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【後編】「分析力の研鑽」を目指すニッセンのデータ基盤 ~BrainPad DX Conference 2022~ テーマ別 企業DX対談

公開日
2022.04.04
更新日
2024.09.19
本記事の登場人物
  • 経営
    高橋 隆史(旧姓:草野)
    会社
    株式会社ブレインパッド
    役職
    取締役会長 Co-Founder
    慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。新卒として日本サン・マイクロシステムズ株式会社(現:日本オラクル株式会社)に入社。その後、フリービット・ドットコム株式会社(現:フリービット株式会社)の起業参画を経て、日本企業のデータ活用を支援するべく2004年3月に佐藤とともにブレインパッドを共同創業。代表取締役社長として、2011年9月に東証マザーズ、2013年には東証一部上場を成し遂げる。 現在、一般社団法人データサイエンティスト協会代表理事、一般社団法人日本ディープラーニング協会理事、東京大学エクステション株式会社社外取締役を務める他、官公庁による各種研究・委員会活動等に識者として参画する等、データ活用促進のためさまざまな対外活動にも従事。2023年7月より取締役会長に就任(現職)。
  • データエンジニア
    松永 紘之
    会社
    株式会社ブレインパッド
    所属
    データエンジニアリングユニット
    役職
    ディレクター
    創業間もない頃からブレインパッドを支えてきたメンバーの一人。 データ活用基盤のシステム開発を担う部門の部門長を務めているが、データの収集・蓄積から、データ基盤の構築、データを活用したマーケティング施策の提案までトータルに提案・支援できるオールラウンダー。当社が取り扱うデジタルマーケティングツールにも詳しい。

「ニッセン流データ分析」のこれから

草野 では、今後基盤を元にどのような展開をされていきたいのかという構想の部分をぜひ、お聞かせいただきたいと思います。

栗山氏 「良い商品を作るため」にデータをどう使うかというところを、突き詰めてやっていきたいと思います。旧来型の分析では時間がかかるため、データを見る人間と今までの企画のプロセスをどう変えることができるかという点はチャレンジですね。

横手は、IT畑で20年以上ニッセンで働いています。横手に現場に入ってもらい、商品企画を行うメンバーをはじめ、いろいろなメンバーと直接話をしてもらいました。例えば、お客様に価値を届けようと思ったら、顧客理解をもっと深めて寄り添ったモノづくりを行っていく必要があります。そのために、柔軟な環境を使って新しいものの見方とデータの集め方・使い方というのをこれから作っていきたいなと考えています。

草野 従来の分析は、誰にカタログを送るかとか、レコメンドで誰に何を出すかというところが主目的でしたね。しかし、これからは、分析を顧客理解のところに焦点をあて、商品開発の為に分析を行うことになったということでしょうか?

栗山氏 目的という点では、「プロモーションの最適化から商品MD」にいかにデータ分析を使っていくかというところに向けていきたいなと考えています。

草野 なかなか大変なチャレンジだと思いますが、横手さん、今どういう考えで取り組まれようとしていますか?

横手氏 データ自体をそのまま渡すと「好きなように解釈される」とよく栗山からも言われていました。そのため、データを渡さなくてもいいんじゃないかと考えています。データドリブンと言いながら、真逆のことが意見として出たりもしました。

当初、これが悩みの種でした。データドリブンでいろんな意思決定をしたいと取り掛かっていくほど、「10人いれば10人のデータ自体に価値や意味」を付けてしまいます。

結果として、弊社の中ではデータドリブンという言い方は避け、例えば、「インフォメーション・ドリブン」という形式で、データを分析・解釈できる人間が「付加価値」をつけてデータをインフォメーションに変え、使われるべき情報を渡し活用を促す、というようなことができないかなと考えているところです。

理想論にはなりますが、「インフォメーション・ドリブン」のように意思決定を作れるような形式ができないか、といったことを模索していますね。

草野 面白いですね。事前に栗山さんは予見していたというお話なのですが、経験があったのですか?

栗山氏 往々にして「データは言い訳に使われる」ものでもあります。例えば、経営者に向けて「私たちがやっていることは正しいですよ」と説明するのに強力なツールになってしまうこともありますよね。

意図的かどうかは置いておいて、悪い使い方をしようと思えばできてしまうのがデータです。会社の中の情報の流れを悪くしたり、意思決定を遅くしたりすることがある、というのは担当しながらも感じていました。分析をした人間がビジネスをしっかり理解したうえで、「これはこういう意味があるんですよ」ということが正しく伝えることができる人材が必要です。

ただ単にデータを作ってみて「あとは理解してくださいね」では、価値は出せません。本当に、データを作るだけでは無駄だというのはここ10年くらいずっと思っています。

横手氏 結果、データを分析する組織自体の役割を変えなければならないため、その取り組みに入っている状況です。

草野 現場にデータを渡すのではなくて、価値とか解釈を正しく入れられる人を育成し、その人を媒介にプロダクトの開発や商品開発みたいなところにつなげていこうというのが大きな方向性ということですね。

栗山氏 現場の人間がデータを理解するのは難しいと感じるため、データを扱う人間がビジネスを深く理解しなければなりません。今の方向性としては、お客様を理解した上で現場の人間と一緒にお客様に寄り添うような動きができなければならないと、思っているところですね。

横手氏 実はこの考え方は、ブレインパッドに「データサイエンティストとデータアナリストの間にビジネスアナリストが必要だ」と教えていただいたことがベースになっています。ビジネスアナリストという職種や役割をニッセンの中でもっと作っていかなければならないと思います。

草野 営業部隊と分析部隊がしっかりコミュニケーションできないと、お客様に迷惑をかけてしまうということがどうしても増えてきます。ブレインパッドの場合は営業的な人間が、ビジネスアナリストやビジネストランスレーター的な役割で、お客様の課題と分析の業務の間をつなぐような役割が多くなっています。

そうでない場合はそういうことができる人間をアサインする形をとります。齟齬となる部分をなくそうと思うと、「間に入る人材」が必要となるためです。

しかし、その人材を育てるのも簡単ではありません。社内で経験を積ませながら行っていくという方向でしょうか?

