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機械学習とは?3つの学習手法と知っておきたい活用事例

公開日
2022.09.05
更新日
2024.02.21

「機械学習」という言葉自体は広く知られるようになってきました。ビジネスにおいて、何か劇的に生産性を向上させてくれる「魔法の杖」のようなイメージで語られることも少なくありません。今回は、そんな機械学習についてより深く理解していただくために、機械学習を支える学習手法と活用事例についてご説明します。

※監修:株式会社ブレインパッド アナリティクス本部 アナリティクスサービス部 副部長 池田 裕章(※所属部署・肩書は当時のものです)

機械学習とは?意味や類似用語との関係

「機械学習」は、データからパターンやルールを機械(コンピュータ)自身に学習させる手法です。まずは機械学習の基本的な意味をご説明します。

機械学習とは?

機械学習は、過去の経験や事象から得られたデータに基いて、機械(コンピュータ)にそこに存在するパターンやルールを自動的に見つけさせる手法です。

パターンやルールとは、例えば「過去に商品Aを購入した人は、その後に商品Bを購入しやすい」「この種の画像を『犬』として認識する」などを指します。人間のような高度な情報処理を、人間よりもはるかに高速かつ正確に行わせることが機械学習の目的となります。

機械学習については、以下の記事でも分かりやすく説明していますのでご参照ください。

機械学習と人工知能(AI)、ディープラーニング(深層学習)、DXの関係

機械学習と関連の深い用語として、人工知能(AI)やディープラーニング(深層学習)、DX(デジタルトランスフォーメーション)などが挙げられます。

人工知能(AI)の定義は確定していませんが、概ね「人間の知能・知性を代替する機械の総称」と考えられます。機械学習は、AIを実現するのに用いられる要素技術のひとつです。機械学習を通じてコンピュータにパターンやルールを学習させることで、AIを実現します。

ディープラーニング(深層学習)は、機械学習の手法のひとつです。人間の神経回路を模したモデルによる高度な情報処理手法をニューラルネットワークと呼び、ディープラーニングはこのニューラルネットワークの層を幾層にも重ねたものを指します。

さらにDX(デジタルトランスフォーメーション)は、AIやIoTなどの情報テクノロジーを活用した企業・自治体など組織の変革のことです。つまりDXの一手段がAIであり、AIを実現する技術のひとつが機械学習、さらに機械学習の一手法がディープラーニングという関係にあります。

補足として、機械学習の一種であるディープラーニングが活用されたAIとして「生成AI」があります。生成AIの代表例は「ChatGPT」。これらについて理解を深めたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

【関連記事】生成AI(ジェネレーティブAI)とは?仕組みやChatGPTとの関連性を解説

【関連記事】ChatGPTとは?使い方・始め方・仕組み・最新の活用事例を一挙ご紹介!

DXの一手段がAIであり、AIを実現する技術のひとつが機械学習、さらに機械学習の一手法がディープラーニングという関係

AIやディープラーニング、DXについては以下の記事もご参照ください。


機械学習における3つの方法

機械にパターンやルールを把握させるための代表的な方法として、「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」があります。それぞれの利害を理解して、状況によって適切な方法を選択する必要があります。

これらの学習方法については、以下の記事もご参照ください。

教師あり学習はデータに加え「正解」も与える

教師あり学習では、コンピュータに対してパターンやルールを見つけたいデータと「正解」を与えます。例えば、犬の画像と一緒に「これは犬である」というデータも一緒にインプットします。

犬の画像単体だけだと、コンピュータはそこに映っているものが何なのか判断できません。そこで「これは犬である」という正解を与えることにより、犬の画像を判別するための学習をさせることができるようになるわけです。この「これは犬である」という正解データを「教師データ」と呼びます。

教師なし学習はデータだけで「正解」は与えない

教師なし学習は、その名の通り教師データがない状態の学習です。教師なし学習の具体例として、よく挙げられるのが「クラスタリング(クラスター分析)」と「次元削減」です。

クラスタリングは、データが持つ特徴を基準に分類することです。正解を与えることなく、コンピュータが自ら自然な分類や特徴のまとまりを抽出することによりデータを解釈しやすくします。

次元削減は、データの「次元≒複雑さ」を縮約することです。一例として、子どもの学習や家庭環境などに関連する多数のアンケート項目を「階層」「学力レベル」などの指標にまとめることで、結果の解釈や分析を行うことが考えられます。

強化学習は「報酬(スコア)」を最大化するための学習

強化学習は、コンピュータが試行錯誤を繰り返しながら最適な戦略を学習する手法です。何らかの行動を選択して報酬を得るという処理を繰り返すことで、報酬が最大化するような行動がどのようなものかを学習するのです。

こうした強化学習はゲームの習熟度を高めるための学習方法として適しており、2015年から2017年にかけて囲碁のトップ棋士を次々と破った「AlphaGo」も強化学習を活用していました。


機械学習の活用事例

機械学習の活用を考えるには、実際にどんな活用事例があるのか把握することが欠かせません。ここでは、ブレインパッドの支援事例を5つの観点からご紹介します。

需要予測

将来の販売数など、過去のデータに基づいて「将来どれぐらい売れそうか?」という需要の数値予測をプロジェクトに取り入れた事例です。

需要予測をどう業務改革につなげるのか、そしてサプライチェーン全体にどのようなメリットがあるのかについて対談形式でお聞きしました。

【前編】未来を見据えた伊藤忠「流通DX」のリアル 
【後編】未来を見据えた伊藤忠「流通DX」のリアル

先程ご紹介した記事のプロジェクトについて、より詳しく語った記事もご紹介します。プロジェクトを推進したデータサイエンティストがリアルな視点で解説していますので、ぜひ合わせてお読みください。

【前編】川中での「需要予測」が川上・川下にもメリットをもたらす時代が目前に!
【後編】川中での「需要予測」が川上・川下にもメリットをもたらす時代が目前に!

