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経済産業省「DXレポート第2弾(2020年)」公表に見るコロナ禍での企業変革の重要性

公開日
2021.03.24
更新日
2024.06.06
経済産業省「DXレポート第2弾(2020年)」公表に見るコロナ禍での企業変革の重要性

2020年12月に、経済産業省から第2弾のDXレポートの中間取りまとめが公表されました。当レポートでは、2018年に公表された第1弾レポートの内容とそれ以降の動向、特に新型コロナウイルスの感染拡大による影響を踏まえ、企業の取り組むべきアクションプランが具体的に示され、より実践的な内容となっています。

今回の記事では、第2弾レポートの内容の中でも特に企業関係者が参考にすべき記載を整理していきます。

(DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧下さい)
【関連】「DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?意義と推進のポイント

近年のDX推進状況と政府の課題認識

2018年以降の2年間で、日本企業のDX推進状況はどのように変化したのでしょうか。2020年現在の状況と、政府の課題意識について整理します。

進まない日本企業のDXと低い危機意識

2018年の段階で、経済産業省では日本企業のDXが思うように進んでいないことに対して危機感を抱いていました。デジタル部門を設置するなどDXのための取り組みを進めようとする企業は多いものの、実際のビジネス変革にはつながっておらず、既存システムが老朽化・複雑化していることが重しとなり、前向きなIT投資がしにくくなっていました。

仮にDXの進まない状況が続くとすると、既存システムの維持費の高騰、セキュリティリスクの高まり、デジタル競争からの敗退などにより、一企業のみならず日本経済全体の競争力が失われ、大きな損失につながることは明らかでした。経済産業省の試算によると、2018年段階で既に年間4兆円ほどの経済損失となっており、このままでは2025年の段階で最大年間12兆円にまで膨れ上がります。これを「2025年の崖」と呼び、既存のIT資産の整理から始めて、DXを早急に推進するよう企業に求めたのでした。

【関連】DXを実現できないと転落する「2025年の崖」とは?政府の恐れる巨額の経済損失

その後ガイドラインを整備したり、自己診断のための指標を策定したりと、企業のDX推進を支援するための仕組み作りを経済産業省では進めてきました。しかしながら、2019年および2020年のデータ分析によると、相変わらずDXの遅れは解消されていません。

自己診断結果によると、部門横断的なDXを推進していたり持続的な改革に着手していたりする企業はわずか5%ほどにとどまり、残りの95%は未着手か一部部門での実施にとどまっています。この結果は自己診断を行って結果を提出した「意識の高い企業」のものであり、その水面下には診断を実施すらしていない企業が存在しています。

しかしながら、自社の取り組み状況について「トップランナー」であると評価している企業が約4割にのぼります。政府とは異なり、自社のDXについての意識が低かったり、危機意識が低かったりする企業が多いと考えられます。

以上を踏まえ、経済産業省の2020年のレポートでは、「我が国企業全体における DX 推進はまだ始まったばかりの段階」と記述されています。政府の危機感は、より深まっていると言えるでしょう。

コロナ禍で高まるDXの重要性と緊急性

コロナ禍を受けて、テレワークが普及したのは周知の通りです。2020年3月時点の都内企業のテレワーク導入率は24%にとどまっていましたが、4月の緊急事態宣言を経て、わずか1ヵ月で6割を超えるところまで急伸しました。

経済産業省では、これを「経営トップの判断と指示が社内全体に対して大きな行動変容を可能にした」と評価しています。そして、経営トップのコミットメントがあれば、コロナ禍をDXに取り組む契機とすることも同様に可能であるとしました。

コロナ禍で社会活動が変化したことに伴い、DXの重要性も増していると経済産業省は考えています。ビジネスにおけるデジタル活用が進む中で、今こそ企業文化を変革する「絶好の機会」と記述されています。


DXを受けた企業の目指すべき方向性

「企業のDX」と言っても、ITベンダー企業とそのサービスを享受するユーザー企業とでは方向性が異なります。新たなDXレポートではどういった方向性が望ましいとされているのか見ていきます。

ユーザー企業の変革の方向性とは

ユーザー企業の変革の方向性は、コロナ禍を受けて大きく変更したわけではありません。DX推進こそが、急速な環境変化を受けても企業を存続させる道であるとされています。

経済産業省(政府)は、繰り返し以下をDXの定義として述べてきました。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

この定義が変わったわけではありませんが、コロナ禍によって「変化」「適応」というキーワードがより強調されるようになりました。レポートでは、コロナ禍は一過性の特殊事情ではなく、ビジネスにおける価値創出の領域をデジタルへ移行させるきっかけであるとされています。仮にコロナ禍が収束した後もこの傾向は戻らず、企業はこれを常に起こりうる環境変化の一つとして適応し続けることが求められるのです。

企業が競争上の優位性を確立するためには、常に変化する社会や顧客の課題を捉えて、素早く変革し続ける能力を身につけることが必要不可欠となります。特に、ITシステムのみならず企業文化という固定観念を変革することが重要です。

