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DXやビッグデータなどデータのビジネス活用が進むにつれて、表裏一体であるプライバシー保護やセキュリティ対策などが課題として挙げられるようになりました。「データガバナンス」は、こうした課題の解決に欠かせない基盤となるルール・体制づくりを指しています。今回は、データ活用におけるデータガバナンスの意義や重要性をご説明します。
【データガバナンスに関する記事】
【シリーズ】データガバナンスがもたらすもの-第1回 「データガバナンス」とは何か?
データガバナンスの概要についてご説明します。データガバナンスとは何なのか、データマネジメントとどのように違うのか、どのように位置づけられるのか把握していただければと思います。
データガバナンスとは、データを効率的かつ安全に活用するための管理体制やルールのことを指します。もともと「ガバナンス(コーポレートガバナンス)」は健全な企業経営を行うために必要な企業の内部統治を意味しており、データガバナンスはこの考え方をデータに適用したものと言えます。
具体的なデータガバナンスの取り組みとして、データ管理のルール策定やルール遵守を監視する組織づくり、ガイドラインの作成と社内周知などが挙げられます。これらを順繰りに順々に進めることでデータガバナンスの向上が期待できます。
データガバナンスと関連の深い言葉に、データマネジメントやDMBOKがあります。
データマネジメントは、言葉の通りデータの管理そのものを指します。この際、管理には蓄積・保管・活用などデータに関わる活動の全てが含まれると考えられます。こうした活動がより効果的に行われるようにすることがデータマネジメントの目的です。
データガバナンスは、こうしたデータマネジメントを支えるルールや体制であると位置づけられます。データガバナンスが中核にあることで、効果的なデータマネジメントが可能になるわけです。
そしてデータガバナンスやデータマネジメントについてまとめた書籍がDMBOK(Data Management Body of Knowledge)です。データ専門家によって設立されたData Management Association International(DAMA-I)が2010年にDMBOK第1版、2017年には第2版を刊行しました。
DMBOKでは、データセキュリティやデータ品質などによって構成されるデータマネジメント活動の中核にデータガバナンスを位置づけています。データマネジメントやデータガバナンスについて体系的に学ぶには、DMBOKを参照するのが適切です。
データガバナンスがビジネスに求められる背景には、企業におけるDXの推進があります。ここでは2つの側面からデータガバナンスの存在意義についてご説明します。
テクノロジーのビジネス活用が進み、取り扱うデータの量も急激に増えています。データ量が増えることでデータ管理の工数も増え続け、効率性は下がっていきます。
例えば、全社的なデータガバナンスが存在しないと社内の部署ごとにローカルなデータベースが構築され、場合によっては同じ顧客の情報が異なるデータベースに管理される事態につながりません。
こうなると同じ顧客に対して別の部署から複数のメルマガや電話が来て煩わしさを感じさせたり、購買記録が部署間で共有されずアップセルやクロスセル、あるいは離反抑止の機会を失ったりする可能性もあります。
適切なルールと管理体制がなければ、せっかくのデータをビジネスの成果に結びつけることが難しくなるのです。
またデータ使用者が勝手にデータを取り扱うことで、セキュリティリスクが高まります。データの漏えいや不正利用などが行われると、企業や組織の社会的信頼を失墜させる結果にもつながりかねません。
社内の複数部署がデータベースを管理していると、管理の適切さを保障することが困難です。それぞれの部署では必ずしもデータ管理を重要な業務とみなすとは限らず、ほかの業務に追われるなかで知らず知らずずさんな管理に陥る危険性があります。
この点を踏まえデータの閲覧や持ち出しを制限したりデータ管理専門の部署を設けたりするなど、明確な取り扱いルールを設ける必要があります。
データガバナンスはデータ活用を意識する全ての企業で必要と考えられますが、なかでも金融・証券業界では厳密なデータガバナンスが欠かせません。ここでは、金融庁の公表した「2021事務年度 金融行政方針」「金融機関のITガバナンス等に関する調査結果レポート」から、ガバナンス・データガバナンスの指針についてご紹介します。
金融庁の課題として、コロナ禍で打撃を受けた各業界の経営改善・事業再生等の支援があります。金融機関に対して事業者の立場に立った最大限柔軟な資金繰り支援を行うよう要請していくことを表明しています。
それに伴い、金融機関のITガバナンスのあり方も論点として挙げられています。例えば地域銀行や信用金庫などではITリソースに関する取り組みが進んでおらず、人材確保や育成に課題を抱えていることが分かっています。
また大手銀行においても、海外拠点を含めたグローバルITガバナンスが課題として顕在化しています。海外拠点が独自の開発・管理手法を行ってしまい進捗状況や品質を把握できていない、ドキュメンテーションが不十分などの問題が存在しているとのことです。
活力ある経済社会への変革を実現するためには、リスクに挑む企業を支える金融システムでなければなりません。その一例として、ブロックチェーンやAI、オープンAPIなどを活用した新たな金融商品・サービスの提供があります。DXの波は金融業界にも及んでいるのです。
この点を踏まえると、金融機関がITと経営戦略を連携させて企業価値の創出を実現するITガバナンスが重要です。金融庁は、特に先進的な取り組みや難易度の高いシステム開発プロジェクトを検討する金融機関に対しては、早い段階からIT ガバナンスやリスク管理等の観点からの議論を行うことで検討を後押しするとしています。
このように、データやITのガバナンス向上に向けた取り組みに際しては、社内のみならず行政機関や専門的な知見を持つパートナー会社と手を組んで慎重に議論を進めることが求められます。
※金融機関ならではのデジタルマーケティングについて、こちらの記事で詳しく説明しています。
金融 x デジタルマーケティング〜サイロ化されたデータの価値を最大化する方法〜
DX推進やデータ活用に取り組む企業にとって、データガバナンスの問題を避けて通ることはできません。DMBOKを理解し、自社に適したデータガバナンスを構築することが求められます。
データガバナンス構築のためには、特定の部署だけではなく経営層を含めた全社横断的な取り組みが必要不可欠です。専門的な知見を持つ外部パートナーの力も借りながら、成果を最大化しリスクを最小化するようなルール・体制づくりを目指しましょう。
第1回 「データガバナンス」とは何か?
第2回 データガバナンスの進め方
第3回 データサイエンスとデータガバナンス
第4回 組織組成・人材育成とデータガバナンス(前編)
第4回 組織組成・人材育成とデータガバナンス(中編)
第4回 組織組成・人材育成とデータガバナンス(後編)
第5回 データ基盤構築とデータガバナンス(前編)
第5回 データ基盤構築とデータガバナンス(後編)
第6回 データ活用のあり方と攻めのデータガバナンス(前編)
第6回 データ活用のあり方と攻めのデータガバナンス(後編)
▼DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧ください
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