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伴走型マーケティング支援に強みを持つエイトハンドレッドと、ブレインパッドが目指すデータドリブン社会

公開日
2023.03.09
更新日
2024.09.19

DX推進に伴い内製化のニーズが高まっており、事業会社においてはデジタル人材の不足がより深刻な問題となっている。

ブレインパッドはこの問題を解決するために、伴走型のマーケティング支援に強みを持つ株式会社エイトハンドレッド(以下、エイトハンドレッド)をビジネスパートナーとして迎え入れた。

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本記事では、エイトハンドレッド代表取締役社長 大畑翔柄氏とブレインパッド執行役員 内製化サービス推進 神野雅彦が、両社のコラボレーションの狙いや今後目指していくデータドリブン社会について語り合った。

■登場者紹介

  • 大畑翔柄
    株式会社エイトハンドレッド 代表取締役社長

1985年生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。戦略グループにて、主に小売り・流通業界における、事業戦略策定、マーケティング改革、データ利活用プロジェクトなどに携わる。2014年にマクロミルに入社し、中期経営計画策定、営業改革、オペレーション改革、商品企画などの業務に従事。2018年より執行役員 事業企画本部長。2021年より執行役員 データマネジメントプラットフォーム事業本部長として、データコンサルティング事業を管掌。2022年7月より新会社エイトハンドレッドの代表取締役社長に就任。

  • 神野雅彦
    株式会社ブレインパッド
    執行役員内製化サービス推進/金融インダストリー責任者

大手IT企業、外資系企業、海外駐在、日系コンサルティング会社および外資系コンサルティングファームを経て、2018年に有限責任監査法人トーマツに入所。2022年1月よりブレインパッドに参画。戦略コンサルタントとしての経験を活かし、顧客企業のデータドリブン企業への変革、DX推進体制の強化、データ組織・人材開発の伴走支援、金融領域の活性化、デジタル基盤を含むトランスフォーメーションを実現するためのビジネス開発、プランニング等を担う。2022年10月より現職。2022年12月より、一般社団法人金融データ活用推進協会(FDUA)標準化委員会 委員長代行を務める。

※登場者の所属部署・役職は取材当時のものです。

写真左から、株式会社エイトハンドレッド・大畑翔柄氏、
株式会社ブレインパッド・神野雅彦

エイトハンドレッドとブレインパッドに共通する課題感

ブレインパッド・神野雅彦(以下、神野) 現在ブレインパッドでは、内製化支援オファリング「 BrainPad DAY」を展開している中で、今回は、人材育成と分析伴走を中心とした変革支援を強みとされているエイトハンドレッド様に、ビジネスパートナーとして参画していただくこととなりました。今回の対談へのご参加、ありがとうございます。

【関連】ブレインパッド、データ活用の内製化支援オファリング「BrainPad DAY」を提供開始

エイトハンドレッド・大畑翔柄氏(以下、大畑氏) こちらこそ、ありがとうございます。

神野  既に内製化支援オファリング「BrainPad DAY」におけるビジネスパートナーとして、共同でお客さまへのサービス展開をしていることもあり、データドリブンを中心として、いろいろな話を展開させていただければと思います。

内製化支援をしているお客さまから、「現場の社員が専門家から知識トランスファーを受けて成長していくのが、こんなに大変なことだとは思わなかった」といった所感をよく言われます。その発言を深堀りすると、ある程度専門知識を覚えても、思考方法が難しいとか、アウトプットがうまくできないとか、なぜここに着目するのかわからないということが見えてきます。その「わからない」という事態を打破しないと、内製化やそれが前提となるデータドリブン組織への変革はできません。ですから、我々のような会社に対するニーズは今後も大きくなる一方だと感じています。