ベンダー企業の変革の方向性とは

ベンダー企業のあるべき姿として、以下の4点が挙げられています。

・ユーザー企業の変革を共に推進するパートナー

・DX に必要な技術・ノウハウの提供主体

・協調領域における共通プラットフォーム提供主体

・新ビジネス・サービスの提供主体

要するに、ユーザー企業のDXを推進できるパートナーとなるのに加えて、社会へデジタル技術を活用した新たな価値を提案できる主体となる必要があるということです。現在、多くのベンダー企業は、残念ながらそうはなっていないと考えられています。

経済産業省の考えによると、現在のベンダー企業の多くはユーザー企業のITシステムを個別に開発・納入する受託開発型のビジネスを展開してきました。これでは生産性向上や新規技術の習得に対するインセンティブは上がらず、DXを推進するユーザー企業のニーズやスピード感に適応できなくなる可能性が高いでしょう。現行ビジネスの維持・運営から脱却し、価値創造型のビジネスへと舵を切ることが急務です。


企業が取り組むべきアクション

企業はDXをどのように進めればよいのでしょうか。レポートでは、アクションプランを超短期(直ちに着手すべき)・短期・中長期の3つに分けて整理しています。

コロナ禍を受けて直ちに取り組むべきアクションとは?

直ちに取り組むべきであるのが、従業員や顧客の安全を守りながら事業継続を可能とするアクションです。具体的には、以下の4点が挙げられています。

・業務活動のオンライン化

・業務プロセスのデジタル化

・従業員の安全・健康管理のデジタル化

・顧客接点のデジタル化

いずれも市販の製品・サービスが多く出回っており、活用することでリモート対応を前提とした事業継続が容易になります。こうしたデジタルツールの導入には経営トップのリーダーシップが重要であり、企業文化を変革するためのファーストステップに位置づけることも可能です。

DXのための体制整備

短期的対応として、DX推進体制の整備、DX戦略の策定、DX推進状況の把握の3点が挙げられています。いずれもDX実現の初期段階に実施すべきアクションであり、どの企業も避けては通れません。

DX推進体制を整備するには、経営層・事業部門・IT部門がDXの内容やゴール、進め方について共通理解を持つことが必須です。その後に業務プロセスの再構築を含めた戦略策定、現状把握の方法論の検討を行います。これらの作業によって、DX推進プロジェクトを円滑に進める土壌が整います。

【関連】DXの担い手「CDO」とは?DX成功のカギは、デジタル化を推進する専門組織にあり

デジタル企業への変革に向けて中長期で取り組むアクション

中長期的対応として、IT投資の効率化が挙げられています。過度に自社環境へ合わせるためのシステムカスタマイズを要求するのではなく、むしろ業務プロセスを標準化することで、パッケージソフトを極力カスタマイズなしに利用しやすくなります。結果として、IT投資の予算や人材の抑制につながるのです。

さらに、業界内の他社と協調領域を形成して、特定の地域や業界向けの共通のデジタルプラットフォームを整備することも推奨されています。一社だけでは投資余力が足りないかも知れませんが、複数社が協調することで充実したプラットフォームを構築できるためです。

また、変化対応力の高いITシステム構築の可能な体制整備も挙げられています。受託開発では成果物の価値が明らかになるまで時間がかかり、DX時代のスピード感にそぐわない可能性があります。仮説検証を俊敏に実施できるアジャイル型の開発体制ヘ変化させることが求められます。

開発体制の変化と関連して、ベンダー企業の事業変革も改めて記載されています。ユーザー企業の変化を起点として、ベンダー企業もユーザー企業とビジネスパートナーとしてDXに取り組めるよう変化する必要があります。

最後に、人材確保も中長期的な課題です。ジョブ(仕事の範囲、役割、責任)と成果の評価基準を明確化し、必要な人材の定義と確保の仕組みを整えなければなりません。

まとめ

2020年のDXレポートは、前回2年前のレポートより企業の方向性を具体化し、「レガシーシステムを刷新すればよい」という誤解の払拭を意図した内容となっています。DXの遅れに対する危機感がより強く、企業に対する要求水準がより明確になったとも言えます。

ユーザー企業およびベンダー企業関係者は、このレポートの内容を理解し、特に政府の危機感を共有することが必要不可欠です。DXに必要なアクションプランにいち早く手をつけ、改革を実現できるかが問われています。

【あわせて読みたい】DXレポート関連記事

・DX(デジタルトランスフォーメーション)推進における日本企業の課題と解決策
・DX推進ガイドラインとは?経営戦略とITシステムの再構築で実現するビジネスモデル変革
・DXを推進するためのアクションプランは? 経産省「DX推進指標」を参考に

(参考)
経済産業省「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会の中間報告書『DXレポート2(中間取りまとめ)』を取りまとめました」
経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」


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2004年の創業以来、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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