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ChatGPT(チャットジーピーティー)は、人工知能技術である、大規模言語モデル(LLM:Large Language Model):GPT(Generative Pre-trained Transformer)をベースにした対話型のAIです。2020年に人工知能の研究開発を行うアメリカの非営利法人OpenAIによってGPTシリーズの言語予測モデルであるGPT-3が公開され、自然で高い品質の回答・文章を幅広いジャンルで生成できることから、以降、世界中で注目を集めています。
今回は、そんな生成AIであるChatGPTの基本について解説します。「ChatGPTを使って何ができるか」「ChatGPTをビジネスや日常でどう使うか」を中心にご説明し、学習の仕組みや言語処理技術などの細かい仕組みは、今後の記事やセミナーなどでフォローいたします。
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なお、今回の記事は2023年3月26日までの情報をベースにしています。毎日のように新たな情報や活用事例などが報じられており、記事に記載した内容が更新されたり変更されたりする可能性もあります。最新情報については、各自ニュースや各社のWebサイトのリリース内容などをご参照いただければと思います。
「ChatGPTとは何か?」を理解するには、実際の使用例を見ていただくのがよいでしょう。本記事ではChatGPTの無料モデル、GPT-3.5を使用した際の回答を5つご紹介しますので、ざっくりChatGPTでできることやその優秀さをつかんでいただければ幸いです。
ChatGPTはGPTという技術を用いた対話型AIであり、さまざまなジャンルの質問に回答することができます。
上の画像のように、質問に対する回答に付随的な情報も追加する形で文章を生成します。また、「5歳児にも分かるように」などの情報を質問に追加することで、回答内容をよりシンプルにしたり専門的にしたりすることも可能です。
ただし、きわめて専門性の高いジャンルには応えきれないケースもあります。また後述するように、誤った情報を生成することも散見されるため、回答内容が真実なのかチェックすることをおすすめします。
ちょっとした業務生産性向上のためのアドバイスや人生相談への回答など、単なる情報提供を超えた提案やアドバイスも可能です。
「先延ばし癖を直したい」という相談に対して6つの方法を説明しているこちらの回答のように、相談に対する提案を複数挙げてくれます。また、「5つ教えて」のように指定された個数に応じて提案内容を調整することも可能です。こちらを実行に移すことで、仕事の生産性や日常生活の快適さを向上させられそうです。
その一方で、回答文が長すぎるために末尾が欠けてしまいました。回答を短縮するための再質問が必要かもしれません。
過去にも文章を翻訳するツールは複数存在しましたが、ChatGPTはそうした既存ツールと比較しても特に自然な訳文を生成するとされています。
やや格式張った日本語にしにくい英文ですが、ある程度自然な翻訳を行っています。また原文がリンカーンの有名な演説であることも見抜き、回答文に参考情報として記載されています。
こちらの例では英文和訳を依頼しましたが、もちろん日本語の文章を英訳することも可能です。
ChatGPTの活用方法として、プログラミング業務時のサポートが考えられます。簡単な要件を質問として入力すると、質問に対応するソースを短時間で生成してくれるためです。こちらの例をご覧ください。
ChatGPTはインターネット上の情報を学習しており、企業情報や市場規模、特定の有名人などについて質問すれば情報を要約して教えてくれます。こちらは、Web広告の市場規模について尋ねた質問例です。
こちらのように、情報の概要を整理して端的に説明してくれるのはChatGPTならではと言えるでしょう。単なる市場規模の額と今後の展望にとどまらず、市場の拡大要点についても3つ挙げています。質問に対する直接的な回答に加えて、質問者が必要としそうな情報も追加してくれるのは「かゆいところに手が届く」ような感覚を覚えるのではないでしょうか。
その一方で後述するとおり、情報の鮮度には注意が必要です。2021年9月頃までの情報しか学習していないために、上の回答でも2020年の調査内容を紹介しています。2021年以降のデータは、質問者が自ら調べなければいけません。
ChatGPTが何をするものなのかざっくりと把握したところで、ChatGPTの基本情報についてご説明します。開発・運営会社や話題になっている理由、強みについて見ていきましょう。
