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政府によるデジタル改革の推進、企業によるデジタル活用を主眼としたビジネスモデルの革新(DX)など、日本では社会・経済のさまざまな分野でデジタル化が進展しています。
そんな中で、より良い社会の創出に向けて「デジタルを作る人材」だけではなく「デジタルを使う人材」の育成が重要であるとして、新たにデジタルリテラシー協議会が設立され、スキルモデル「Di-Lite」が提唱されました。
今回の記事では、Di-Liteの概要と全体像、デジタルリテラシー協議会の目的についてご紹介します。「デジタルを使う人材」がどのような知識・スキルをどのように身につけていくべきか、参考にしていただければ幸いです。
関連:DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?「DX=IT活用」ではない。正しく理解したいDXの意義と推進のポイント
Di-Liteは、データサイエンティストやエンジニアなど「デジタルを作る人材」だけではなく、デジタルを使う立場である全てのビジネスパーソンが持つべきスキルとして定義されたものです。まずは、その内容と狙いについてご説明します。
デジタルリテラシー協議会のホームページにおいて、Di-Liteは「全てのビジネスパーソンが持つべきデジタル時代の共通リテラシー」と定義しています。より具体的には「IT・ソフトウェア領域に、デジタル時代、産業界において重要さが高まる「データ×AI」活用に関連した数理・データサイエンス、AI・ディープラーニング領域を加えた領域の基礎領域から、共通リテラシー領域を定義します」との記載があります。つまり、IT・ソフトウェア領域、AI・ディープラーニング領域、数理・データサイエンス領域といった3つの領域の共通部分にあたるのがDi-Liteです。
ポイントは、「全てのビジネスパーソンが持つべき」である点です。「IT知識」と聞くとエンジニアやITコンサルタントなど、ITに関連する業種・職種の人が持つとイメージする人が多いのではないでしょうか。データサイエンスやAI・ディープラーニングなどについても同様です。いずれの知識にしても、デジタルやデータサイエンス、AIなどに関連しない職種・業種のビジネスパーソンが身につけるという認識は、これまであまり持たれてこなかったのが実情です。
こうした状況に対して、デジタルリテラシー協議会はDi-Liteを全ビジネスパーソンにとっての基礎教養と位置づけ、学びの機会を新たに設けようとしています。
ブレインパッドの代表取締役社長であり、デジタルリテラシー協議会設立に協力するデータサイエンティスト協会代表理事でもある草野隆史氏は、以下のように説明しています。
❝デジタル化推進は、単なるITシステムの社会実装に留まるものではなく、それらを正しく理解して使いこなし、新しい社会を構想できる人材の涵養を伴ったものである必要があります❞
また、日本ディープラーニング協会の特別顧問である西山圭太氏は、以下のように述べています。
❝DXが本格化する中で、現代を生きる誰にとっても「デジタル」は不可欠な、けれども場合によっては少し近づきにくい、存在になっています。最新の専門的なリテラシーを総合的に提供すると同時に、「デジタル」の全体像をざっくりと分かりやすく示す。そして、プロとしてデジタル技術を駆使してサービスを作る人にも、そうしたサービスを使ってビジネスや生活に結びつける人にも、向き合う。本協議会はそうした活動を目指しています❞
このように、Di-Liteは「ITシステムを正しく理解して使いこなし、新しい社会を構想できる人材」のための基礎教養です。そして、デジタルの全体像を分かりやすく示すための見取り図でもあります。Di-Liteはデジタルを作る人材だけに必要なものではなく、デジタルを使う全ての人材に必要なものなのです。
Di-Liteの定義と普及に向けた取り組みは、新たに設立されたデジタルリテラシー協議会が担うことになっています。同協議会の概要と目的についてご説明します。
デジタルリテラシー協議会は、2021年4月20日に設立されたばかりの組織です。ニュースリリースでは、以下のように設立背景が説明されています。
内閣府が策定した「AI 戦略 2019」において、AI 時代に対応した人材育成や、それを持続的に実現する仕組みの構築が戦略目標に揚げられているとおり、デジタル時代の人材育成は国全体の重要な課題となっています。デジタルトランスフォーメーションの推進には、これまでの「デジタルを作る人材」だけでなく、「デジタルを使う人材」も含めた両輪の育成が必要となるため、全てのビジネスパーソンがデジタル時代のコア・リテラシーを身につけていくことが求められます。