大畑氏 データドリブンに至るまでのフェーズはいくつか存在し、現状ではまだ準備中のフェーズ0や、ようやく取り組み始めたフェーズ1の会社が多いと感じています。

私自身は幸いなことに、ビッグデータが騒がれ始めた頃から、自身でもデータ分析を行ってきましたし、ビジネス上の意思決定をする上で、どのようなデータでどのような分析を行い、KPIやそのドライバーが何かを探ることが身に染みついています。一方で、クライアントの皆様においては、それをすぐに行いなさいと言われても、日々の業務に追われる中で急には変えられないことも理解できます。

株式会社エイトハンドレッド 代表取締役社長 大畑翔柄氏

そこにどうやって変化をもたらすかが、我々が協業する上での大きなテーマなのかなと思っています。

トップダウンでやりなさいと言われても、現場での成功体験がなければ、本当に現状の進め方でいいのか疑心暗鬼になるのも当然です。我々が伴走支援することで、実際に、お客様への提供価値が向上した、その結果売上が上がったなど、データを使えばビジネスがより良くなるという経験を積み上げることが重要だと思っています。

神野 社内の雰囲気を良くしていくというのは非常に難易度も高く、大きなテーマです。特に昨年秋ぐらいから強く感じているのは、クライアントの分析の質が着実に変化しているということです。この数年で分析に係る知見が蓄積されている実感があります。しかしながら、それでもまだ、分析がビジネスに貢献できているとは言い難い。そのための取り組みがまだまだできていないと言えます。

株式会社ブレインパッド 執行役員 内製化サービス推進 神野雅彦

人材育成/分析伴走を進めていくと分析力の基礎固めは出来てくるのですが、そこで少し足踏みしてしまい、次の一歩に進んだり、階段を登っていくことが難しいという課題が散見されることが増えてきた印象です。ただ、その課題がよりクリティカル/明確になってきました。そこでステップアップのために、エイトハンドレッド様とビジネスパートナーになることで、データドリブンへの変革を人材面から強力に推進していきたいと考えた次第です。データサイエンスの根幹や本質、視点を理解していて、なおかつビジネスとデータサイエンスのバランスが取れる会社とパートナーシップを組みたかったのですが、業界全体を見渡してもなかなか見つかりません。協業いただけたことに感謝する次第です。

大畑氏 こちらこそ、ありがとうございます。おっしゃる通り、データサイエンスはわかってもビジネスとデータを掛け算で理解している人はあまりいません。DXやデータドリブンをドライブする人材は、そのような人たちであるべきにも関わらずです。

データサイエンスのケイパビリティはもちろん必要ですが、それだけではビジネスにおいて、価値は提供できません。我々も「ビジネス×データ」がわかる人材をいかに拡充させるかがキーだと考えており、社内においても、そのようなケイパビリティを持つ人材の拡充を急いでいます。

先ほどの「データドリブンに至るまでのフェーズ」で言えば、フェーズ2に入りつつあります。売上を上げるもしくは利益を上げるために、何が重要なKPIなのか、その特定をどのような分析で行うか、またそれを特定しただけでなく、打ち手を考え出せるか。また、その数値をモニタリングして、継続的にPDCAを回せるか。――これらの一連のプロセスを実現したいというニーズが高まっており、それに応えているからこそ高い評価もいただいているのだと考えています。

「売上・客数予測による販促計画策定」など5つの成功事例を収録。

データドリブン化の肝は人の変革・内製化

神野 課題感の共通認識が取れたところで、次はデータドリブンについて議論していきたいと思います。そもそもデータドリブンとはどのようなものと考えておられますか?

