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経産省選定「DX銘柄2024」から読み解く日本企業のDX傾向と事例

公開日
2024.12.19
更新日
2024.12.18
経産省選定 「DX銘柄2024」から読み解く日本企業のDX傾向と事例

2024年5月に「DX銘柄2024」が発表されました。
DX銘柄とは、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施している取り組みで、東京証券取引所に上場している企業のうち「DX推進に向けた仕組みを構築し、実際に成果を上げている」企業を選定するものです。

※DXについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

【関連記事】
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?今さら聞けない意味・定義・事例をわかりやすく解説【2024年最新版】

本記事では、「DX銘柄2024」の評価プロセスや選定企業の全体的な特徴、具体的なDX事例を徹底解説します。最後までお読みいただくことで、今年のDX銘柄の傾向を把握できるだけでなく、日本企業がDXを進める上での具体的なヒントを得られるでしょう。

「DX銘柄」とは?目的と開催背景

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、デジタル技術を活用して従来のビジネスモデルや業務プロセスを抜本的に見直し、新たな価値を創出する取り組みです。企業はDXを通じて、単なる効率化にとどまらず、事業の成長や顧客体験の向上、さらには市場競争力の強化を実現します。そのような中で、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施している「DX銘柄」は、こうしたDXの取り組みをリードする企業を選定し、広く紹介する制度です。

この取り組みの主な目的は、日本企業全体のDX推進を加速させ、国際的な競争力を高めることにあります。DXが進むことで企業価値が向上し、業界全体の成長が促進され、ひいては日本経済全体の発展に寄与することが期待されています。「DX銘柄」に選ばれた企業は、単に先進的な技術を導入するだけでなく、具体的な成果を挙げることで他社の模範となる存在と見なされています。

2024年版では、過去の評価基準を踏まえつつ、新たに強化された選定プロセスが導入されました。この変更により、従来以上に、DXの本質的な意義に沿った取り組みや、その持続可能性が重視されています。また、選定対象には、デジタル技術を活用して社会課題を解決し、環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点からも貢献している企業が多く含まれています。

さらに、2024年版の選定では業界ごとの特性にも注目し、各業界におけるDXのリーダーシップを発揮する企業を評価しています。このことは、業界横断的なDX推進を促す上での重要な指標となり、各企業がDXを通じて得た知見を業界全体に広げることを目指しています。「DX銘柄」は単なる称号ではなく、日本企業が未来に向けて挑戦を続けるための象徴とも言えるでしょう。


DXプラチナ企業銘柄2024-2026の「評価項目」

2024年度のDX銘柄には、下記の4部門が設けられています。

  • DXプラチナ企業2024-2026
  • DXグランプリ企業2024
  • DX銘柄2024
  • DX注目企業2024

この中で、トップとなる「DXプラチナ企業2024-2026」に選ばれている企業は2社あります。「DXプラチナ企業銘柄」は、特に優れたDX推進成果を上げ、業界全体の模範としてリーダーシップを発揮する企業を対象とする制度です。この制度は、単なる技術導入や業務効率化を評価するだけではなく、企業のビジョンやDXに向けた持続的な取り組みの実現性、その成果が他企業や業界にどのように影響を及ぼしているかを包括的に評価するものです。


2024-2026年版の評価のポイント

今回の評価では、従来の基準を基にしつつ、新たな視点が加わり、DXの意義をさらに深く掘り下げた内容となっています。例えば下記ポイントも視点として考えられます。

経営層のDX推進へのコミットメント

DX推進において、経営層の役割は極めて重要です。評価では、経営陣が単なる方針策定にとどまらず、自ら積極的にDXの推進をリードしているかが問われました。これには、以下の要素が含まれます:

  • トップダウンでの推進力:経営陣がDX推進の明確な目標を掲げ、全社的な動きを牽引しているか。
  • 資源配分の戦略性:DX推進に必要な資金や人材を優先的に投入し、具体的なアクションを起こしているか。
  • DXビジョンの明確化:短期的な成果にとどまらず、中長期的な視点でDXのロードマップを策定し、それを社内外に共有しているか。

