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自社のアプリを導入する銀行が増えていますが、背景には日本の銀行が抱える収益構造の問題があるようです。各行ともに、充実した機能を持ったアプリを提供していますが、なかでも先進的存在となっているのが「りそなグループアプリ」です。この記事では、りそなグループアプリの概要と、今後の展望について解説しています。企業、特に銀行のDXに携わっている方に役に立つ内容です。
監修:株式会社ブレインパッド アナリティクス本部 アナリティクスサービス部 藤井 良太
りそなグループアプリをはじめ、銀行でもアプリを導入するケースが増えていますが、これは銀行の預貸金の利ザヤ(借りたお金の金利よりも高い金利で貸し出した場合に得ることのできる利益のこと)が減少していることに関連しているようです。銀行業界でアプリの台頭が進んでいる背景について解説します。
日本は、金融緩和政策が長期間継続していて、銀行の預貸金の利ザヤが減少傾向にあります。かつては利ザヤの減少は、有価証券の売却益などで補うことができましたが、近年では有価証券の利益は見込めなくなってきています。
金融緩和によって企業や個人にお金を供給することで、企業は低金利でお金を借りやすくなり事業活動への投資が活発になることから景気が回復。個人においては低金利の預貯金からあふれたお金が消費や投資へ向かうだろうと考えられていました。
しかし、バブルやリーマンショックを経験した日本では、企業はリスクを嫌気して借り入れをためらい、返済を優先。個人のお金も投資から預貯金に逆流するなど資金需要は乏しいものでした。その結果、日銀が供給したお金は日銀の当座預金に戻り、ジャブジャブにあふれかえることになりました。これが、いわゆる“カネ余り(流動性の高い通貨などの資産の供給量が需要量を上回る状態)”の一因となりました。
日本では今もカネ余りが続いているため、今後も預貸金の利ザヤが増加することは考えにくいといえるでしょう。
日本の銀行は、預貸業務で収益を上げることが難しくなっているため、欧米金融機関のようにサービス提供によって収受する手数料を収益源としようとする動きが、規模に関わらず、銀行業界全体で活発になっています。
スマホアプリなどによって、個人のデータ(BtoBの場合は部署・担当者レベル)を収集・蓄積し、よりお客さまのニーズにあったサービスを提案・提供することが今後は主流になっていくでしょう。
新型コロナウイルス感染症の拡大によって、非対面接客のニーズが高まったことに加えて、忙しくて普段店舗に訪問できない顧客などの潜在ニーズも明らかになってきました。
「りそなグループアプリ」とは、りそな銀行・埼玉りそな銀行・関西みらい銀行で口座開設をした人向けのアプリです(※)。りそなグループアプリでは、残高照会・入出金明細照会・定期預金・投資信託取引・海外送金・ATM検索などさまざまなサービスを利用できます。
※りそなグループのみなと銀行では2022年2月14日から「みなとdeグループアプリ」の取り扱いを開始しています。
りそなグループアプリは、「スマホがあなたの銀行に」をコンセプトに、さまざまな手続きをかんたんに完結できるアプリです。他社に先駆けて金融サービスのデジタル化を推し進め、2022年3月にはすでに中期経営計画目標の500万ダウンロードを突破しています。
経済産業省と東京証券取引所は、投資家に対し、デジタルトランスフォメーション(DX)に取り組む魅力ある企業を「DX銘柄」として紹介しています。株式会社りそなホールディングスは、金融業のデジタル化の取り組みが評価され、2020年度当時、銀行業で唯一DX銘柄に選定されました。
2021年6月16日に開催された「DOORS -BrainPad DX Conference」にて、株式会社りそなホールディングス 執行役 DX企画部担当(当時)の伊佐真一郎氏が語った、りそなグループアプリの開発のポイントを3つ紹介します。
りそなグループには約1,600万人の個人のお客さまがいるにもかかわらず、対面で営業できていたのは10%を切っており、残りの90%のお客さまに対して、能動的な接点がありませんでした。残りの90%のお客さまにより良い金融サービスを届けるにはどうしたら良いかを考えた結論がスマホだったのです。
対面で行う従来の銀行業のビジネスモデルと、スマホの非対面ビジネスはまったく異なるものなので、進め方や順序などの答えが社内にないなかで開発をする必要がありました。
サービスの拡充や利用のしやすさを追求し、これまで行った機能改善の項目数はアプリリリース以来900以上にのぼります。
実際にりそなグループアプリを利用している編集部員による感想を紹介します。
口座は、店舗に行って作成するものだと思っていましたが、スマートフォンのアプリで申込が出来たことに驚きました。本人確認は、書類(免許証・マイナンバー・在留カード)を口座開設アプリで読み取るだけで完結するのでスムーズでした。
口座開設の受付が完了した後は、後日(1~2週間後)カードが自宅に届きました。
口座番号も後日通知され(最短翌営業日19時以降)、その場ですぐ残高確認のできるりそなグループアプリを取得できるのは衝撃的で、感動しました。
アイコンがついているので、各機能の内容が想起しやすく、操作を間違えにくい作りになっていると感じます。
(他の銀行アプリで出来るものもあるが)iPhoneの顔認証でのログインが便利でした。必要以上に入力を求めないUIで、他社の銀行アプリのようにほとんど使わないようなメニューがずらっと並んでいるわけではなく、トップ画面がシンプルです(口座残高、直近の入出金、ポイント、近くのATM検索、よく使う機能を登録できるMyカード機能)。また、預金、出金レポートがリスト・表計算方式ではなく、グラフィカルで見やすいです。ログイン時など待ち時間にロゴがぐるぐる動き、待っている感が軽減されるのもポイントです。
とてもかゆいところに手が届くという印象。
機能の並び順が分かりやすく、必要な機能にたどり着くまでに迷子になりにくい印象です。またワンタップ振込など、とにかく少ない工程で振込や預入れができるのでスピーディに手続きができると思います。
ここからは、 りそなホールディングスのデータ分析組織の立ち上げフェーズから支援し、りそなグループアプリの分析にも携わっているデータサイエンティストのインタビューを紹介します。
DOORS編集部(以下、DOORS) 藤井さんは、具体的にどのような業務をされているのか教えてください。
ブレンパッド・藤井良太(以下、藤井) 現在、個人顧客向け、法人顧客向け等、様々な領域で複数の分析テーマを支援しています。特に、りそなグループアプリ関連では、「アプリ利用の活発化」についての分析を実施しています。「利用が活発化する要因」を明らかにすることによって、ユーザーが欲するタイミングで、真に求める情報を提供することを目指しています。
DOORS なるほど。では、支援会社の立場として、データ分析を進めるうえで意識していることはなんですか?