大畑氏 どの会社にも共通するようなあるべき姿というのはないと思っています。クライアントの業態・業容に応じて最適なものがあればいい。

たとえば、我々のクライアントのアパレル会社は、非常に高く評価され利益を生み出しているブランドを持っています。一方でECサイトもあるのですが、そちらはまだ改善の余地がある。サイト導線をどうするかABテストをする、CRMで最適なセグメントに最適なコミュニケーションを行う、そういうことがまだ十分にできていません。では、急いでデータドリブンの強化に取り組むべきかと言えば、まずはその業界の標準的なレベルまで持っていけばいい。

標準的とは何かという議論はありますが、要はデータを競争優位の源泉にしなくてもよいということです。強いブランドと商品で勝っていくという確固たる戦略があるからです。ECサイトは極端に言うと負けなければいい。もちろん、店舗とECでOMOを行っていきましょうとか、顧客体験としてあるべき姿は考えます。しかし、そのクライアントの何が本質的な強みなのか、その強みを活かすデータ活用の在り方は何なのかということが重要だと思っています――このように、クライアントによってデータドリブン化のあるべき姿は違うということです。

クライアントにとってのあるべき姿を明確にした上で、ではどこまで到達するべきなのか、何から始めるべきなのか、どうすればビジネスで勝てるのかを考えることが重要なのであって、データドリブン化が目的ではありません。それを確認した上で、どうやってデータを意思決定に結びつけるか考えていく、というのがやはり順序になろうかと思います。

神野 データドリブンの目的と目指すゴールを先に決めるということは、重要な観点だと考えます。その上でデータドリブン化するために内製化にどう取り組んでいくかという話になると思っています。データドリブン組織への変革の肝は、やはり社員の変革です。クライアントの意識を変えるのが喫緊の課題であり、これは日本企業全体の課題でもあります。「データからファクトを押さえて意思決定する勇気」が、まだまだ浸透していません。まだまだ経験と勘に頼って意思決定しています。経営者だけでなく、現場も同じです。

経営者もミドル層も一般社員も、データの重要性とそこから得られるファクトに基づいて物事を考えるように変化していかなければなりません。これができるようになると、次に別のことを考える時間が生まれます。それが最終的には、日本の経済的成長/クリエイティブエコノミーにつながっていくと確信しています。

基本的には、組織と人材の腕力・体力・能力をどのように強化していくかがデータドリブン化の重要な要素になるということで、それはエイトハンドレッド様が様々な企業で実践されてきたことと完全にリンクしていると考えています。


経営ボードメンバーにデータサイエンティストを

神野 人材育成となると研修、eラーニング、OJTなど教育の話になりがちですが、実はそこはポイントではなく、最終的にはデータサイエンティスト的な考え方を持った集団をどうやって組成するかが重要です。

データサイエンティストは企業内のプロフェッショナルであり、一般職とは違うキャリアパスや評価体系が必要です。ところが、まだまだこの重要性が伝わっていないと感じています。

日本の問題としては、事業会社における経営ボードメンバーにデータサイエンティストの出身者がほとんどいないことです。CDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)を置く企業も増えましたが、データはデジタルの一部であるという形であるため、デジタル活用というよりもデータ活用として取り組まれている会社がようやく増えてきている印象です。データ活用に係る最高責任者でもあるCDO(Chief Data Officer:最高データ責任者)という形で、データサイエンティストが経営に参画する姿を見られるシーンが限られているということは、日本にとっては少しクリティカルな状況だと感じます。

なぜクリティカルと言えば、データサイエンティストが企業内で「分析係」と認識されてしまうシーンが見られるからです。本当はビジネス価値を導出するプロフェッショナル集団であり、そのために時間を割くべきなのですが、事業部門の下請け作業に時間を取られてしまうことになります。

データサイエンティストが経営に価値を生む人材だとすべての社員が認識している――そのような社内文化を醸成することが重要です。そのためには常に発信することが必要ですし、表彰式&報奨金のようなインセンティブも提供したり、データサイエンティストが社長と会食するといったイベントも必要です。そういった様々な取り組みも含めて考えていかなければなりません。

経営もデータもわかる人材のキャリアパスの創出

大畑氏 これはデータサイエンスに限らない話ですが、OJTが非常に重要だと考えています。テーマを決めて分析するだけならばOff-JTでもできますが、分析をビジネスに活かすとなれば、実際のビジネスの中で何が課題かを見極める力が必要です。それはOJTでないと学べないことで、そのような場数を多く踏ませる環境作りが大切です。