持続可能な成果を生む仕組み

DXは一時的な成功ではなく、持続的な成果を生むための仕組み作りが重要です。2024-2026年版では、特に以下の観点が評価されています:

  • 業務効率化の枠を超えた価値創出:単に業務を効率化するだけではなく、デジタル技術を活用して新たな収益モデルを構築しているか。
  • 社会課題解決への貢献:環境問題や地域社会への影響を考慮したDXの取り組みが行われているか。
  • 従業員のリスキリング:DX推進に必要な人材育成に取り組み、企業全体での変革を支える基盤を構築しているか。

業界への波及効果

DXの成果が自社内に留まらず、他企業や業界全体に広がることが、評価の大きなポイントとなっています。この波及効果を生むためには以下の取り組みが必要とされています:

  • オープンイノベーションの推進:他社やスタートアップ、研究機関と連携し、共創による新たな価値を生み出しているか。
  • 業界基準の設定や普及活動:業界全体で共有可能なDXの成功モデルや基準を確立し、それを広める努力を行っているか。
  • 国際的なリーダーシップの発揮:国内だけでなく、グローバル市場でもDX推進の先導役を担い、競争力を強化しているか。

DX銘柄2024の「評価プロセス」

DX銘柄2024の評価プロセスは、DX推進の基盤や成果を持つ企業を公平かつ正確に選定するために、2段階で行われます。このプロセスは、単なる技術導入の有無だけでなく、企業全体のDXに対する姿勢や持続可能な価値創出への取り組みを包括的に評価する仕組みとなっています。

1次評価

1次評価では、東京証券取引所(プライム、スタンダード、マザーズ)上場会社約3,800社を対象に「DX調査2024」を実施。調査回答いただいた企業344社のうち、東京証券取引所に上場※かつ「DX認定」を取得している企業を対象に、アンケート調査結果及びROE・PBRに基づき、スコアリングを実施し、一定基準以上の企業を、候補企業として選定しています。これはDXの実現可能性を判断するための基礎的な段階であり、主に公開されている財務データや各種報告書、企業の公表情報を基に分析が行われます。

1次評価の観点

一次評価の評価項目(大分類)

1. ビジョン・ビジネスモデル
2. 戦略
2-①. 組織づくり・人材・企業文化に関する方策
2-②. ITシステム・デジタル技術活用環境の整備に関する方策
3. 成果と重要な成果指標
4. ガバナンスシステム

2次評価

2次評価では、1次評価を通過した企業に対し、より具体的で深い分析が行われます。この段階では、企業のDX推進がどの程度戦略的であり、実際に成果を上げているかが評価の焦点となります。

【参考】
デジタルトランスフォーメーション銘柄2024:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/keiei_meigara/dxstockreport-202401.pdf

2次評価の観点

以下の2つのポイントが特に重視され、企業の取り組みの具体性と社会的意義が評価されます。

  • 企業価値貢献
  • DX実現能力

DX銘柄2024における「各部門の説明」

DX銘柄2024では、企業のDX推進度合いや成果に基づき、異なる特徴を持つ4つの部門が設けられています。それぞれの部門には、DXの進展をリードする企業や、成長の可能性を秘めた企業など、日本企業全体のDXの模範となる存在として位置づけられています。

DXプラチナ企業

DX推進において特に顕著な成果を挙げ、かつ持続可能な取り組みを構築している企業が「DXプラチナ企業」として選定されます。この部門の企業は、業界のトップランナーとして、次のような特徴を備えています:

  • 戦略的なDX推進:長期的なビジョンに基づき、DXを経営戦略の中心に据え、継続的な価値創出を目指しています。
  • 社会的影響力:デジタル技術を活用して業界全体や地域社会に波及効果を与える取り組みを実現。
  • 革新性と実効性:最新の技術やビジネスモデルを積極的に導入し、競争優位性を確立しています。

選定された企業は、単なるデジタル技術の導入にとどまらず、経営課題の解決や社会的価値の向上に大きく貢献しており、他企業のロールモデルとしての役割を果たします。

DXグランプリ企業

「DXグランプリ企業」は、業界のリーダーとしてDXを積極的に推進し、短期間で目覚ましい成果を上げた企業が対象です。この部門では、特に次のような要素が評価されています:

