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2022年6月、経済産業省は東京証券取引所および情報処理推進機構と共同でDX銘柄およびDX注目企業を発表するとともに、調査結果を公開しました。毎年行われるこの調査は、今年で3回目です。「DX銘柄2022」および「DX注目企業2022」の顔ぶれや取り組み内容から、選定される企業の特徴について解説します。
昨年2021年に選定されたDX銘柄と、今回の「DX銘柄2022」の共通点や相違点を簡単にご説明します。今回はDX認定制度の取得が選定条件に加わり、さらに国の求めるDX推進内容が反映された結果となっています。
参考:DX銘柄2021が発表!企業の顔ぶれと傾向に変化はあったのか?
昨年と同じように、「DX銘柄2022」の1次評価においては「デジタルガバナンス・コード」に沿った評価項目が基準となっています。大項目は以下の通りで、2021年と変更はありません。
Ⅰ.経営ビジョン・ビジネスモデル
Ⅱ.戦略
Ⅱ-①.戦略実現のための組織・制度等
Ⅱ-②.戦略実現のためのデジタル技術の活用・情報システム
Ⅲ.成果と重要な成果指標の共有
Ⅳ.ガバナンス
2次評価も昨年と同様で、「企業価値貢献」と「DX実現能力」の2点が基準となっています。企業価値貢献は、さらに「既存ビジネスモデルの深化」および「業態変革・新規ビジネスモデルの創出」の2点に分けて評価されており、このうち「業態変革・新規ビジネスモデルの創出」の方をより重視して評価することが資料には明記されています。
このように、活用した技術の真新しさではなく、技術を活用して新たなビジネスを創り出すことが最重要評価点です。
毎回選定される「常連」がある一方で、新たに選定された企業も11社存在します。「DX銘柄2022」へ新たに選ばれた企業は以下の通りです。
いずれの企業も、経営ビジョンや中期経営計画などにDXを重点課題として位置づけた上で、自社のみならず業界全体や社会の課題解決につながる施策に取り組んでいます。
「DX銘柄2022」および「DX注目企業2022」に選ばれた企業の顔ぶれ、取り組み内容の傾向をご紹介します。
グランプリに選ばれた中外製薬株式会社と日本瓦斯株式会社を含めて、「DX銘柄2022」には以下の33社が選定されました。「DX銘柄2021」より5社増えています。
2015年から8年連続で選定されているのは2社しかありません。グランプリ選定の翌年にDX銘柄やDX注目企業から漏れているような企業もあり、特定の企業だけではなく幅広く公平な審査が行われている印象があります。
DX注目企業は、DX銘柄には及ばないながら先進的な取り組みを進める企業です。今回は15社が選定されました。
こちらも幅広い業種から選定されています。やはり経営戦略の中にDXを明確な形で位置づけ、全社的な取り組みを強調する企業が多く選ばれています。
今回グランプリに選ばれたのは、中外製薬株式会社と日本瓦斯株式会社の2社です。
中外製薬については、その取り組みの網羅性が高く評価されました。成長戦略にDXを位置づけた上でデジタルに関わる方針を掲げ、創薬・生産・医療関係者・患者といったステークホルダー全てに利のあるDXを目指しています。
またビジョン、戦略、組織づくり、人材育成、デジタル基盤の強化など国が必要と考える取り組みが抜け漏れなく示されています。こうした取り組みを進めるのに欠かせないトップのコミットメント、CDO(最高デジタル責任者)や専門組織の設置、協業会社とのパートナーシップなど、DX推進に必要な要素が明確に提示されたことでグランプリにつながったと考えられます。
日本瓦斯については、DXをエンジンとした新規ビジネスへの挑戦とその実現能力が高く評価されました。同社は2016年以降連続で選定される常連企業でしたが、毎年ビジョンと取り組みが進展していることに加え、インフラ領域の変化に対応して新たなビジネスを創出する意気込みが示されています。
2社とも経営戦略とDXの関係性が論理的に説明されていること、そこから導かれた具体的な施策の実現性や進展が評価され、グランプリ選定となりました。
経済産業省は毎年DX銘柄選定に際して対象企業の調査を行い、全体的な傾向を分析してレポートを作成しています。今回の「DX銘柄2022」の評価基準や分析内容についてご紹介します。
回答傾向を2021年と比較すると、全ての評価項目でスコア改善が見られるとしています。これはDX銘柄に選ばれるような優秀な企業だけではなく、DX注目企業やDX認定取得企業においても同様です。
つまり、一部の先進企業のみならず多くの企業でDX関連の取り組みが進んでいるということです。ただし調査対象となっている企業は上場企業に限られ、中小企業を中心とした大半の非上場企業の実態は今回の調査では明らかにはなっていません。
こうした留意点はあるものの、大企業を中心にDXが進展しつつあると考えられます。経産省はこれまで日本企業におけるDX推進の遅れを繰り返し指摘してきましたが、少しずつ風向きが変わってきた可能性はあります。
多くの項目で、DX銘柄に選定された企業はそれ以外の企業よりも高いスコアを出しています。なかでもDX認定を取得していない企業との差が大きい項目に「組織・制度」「成果と成果指標の共有」があります。
これら以外では、「新規ビジネス創出」「デジタル技術の活用・情報システム」でもDX銘柄とそれ以外の企業とでは差がついています。しかしレポートでは、組織・制度や成果指標の共有の差がこれらの差につながっている可能性があると指摘しています。
DX銘柄はDX専任組織を設けるとともに経営トップもDXにコミットしており、またDXに関するKPIやKGIを設定してステークホルダーに開示するとともに、新しい挑戦を促す制度や仕組みをつくっています。
調査における評価項目は、前述の通りデジタルガバナンス・コードの内容に則したものです。従って、高く評価されDX銘柄に選定される企業では、デジタルガバナンス・コードに沿った取り組みを進めていることになります。
DX推進に求められる取り組みがどんなものか洗い出し、自社だけで実現させることは容易ではありません。デジタルガバナンス・コードをよく理解し、これに従ってプロジェクトを進めることでDXの実現性を高めることになると考えられます。
DX銘柄は、DXの重要性を企業に認知させるとともに、企業の自律的な変革を促す目的で毎年選定されています。DX銘柄やDX注目企業として名前の出ている企業は、間違いなくDX推進のお手本となるはずです。これからDX推進を目指している企業は、公表された企業の取り組みおよび分析結果を参考にするとよいでしょう。
▼DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧ください
「DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?意義と推進のポイント
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