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2020年には多くの企業でビジネスの停滞・縮小などが余儀なくされ、ビジネスモデルや従業員の働き方などを再検討するケースも多くありました。結果としてデジタル技術の導入や活用が進んだとも言われており、DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性がより強まったとも考えられます。
そこで今回は、マッキンゼーやベインなどとともに世界的な戦略コンサルティングファームの一つであるBCG(ボストンコンサルティンググループ)がまとめたレポートを参考に、今後のDXトレンドと推進のポイントについて整理します。
(DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧下さい)
【関連】「DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDXとは?意義と推進のポイント
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、オフィスの閉鎖や流通の停滞など、大きな影響を受けた企業は少なくありません。そのような中で、DX推進を急務と考える企業が増えています。
当レポートは、BCGが世界の幅広い業種の企業でCEO、CDO/CIO、その他CxOを中心にアンケートやインタビューを実施した結果に基づいています。注目したいのは、大半の企業がコロナ禍でDXの優先順位が高くなったと考えていることです。
アンケートによると、新型コロナウイルスの感染拡大によって全体の85%の回答者が「(DXの緊急性について)より緊急性が高くなった」としていることです。業界別に見ても、100%のエネルギー業界、93%の消費財業界を始め、最も低いヘルスケア業界でも67%となるなど、DXに対する意識の高さが明確となっています。
また、DXへの投資が増えると予想している回答者も60%以上にのぼります。多くの企業で、今後DX推進の動きを加速させる可能性は高いと考えられます。
ひとくちにDXと言っても、変革される領域は多岐にわたると考えられます。アンケートでは、コロナ禍によって優先順位の高まった領域についても尋ねています。
その結果、50%以上の回答者が「働き方」「労働力の集約化・分散化」「サイバーセキュリティの強化」「デジタルマーケティング」「イノベーション・新たなビジネスの創出」という5つの領域を挙げていることが分かりました。テレワーク・リモートワークを始めとした新たな働き方、そのような働き方を成立させるためのセキュリティの再構築、ビジネスモデルやマーケティング形態の変化など、コロナ禍によって業務プロセスの多くの部分が影響を受けていることが伺えます。
なお、最近のDXの具体的な目標として「デジタルマーケティング、顧客中心主義の推進、パーソナライゼーション」を挙げた回答者が全体の89%を占めています。(ブレインパッドでは、主にデータビジネス・プラットフォーム「Rtoaster」を活用し、本施策の支援を行っています)
「イノベーションと新規事業機会創出、製品の改良」が53%、「業務のデジタル化、自動化」が43%であることを踏まえると、特にデータを活用したデジタルマーケティングがDX推進の動機づけのトレンドになっている可能性があります。
前述の通り、60%以上の回答者がDXへの投資が拡大すると考えている一方で、その投資条件が厳格になるという回答も多くなっています。87%の回答者は「投資条件の厳格化に伴い、案件のスクリーニングが厳しくなる」と予想しています。
コロナ禍を受けてこれまで以上に厳密なKPIや目標を掲げてDXに取り組む、あるいはDXのストップ・計画修正を考える企業が増えると予測されます。
レポートでは、DXに成功した企業が何を意識していたのか、そしてDXの実現を阻む課題が何なのかを分析しています。これらを実行時に意識することで、今後DXに取り組む企業の成功率が高まると考えられます。
調査対象の企業にはグローバルレベルの著名な企業も数多く存在すると考えられますが、それでもDXの成功は容易ではないようです。各国平均でも30%、日本だけに絞るとわずか14%の企業しか変革(トランスフォーメーション)に成功していないとの結果が出ています。
こうした数少ない成功企業のうち、80%以上は「6つの重要な要素」を実施しています。
DXにはテクノロジー導入が欠かせないものの、それだけではビジネスモデルや社内文化の変革にはつながりません。戦略・リーダーシップ・人材・ガバナンス・モニタリング・テクノロジーが備わってこそ、DX推進のプロジェクトを成功させることができるのです。
