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デジタルガバナンス・コードは、企業のDXに関する自主的な取組を促すため、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応を、経済産業省が取りまとめたものです。DX推進に関心を持つ企業にとって大事なポイントが簡潔に記載されています。
本記事では、中堅・中小企業等のDX推進を後押しするべく、DXの推進に取り組む中堅・中小企業等の経営者や、これらの企業を支援する機関が活用することを想定した「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き2.0」を解説します。
デジタルガバナンス・コードとともに、実践の手引きの概要についてご紹介しますので、ぜひ自社のDX推進の参考にしていただければ幸いです。
※本記事は、経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課に内容をヒアリングのうえ執筆しております。
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まず、デジタルガバナンス・コードや実践の手引き、またデジタルガバナンス・コード2.0の改訂内容について簡単にお伝えします。
デジタルガバナンス・コードとは、DX推進に向けて経営者に求められる対応をまとめた「虎の巻」のようなものです。デジタル技術による社会変革を踏まえて、経営ビジョンを策定し世の中に公開する、社内に周知するなど、経営者によるリーダーシップの重要性が強調されています。
あらゆる要素がデジタル化されていくSociety5.0に向けて、既存のビジネスモデ ルや産業構造を根底から覆し、破壊する事例(デジタルディスラプション)も現れてきているなど、DXが中長期的な企業価値向上において、一層重要な要素となりつつあるなか、企業のDXに関する自主的な取組を促すため、デジタルガバナンス・コードは2020年に策定されました。
【2020年策定のデジタルガバナンス・コード解説記事】
中小企業でどうDXを推進させる?経産省資料から学ぶ概要・方法・事例~助けとなるデジタルガバナンス・コード~
同コードの策定から2年が経過したことを受け、経済産業省では、「コロナ禍を踏まえたデジタル・ガバナンス検討会」を開催し、同検討会の議論を踏まえて、必要な改訂を施した「デジタルガバナンス・コード2.0」を取りまとめました。
改訂ポイントは以下の4点です。
元のデジタルガバナンス・コードから大きく変更されたわけではなく、デジタル⼈材の育成・確保やSX(Sustainability Transformation)/GX(Green Transformation)との 関わり等の新たなトピックを踏まえた改訂となっています。
ただし、その中でも人材育成・確保についての記載が増えていることには注目です。デジタルガバナンス・コード2.0には社員のリスキリングも含めた戦略的な人材育成・確保についての追記がなされました。
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デジタルガバナンス・コードは、経営者がDXによる企業価値向上の推進のために実践することが必要な事項(ビジョン・戦略等)をまとめたDX時代の経営の要諦集です。経済産業省では、中堅・中小企業等のDX推進を後押しするべく、DXの推進に取り組む中堅・中小企業等の経営者や、これらの企業を支援する機関が活用することを想定し「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」が取りまとめられました。 デジタルガバナンス・コードが2.0に改訂されたことに伴い、今年には実践の手引きも2.0へアップデートされています。
今回の実践の手引きでは、改めて中小企業(資料では「中堅・中小企業」)に向けたDXの解説としてDXの定義や推進方法、成功のポイントについてまとめています。
実践の手引きでは、DXを「顧客視点で新たな価値を創出していくために、ビジネスモデルや企業文化の変革に取り組むこと」と位置づけています。そのためにも、経営者が自社の理念やパーパス(存在意義)を明確にした上で、5年後や10年後の経営ビジョンを描き、現在との差分を埋めるための課題を整理し、デジタル技術によって解決することが求められます。 大企業のみならず中小企業も、デジタル技術の進展による企業環境の劇的な変化の影響を受けることは避けられません。むしろ変化を利用して、DX推進による競争力強化を進めることがより必要と考えられます。
