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こんにちは。データ活用によるDX推進を支援する「株式会社ブレインパッド」の近藤です。当DX情報メディア「DOORS」の編集長を務めています。
本記事では「数理最適化」の概念やビジネスにおける役割についてわかりやすく解説するとともに、数理最適化のビジネス活用事例や活用までの大まかなフローも紹介します。
数理最適化はビジネスの意思決定や業務効率におけるボトルネックを大幅に解消し、事業成果の最大化に貢献するデータ活用技術の一つです。企業のDX化においてよく応用されます。
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特に、物流・輸送業界や製造業、航空業界といったサプライチェーン・ロジスティクスに関連した領域で、数理最適化はよく取り入れられています。
本記事を読むことで、数理最適化の全体像を体系的に理解した上で「ビジネスに導入すべきかどうか」をより判断できるようになると思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
数理最適化とは、数学的な手法やアルゴリズムを用いて、与えられた制約条件の下で特定の目的関数を最大化または最小化する問題を解決に導く計算技術です。
かみ砕いて表現すると、「特定のルールがある中で、成果を最大化する方法は何か」を追求するのが数理最適化だと言えます。
この数理最適化はあらゆるビジネスに応用されており、利益の最大化や業務の最適化を実現しています。
数理最適化の身近な例として「配送業界の配送ルート」が挙げられます。
一日に多くの配送物を運び、できる限り業務を最適化しなければならない配送車は「無駄のない・効率的な配送ルート」を走らなければなりません。そこに数理最適化を活用すると、無駄のない・効率的な配送ルートの最適解を導き出してくれます。
特に現在、運送業界では「働き方改革関連法によって、自動車運転が伴う業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限される」という「2024年問題」が注目を浴びており、運送や配送業務の効率化が今まで以上に求められるようになってきます。そこでデータサイエンティストといった専門家が数理最適化技術を応用し、効率化の最適解を求めることになるのです。
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数理最適化の他の応用例としては
などが挙げられます。あらゆる場面での最適化計画を算出してくれる技術です。
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ここでよく混同される「数理最適化」と「AIや機械学習」との違いについて補足しておきます。
まず、前提として「数理最適化」と「機械学習」は、「AI」に包括される概念です。いずれもAIと表現しても問題ないですが、「数理最適化」と「機械学習」は異なる概念になります。下の図をご覧ください。
数理最適化は、問題の最適化を実現するための「最適解」を、問題の構造や数学的な性質に基づいて発見するという「決定論的な手法」です。
一方機械学習は、コンピュータシステムがデータからパターンや知識を学習し、未知のデータに対して予測を下す人工知能です。
つまり数理最適化は最適化問題の解を数学的に導くアプローチであり、機械学習は膨大な情報や経験からなる学習データに基づいて予測を行う人工知能なのです。
日常生活を例に挙げて説明すると、「明日の降水確率を算出するのが機械学習」で、「傘を持って外出した方が良いかどうかを決めるのが数理最適化」です。
「明日、60%の確率で雨が降ります(機械学習)」だけでは、その先の行動について人の判断を残すことになりますが、数理最適化は「傘を持って歩いた場合」「車で移動した場合」のそれぞれの場合における「一日の満足度」を計算した上で、「車で移動すべき」という判断をします。
数理最適化に使用される代表的なプログラミング言語は複数ありますが、中でもよく用いられるプログラミング言語は「Python」です。Pythonには多くの数理最適化ライブラリが存在するからです。
特に近年は、最適化問題の最適解を得るために用いるソフトウェア(数理最適化ソルバー)の進化が激しく、その選び方がとても重要です。弊社はあらゆるソルバーの検証を行っており、プロジェクトに応じて使い分けています。
数理最適化の概念や役割について理解できたところで、ここからは「数理最適化がマッチする業界やビジネス」について紹介します。数理最適化をビジネスに導入するかどうかの判断材料になるはずです。
輸送・物流業界のビジネスでは数理最適化がよく活用されます。主な課題・活用領域は
です。効率的なルートやスケジュールを算出し、過不足のない在庫管理を実現できるようになります。結果的に輸送コストの最小化につながります。
製造業にも数理最適化はよく応用されます。主な課題・活用領域は
です。生産効率を向上させ、コストを削減するための意思決定に活用されます。
【関連記事】製造業DXとは?導入の進め方と4つの成功事例をご紹介
エネルギー業界で数理最適化がよく活用される課題・領域は
など。エネルギーの供給安定性やコスト効率を向上させるために活用されます。
ロジスティクス業界で数理最適化が活用される課題・領域は
など。効率的な物流管理を実現し、コスト削減を図ります。
航空業界で数理最適化がよく活用される課題・領域は
など。航空機の運用効率や顧客満足度を向上させるために活用されます。
ファイナンス業界で数理最適化がよく活用される課題・領域は
など。投資リターンを最大化するために応用されることが多いです。
ここからは、数理最適化の技術を用いてビジネスに活用された事例をご紹介します。
※数理最適化に限らず、こうしたDXによる事業グロース事例は数多くあります。数理最適化以外にもDX事例を参考にしたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】【業界別DX事例26選】成功事例から学ぶビジネス革新の方法論
ソフトバンク株式会社は、LPガス容器の配送を最適化するサービス「Routify(ルーティファイ)」を開発。効率的な配送計画の提供を実現するサービスで、その裏には数理最適化技術が活用されています。
これにより、配送を実行するにあたって「どこからどこまでの配送物を何日の何時までに配送すれば効率よく配送を遂行できるのか」が分かるようになるのです。