また、経営ボードにデータサイエンティストがいないという話については、おそらく分析人材では無理で、先ほど述べた「ビジネス×データ」がわかる人材でないと当然いけないでしょう。ところがそういう人材は現在ほとんどいません。どうやってそのような人材を育成、あるいは外部から獲得して、経営ボードをはじめとした社内の組織に位置づけるかが大きな課題になっています。

データサイエンティストのキャリアパスは大きく3つです。分析に関するスキルを極めて行く人材か、データ分析はできつつシステム的なデータ分析環境のことがわかる人材、そして最後が今話している、経営やビジネスがわかりながらデータもわかる人材――この3つがゴールになると考えますが、現在は経営もわかる人材になるキャリアパスがあまりありません。そのパスを早く作って、経営もデータもわかる人材こそが、経営ボード、引いては会社が求めている人材であることを示さないと、社内でトライする人も出てこないし、外部からも人材は入ってこないでしょう。

データサイエンスは学問である

神野 データサイエンスには、まだまだ確実なメソッドが確立していません。実行する人のさじ加減で結果がいくらでも変わるもので、ビジネスセンスとほぼ同義です。データサイエンティスト組織の成熟度のアセスメントサービスを展開してわかってきたことは、高みにいる人たちとそうでない人の乖離が組織内でもかなりあり、それが取り組みへの障壁になっているということです。その結果、ビジネス効果を出すという次のレベルの取り組みになかなか取り掛かれません。

最近、高いスキルを獲得してマネージャーになった人から受けることが多い相談は、「メンバーからもっとスピードを下げてほしい、ゴールのレベルを2,3段階下げてほしいと言われるがどうしたらいいか」というものです。これを解決するためには、トップはこのような現実との妥協点をどこに置くか、メンバーはもっとスキルアップするためにはどうしたらいいか、ミドル層はその中間で自分はどう歩むべきかを、それぞれの立場でしっかり考える必要があります。このあたりの課題が、最近になって見えてきました。

大畑氏 私は今、日本全体が移行期にあるのだと捉えています。最近、大学や大学院にデータサイエンス学部が次々と作られています。そこで学んだ20代の人たちが社会人になり活躍を始めています。このようなデータドリブンと親和性の高い人たちがこれからもどんどん増えていきます。

一方、管理職の方々の中には、今までの成功体験をもとに動いてしまい、データよりも経験と勘が優先されることが多くあるかと思います。そうすると、データドリブンに取り組むことが出来ている層とのギャップが生まれてしまいます。

その間をつなぐのが、私たちのような30代から40代の人間ではないでしょうか。自分でデータを分析したこともあり、分析官をマネジメントしたこともあり、経営にインパクトをもたらした経験もある人間がようやくこの世代に現れてきたからです。

今はマジョリティがシフトする局面です。この10年で世の中は大きく変化しましたし、次の10年はもっと変化するでしょう。人材の流動化も進むはずです。ベンダーサイドから事業会社に移る人も増えるし、その逆も増えるでしょう。そこから生まれる人材交流を通じて、世の中はポジティブな方向に変わっていくと私は信じています。

こういった流れを見据えつつ、エイトハンドレッドでは、データサイエンス学部の学生に、リアルなビジネスの課題がどのようなものかを少しでも体験できる環境を提供していきたいと考えています。統計やアルゴリズムは大学で十分学べますが、ビジネスのリアルな課題解決に貢献する機会は大学では提供できません。これらの機会の提供を通じて、ビジネスの現場で活躍できるデータ分析人材を育成することに、少しでも貢献したいと考えています。

神野 データサイエンスも元をただせば学問であり、アカデミックの世界と相性がいいはずです。データサイエンス自体が未来を創るのに重要な学問になってきた、それで次々と学部が新設されているということですね。