そこで IT の利活用を推進する IPA、データサイエンティストのスキル定義や人材育成を支援する DSS、ディープラーニング技術の産業活用を推進する JDLA が連携し、IT・データサイエンス・AI の三方面からデジタルリテラシーの向上を目指して当協議会を設立しました。
つまり、デジタルリテラシー協議会はDi-Liteの整備と情報発信、啓発活動を目的とした組織であるというわけです。ITスキルや関連知識が増え続ける中で、これらをビジネスとの関連性から体系づけ、ビジネスパーソンが取るべきラーニングパスの可視化を目指すことを目的としています。
また、リリースには毎年Di-Liteの領域定義をアップデートし、産業界の声を取り入れながら社会実装に向けて取り組むとも記載されています。
デジタルリテラシー協議会は、草野が代表理事を務めるデータサイエンティスト協会(DSS)、東大の松尾豊教授が理事長を務める日本ディープラーニング協会(JDLA)、そして情報処理推進機構(IPA)という3団体の共同で設立されました。
この3団体は、それぞれデータサイエンティスト、AI・ディープラーニング、ITスキルの3領域を担当する団体です。Di-Liteの定義と周知に向けてお互い協力し、社会のデジタルリテラシー向上に向けて取り組んでいくことになります。
現段階で示されているDi-Liteの全体像と、その習得方法についてご紹介します。今後アップデートされる予定ですが、ITスキルを学ぶために従来用意されていた各種検定を活用することが求められます。
Di-Liteは、IT・ソフトウェア領域に加えて、データやAIの活用に関連した数理・データサイエンス領域、そしてAI・ディープラーニング領域を加えた各種領域の中で、基礎的な知識の共通領域のことです。
Di-Liteをベースとしたデジタルリテラシー・スキルフレームワークとラーニングパスのイメージとして、以下のような図が参考資料として公開されています。
まだ明確ではない部分もありますが、Di-Liteの位置づけとその広がり(発展可能性)は見て取れるのではないでしょうか。Di-Liteはスタンスやマインドからデジタル知識、基礎的な「使う」と「作る/なおす」の交差領域に該当すると考えられます。たとえばデジタルの利用者であれば、Di-Liteに加えて自分の業種や職種のデジタル活用事例、よりうまく使う/広めるためのスキルを身につけていけばよいということです。
Di-Liteを習得するための方法として、3団体がこれまで設けていた各種の検定・試験を活用することが求められています。
まず、IPAによって作られたITパスポート試験(iパス)です。ITについての基礎的な知識を証明するための試験であり、ITやビジネスに関する幅広い知識が問われます。
次に、JDLAによるG検定です。ディープラーニングを活用したプロジェクトに携わるゼネラリスト向けの検定であり、プロジェクトの検討・企画・推進に必要な知識が問われます。
最後に、DSSによるデータサイエンティスト検定です。データサイエンティストの初学者向けに、データサイエンティストに必要なデータサイエンス力やデータエンジニアリング力、ビジネス力についてそれぞれ見習いレベルの実務能力や知識、また、数理・データサイエンス・AI教育のリテラシーレベルの実力を有していることを証明する試験です。
これらのシラバスに、デジタルリテラシー協議会の協議内容が今後反映されていく予定です。
Di-Liteやデジタルリテラシー協議会は2021年4月に立ち上がったばかりのものであり、今後Di-Liteに関する協議やデジタルリテラシーの浸透に向けたツール類の提供、企業に向けた普及・啓発活動が加速していくものと考えられます。DXに関わる全ての人が備えるべきリテラシーであるDi-Lite。ぜひ最新情報をキャッチアップしていただければと思います。
(DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧下さい)
【関連】「DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?意義と推進のポイント
(参考)
情報処理推進機構「プレス発表 「デジタルリテラシー協議会」設立のお知らせ」
デジタルリテラシー協議会「2021年 ビジネスパーソンが持っておくべきデジタルリテラシーDi-Lite」
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