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政府の目指すデジタル・ガバメントとは?デジタル庁の役割と今後の見通し

公開日
2021.09.09
更新日
2024.02.17

2021年5月にデジタル改革関連法が成立し、デジタル庁の設置を含めた日本社会のDX実現に向けた動きが本格化することになりました。中でも政府は行政手続きにおけるデジタル化の遅れを問題視しており、デジタル技術による行政サービスの改善、すなわちデジタル・ガバメントの実現を強力に推し進めようとしています。

今回はデジタル・ガバメントの概要について説明します。また、デジタル庁の役割と今後の見通しについて、現在分かっていることをまとめてお伝えします。ビジネスパーソンとして、今後の日本社会が目指す姿の全体像を把握しておきましょう。

▼DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧ください
DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?意義と推進のポイント

デジタル・ガバメントの概要と実行計画の概要

デジタル・ガバメントの内容とともに実行計画の全体像をまとめて解説します。政府の目指すデジタライゼーションについて理解しましょう。

デジタル・ガバメントとは何か

デジタル・ガバメントについての政府による説明は以下の通りです。

デジタル技術の徹底活用と、官民協働を軸として、全体最適を妨げる行政機関の縦割りや、国と地方、官と民という枠を超えて行政サービスを見直すことにより、行政の在り方そのものを変革していくこと

デジタル・ガバメントを「行政DX」と言い換えてもよいでしょう。旧態依然とした行政の仕組み、デジタルの力によって変えていくことが志向されています。単に既存のプロセスをオンライン化するだけにとどまらず、「行政の在り方そのものを変革していく」というスケールの大きさを持つ点が特徴的です。

デジタル・ガバメントの具体的な目的も記載されています。

デジタル・ガバメントの目的は、単に情報システムを構築する、手続きをオンライン化するということを意味するものではありません。利用者から見て一連のサービス全体を、「すぐ使えて」、「簡単で」、「便利な」ものにするなど、Society 5.0時代にふさわしい行政サービスを国民一人一人が享受できるようにすることが目的です。

あくまで、デジタル・ガバメントが「DX=デジタルによる変革」を目的としていることを理解する必要があります。国民の利便性向上に向け、「これまでの行政を一から見直す」と政府は宣言しているのです。

デジタル・ガバメント実現に向けた7本の柱

2020年の12月に、デジタル・ガバメントの実行計画が決定されました。実行計画には、国と地方の行政DXに向けてさまざまな施策方針が記載されています。施策方針の概要は以下の通りです。

  1. サービスデザイン・業務改革(BPR)の徹底
  2. 国・地方デジタル化指針
  3. デジタル・ガバメント実現のための基盤の整備
  4. 一元的なプロジェクト管理の強化等
  5. 行政手続きのデジタル化、ワンストップサービス推進等
  6. デジタルデバイド対策・広報等の実施
  7. 地方公共団体におけるデジタル・ガバメントの推進

ここには、デジタル庁の設置やマイナンバーカード機能のスマートフォンへの搭載などといった具体的な施策と、施策を支える基盤整備、「一元的なプロジェクト管理の強化」のような施策の進め方、あるいは国民への啓蒙施策など、幅広くデジタル・ガバメントというゴールを目指すための方法論が説明されています。

デジタル・ガバメントの構想自体は数年前から存在しましたが、施政方針演説で「行政のデジタル化」を掲げた菅内閣がスタートして、一気に具体化しました。2021年9月には旗振り役を担うデジタル庁が業務を開始させる予定であり、デジタル・ガバメントへ向けた動きは今後、より活発化していくでしょう。

なお、デジタル庁やデジタル改革関連法について、より詳しく知りたい方は以下の記事も確認してください。

デジタル改革関連法が成立。行政と社会のDXは本当に実現するのか?