横手氏 まだそこまでもいけてないですね。どうすればできるのかというのを今、模索しているような状態にあります。


パートナリングのあり方

草野 ニッセンから見て、「パートナーとしてのブレインパッド」はどういうところが評価できますか?

栗山氏 分析・データサイエンスの世界では、リーディングカンパニー的な存在であることは十分理解していました。ニッセンは内製化によって、自分たちのビジネスしか知らず、そこをいかに最適化するかという点でしか見れていませんでした。データの使い方というのも、理解していない・わかっていないというような中にありましたので。

そのような状態でニッセンが新しいことをしていこうというときに、一緒に話をして新しいものを作っていくにあたり、間違いなくヒントがいただける存在でした。

また、運用の部分で難しいところがあったら、お助けいただくこともできる企業だということは把握できました。今回一緒に取り組みができたというのは、この先にもつながるという意味でもすごく良かったなという風に考えています。

横手氏 現場の方から行くと、通常のSIerはハードウェアを構築し、ソフトウェアを構築して運用するケースが多いと思います。データ分析もどうしたらいいのか?というところをコンサルティングする会社もたくさんあるでしょう。

しかし、実際は、その「構築と設計の間」を埋めないとデータ分析はできません。そういう意味では、ブレインパッドはその間を埋めていただけるようなイメージです。間の埋め方も、多くの企業やプロジェクトの経験から非常にノウハウがあったり、実績をもっていたり、いろいろな話をしていても、「ある会社さんは」とか、そういう事例がどんどん出てきますね。そのうえで新しい考えをまとめることができるため、信頼しております。

草野 ありがとうございます。本当にDX・データ活用のパートナーになるということの難しさについては、18年やっていてもなかなか答えが出ていないというのが正直なところです。

それでもお役に立てるとうれしいですし、今回大変なプロジェクトだという話は最初からわかっていて、一部ご迷惑をかけたこともありました。しかし、なんとかカットオーバーでき、将来の展望が開けたといっていただけると非常にうれしいなという気持ちです。

横手氏 草野さんに質問してもいいですか?いろいろな企業がDXを考えていると思いますが、ブレインパッドはDXをどういう風に提供しようと考えられていますか。データ分析はDXの入口という言い方をされていますが、どういうものがDXなのでしょうか?

草野 企業によっても定義は多様だなと思っています。本当の意味でのDXはトランスフォームであるため、「デジタル時代に適応したビジネスにどう変わっていくのか」という点が重要です。

極端な話、レストランが店舗の部分を畳み、キッチンだけにしてウーバーイーツに対応するというのもある種この時代のトランスフォームの1種です。そのため、消費者がデジタル主導で生活を構築している中で「会社のビジネスをどう適応させていくか」という点が本来的な生き残り戦略としてのトランスフォームですね。

ただ、現在地を整えるためにITのインフラを整えるところから始まるケースもあれば、ビジネスモデルとしてのアプリを作ってビジネスを変えていくという部分もあったりします。

結局、多くの場合の接点がデジタルになることによって、お客様の情報がより精細にとれるようになるため、データが取得可能になります。そして、データを使ってクイックにPDCAを回すなり、お客様にパーソナライズしていくことがお客様も求めている状況です。

そして、お客様がトランスフォームした後もその中で価値を生み出し続けるためには、伴走者が必要です。例えば、データ分析の部分を支援できれば、ブレインパッドとしても貢献し続けられるし、ビジネスになるなと感じます。

横手氏 私の場合、DX推進担当という名前で6月からやり始めました。デジタル化でもなく、トランスフォームすることを目的にするのも違う気がしていますね。

結果として、弊社社長の羽渕と、栗山と、一緒に模索して来ました。しかし、まだ指針としてカチッとしたものが決まっていませんが、行きつくところは「イノベーションを生み出す土台を作ることがDX」なのかな、と今はそういう考えになってきています。

ただ、イノベーションって何かというと世の中の変化に追随することですよね。結果そういうところができる土台を作ることがDX戦略なのかなという理解をしています。

そのため、データ分析が入口かどうかというと、新しいビジネスモデルや新しいことを試すためにも、今まで行ったセグメント予測では多分何の役にも立たない可能性があるかと。組織を変えて柔軟性を出さないと、いろんなデータも出てこないという状況なのかなと考えているところです。これをどう進めていくのかという部分では、今後もいろいろとブレインパッドにサポートいただきたいなと思っています。

栗山氏 サプライチェーンの改革も含めて、「いろいろな観点からどういう風にデータを使ってプロセスそのものを変えていくか」という点をブレインパッドも含めて広く組んで新しい挑戦をしていく必要があるかなと。そのため、何度でもディスカッションさせていただけると非常にありがたいと思いますね。

草野 通販会社はデータを活用・データに基づいて意思決定をするという体質はなじみがあるといえます。基盤となるシステムがあり、データ分析に慣れた人材がいるのにもかかわらず、基盤ごと変えてしまうという、新しい時代に向かっていくニッセンの覚悟を、改めて感じることができました。

今後、ブレインパッドも覚悟をもって一線を越えた先の挑戦に伴走できればと思います。今後ともよろしくお願いします。


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株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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