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インフラ業界の課題をDXでどう解決するか?政府の取り組みと企業事例を紹介

公開日
2021.10.14
更新日
2024.02.17

データやデジタル技術を活用して、行政業務やビジネスを変革する動きが各業界・領域で広がっています。インフラ業界でも、老朽化や人手不足などの構造的な課題をDXによって解決すべく、さまざまなアクションが開始されているところです。

今回は、国土交通省の資料(「インフラ分野におけるDXの推進について」)からインフラ業界のDXの概要を整理するとともに、ブレインパッドが支援したインフラ業界のお客様事例を紹介します。

▼DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧ください
DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?意義と推進のポイント

インフラ業界のDXで何を行うのか

まずは、インフラDXの概要について説明します。DXが必要となる背景、DXの効果と全体像を把握しましょう。

インフラ業界の課題とDXの概要

インフラ業界、特に建設現場では課題が山積しています。将来の人手不足、災害対策、そして既存のインフラの老朽化など、いずれも構造的な問題で一筋縄にはいかないものばかりです。そのような中、建設業界では、デジタル技術による生産性向上を目指す「i-Construction」という取り組みが進んでいます。

また、社会経済情勢もインフラ業界に課題を突きつけています。特に新型コロナウイルス感染症の拡大に対して「非接触・リモート化」の働き方が求められるようになっているのです。生産性向上はもちろん、安全面からもデジタル化・スマート化を強力に推進する必要があります。

「インフラDX」で実現することとは何か

建設現場の人手不足やインフラの老朽化、コロナ禍などといった課題を受けて、国土交通省はインフラ分野のDX推進を支援する取り組みの検討を開始しました。2020年に推進本部を設置し、定期的に検討会を開催して取り組みの進捗共有、事例紹介などを行っています。また、2022年度予算概算要求に向けて、「インフラ分野のDX推進アクションプラン(仮称)」を策定する予定です。

「インフラ分野のDX」は、社会資本や公共サービスの変革はもちろん、建設業や国土交通省の文化・風土および働き方の改革を目的としています。以下の3点からDXを推進し、インフラへの国民理解の促進と安全・安心で豊かな生活の実現というゴールが達成されるとしています。

  • 行動のDX:対面にとらわれない働き方、どこでも可能な現場確認
  • 知識・経験のDX:AI活用で熟練技能の継承を可能とし、誰でもすぐに現場で活躍できる体制作り
  • モノのDX:BIM/CIM(Building/Construction Information Modeling, Management)の導入で建設プロセスを変革し、誰もが簡単に図面を理解できる仕組みを作る

「インフラDX」に向けた具体的なアクション

具体的なアクションとして、数ある事例を以下の3領域に整理しています。

  • 行政手続きや暮らしにおけるサービスの変革
  • ロボット・AI等活用で人を支援し、現場の安全性や効率性を向上
  • デジタルデータを活用し仕事のプロセスや働き方を変革

他の業界と同様、サービス変革や生産性・安全性の向上、働き方改革などが目的です。それぞれの領域に属する事例については、次で紹介します。


「インフラDX」の取り組み事例①(国土交通省)

政府によるインフラDXの取り組みをまとめます。3つの分野でそれぞれどんなことを進めているのか、あるいは進めようとしているのかを見ていきましょう。

行政手続きや暮らしにおけるサービスの変革

一つ目は、インフラ関連の行政手続きや国民に対するサービスの変革です。行政手続きのデジタル化・オンライン化を進めて所要時間の短縮を図るとともに、デジタルデータの活用で暮らしの利便性や安全性を高めるサービスを新たに提供しようとしています。

行政手続き迅速化の一例が、特殊車両(特車)の通行手続き迅速化です。連結トラックのように新たなタイプの特車を投入することで物流各社が生産性向上を目指しています。その一方、通行手続きや道路占用許可手続きなどの手間が課題となっていました。電子申請システムを導入することで、手続きを効率的に処理できる仕組み作りに乗り出しています。

