいか、といったことがより鮮明に見えるようになるということです。
DS.INSIGHTは、ヤフーが可視化した情報を見ていただくことになりますが、それですべてのニーズに応えられるわけではありません。またさまざまな調査手法がある中でヤフーが提供するものが必ずしも最適なわけでもありません。単純なインタビューやアンケート調査のほうが向く場合もあります。
編集部 それは、どのような場合でしょうか。
寺田氏 誰に何を聞けばいいか明確なケースです。利用者がどういうことに困っているのかを聞く目的であれば、実際の利用者に直接聞くほうが早くて正確です。
それ以外では、購入数などもヤフーのビッグデータだけでは明確ではありません。それはEコマースのデータや店舗での販売データを見たほうが正確です。
編集部 インタビューやアンケートが向かないのはどういう場合ですか。
寺田氏 インタビューやアンケートの場合、回答してくれる人を探して聞くわけですから、回答者は聞かれていることを意識します。そうすると、例えばその企業の商品が気にいっていれば好意的な回答をしようとしますし、敵意的、悪意的に回答するケースもあり得ます。また質問自体も質問側の課題や関心のリストになりますから、本当はこれを聞くべきだったということが漏れている可能性があるし、仮に漏れていても気づくことができません。つまり聞く側にも聞かれる側にも何らかのバイアスがあることになり、その結果で意思決定して本当に良かったのか疑問が残ります。
ヤフーのビッグデータは基本的に検索データであろうが位置データであろうが、バイアスのない行動データです。したがって想定していなかった気づきがありますし、より成功確率の高い意思決定が可能だと考えられます。また「平日の昼間に渋谷にいる男性」といったように分析対象のデータを細かく定義できますので、不要なデータを調べることもありません。
編集部 つまり、クライアント企業が調べたり考えたりするだけではわからない気づきを得たいのであれば、アンケートやインタビューよりヤフーのビッグデータを分析するほうがいいということですね?
寺田氏 そうです。調査できなかった人たちを調査したい、自社のデータだけではわからない、新たな観点を見つけたい、自社のドメインを超えたもっと広い事業視野で考えたいということであるならば、ヤフー・データソリューションをお勧めすることになります。
なおDS.ANALYSISの成果が汎用化できるようであれば、DS.INSIGHTやDS.APIに展開するようにしています。DS.INSIGHTとDS.APIはDS.ANALYSISよりも低価格です。さらに多くの企業・自治体がより高度なサービスを利用できるようになっていくことになり、日本全体のDX推進に貢献できることになります。
編集部 DS.ANALYSISでどのような成果が得られるのか具体的な事例で教えてください。
寺田氏 分析アプローチの仕方が典型的なので、東急不動産様の事例を説明しましょう。2020年当時、同社は渋谷区に新たな商業施設を開発中で、その施設のMD(マーチャンダイザー)をデータドリブンで選定することにされました。そのためには商業施設のあるエリアに訪れる人たちのペルソナを可視化することが必要です。ユーザーが可視化できれば、その人たちに最適な提案ができそうなMDを選定すればいいということになります。
編集部 そのための分析はどのように進めたのでしょうか。
寺田氏 まず施設のコンセプトとターゲットとしている顧客層にマッチするコンセプトワードを選定します。東急不動産様からは19個のキーワードが出てきました。次にコンセプトキーワードを検索したユーザーを抽出します。これは約250万人でした。これらのユーザーの興味や関心として、他に検索したキーワードを抽出したところ19億点となりました。この中から、一般の検索と比べて検索割合が高いものを可視化します。その結果、ファッション系では○○、コスメ系では××に対して興味・関心が高いとわかるのです。
こうしたキーワードから、MD選定に示唆を与えうる特徴的なキーワードを抜き出し、MD選定の条件にするわけです。また特徴的なキーワード群からいくつかのユーザーグループを発見することができます。東急不動産様の場合は8つ見つかりました。例えば、「ファッションや美容にも興味はあるが、お出かけでは友達とのごはんを楽しみたいグループ」といったグループが見つかります。このグループであれば、お出かけ先はルミネや丸井、ファッションはZARAやユニクロ、美容・コスメはキールズに関心があるといったことなどがわかります。これもMD選定の条件作りに役立ちます。
不動産のリーシングでペルソナ分析をした事例は少ないのですが、このようなペルソナ分析自体はかなり典型的なものです。不動産のリーシングにおいては、デベロッパーの主観でMDや店舗を選定して、蓋を開けてみたらまったく集客できなかったケースも見受けられますが、データドリブンで選定条件を決定することで成功確率が高まることになります。
編集部 なるほど。他に典型的な事例はあるでしょうか?
寺田氏 名前を出せないので抽象的な説明になりますが、自社データだけでは品揃えが足りているかどうかわからないというケースが典型的ですね。
例えば、コンテンツの配信サービス企業様では、会員ユーザーが好きなタイトルやカテゴリーで不足しているものはないか、アミューズメント施設ではリピーターを増やすために不足している設備は何かといった分析がこれに該当します。
編集部 そうした分析で成功するためのポイントは何でしょうか。
ヤフー・森 泰介氏(以下、森氏) ユーザーのすべての行動を分析することは現実的ではないので、分析する範囲をどうやって絞るかがポイントになります。とはいえ実際にデータを見てみないと絞ることもできないので、いくつかの観点でデータを見ながら、閾値を変えていき、段階的に絞り込んでいくことになります。その絞り込みのプロセス自体も、分析経験を重ねることで徐々に洗練してきています。手順もある程度わかってきたので、ブレインパッドに絞り込みのための汎用的なスクリプトを作成することをお願いしています。
編集部 クライアントに報告をした際に、どういうことが喜ばれているのでしょう。
森氏 それまで見えなかったユーザーの関心がわかると喜ばれますね。クライアントは、自社の商品に対するリアクションや評価など、ビジネスと直接的に関係のある部分に関しては熟知されていることも多いですが、ヤフーのデータからは、ユーザーの趣味嗜好を含めた、幅広い行動や関心を分析可能です。分析を進める中で、一見すると関係がないと思われるようなユーザーの日々の関心とクライアントのビジネスの接点が見えると喜ばれますし、データ分析そのものに興味を持ってもらえるようになります。
編集部 田浦さん、田中さんはいかがでしょうか。
ブレインパッド・田浦 將久(以下、田浦) 企業が新商品を発表してから、実際に発売されるまでにタイムラグがある場合その間は、その企業だけでは新商品に関するデータを集めることはできませんが、ヤフー様にはその間にも検索データや知恵袋データが蓄積され、その間の検索データが蓄積されています。新商品発表から発売までの反応がわかるので、貴重なマーケティングデータと言えます。これがわかることでクライアントに大きな「気づき」を与えられることもあります。
ブレインパッド・田中 基裕(以下、田中) クライアントは仮説を立てるわけですが、それをデータで検証したときに肌感と合っていれば喜ばれますし、逆に仮説とまったく違っていたが新たな仮説が得られたというときも喜ばれますね。
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