  • 迅速な成果の実現:短期間でDXの具体的な成果を出し、業界全体の注目を集めています。
  • イノベーションの波及:新たな技術やサービスを提供し、他企業への影響力が強い。
  • 業界変革の先導:属する業界において、DXによる新たな競争軸を創出。

これらの企業は、他社が模倣しやすい成功事例を提供することで、業界全体のデジタル変革を牽引する存在となっています。

DX銘柄

「DX銘柄」は、DXの取り組みを通じて企業価値向上を実現した企業が選定されます。この部門の企業は、次のような特徴を持っています:

  • 収益向上と効率化の両立:DXによって事業運営の効率化を図る一方、新たな収益モデルを確立。
  • データドリブンな経営:データを活用して意思決定を迅速化し、顧客体験の向上や市場競争力を強化。
  • 持続可能な成長基盤の構築:短期的な成果だけでなく、中長期的な成長を見据えた取り組み。

「DX銘柄」に選ばれた企業は、組織のデジタル化を加速し、経営の質を向上させた事例として評価されています。

DX注目企業

「DX注目企業」は、DXの基盤を整え、今後の成長や推進が期待される企業が対象です。この部門では、次の点が注目されています:

  • 未来志向の取り組み:現時点での成果は限定的であっても、DXを通じて新たな挑戦を続けている。
  • 潜在的な成長力:現在進行中のDXプロジェクトが成功すれば、業界全体にインパクトを与える可能性を秘めている。
  • 柔軟な組織文化:DX推進に必要な人材育成や組織改革に積極的に取り組んでいる。

この部門は、まだ成果が顕著でない企業にも焦点を当てることで、未来のDXリーダーを発掘する意義を持っています。

「DX銘柄2024」の選定企業の一覧

ここからは、DX銘柄2024に選定された企業の一覧を紹介します。選定企業の特徴もあわせて解説するので、これからDX推進の取り組みを始めようとお考えの方は参考にしてください。

DXプラチナ企業2024-2026

証券コード法人名業種
6501株式会社日立製作所電気機器
7732株式会社トプコン精密機器

DXプラチナ企業2024-2026は、DX推進において業界の模範となり、持続可能な価値創出と社会課題解決を実現する先進的な企業として2社が選定されました。

  • 株式会社日立製作所
    • DXを核に経営改革を推進。社会イノベーション事業を軸に成長し、Lumada活用で課題解決を支援。リーダーシップのもとグローバル展開を加速しています。
  • 株式会社トプコン
    • 90年以上の歴史を持つ「伝統あるベンチャー企業」としてDX加速を推進。中期計画で成長事業投資や画期的なソリューション創出を目指し、新たな価値を提供しています。

DXグランプリ企業2024

証券コード法人名業種
5938株式会社LIXIL金属製品
7011三菱重工業株式会社機械
7936株式会社アシックスその他製品

DXグランプリ企業では、業界をリードする目覚ましいDXの成果を挙げた以下の3社が選定されました。

  • 株式会社LIXIL
    • 明確なビジョンと経営陣の強力なリーダーシップのもと、「デジタルの民主化」や先進技術活用を通じたDX推進で、グローバル成長と企業価値向上を実現。
  • 三菱重工業株式会社
    • 最先端技術と人材を活かし、幅広い事業でDXを推進。「かしこく、つなぐ」コンセプトで新たな価値を創出し、社会の変革をリードしています。
  • 株式会社アシックス
    • VISION 2030の実現に向け、DXを推進し業務効率化や顧客理解を深める新たなビジネスを確立。包括的なサービス提供で個々に寄り添う取り組みを展開しています。

DX銘柄2024

証券コード法人名業種
2871株式会社ニチレイ食料品
3591株式会社ワコールホールディングス繊維製品
3407旭化成株式会社化学
4568第一三共株式会社医薬品
5108株式会社ブリヂストンゴム製品
5201AGC株式会社ガラス・土石製品
5411JFEホールディングス株式会社鉄鋼
6367ダイキン工業株式会社機械
6645オムロン株式会社電気機器
6841横河電機株式会社電気機器
7259株式会社アイシン輸送用機器
9143SGホールディングス株式会社陸運業
9101日本郵船株式会社海運業
9201日本航空株式会社空運業
9301三菱倉庫株式会社倉庫・運輸関連業
9434ソフトバンク株式会社情報・通信業
3132マクニカホールディングス株式会社卸売業
2678アスクル株式会社小売業
8316株式会社三井住友フィナンシャルグループ銀行業
8601株式会社大和証券グループ本社証券、商品先物取引業
8253株式会社クレディセゾンその他金融業
4544H. U. グループホールディングス株式会社サービス業