ChatGPTは、アメリカのAI研究所であるOpenAIによって開発・公開されました。OpenAIは、2015年にサンフランシスコで設立され、設立者の一人にSpaceXやTeslaなどのCEOを務めるイーロン・マスクが名を連ねていたことから、当時からアメリカのテック業界を中心に高い注目を集めていました。
OpenAIは、社名が示す通り「AIによるベネフィットを全人類に保証すること」をミッションとして掲げています。なお、OpenAIではAI(Artificial Intelligence:人工知能)ではなく、AGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)の開発を目指しており、特定の領域だけに秀でたAI(弱いAI)から人間のように考え、感情を表現できる汎用的なAI(強いAI)がゴールとされています。
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AIを活用したチャットボットはこれまでにも存在しましたが、しばしば質問者を満足させる回答を生成しない、複雑で長い文章を理解できない、生成する文章が不自然であるなどの問題点が指摘されていました。
ChatGPTは、従来のAIチャットボットより自然な回答を生成でき、また複雑な文章や微妙なニュアンスを理解するとされたことから、2022年11月の公開直後から高い注目を集めました。
OpenAIのCEOであるサム・アルトマンによると、ChatGPTは公開後1週間でユーザー数100万人を突破したとのことです。また2023年1月の時点でアクティブユーザー数1億人を超え、消費者向けアプリの中でも歴史上最速のスピードで成長しているとの報道がなされました。
TikTokが1億ユーザーを突破するまでにかかったのが9カ月、Instagramだと2年半かかったのに比べても、ChatGPTのユーザー数の増加は空前絶後のスピードと言えるでしょう。
2022年11月の公開後、テック業界を中心にさまざまな業種・業界で「AIチャットボットブーム」「ChatGPTブーム」を生み出しています。
Microsoftは、ChatGPT公開以前の2019年からOpenAIに出資を行うなど、もともとGPTやOpenAIに近い立場にありました。ChatGPTのリリースから2カ月ほど経過した2023年2月8日に、同社のWebブラウザEdgeの標準検索エンジンであるBingに、GPTを利用したAIチャットサービスBingAIを搭載することを発表しました。
ChatGPTでは、2021年9月までのデータしか学習していないのに対し、BingAIはリアルタイムで情報を収集・学習して回答を生成してくれます。こちらもユーザー申し込みの順番待ちが発生するなど、高い注目を集めています。
検索エンジンの代わりにもなりうるChatGPTやBingAIの登場に、Googleは危機感を強めているとされています。BingAI発表の2日前である2月6日に、CEOサンダー・ピチャイはChatGPTと同様の会話型AIチャットサービスGoogle Bardについて声明を発表しました。
Bardは声明発表時点でテスト段階とされ、ChatGPTやBingAIのような一般公開には至っていません。しかしながら、Googleでも急ピッチでAIチャットボットサービスの開発工程が進められていることが伺えます。
CRM大手のSalesforceでは、ChatGPTを同社独自のAIモデルと組み合わせたEinstein GPTを2023年3月7日に発表しました。営業やマーケティングにおける顧客とのコミュニケーションにAIを活用し、文章生成やコンテンツ作成、コード生成などを支援する機能を持つとされています。
3月1日にChatGPTのAPIが公開されたことから、既存のアプリケーションにAIを組み込む流れが急ピッチで進んでいます。翌日2日にはLINEにChatGPTを組み込んだチャットボットサービスがリリースされ、3日で登録者数20万人を突破しました。
3月14日には、ChatGPTに用いられていた言語モデルGPT-3.5を改良したGPT-4が発表されました。テキストのみならず画像の入力も可能で、司法試験の模擬試験にも上位10%のスコアを記録するなど、その性能の高さが再び世界を驚かせています。
毎日のようにChatGPTと関連技術の話題がOpenAIや巨大テック企業などから報じられており、AIチャットボットブームはまだまだ終わりそうにありません。