デジタル・ガバメントを引っ張るデジタル庁

デジタル・ガバメント実行計画の旗振り役を担うのがデジタル庁です。デジタル庁について簡単に触れるとともに、デジタル・ガバメント実行計画におけるデジタル庁の役割を説明します。

デジタル庁の役割

デジタル庁は、デジタル社会形成のための各種施策において、調整や管理を行います。デジタル・ガバメント実行計画を遂行するうえで、国と地方自治体の調整、あるいは国土交通省や文部科学省、財務省をはじめ中央省庁の枠を超えた形で連携を取らなければなりません。従来の縦割り行政を打破するための切り札、そして行政DXの主担当として業務を遂行するのがデジタル庁です。

なおデジタル庁は内閣に設置される特別な組織であり、デジタル大臣として平井卓也氏が就任しますが、あくまで主任の大臣は内閣総理大臣であり、デジタル大臣は補佐的な役回りです。組織構成上でも、デジタル庁が単なる中央省庁の一つではなく、これらを監督・統括する形での改革の遂行が期待されていることが分かります。

デジタル庁の設立と今後の見通し

デジタル・ガバメント実行計画は2020年12月に決定され、デジタル庁設置を主眼とするデジタル改革関連法は2021年5月に成立しました。デジタル・ガバメント実行計画の作成段階ではデジタル庁設置が正式に決まっていたわけではなく、それゆえ実行計画の中でデジタル庁がどんな役目を果たすか明確にされているわけではありません。この点については、実行計画内でも「デジタル庁が発足した暁には、改めて本計画の見直しや、他の基本計画との関係の整理等を検討する」と述べられています。

2021年9月1日にデジタル庁がスタートしました。デジタル・ガバメント実行計画では2020年12月25日から2026年3月31日までを対象期間としており(ただし個別施策についてはさらに長い期間を設定する可能性もあります)、デジタル庁は改定されるであろう実行計画に基づき、前述の7本の柱に紐付く各種施策を遂行していくと考えられます。


デジタル・ガバメント化の経緯と今後の見通し

デジタル・ガバメントの計画は、2000年代初頭から存在しました。しかし、2010年代に入ってデータ利活用の気運が政府内で高まり、コロナ禍ではデジタル化の遅れによる不便を多くの国民が経験することになりました。デジタル・ガバメント実行計画の背景にある政府の問題意識と、今後の見通しを合わせて説明します。

通信ネットワークの整備とIT基本法

インターネットの普及に伴い、政府は行政や社会の「IT化」を進めるための方針を定めました。その始まりが、2000年に成立した高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)です。

その内容は、ITを基盤とした国際競争の激化を見据えて、インフラ整備とIT活用を進めるといったものでした。人材育成や電子商取引の促進、行政の情報化など、デジタル改革関連法と似たような基本方針が盛り込まれています。実際、デジタル改革関連法はIT基本法を発展解消させる形で作成されました。

IT基本法に基づいて、翌2001年には「e-Japan戦略」と題したIT戦略が開始されます。国際競争を強く意識しており、IT基盤の整備が進展することになります。

データ利活用の進展と官民データ基本法

その後、AIやIoTなど新たなデジタル技術が登場したことで、政府は新たなIT戦略を構築します。それが、2016年に成立した官民データ活用推進基本法です。

これは、ITのハードウェア・ソフトウェアのみならずデータの活用を主眼に据えた法律です。データの収集・分析が高度化したことに伴い、行政、医療介護、教育などをデータの力で効率化することを目指していました。国や地方自治体のデータ活用、行政手続きのオンライン化など、現在の行政DXにつながる考え方が示されています。

コロナ禍と行政DXの必要性

ITやデータの重要性がますます高まる中で、政府は改めて基本的な戦略を更新するようなデジタル改革関連法を成立させました。菅内閣は、2020年に行われた新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の停滞対策として実施した給付金の支給において、マイナンバーの活用ができていない部分があったこと、行政手続きに混乱があったことなどを問題視しており、行政のDX推進を明確に施政方針演説などで表明するに至っています。

まだ紙やFAXを用いた行政手続きが残っている中で、単に既存業務をオンライン化するだけではなく、根本的な業務改革につなげるというDXの考え方が取り入れられているのです。

まとめ

デジタル・ガバメント実行計画の中には、今後の日本社会および行政の生産性向上のために避けては通れない施策が多く含まれています。従来の縦割り行政を打破して、国と地方自治体、事業者や国民が連携して計画を実行に移すことができるのか、今後の動きが注目されます。

DXの本質について改めて知りたい方は、こちらの記事もぜひご一読ください。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?今さら聞けない意味・定義・事例をわかりやすく解説【2024年最新版】

参考


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