また、需要予測を精度よく行うことで改善できるのは在庫だけではありません。手持ちの在庫数と需要予測とをかけ合わせ、価格を変動させる「ダイナミック・プライシング」が代表例です。これまでAI活用が比較的進んでこなかったプライシング分野の取り組み事例について、以下をご参照ください。

データ分析を用いた、ダイナミック・プライシングの実用化~DX時代における物販ビジネスへの適用、浸透

画像認識・画像処理

画像認識とは、画像からパターンを認識して「何が映っているか」を特定する技術を指します。ディープラーニングにより精度が大きく向上し、さまざまな場面で活用されるようになりました。また画像処理は、主にコンピュータを使用して、画像を変形したり、色合いを変えたり、別の画像と合成したり、画像から何らかの情報を取り出すなどの処理全般のことを指します。

こうした技術を活用して、現在はさまざまな異常検知アルゴリズムや外観検査ソリューションが提供されています。ここでは、プロジェクトの進め方やポイントを解説しています。実際に支援した事例も合わせてご覧ください。

「異常検知・外観検査DX」における機械学習導入のポイント 

画像認識により河川のコンクリート護岸劣化を自動検知
開発ストーリー:AIが導く“伝統工芸品の技術伝承”

ほかにも、「何が映っているのか」を認識する物体認識があります。ここではドローン空撮に活かした事例をご紹介します。

AIを利用したドローン空撮画像処理による管理対象物の自動検出

自然言語処理

自然言語処理(Natural Language Processing)とは、人間の言語(自然言語)を機械で処理し、内容を抽出する技術のことです。言葉や文章、論文までの言葉が持つ意味をさまざまな方法で解析する処理技術を指します。

開発にはまだ難しい点も多く、ほかの応用例と比較するとビジネス利用は遅れていましたが、近年、ビジネス現場で活用頻度が高まってきた理由と具体的な使われ方についてデータサイエンティストに聞きました。事例と合わせてご覧ください。

【前編】自然言語処理技術を用いた「テキストデータ」のビジネス活用の現在地
【後編】自然言語処理技術を用いた「テキストデータ」のビジネス活用の現在地

類似文書からのキーワード抽出による文書作成補助機能を開発支援

レコメンデーション

レコメンドは「同じ商品を買っている人は似たような嗜好を持っている」という仮説から、類似ユーザーにおすすめ商品を提示する手法です。

レコメンドを用いることで、機械学習によって最も反応率の高いコンテンツを、顧客に応じて自動的に選定するというデータドリブン型マーケティングが実現できます。リアル・Webの行動データを活用し、収益拡大に貢献した事例を紹介します。

複合商業施設のリアル・デジタル統合型のマーケティングプラットフォーム構築

強化学習

先ほどもご紹介した強化学習について、ビジネス現場への活用事例も存在します。ここでは強化学習を利用したゲーム開発支援AIシステムの開発について、セガゲームスさんにお話を伺いました。

AIが導くゲーム開発のイノベーション

機械学習の「その先」とは?データ活用のための数理最適化

数理最適化とは、最適なアクションを決定するための方法論です。データを活用するという観点において、実は機械学習・深層学習は手段のひとつに過ぎません。ブレインパッドの事例を紹介しつつ、ビジネスで数理最適化を実施するための手順やポイントについてご説明します。

機械学習と数理最適化の相互補完

数理最適化とは、最適なアクションを決定するための方法論です。機械学習は主に未来の予測値を算出するのに使われる方法ですが、数理最適化はその予測値を使って、シミュレーションを行い、意思決定を自動化します。数理最適化は機械学習プロジェクト、およびビジネスの意思決定を加速させる非常に強力なツールです。

ここでは、ビジネスで数理最適化を実施するための手順やポイントを、事例を交えて解説します。

【前編】数理最適化の新時代到来~最適化→予測でDXは加速する~ 
【後編】数理最適化の新時代到来~最適化→予測でDXは加速する~ 

数理最適化技術のビジネス活用事例

数理最適化は、施設配置・シフト最適化・生産計画など古くからビジネスに活用されています。ここでは、シフト管理システムに数理最適化を活用することで、より少ない工数で高い精度の勤務シフト作成を実現した事例記事をご紹介します。

高精度な勤務シフト作成の自動化

数理最適化による「逆問題」の解析

逆問題とは、出力結果から入力値を推定する問題を指します。機械学習を含め、一般的には実績データや観測データなどの入力値から出力結果を推定したり予測したりするものです。これを逆方向から考える、つまりこうありたいという結果から事実を求める問題であるため、「逆問題」と呼んでいます。例えば、~

数理最適化と逆問題解析の可能性・課題について以下の記事で説明していますので、ぜひご参照ください。

「逆問題解析」~人間が受け入れやすい 、自然な解釈を生む数理最適化の新たな活用法~
意思決定を支援する技術「数理最適化」の最前線

まとめ

ビジネスの世界でも広く知られるようになった機械学習ですが、実際に現場に活用して成果を出すには業務の整理と機械学習そのものへの深い知識、高い精度のプロジェクト管理、経営層のコミットメントなどが求められます。豊富な支援事例を持つパートナーを選定し、本腰で取り組まなければ成果を出すことは難しいでしょう。

ブレインパッドは、機械学習やAI、さらにはデータ活用の分野で多種多様なお客様に対し支援を行ってきました。興味のある方はぜひお問い合わせいただければ幸いです。

▼DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧ください
「DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?意義と推進のポイント


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株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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