GPT-4とは、OpenAI社が2023年3月14日に公開した最新の言語モデルです。
ChatGPTの有料版(月額20ドル)である「ChatGPT Plus」で一般ユーザーも利用することができます。無料版ではGPT-3.5のみ、有料版ではGPT-3.5とGPT-4の双方を利用可能です。
GPT-4の特徴として、「マルチモーダルモデル」であることが挙げられます。これはテキストのみならず画像も入力・処理できるという意味です。画像の不審点を指摘したり、グラフを読み取ったりできることが公式に発表されています(今のところこうした機能は非公開です)。
GPT-4は複雑なタスクの処理ができるようになっています。例えば、さまざまなテストをGPT-3.5とGPT-4の両方に受けさせたところ、人間に劣らない好成績をGPT-4だけが収められたことが発表されています。特にアメリカの統一司法試験では、GPT-3.5が下位10%の成績であったのに対し、GPT-4は上位10%の成績でした。
また、倫理的に問題のある質問に回答しないなど、リスク回避性能も向上しています。「爆弾を生成するには」といった質問に対して、「武器の作成や違法行為に関する情報やガイダンスを提供することはできません」と返すようになりました。
ChatGPTを使うためには、メールアドレスと電話番号を入力してアカウントを作成することが必要です。有料版も存在しますが、基本的には誰でも無料で利用できます。
ChatGPTのログインページへアクセスする方法はいくつかありますが、おすすめは「ChatGPT」の検索結果に表示されるページを利用することです。OpenAIのコーポレートサイトを探せばよいのですが、ChatGPT人気の過熱ぶりや相次ぐプロダクトのリリースなどを受けてか、サイトのUIがどんどん変化していて探しにくい状態です。
「ChatGPT」で検索すると「Introducing ChatGPT」というタイトルのページにたどり着きますので、「Try ChatGPT」のボタンをクリックします。
以下がログインページです。ChatGPTの利用時にはこのページへアクセスする必要があるので、ブックマークに追加してください。こちらのページから「Sign up」をクリックすると、メールアドレスとパスワード、氏名、電話番号を使った登録作業ができます。
登録作業が完了すると、以下のようなトップページが表示されます。これで登録作業は完了です。
やや分かりにくいですが、右下に検索窓のような入力欄があります。こちらに質問内容を入力すると、質問者のニーズに可能な限り沿った形で回答を返してくれます。
ChatGPTの使い方は以上です。日本人にとって言語の壁は若干あるものの、サービス自体はプログラミングや機械学習などの知識を持たない非エンジニアにも使いやすく、その強みを簡単に体験できるのが特徴です。
ChatGPTでGPT-4を利用するためには、有料版の「ChatGPT Plus」を申し込む必要があります。画面の左下にある「Upgrade to Plus」をクリックし、クレジットカード情報を入力すればアップグレード完了です。
ChatGPT Plusでは、無料版でも使えるGPT-3.5、高速のGPT-3.5、そしてGPT-4の3種類を選択可能です。GPT-4は高性能ではあるものの回答生成速度が遅く、一定時間に入力できる質問数にも上限が設けられているため、質問内容に応じてGPT-3.5と使い分けるとよいでしょう。
ChatGPTのリリースから日が浅く、またユーザー数が飛躍的に伸びていることから、ビジネスでの活用事例が日進月歩で発見・開発されています。ここでは、そんな事例をいくつかご紹介します。
なお、これらの事例はあくまで可能性として考えられる活用方法を記載したものであり、ブレインパッドとしてChatGPTの活用を推奨するわけではないことをご了承ください。
先にリンカーンの演説を和訳してもらった事例をご紹介しました。仕事や英語学習などで見られる英文をChatGPTに入力すれば、短時間で分かりやすい日本語にしてくれます。大量の英文情報をインプットする仕事についている人にとって、情報収集のスピードを上げてくれる可能性があります。
また、英訳や校正もしてくれるので、英語でメッセージやメール、資料などを作成する際にも活用することが考えられます。
プログラミングやコードのレビュー、テストなどの際にもChatGPTは有効です。それなりに質の高いコードを短時間で生成するため、一から人間が作業するより短時間で作業を進められる可能性があります。
その一方でコードの正確さには疑問が残るため、人間によるチェックは欠かせません。ChatGPTの生成したコードをそのまま使用し、トラブルを起こさないよう注意する必要があります。