大畑氏 はい。極めて重要な学問です。

組織組成の鍵は力の補完

神野 データ人材の育成のために伴走支援をしてきましたが、反省点も見えてきました。それは「お勉強」になっているということです。これは変えなければなりません。データ人材の育成は、お勉強でも学習でもありません。技術はもちろん教えますが、それ以上に「データを使いこなすためのケイパビリティを伝授」することが肝要です。

なぜ(Why)これ(What)をすべきなのかを理解した上で、ではどう(How)やるのかをきちっと説明し、実践させる――この流れを再確認する必要があります。

大畑氏 その中でデータやツールはHowでしかないということですね。なぜその課題に取り組まなければいけないか、そしてそれを解決するためにビジネス上のどのドライバーやKPIを変化させればインパクトがあるのか仮説を立てる。そして本当にインパクトがあるのかを検証する――そのためには先ほど述べた「場数」がやはり必要です。机上の勉強だけではできません。場数を踏むほど仮説の精度も高まっていきます。

データだけいじくり回していてもダメなのです。何(What)を何のため(Why)に検証するのかを書き出すことから始めないといけません。

神野 データサイエンティスト協会が、データサイエンティストに必要な力として、データサイエンス力、ビジネス力、データエンジニアリング力の3つを定義しています(図1)。しかしこの3つをすべて兼ね備えている人はとても少ない。2人や3人に分担して補完する必要があります。

図1:データサイエンティストに必要な3つの力
(出典:一般社団法人データサイエンティスト協会

大畑氏 経営層や管理職の方々には3つを一通り経験し、少なくとも何をすればいいかをわかっている人材が必要だと思いますが、その次の層からは1つの力ずつでもかまわないと思います。

どういう組織構成にするかについては我々も悩むところで、3つともできなくても2つなら一定レベル以上できる、という人も結構います。プロジェクトによって役割を変えることもあります。あるいはキャリアパスの中で3つを行ったり来たりさせながら、バランス良く育てるケースもあります。おそらく正解はなく、本人の希望も聞きながら、毎回アサインしています。

神野 ビジネス環境も変化していますし、データサイエンスがカバーする領域も変化しています。したがってデータサイエンティストの人材像もキャリア設計も常に変化します。我々もクライアントもそれは同じですが、ビジネスをより理解している人が必要になってきているのは間違いありません。

実際、最近は「基本的な分析をできる人が育ってきているので、分析する人も分析のアドバイザーも必要ない。今欲しいのは、ビジネス課題を見つけて、分析結果から課題解決に導ける人材です。」とクライアントから言われるケースが目立ちます。データ分析においては「見つける力」「解く力」「使わせる力」の3つが必要(図2)と私たちブレインパッドは提唱しており、そのうちのピュアなデータサイエンティストに必要な「解く力」については、レベルは様々ですが、クライアント側でもかなり身につけてきているということです。しかしビジネス価値を生むには、ビジネスアナリストに必要な「見つける力」と「使わせる力」が必要なのですが、これらはまだまだ不足していると言えます。

図2:見つける力・解く力・使わせる力

【関連】【シリーズ】データガバナンスがもたらすもの-第4回 組織組成・人材育成とデータガバナンス(前編)

なぜ「見つける力」が弱いのでしょうか?実は、意外と自分の仕事の全体像をよく理解していない人が多いことが主たる理由です。例えば、伝票に何を書いて、どこに回せばいいかはもちろんわかっていますが、会社のビジネス全体の中で自分が作成した伝票がどう位置づけられるかがわかっていません。

その点コンサルタントは、様々な業界の会社の業務を知っています。そこで従来のコンサル業務とは違う形でクライアントに貢献したいと考えるコンサルタントが、企業のデータドリブン化支援に関わりたいとブレインパッドにジョインするケースが増えています。

大畑氏 エンドハンドレッドも同様で、事業会社のマーケティング部門や広告代理店にいてマーケティングや広告、あるいはCRMの実務がわかっている人が、企業のデータドリブン化を支援したいと応募してきています。