DX銘柄には、多くの企業が選定されていますが、その中でも特筆すべき以下の3社を紹介します。

  • 旭化成株式会社
    • 「健康で快適な生活」と「環境との共生」を目指し、DX戦略を体系的に推進。多様な事業領域で価値創造と持続可能性を実現し、社会と企業価値の向上に貢献しています。
  • 株式会社ブリヂストン
    • リアル×デジタルの融合でタイヤ摩耗予測などの革新を推進。DX人材育成やグローバル協業を通じ、新たな価値創出と持続可能な社会への貢献を実現しています。
  • ダイキン工業株式会社
    • 「FUSION25」でDXを推進し、AI・IoT活用やクラウド型空調サービスで効率性向上を実現。人材育成や環境負荷軽減への取り組みで、持続可能な社会への貢献を目指しています。

DX注目企業2024

証券コード法人名業種
1333マルハニチロ株式会社水産・農林業
4901富士フイルムホールディングス株式会社化学
4507塩野義製薬株式会社医薬品
5333日本硝子株式会社ガラス・土石製品
5711三菱マテリアル株式会社非鉄金属
6902株式会社デンソー輸送用機器
7911TOPPANホールディングス株式会社その他製品
9501東京電力ホールディングス株式会社電気・ガス業
9064ヤマトホールディングス株式会社陸運業
9104株式会社商船三井海運業
9233アジア航測株式会社空運業
4768株式会社大塚商会情報・通信業
2768双日株式会社卸売業
8174日本瓦斯株式会社小売業
8354株式会社ふくおかフィナンシャルグループ銀行業
8616東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社証券、商品先物取引業
7199プレミアグループ株式会社その他金融業
8439東京センチュリー株式会社その他金融業
2980SREホールディングス株式会社不動産業
9216ビーウィズ株式会社サービス業
9715トランス・コスモス株式会社サービス業

DX注目企業には、DXの基盤を整え、将来の成長が期待される企業が多く含まれています。その中でも特筆すべき3社は下記になります。

  • ヤマトホールディングス株式会社
    • DXを基盤に「ヤマトデジタルプラットフォーム」を活用し、ネットワーク効率化や業務改革を推進。収益性向上と持続可能な価値創出で、顧客と社会のニーズに応えています。
  • 株式会社東京センチュリー
    • 「TCX」を基盤にDXを推進。先進的な「DYNASSシステム」の更改で業務改革を進め、リースビジネスの価値向上と持続可能な成長を実現しています。
  • 株式会社SREホールディングス
    • 不動産や金融などの実業を通じ実務有用性の高いDXソリューションを提供。飲食業界の課題解決やDXの横展開により、業界活性化と暮らしの豊かさに貢献しています。

「DX銘柄2024」選定企業の全体的な特徴

DX銘柄2024では、日本企業がDX推進において進化を遂げていることが如実に示されており、以下の3つの特徴が特に浮き彫りになりました。これらの特徴は、日本全体のデジタル化の進展や企業の社会的責任への取り組みを映し出しています。

AI技術の積極活用

2024年版では、生成AIや機械学習など、先端技術の導入と活用が多くの企業で進んでいることが特徴的です。特に、以下のような分野でAI技術が活用されています:

  • 業務効率化:社内の定型業務をAIで自動化し、生産性を向上させる取り組み。例として、製造業では、AIを活用した生産ラインの最適化が進行しています。
  • 新サービス開発:AIを用いた新たなサービスやプロダクトが次々と生まれています。例えば、生成AIを活用したパーソナライズされた顧客体験の提供や、データ分析を基にした需要予測モデルの構築が挙げられます。
  • 意思決定支援:AIを活用して経営判断の精度を向上させる取り組みも増加しており、これにより、迅速かつ戦略的な意思決定が可能になっています。