暮らしのサービスの一例としては、ETCによるタッチレス決済の普及が挙げられます。現在、高速道路で利用できるETCですが、これを駐車場やドライブスルーなどに範囲を拡大させようとしています。2020年8月から11月にかけて、神奈川県相模原市にあるケンタッキーフライドチキンでの試行運用を実施しました。

現場作業に対するデジタル技術の活用

2つ目の柱は、デジタル技術の活用によって現場作業の安全性・生産性を向上させる取り組みです。ロボットやAIが人間の代わりに危険な作業を行うことで、現場の安全性を向上させます。また、AIで作業者を支援する環境の構築や、熟練技能のデジタル化などで、経験の浅い作業者でも活躍しやすいようにすることも狙いです。

無人化や「自律施工」と呼ばれる技術によって、ショベルカーをシミュレータで遠隔操作したり、免許を持たない乗務員でも自動運転列車を列車運行できたりと、安全性や生産性向上にデジタル技術は大きな役割を果たします。

AIの活用範囲は多岐に渡りますが、カメラ画像からAIが交通傷害を自動検知するシステムや、インフラの劣化を点検画像から自動検知して点検員の判断を支援するシステムなどが開発されています。

他にも、センサーにより作業員の熟練技能を可視化し、効率的な人材育成方法論の構築に貢献する仕組みも研究されています。

デジタル技術・データの活用による働き方改革

インフラ関連のデジタル活用を絡めた働き方改革の一つに、調査・監督検査業務があります。パトロール車両のカメラでリアルタイム映像を撮影してAIで処理。データを用いて道路舗装の損傷判断を効率化させる技術や、河川の堤防除草作業をタブレット・GPS・自動トラクターによって自動化させる技術が開発されています。


「インフラDX」の取り組み事例②(八千代エンジニヤリング株式会社)

ブレインパッドによるインフラ業界の支援事例として、八千代エンジニヤリングを取り上げます。AIは、インフラ業界における「昔ながらの目検作業」をどのように自動化・効率化したのでしょうか。

護岸コンクリートの劣化調査に莫大な手間とコスト

八千代エンジニヤリングは、河川の災害対策として設置された護岸コンクリートの調査・検討業務を請け負っています。1960年代以降の護岸コンクリートは設置から既に数十年が経過しており、劣化の点検・改修が社会問題化しています。

従来は、劣化状況の確認は担当者の目視を中心に行われており、護岸のひび割れを人間がスケッチして5年ごとの変化を把握するなど、莫大な手間とコストがかかっていました。また判断基準が担当者によって異なるため、判断精度の担保も課題でした。

撮影画像から劣化の有無を自動で判別するAI

ブレインパッドは、八千代エンジニヤリングの要望を受けて、護岸コンクリートの撮影画像からひび割れなどの劣化を自動検知するためのアルゴリズムを開発しました。このアルゴリズムは、Google によってオープンソース化された深層学習フレームワーク「TensorFlow」を用いて実装されました。

検証の結果、人間の目視と同レベルの精度で劣化を検知できることが分かりました。現場での対応工数を5分の1にまで削減する効果も実証しています。今後は、劣化検知の判定プロセスをシステム化するとともに、護岸コンクリート以外のインフラにも展開を検討していく予定です。

詳細はこちらをご覧ください。

まとめ

インフラ分野のDXは、作業現場の安全性・効率性を追求するとともに、インフラサービスを享受する国民の利便性向上も目的として進められています。インフラの劣化や労働力不足・高齢化が社会的に問題化する中で、デジタル技術による作業の省力化・自動化や新規サービス創出などには大きな期待が寄せられています。国民の幸福、労働環境の改善、産業競争力の維持・強化に「インフラDX」がどこまで貢献できるか、特にこれから数年から10年ほどの動向には注目する必要があるでしょう。

DXの本質について改めて知りたい方は、こちらの記事もぜひご一読ください。

参考


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株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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