そういった実務が俯瞰的にわかっている人たちとデータサイエンティストを掛け合わせると、解くべきビジネス課題が見えてきて、何をデータでドライブしたらいいかもわかってくるという感じですね。

ビジネス・データサイエンス・データエンジニアリングの3つを完璧に身につけている人はまずいないので、それぞれの力を持つ人でチームを作って、クライアントの伴走支援をしていく必要があります。自社だけでチームが作れないなら、他社とオープンに組んでいけばいい。その一環として、ブレインパッド様とエイトハンドレッドの連携もあるということです。

マーケット拡大期にはオープンな連携で価値を創造する

神野 我々の連携の意図について話が出たところで、我々が組むことでどんなシナジーがあるのかを考えていきたいと思います。

シナジーに関しては、クライアントに次のステップを共同で提案できることが一番大きいと思っています。人材育成/分析伴走を軸としたデータドリブン組織変革を中心に、ご協力をいただきたいと考えています。データサイエンスの専門家であるブレインパッドと人材と組織の変革支援を軸としたエイトハンドレッド様で組むことで、日本企業に対するデータドリブン変革をしっかりと堅実に進めることができるのではないでしょうか?

また、分析手法となるツールに限って少し話をすると、多くの分析ツールなどが誕生して利用されている昨今、まだまだ旧来からのテクノロジーやツールでデータ分析を実行しているお客さまが多々いらっしゃいます。この領域に対して、変革をもたらしていくことは出来ないか、モダナイゼーションを実現することはできないか、と考えています。そのためにはエイトハンドレッド様の知見が必要になってきます。共同で情報発信しながらクライアントをリードしていくのも面白いなと思っています。

大畑氏 エイトハンドレッドはまだまだ人が足りていませんので、強みを持っているいろいろな会社と連携して領域を広げていかなければなりません。弊社はトータルでバリューを出すことを目的にテクノロジーやツールを扱っていき、専門特化した領域はそこに強いパートナーと組みながらやっていきたい。データドリブン化支援のマーケットは拡大期にあり、いろいろな会社がオープンに組みながら価値を創っていくフェーズです。パイをいがみ合って取り合う時期でないことは確かです。

マーケティング領域で言えば、個人情報に関する規制が強まっている中、従来のような形ではCookieが使えなくなっています。セキュリティも厳格化していますし、個人情報に対してセンシティブになりつつあります。とはいえマーケティングのパーソナライズ化の流れが止まるわけでもなく、様々な規制やネガティブな感情の中で、どうやって価値を提供していくかを考えなければなりません。パッケージ化してすぐ使えるようにしていくことも必要であり、そこをぜひブレインパッド様と一緒に進めていければと思っています。

神野 ブレインパッドはデータ分析に必要な3つの力で言えば、「解く力」もですが、「見つける力」と「使わせる力」を、市場動向に合わせて、より強く研ぎ澄ましてしていく必要があると考えています。そこで昨年あたりから多くのコンサルティング会社出身者がジョインして、そこを補完しているのですが、まだまだ足りません。大規模案件を受注したら、アッという間に人が不足するのが現状です。そこをビジネス理解に強みを持つエイトハンドレッド様にも補完していただけると大変助かります。

大畑氏 私個人は「データドリブンなマーケティングを実現することで、本当に売上につながる取り組みにチャレンジしたい」と考えています。そのためにはブレインパッド様のデータドリブンに関する知見が必要ですし、二社が協力すれば新たな市場を創造できるのではないかと思っています。

神野 私は、データに係るエグゼクティブアドバイザリーサービスに取り組みたいと思っています。経営の数字の見方/Decision Scienceとか、あるべきダッシュボードとか、感覚や感情ではなくファクトベースで意思決定する方法とか、そういったことを伝えていくサービスです。このスキームに関してもエイトハンドレッド様と協業できればと思っています。