AI技術の活用は、単なる業務の効率化にとどまらず、競争優位性を確立するための基盤として位置づけられており、選定企業の多くがこの分野で先進的な取り組みを行っています。

サステナビリティの強化

2024年版では、DXとESG(環境、社会、ガバナンス)経営を統合した戦略が際立っています。特に以下の点が注目されています:

  • 環境への配慮:多くの企業がカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進めており、DXを活用してエネルギー消費の最適化や廃棄物削減を実現しています。具体例として、製造業では、IoTデバイスを使ったリアルタイムのエネルギー管理が挙げられます。
  • 社会的課題への対応:地域社会との連携を強化し、DXを通じて地域経済の活性化や雇用創出に貢献している企業が多く見られます。
  • ガバナンスの向上:デジタル技術を活用して内部統制やリスク管理を強化し、持続可能な経営体制を構築している企業も選定の要因となっています。

これらの取り組みは、企業の社会的責任(CSR)を果たすだけでなく、顧客や投資家からの信頼を獲得し、長期的な競争力を高める結果につながっています。

中小企業の台頭

これまでDX推進の主役は大企業が中心でしたが、2024年版では中小企業の台頭が目立つ結果となっています。中小企業は以下のような点で注目されています:

  • 柔軟性とスピード:大企業に比べて意思決定プロセスが短く、迅速に新しいデジタル技術を採用し、事業に応用する能力が高い。
  • 創造的な取り組み:限られたリソースを最大限活用し、新しいビジネスモデルやサービスを生み出しています。例えば、クラウド技術やSaaSツールを積極的に導入し、デジタル化を推進している中小企業が多数選ばれています。
  • ニッチ市場への特化:特定の市場において独自性のある製品やサービスを展開し、差別化を図ることで競争力を高めています。

中小企業のDXは、規模や予算の制約を逆手に取り、効率的かつ効果的に技術を活用することで、大企業に匹敵する成果を挙げています。

DX銘柄企業の取り組みDX事例

DX銘柄2024に選定された企業の中には、業界をリードする先進的なDX事例が数多く見られます。特に、DXプラチナ企業2024-2026に選ばれた「株式会社日立製作所」と「株式会社トプコン」は、それぞれの分野でDXを活用し、顕著な成果を挙げています。

株式会社日立製作所

課題

日立は、リーマンショック後に大赤字を計上し、会社存続の危機に直面しました。この状況を打破するため、社会イノベーション事業を推進し、グローバル成長を目指す必要性に迫られました。また、多岐にわたる事業運営を効率化しつつ、デジタル技術を活用して社会課題に対応することが求められました。さらに、グローバル展開を支えるためのデジタル人材の確保や育成も喫緊の課題となっていました。

取り組み

  • Lumada事業の推進
    • 日立は、顧客協創フレームワークである「Lumada」を軸にDXを推進しました。IT、OT、プロダクトを活用して、国内外のユースケースを共有し、迅速な課題解決を図っています。これにより、社会課題を解決するためのプロセスをスケールアップし、信頼性と効率性を高めました。
  • 事業ポートフォリオ改革
    • 上場子会社を整理統合し、経営体制をシンプル化。ABB社の買収や日立ハイテクの完全子会社化により、グローバル基盤を強化し、3セクター体制を整えることで、収益性と成長力を向上させました。
  • デジタル人材の育成
    • GlobalLogicとの連携によりリスキリングやアップスキリングを加速し、全社的なAI変革プロジェクトを通じてスキルの強化を図りました。
  • 生成AIの活用
    • 議事録作成や翻訳など、幅広い業務の効率化と自動化を推進。これにより、予測型経営に向けたデータ分析基盤の構築を進めています。

成果

これらの取り組みにより、日立は社会イノベーション事業の海外展開を加速させ、収益性と成長性を大きく向上させました。DXとGXを融合させた取り組みを通じて、生成AIやグリーンエネルギーの活用により新たな価値を提供し、環境課題にも対応しています。また、全社的なデジタル技術の活用により業務効率を改善し、オペレーションコストを最適化しました。DXによる課題解決力の強化を通じて、顧客や社会との信頼関係を深め、競争力の向上を実現しました。これらの成果は、持続可能な社会の実現に向けたリーダー企業としての地位を確立する大きな一歩となっています。