今回の改訂ポイントの一つとして、人材戦略に関する記載の増加が挙げられます。DX推進における人材育成・確保の重要性について、政府がより目を向けるようになったと考えられます。 特に中小企業では、人材戦略の難しさがDX推進の妨げになりやすいと考えられます。大企業に比べて人材の余裕がないために、本業とは別にDXにつながる全社的な改革を進めることは大企業以上に難しいのです。 実践の手引きでは、こうした課題に対して外部人材の活用を挙げています。ITベンダーやITコーディネータなどの外部機関に支援を仰ぐことにより、社内に足りないノウハウやスキルを確保できるでしょう。実践の手引きにも、多くのDX推進企業において、こういった人材戦略を採用するケースが多く見られたと記載されています。
人材戦略を含め、DXの成功のポイントが以下の6点にまとめられています。
経営者がリーダーシップを持って組織全体にDXの必要性を意識させ、身近なところから中長期的なプロジェクトで取り組み、外部支援をうまく活用することがDX推進のコツといえそうです。
この実践の手引きの半分近くが、実際にDXを推進し成功を収めた企業事例で占められています。一部をご紹介するとともに、事例から見えるDXの重要性や課題、進め方のポイントについて整理します。
中小企業がデジタル化の必要性を痛感するきっかけとして、外部環境の変化がいくつかの事例で書かれています。2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災といった出来事のみならず、高齢化や人手不足、資材の高騰などといった構造的な事象もDX推進のきっかけとなっています。 こうした外部環境の変化は、下請けや伝統産業など中小企業の多くが属するポジションでも大きな影響を与えます。DXによってビジネスモデルの変革に成功すれば、外部環境の変化に合った競争力の維持・強化を図ることも可能です。DX推進というと大企業だけが取り組めばいいと考えられることもあるようですが、決して中小企業に無縁ではありません。
実践の手引きでは、DX推進について「はじめに経営者が自社の理念やパーパス(存在意義)を明確にした上で、実現したい未来=経営ビジョン(5年後・10年後にどんな会社になっていたいか)をしっかりと描き、その実現に向けて関係者を巻き込みながら、現在の状況と目指すべき状況の差を埋めるために解決すべき課題を整理し、デジタル技術を活用しながらこれらの課題解決を通じて、ビジネスモデルや組織・企業文化等の変革に戦略的に取り組んでいくことが求められます」と書かれています。 つまりDX推進の大前提として、DXによって目指すべき方向性=5~10年後の自社の姿を明確にイメージすることが必要です。いきなり「AIを使って何かできないか」と問うのではなく、「将来会社がどのように価値創出するべきか」「そのためにデジタル技術で何ができるか」という順番で考える企業の事例が、DX推進の成功事例として多く紹介されています。
実践の手引きに紹介された事例をまとめると、特にDX推進のポイントとして「全社をあげて取り組むこと」「人材確保を意識すること」の2点が挙げられます。 「デジタル推進室」「DX委員会」などと名づけられた特別組織を設けて全社一丸で取り組む姿勢を明確にするとともに、現場との橋渡しやブリッジエンジニアの設置によって現場との連携強化を図る企業が紹介されています。また、社員からの抵抗感軽減のために全社員が利用するアプリの開発に取り組んだ企業もありました。 また、外部人材の活用や人材育成の取り組みも顕著に行われています。大学との連携や弁護士・知財人材の活用によって社内のノウハウ不足を補うのに加え、社員のアイディアを社内で実現できる環境整備によって人材育成を図る事例も記載されています。
金融機関が顧客である中小企業のデジタル化を支援する事例も、実践の手引きには記載されています。金融機関はITツールの代理店でもなければITベンダーでもないため、あくまで顧客の本業の課題解決を図ることを目的とした伴走支援を提供しています。 主に経営者との対話から課題領域を特定し、必要であればデジタル技術を活用した業務改革を提案する流れで支援を進めます。ツールやDXありきでプロジェクトを進めるのではなく、個々の企業に寄り添い、課題解決を念頭にデジタル化を支援する重要性が事例で語られています。
デジタルガバナンス・コードはDXに取り組む中小企業に参考となる資料ではありますが、抽象度が高く自社のDX推進にそのまま応用するには解像度を高める必要があります。今回ご紹介した実践の手引きを見ることで、自社と同じような中小企業がどのようにDXを進めたのかを理解でき、また実践において課題となるポイントを事前に理解することができます。 ぜひご一読いただくとともに、DX推進プロジェクトの関係者がいつでも参考にできるよう手元にダウンロード・印刷して保持することをおすすめします。
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