大畑氏 デジタルマーケティングの診断をし、その上で、広告、SNS、ECの戦略を立てましょう、マーケティングデータを可視化するためにBIを導入しましょう、そのために周辺システムを連携させましょう――これらはやはり戦略から全体に落としていってはじめて意味があることで、局所的な改善を行ってもコストカットの効果はあっても、売上へのインパクトはありません。

売上を向上させることは言わずもがな万能の薬であり、それに取り組むことで万事うまくいくのです。ただ取り組むためにはトップの決断が必要で、エグゼクティブ・アドバイザリーはその決断につながるものだと考えます。

神野 経営者の意識改革ができれば、データサイエンティスト出身者が経営ボードメンバーにいないという現状も大きく変わっていくと思います。

大畑氏 そうですね。当然ですが、経験と勘と嗅覚だけでは経営できません。市場構造も顧客の変化も急速に進む中においても、データに基づいて意思決定を行うことで、再現性のある経営が可能になります。

バックオフィス系×データ活用の可能性

神野 ところで、エイトハンドレッド様では管理会計や財務会計および経営管理などのバックオフィスに係るデータ活用の案件はありましたか?

大畑氏 BtoB企業向けの管理会計に関する支援は多々あります。ERPからデータを抽出して、現場での活動から利益までの流れを可視化するといった取り組みです。

神野 ブレインパッドではマーケティングやSCM関連の案件も多いので、密接する管理会計や財務会計についても、補完できると良いと感じています。

大畑氏 もちろん規模にもよりますが、いまだにExcelで数字を見ているところが多い印象です。ドリルダウンして分析すれば見えてくることもあるはずなのに、BIを使いこなせていないので課題を見逃しています。CRMやSCMの領域は、一定データドリブン化は進んでいる印象はあります。

神野 そのとおりです。営業、CRM、SCMなどと同様に、個別にSaaSなどを利用するシーンをよく目にしますが、データ管理はそれぞれバラバラで行われていることが多くあります。単体で見ると問題はありませんが、バックオフィスや経営視点で統合を始めた途端に整合性が取りにくくなり、全体を通して一気通貫のデータを把握するということは、非常に難しい状況に陥っているところも見られます。

結果的にデータ統合して分析基盤を用意する流れがあります。本来なら経営の視点で、一貫性のある情報を見ることができるべきであるものの、個別最適化に陥ってしまっているシーンは多くあるのではないでしょうか。会社全体を通したデータドリブンおよびデータサイエンスを実現するためにも、バックオフィス系のデータ活用はまだまだ未開拓な領域が多いと感じています。

大畑氏 私自身社長を務めていて、様々な費目を自分で見ています。今は規模も小さいので全部一人で確認できますが、今後規模が拡大していくとそれは無理でしょう。

神野 ニーズは大きいと考えています。前述のように、総勘定元帳と分析結果が整合していないという話も聞かれます。同じ源泉データから蓄積されているはずなのに、なぜか整合性が取れていない。経営目線で見ると、原因追求のためドリルダウンしようとするがうまく行かず、Excelや紙で作業・捜索し始めてしまい、原因に到達しにくい。そこをどう担保していくか。安定したデータ活用に向けて、データガバナンスの整備も肝要であると考えています。

大畑氏 バックオフィスやガバナンスなどの領域でも多くのニーズがあるということですね。

神野 そうです。データサイエンスをビジネスで活用するという領域は、まだまだ未開の部分が多いと思っています。そこを掘り下げていくことで、Decision Science/意思決定に係るデータサイエンスとOperation Science/業務遂行に係るデータサイエンスが見えてきて、それぞれの打ち手をしっかり取ることで、データドリブンは完成していくのではないかと考えています。この話はまた別の機会に詳しくさせていただければと思います。

今後もビジネスパートナーとして、様々な領域でご一緒させてください。

大畑氏 こちらこそよろしくお願いします。

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株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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