【参考情報】ブレインパッド、LPガス業界のDXを実現するソフトバンクの新サービス開発を支援
キリンビール株式会社様は、需給に関する業務改革プロジェクト「MJプロジェクト」を現在推進しています。複雑性が高いゆえに、需給業務が「担当者の能力や知見」に依存していることを課題として捉え、DXによる課題解決を決断されました。
当プロジェクトにおける一つの取組として「製造計画のアルゴリズム開発」があり、数理最適化によって「どの工場で」「何の製品を」「どれくらい製造すれば良いのか」を導き出せるようにしています。この取り組みにより、サプライチェーンマネジメントのアップデートを図ります。
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【参考文献】ブレインパッドとキリンビールが、DXを活用したSCMの変革を推進する「MJ(未来の需給をつくる)プロジェクト」を始動
その他、数理最適化は様々なシーンで活用されています。日本オペレーションズ・リサーチ学会の公開している「ORを探せ!」ポスターがとても良くまとまっているので、興味のある方はぜひご覧ください。
ここまで紹介した数理最適化の導入効果や事例を受け、数理最適化のビジネス導入を検討され始めた方もいると思います。そこでここからは、数理最適化の導入にあたって必要となるリソースを解説します。
数理最適化の導入にあたって、データサイエンティストやデータエンジニアといった数理最適化の専門家は必須です。最適化モデルの構築、数理最適化ソルバーの選定と設定、結果の解釈などを担当します。
【関連記事】データエンジニアとは~役割、他のエンジニアとの違いなど~
数理最適化では、問題の定式化に一定量のデータが必要です。例えば、需要予測や制約条件に関するデータ。導入を検討しているビジネスのデータがある程度収集されていることが、数理最適化の実装における前提条件になります。
大規模で複雑な計算を必要とする数理最適化には、十分な計算能力を持つコンピューティングリソースが必要です。高性能なハードウェア、クラウドサービス、または計算機クラスターなどがそれにあたります。
数理最適化問題をモデリングし、解を見つけるために適切な数理最適化ソフトウェアが必要です。有名な数理最適化ソフトウェアとしては、AMPL、Gurobi、CPLEX、Pyomo、PuLPなどがあります。
数理最適化の導入プロジェクトの責任者が必要です。ビジネス上の問題をあらかじめ特定し、「数理最適化による問題解決の定義」を具体的に整理しましょう。
その上でプロジェクトの計画、進行管理、リソースの割り当て、コミュニケーションなどのプロジェクトマネジメントをすることになります。
【関連記事】【シリーズ】データ分析プロジェクトの「プロジェクトマネージャー(PM)」に求められる役割 CASE1:データサイエンティスト・田村潤
数理最適化のビジネス導入に必要なリソースが把握できたところで、ここからは「数理最適化をビジネス適用するまでの流れ」の一例を紹介します。
※あくまで数理最適化の活用イメージを促進していただくための一例のフローであり、実際のプロジェクトではビジネス状況によって大なり小なり異なります。
ビジネス課題や最適化の対象を明確にします。例えば、物流ルートの最適化、生産計画の最適化、スケジューリングの最適化など、具体的な領域を特定します。
問題の要件や制約条件を明確化し、目的関数を定義します。最適化によって達成したい目標や最適化の基準を設定します。
実装するにあたっての必要なデータを集めます。例えば過去の販売データ、生産データ、顧客データなどが含まれます。これらのデータが数理最適化の種となります。
収集したデータを元に、数理モデルを構築します。数理モデルは目的関数と制約条件を数学的に表現したものです。
最適化手法によって解くべき数理モデルを設計し、数学的な表現や数式でモデルを定義します。
構築したモデルを最適化ソルバーに入力します。最適化ソルバーは、目標関数を最大化または最小化するための変数の最適な値を見つけ出します。この結果があなたのビジネス問題の「最適な解」になります。
ソルバーから出力された解を解釈し、ビジネス問題に適用します。この解を元に戦略を立てたり、意思決定を下したりします。
最後に、解を適用した結果を評価します。結果が予想通りでなければ、流れ「3」に戻り、モデルの調整やデータ収集の方法の見直しなどを行い、改善を図ります。
数理最適化のビジネス実装が本格的に決定した際は、成功ポイントについて知っておきましょう。
以下の記事では、弊社現役データサイエンティストによってまとめられた「数理最適化のビジネス実装における成功ポイント」について記載されているので、あわせてご覧ください。
【関連記事】数理最適化の新時代到来~最適化→予測でDXは加速する~
事業グロースに期待が込められる数理最適化ですが、ビジネス適用にあたっての懸念点や課題もいくつか存在します。データがなければそもそもプロジェクトを始められないことや、要件によっては時間や工数が膨大であること。
詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
【関連記事】数理最適化のビジネス導入プロジェクトで直面しがちな3つの課題
近年、数理最適化は進化し続けており、ビジネス課題の解決領域を大きく広げてきています。実際、弊社ブレインパッドでも数理最適化の解決事例は増えてきている状況です。
また、数理最適化の解決領域が広がっていることにより、数理最適化を取り扱うデータサイエンティストの「スキルセットの拡張」にもつながっています。つまりデータサイエンティストの活躍領域も広がっているのです。
これは「汎用ソルバーの劇的な進化」に基づくお話になるのですが、このあたりは少し専門的・技術的なトピックになるので、以下の記事で詳しく解説しました。数理最適化がクライアントにもベンダー側にも活用されやすくなった背景について、理解を深めたい方はご覧ください。
【関連記事】数理最適化の新時代到来~最適化→予測でDXは加速する~
まとめると、「あらゆるデータや条件のもと、成果を最大化させるための意思決定を導き出してくれるのが数理最適化である」というお話でした。
属人化された業務領域や直感に基づいた施策など、定量的な根拠に紐づいていないような課題を解決・改善したい場合は、数理最適化のようなデータ活用技術を活用し、DX化を推進すると良いでしょう。
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