株式会社トプコン

課題

トプコンは長い歴史の中で、「医・食・住」の分野で持続可能な成長を実現し続ける必要がありました。また、顧客ニーズの変化や業界の課題に応えるため、既存技術の進化と新たなデジタル技術の取り入れが求められていました。さらに、グローバル展開における地域ごとの適応や、現場の効率化を進めるための具体的なソリューションの開発も大きな課題となっていました。

取り組み

  • コア技術を基盤としたDX推進
    • トプコンは創業以来培ってきた光学やセンシング技術を活用し、「はかる」技術を基盤に建設、農業、医療分野でDXソリューションを提供。GNSSや機械学習を組み合わせ、建設機械や農業機械の運転自動化を実現しました。これにより、作業効率の向上と省人化を達成しました。
  • 新技術の積極的な導入とM&Aの活用
    • トプコンは米国などの技術ベンチャーを約40社買収し、革新的な技術を取り入れることで既存技術と融合。例えば、建設機械のロボット化を実現する技術を獲得し、新たなソリューションの開発につなげました。この取り組みにより、新しい市場の開拓を可能にしています。
  • 顧客に寄り添う製品開発
    • DXの「はじめの一歩」として、現場で受け入れやすいハードウェアを開発。熟練者でなくても簡単に使える測量機や眼底カメラを提供することで、顧客がDXに取り組みやすい環境を整えました。これにより、DXの普及と現場での生産性向上を後押ししています。
  • グローバル市場での地域特化型ソリューション展開
    • 各地域の特性や法規制に適応するため、営業拠点からの情報を活用し地域に合わせたソフトウェア開発を実施。「Think Globally, Act Locally」の理念のもと、グローバル市場で競争力を高めています。

成果

これらの取り組みによって、トプコンは「医・食・住」領域における社会的課題を解決し、業界の効率化と省人化を実現しました。特に建設現場でのデジタル化や農業の自動化により、生産性が大幅に向上。医療分野では、眼底画像とAIを活用したスクリーニング検査により、疾患の早期発見に貢献しました。今後も伝統あるベンチャースピリットを基盤に、新しい技術と市場の開拓を進め、持続的な成長を目指します。

ブレインパッドによる支援事例(DX銘柄2024企業)

DX銘柄2024に選定された企業の中から、ブレインパッドが支援している「ソフトバンク株式会社」のDXプロジェクトについて、概要を紹介します。

ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社は、社会インフラのさらなる効率化と高度化を目指し、AIとデータ分析を活用した革新的な取り組みを進めています。その一環として、LPガス業界における配送業務の効率化を実現する新サービス「Routify(ルーティファイ)」を開発し、実装しています。

「Routify」は、LPガス事業者のデータ(検針、車両、配送員、物件情報など)と外部データ(道路情報、天候など)を活用し、AIによってガス残量を予測する配送最適化サービスです。これにより、従来は配送員の勘や経験に頼っていた配送計画が自動化され、専用アプリを通じて効率的な配送ルートを提供。結果として、最小限の移動で均一的なガス残量の容器回収が可能になります。

ブレインパッドは、本プロジェクトの開発パートナーとして、インプット、配送最適化システム、アウトプット(業務アプリケーション)からなる「Routify」のビジネス実装に向けた支援をいたしました。

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DX銘柄2024の総論

2024年のDX銘柄は、日本企業のDX推進状況とその成果を明確に示すと同時に、取り組みの成熟度や現状の課題を浮き彫りにしています。選定された企業の多くは、DXを通じて業務効率化や新たな事業モデルの構築に成功しており、その成果は業界全体に好影響を与えるものです。一方で、未選定企業やDX推進に遅れを取る企業にとっては、成功事例が示す具体的な道筋を学び、自社の課題解決に向けたヒントを得る貴重な機会となっています。企業規模や業界の壁を超え、持続可能な社会の実現と経済成長に向けた歩みを加速させることが、これからのDX推進における重要な課題といえるでしょう。


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株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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