業務やイベントなどの企画をする際に、アイディアが出てこないで苦労した経験を持つ人は多いのではないでしょうか。そんなときにChatGPTを活用し、アイディアのたたき台を出すことで考えを前に進めることができます。
ChatGPTは、あまり専門的なトピックを得意とするわけではありませんが、一般的な提案や回答であれば短時間で提出します。そこで、その回答・提案を人間が議論を深めるためのきっかけにするわけです。
「業界トップの競合他社を打ち破るための新しい商品のアイディア」「イベントを成功させるための注意点」「歓送迎会の二次会の催し」など、さまざまなジャンルでアイディアを検討するのにChatGPTを活用できます。
もちろん、回答内容の正確性や網羅性などが保証されるわけではありませんので注意が必要です。
英語ならずとも、メールやチャットで文章を書くのに時間を要することは多々あるでしょう。そんなときに、シチュエーションや求めるゴールなどの前提をChatGPTに入力することで文例を作成できます。
こうした文例をベースとして、必要な情報や言い回しを肉付けすることで文章を作成しやすくすることが考えられます。
Web広告の市場規模を尋ねた例をお見せしましたが、このように市場規模や競合他社などの情報を整理するのにもChatGPTは使えます。
人間がWebサイトやカタログなどを使って情報収集すると、その多さを前にして整理しきれなくなることもあるでしょう。ChatGPTは情報収集・整理が得意なので、ビジネスに必要な情報を端的に提示してくれます。
ただし2022年以降の最新情報が回答内容からは漏れているため、現段階では人間による補完が必要不可欠です。
ChatGPTは発展途上のAIチャットボットであり、活用に際しては注意すべき点もいくつか存在します。ChatGPTの良さだけでなく、注意点も頭に入れておきましょう。
生成された回答が誤りであるケースが数多く報告されています。正確さの求められる質問をする際は、回答の後にWebサイトや書籍などをあたって裏取りを行う必要があります。
回答の正確性に関連して、高度な専門性を持つ領域には対応できていないケースが多いとされています。「空の青さの理由」「先延ばし癖の克服方法」など一般的な領域であれば対応できますが、ビジネスや学界における専門的な領域ですと依存するのにはリスクがあります。
ChatGPTに回答させた内容の目検は、現段階では欠かせないでしょう。
プロンプトインジェクションとは、特殊な質問内容(プロンプト)を入力することでチャットボットが持つ機密情報や倫理上不適切な回答などを生成するように仕向ける攻撃手法です。ChatGPTのみならず、AIチャットボットに対して見られます。
本来ChatGPTは、違法な回答や倫理的に問題のある文章を生成しないように制限を持っているのですが、プロンプトを工夫することでこうした制限を解除するのがプロンプトインジェクションです。
これはChatGPTというよりユーザーの問題になりますが、機密性の高い情報や質問を入力するのは避けたほうがよいでしょう。AIがそうした情報を学習して、自分以外のユーザーにそれを反映した回答をしてしまうかもしれません。そのユーザーが競合他社に所属していた場合、みすみす貴重な情報を漏らすことになります。
また万が一ChatGPTに情報漏えいが発生した場合、入力した機密情報も漏えいするリスクがあります。ChatGPTには、公開情報だけを入力するのが望ましいと考えられます。
ChatGPTに致命的な弱点が発覚したり、あるいはOpenAIの経営が危うくなったりした場合、ChatGPTのサービスが突如として終了するリスクも念頭に置く必要があるでしょう。
ChatGPTに依存しすぎると、サービス終了によって仕事や日常に影響を及ぼすことも考えられます。ChatGPTの公開から数カ月しか経っておらず、今後深刻な問題が発生するかもしれません。
ChatGPTには多くの課題があるものの、さまざまなトピックや業務に対応しうる可能性を持ったツールであることから、史上最速でユーザー数を伸ばし続けています。OpenAI社を含めてテック業界の動きは加速しており、AIチャットボットサービスを中心にさまざまなプロダクトがリリースされたり報道されたりしています。
ぜひ今回の記事とともにAI領域のニュースを追いかけ、「AIを自分の仕事や生活にどう活用するか」を考えるきっかけとしていただければ幸いです。
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