この点は、経済産業省の公表している「DX推進ガイドライン」とも共通した考え方となっています。
DX推進ガイドラインの詳細はこちら:DX推進ガイドラインとは?経営戦略とITシステムの再構築で実現するビジネスモデル変革
調査では、成功したプロジェクトと失敗に終わったプロジェクトの差を分析するために、もう少し踏み込んだ質問をしています。それによると、成功したDXにおいて、82%の企業は「ビジョン、優先順位付け、テクノロジー、人材、ロードマップ計画を含む包括的な戦略を構築していた」のに加え、64%の企業は「守りの戦略ではなく、大胆な攻めの戦略を追求していた」とされています。
BCGでは、調査結果を受けてDXを阻む課題を3種類×3段階の9つ挙げています。
【設計(青写真を描く)】
【活性化】
【スケール】
DXやデジタル技術の意義を理解できていなかったり、「DX」「デジタル」の定義が固まっていなかったりすると、プロジェクトの方向性も不明確なままです。リーダーばかり鼻息が荒くても、DX推進の意義を全社的に(特に既存業務に影響を受ける層に)理解させることができなければプロジェクトが失速していきます。プロジェクトがうまく回り出しても、投資や横展開の計画が不足していれば部分的な成功しか手に入れられず、事業やビジネスモデル全般の変革は難しいでしょう。
上記の課題を意識することで、DXを成功させるために必要な要素について理解を深めることができるのです。
BCGの調査は、日本のみならず世界中の企業を対象にしています。結果を比較することで、日本企業のDXの特徴と課題が浮き彫りになりました。
最近のDXの具体的目標として、「AI利活用の拡大」を挙げる日本企業がグローバル企業に比べて少なくなっています。「ITインフラとテクノロジープラットフォームのアップグレード」「新しい働き方の導入」など、それ以外の目標についてはほとんど差が見られていません。
この回答だけで断定はできないものの、日本企業ではAIのような最新テクノロジーへの関心や理解度がグローバル企業と比べて低い可能性も否定できません。
日本企業では、グローバル企業よりも特定の事業部門を主な推進者としてDXが進められる傾向にあります。
グローバル企業では62%のDXがCEO直属の組織によって推進されているのに対し、日本では30%ほどにしかすぎません。また特定の事業部門のリーダーがメインスポンサーである割合は15%であり、グローバル企業の3%より高くなっています。一方、グローバル企業の78%はDXがその期間全体を通じてCEO/エグゼクティブコミッティの経営アジェンダに挙げられていました。
こうした結果から分かるのは、デジタルが特定の事業部門ではなく中核事業に組み込まれるケースが増えていることです。一方、日本では特定の部門が中心となることも多く、BCGは「トランスフォーメーションがサイロ化するリスクが高い」と評しています。
【関連】DXの担い手「CDO」とは?DX成功のカギは、デジタル化を推進する専門組織にあり
DXの資金源も、日本企業とグローバル企業ではやや異なる傾向にあります。
日本企業では、55%がセルフファンディング(デジタル施策による収益の創出や、コスト削減) によりトランスフォーメーションの予算を捻出していると回答しています。グローバル企業の79%より低い結果となっており、BCGは日本企業における資金配分の課題であると捉えています。
日本企業では、P&Lや投資実績ではなく、前年度の予算活用をベースにした資金配分を行う傾向にあります。また頻繁なジョブローテーションや経営陣の交代により、プログラム内の追加収入や節約維持において課題となっていると述べています。
BCGは、事業全体を見渡し短期で価値を創出できる領域の特定が重要であると解説しています。
BCGのアンケートはグローバルレベルの大規模なものであり、DX推進を目指す日本企業の関係者にとって大変示唆の多い内容となっています。DXの成功の鍵と回避すべき課題も挙げられており、DX開始前でも推進中であっても、変革実現のために参考になることでしょう。ぜひ一読していただき、内容をプロジェクトにフィードバックすることをおすすめします。
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(参考)
ボストン・コンサルティング・グループ「デジタルトランスフォーメーションに関するグローバル調査」
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