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関口 伊藤忠とブレインパッドの今回の取り組みはワンチームにこだわって取り組んでいます。そのうえで、現場により近い観点から海老名さんにワンチームへのこだわりを話していただきたいです。
海老名氏 先ほど触れた「PoCの壁」を超えるための取り組みにもかかわってきます。DXは今日、明日すぐに何かが変わる取り組みではありません。また、PoCで終わったプロジェクトという記録を残した場合、逆風になってしまうことを避けたい意図もあります。
そのため、「経営課題が解決されるまでやり切る」を前提にしてチームを組むことが大切だと感じています。不幸になる人を誰も出さない、プロジェクトの中で起きる紆余曲折を経て皆で耐えきる、といった意識はチームワークで越えていかなければなりません。
委託も受託もなく、誰かの課題は皆のものとして捉えるために「ワンチーム」にこだわっています。
関口 特に印象的だったのは、海老名さんから「特に話題がなかったとしても週に1回は雑談をしましょう」という提案があったことですね。 ただ、その提案は「フルリモートで今日の体調とか状態を知る」のに大事だなと気付きました。
海老名氏 最初の緊急事態宣言のタイミングは、自動発注のPoCがスタートしていた状況でした。そのため、コミュニケーションの機会が今よりも減少する、初めてのフルリモートという状態でしたので、コミュニケーションレベルの維持のために思いつきました。
関口 結果としてよかったと私も実感しています。リモートワークになると仕事に必要なことしか話さない、行間が読めなくなるという弊害が生まれやすい状況で救われたと思っています。海老名さんの一声でワンチームとなったわけですが、現在はブレインパッドの一員でもある押川さんはどのような点を意識されていますか?
押川氏 今、自分が考えていることや悩んでいることを協業者に対して、オープンにしていくことを意識していました。理由としては、信頼感を前提としたコミュニケーションをブレインパッドとして行うことで、伊藤忠も同じ温度感で接してくれるようになるためです。
関口 大切な意識ですよね。海老名さんもワンチームを作るために意識していることはありますか?
海老名氏 ベタではありますが、「繰り返すこと」だと思います。朝8時からのPMO会議をずっと続けているのも、各プロジェクトの最新の状態を相手に伝わるように話し、アップデートをかけていく意識があるためですね。PMOでそれぞれの話を聞くということが、「何かあった時に戻れる場所」として機能しているというのは感じています。
関口 ポイントはコミュニケーションですね。資料を作るよりもホワイトボードで書きながら説明して下さる姿が印象的でした。理解を深めるためのコミュニケーションの取り方なども含めて、コロナウイルスが落ち着いたらまた現場で行いたいと思っています。
関口 PoCから業務展開ができるようになった状態の中で、業務改善のDXを進めた先についても準備していますよね。伊藤忠としてのDXの展望をお話しいただいてもよろしいでしょうか?
海老名氏 ブレインパッドと伊藤忠で DX を進めていこうとなったときから、目標は最初から変わっていません 。「3階建てプロジェクト」として考えています。
1階の目的は「伊藤忠のビジネス現場に対して、徹底的にデジタルテクノロジーを使って磨き上げていく」ことです。ここは進んでいる状態にある点、多くの現場によって人材が育っている点が両社の財産となってきています。
そして、1階で育った人材で2階・3階を作っていきます。
2階は、デジタルに関わる事業会社を多く保有している点を有効活用していくというものです。デジタルに関わる事業とブレインパッドの特徴をかけ合わせ、「新しいサービスを生む・様々な業界で課題を抱えている企業のサポート」をしていきます。
3階は共に新しい事業を作っていくことが目的となります。ブレインパッドと伊藤忠の強み・特徴を突き詰めていくと、データに関するスペシャリストがおり、ビジネスのスペシャリストで現場とデータを持っている状態です。
そのため、「現場とデータを持ったデータサイエンティスト集団」のような企業が出来上がった場合、様々な可能性を持つと予想しています。
関口 本当は、DXを使って新しいビジネスを作っていきたいものの、まだ現場を磨く必要があるという思いを抱いている企業は多いですよね。海老名さんから見て、データを使ったビジネスの可能性で着目していること、チャレンジしたいことなどはありますか?
海老名氏 外部環境の変化が大きいほど変わる必然性があるため、優先度も高くなります。特に、SDGsの絡みはこれからより重要になっていくと予想しており、中期経営計画の目標であるマーケットインに関しても消費の傾向は変わって来ている状況です。
「生活者のために持続的に良いものを届け、収益を生んでいくこと」「SDGsの方向とサスティナブルな社会を維持していくこと」に対してデジタルの使い手になることが伊藤忠の目指す道だと思います。
関口 サプライチェーン、マーケティングも含めてアルゴリズムを作る立場からすれば、ガラっと動きが変わりました。すぐに対応しなければならないものの、データがない場合はハードであることが想定できます。
生活の分野は変化が激しいことから、データを使いつつ、困っている方が多くいる場合、ビジネスチャンスがあると捉えていくとよいかと思います。
関口 最後になりますが、海老名さんがワンチームとして3年ほどブレインパッドと付き合って、弊社はどんな特徴があると感じましたか?
海老名氏 率直に「データに向き合う姿勢が熱い人たちが揃っている」と思っています。例えば、コロナ前にブレインパッドの皆さんがデータ分析用のプロジェクトルームを作った際に、そこにいる人たちの「卸業界の業界図式から知識を得る」「需要予測するなら店舗で写真を取ってくる」など業界を理解しようとする姿勢に安心感を持ちました。
あとは、社内のノウハウ管理がしっかりしていると感じています。 メンバー同士の情報の連携が結果として伊藤忠の礎にもなっていることから、強いと思います。
関口 褒めていただきありがとうございます。データを扱う場合、専門的になりがちであるものの、押川さんからすれば、「現場を見る」「使っている人の声をきかなければ」という思いはどういうところから生まれてきたとおもいますか?
押川氏 ブレインパッドが行っていることは、「世の中の現象を如何にして数理の問題に転写して置き換えていく」というものです。そのため、世の中で起きていることをどのように理解するのかという点が大事だと思います。
そのためには、「これまでの歴史」「どういったインセンティブで働いているのか」といった内容にふれ、業界の構造をきっちり知ることで数理の問題を仕上げなければなりません。そうすることで、データサイエンティストが力を出しやすくなっていくと感じます。
関口 問題を解くには、問題を的確に理解するための一時情報が重要ですよね。その視点は大事かと私も思います。あっという間にお時間がきてしまいました。原さん、どうでしたか?
原 普段からコミュニケーションを取らせていただいていることから、話しやすかったです。また、今のプロジェクトの先のことを深く聞けたのは有意義でした。
関口 押川さんはどうでしたか?
押川氏 懐かしいなという感覚ですね。昔の場面が頭の中を駆け巡るいい話だったと感じます。
関口 海老名さん、いかがでしたでしょうか?
海老名氏 取り組みとして、繰り返し反復してきたことが今につながっているのかなと感じました。
関口 ありがとうございます。実利を取るために現場に向き合う・技術メンバーも現場に行く・使う側も作る側もワンチームになるということを地道に行うことが結果につながっているのだと感じました。
また、今回はESGやサスティナブルといったワードが多く、意識されていることが伺えました。伊藤忠は生活消費分野の事業を沢山抱えていることから、どう取り組まれるのかブレインパッドとしても楽しみにしております。
そして、サスティナブルな世の中をどのように作っていくのかという点は、共に取り組んでいきたいと思っています。お三方、長い時間お付き合いいただきありがとうございました。
※DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧下さい
【関連】「DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?意義と推進のポイント
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