藤井 2点あります。まず1点目は、データを見る際に、先入観を持たずに解釈することです。りそな様に限らず、依頼いただく企業様は、事業に関する知見をたくさんお持ちです。これらの知見は、事業を進める上で重要なものですが、データ分析においては新たな知見に着目しづらくなることがあります。そのため、一次的な解釈の時点では、我々が外部の目としてフラットな意見を提示するように心がけています。その結果、良い意味で銀行内の常識を裏切る結果が出ることもあります。
2点目は、現場の声をよく聞くことです。1点目と矛盾するように感じるかもしれませんが、どちらも重要で、意識すべきことだと考えています。重要になるシーンとして、例えば、データに異常値が入っている場合が考えられます。特に、異常値が一見正常に見える場合(※本来「1~5」の値が入るべきところに、「6」が入っている、等)、データだけを見ている分析者では異常に気づくことが難しい場合があります。その際に、現場での業務を知っている方が見ればすぐに異常に気づくことができる、という状況です。「フラットな意見」と「現場の声」、両方の視点を持ち、情報を集め、粘り強く考えることが重要です。そのために、結果の解釈・その後の施策検討の際は、積極的に銀行員の方と意見を交わすようにしています。
DOORS りそな様とのプロジェクトで「凄い」と感じたところを教えてください。
藤井 りそな様を支援していく中で感じたことを紹介させていただきます。分析プロジェクトを成功させるためには、依頼いただいた企業様の協力が必要になります。前述のとおり、りそな様においては、解釈・施策検討等で、積極的に議論させていただいております。我々が依頼をいただいたテーマに関しても依頼主という立場ではなく、かなり近い位置で意見をいただけます。議論の中で、データの力で組織・世の中を変えていこう、という高い熱量を感じます。また、分析をもとにPDCAを回していく際には、どうしても遠回りが必要になる場面があります。短期的な利益を考えると非効率的な施策、本来の業務に加えて分析のための作業が必要になるような状況です。りそな様においては、常々「失敗を恐れずにトライしてください」とおっしゃっていただき、実際にチャレンジングな取り組みを実施する機会をいただいています。取り組みの中で、他部署との連携が広がっており、銀行全体で動いている印象を受けます。これらの姿勢・行動が、上質なユーザー体験に繋がっているのではないかと感じます。
DOORS ありがとうございました。
※データ分析組織立ち上げ、アプリのデータ分析についての、りそなホールディングス様との対談記事はこちら
りそなグループアプリをきっかけに、今後りそなグループは地銀や、地域の企業、地方自治体などとの連携を拡げていく予定です。ここからはスマホアプリの展開を含め、現時点での同社のデジタル構想の一部を紹介します。
りそなホールディングスは、りそなホールディングスの持つスマホアプリの提供や、デジタル人材の支援といったデジタル分野のほか、相続・事業承継分野で手を組むなど地銀と連携を強めています。
地銀との連携強化は、ほかの金融機関でも行われていますが、りそなホールディングスは、資本関係やシステムにとらわれない柔軟な連携をしていく方針です。
りそなグループが提供する金融デジタルプラットフォームを用いて、地域の金融機関や一般事業法人、地方自治体などが、独自の金融サービスを提供できるようにすることで地域経済の活性化や持続可能な社会を目指します。
各銀行は、金融緩和の影響から預貸金の利ザヤが減少しているため、収益構造の転換や、対面で営業できない顧客に対する接点を持つなど新たなアプローチの必要性が生じています。こうした背景から、銀行アプリを導入する事例が増加しているようです。
そのような環境の中、りそなホールディングスは、提供するスマホアプリが銀行アプリの先進的存在となっており、さらに、「金融デジタルプラットフォーム」による、既存事業の枠組みにとらわれない価値提供に乗り出しており、ほかの銀行と一線を画す存在となっています。
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