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東海東京証券における営業生産性向上Projectの全貌~拡張分析と内製化~

公開日
2023.10.13
更新日
2024.08.08

営業組織力向上とハイパフォーマー育成による顧客満足度向上に焦点をあてて、一般的に難しいとされる人事データ活用(人事DX)にいち早く取り組んでいる東海東京証券株式会社。
別記事(※)では、同社の北川尚子氏、HRD株式会社の韮原祐介氏、株式会社ブレインパッドの関口朋宏の3人の代表取締役に人事データ活用について戦略面から議論を深めていただきました。

(※)人的資本経営を推進するために必要な「人事DX」~人材・組織データを活用した「営業組織力向上」と「顧客満足度向上」とは~

今回は、人事データ活用の具体的な取り組みである「営業生産性向上Project」の概要と成果、中心的な役割を果たした「拡張分析」について、東海東京証券株式会社の鈴木基由氏、土井亮太朗氏、HRD株式会社の水谷壽芳氏、株式会社ブレインパッドの王琦の4人に振り返ってもらいました。

※掲載されている製品・サービスは記事作成時点の情報です。

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※写真右から
HRD株式会社 ディレクター パフォーマンスコンサルタント・水谷 壽芳氏
東海東京証券株式会社 執行役員 営業支援本部長・鈴木 基由氏
東海東京証券株式会社 営業統括部DX推進G グループリーダー・土井 亮太朗氏
株式会社ブレインパッド XaaSユニット プロダクトマネジメント プロダクトマネジメントG・王 琦 

本記事の登場人物
  • マーケター
    王 琦
    会社
    株式会社ブレインパッド
    所属
    XaaSユニット
    顧客育成分析、売上予測分析を中心に、プログラミングとデータマイニングツールを駆使し、機械学習によるデータ活用の提案と業務設計に従事。

営業がいかに効率的に本業に集中できるかを探る

DOORS編集部(以下、DOORS) 前回は「社長鼎談」ということで、東海東京証券の「営業生産性向上Project」および人事データ活用について経営者はどう考えているのかといった、戦略面について伺いました。今回は「実践編」ということでより具体的なお話を伺いたいです。

まずは、簡単な自己紹介と今回のプロジェクトでの関わりを教えていただけますか。

東海東京証券株式会社・鈴木 基由氏(以下、鈴木氏) 執行役員 営業支援本部長の鈴木です。当時は営業統括部長の立場で土井と二人三脚で「営業生産性向上Project」を推進してきました。私の役割は主に、経営とプロジェクトの橋渡し役です。役職は変わりましたが、今でも本プロジェクトに関わっています。

東海東京証券株式会社・土井 亮太朗氏(以下、土井氏) 営業統括部DX推進G グループリーダーの土井です。2018年からブレインパッドの支援を受けて、データベースマーケティングの推進や予測AIモデルの作成に携わってきました。2021年からはHRDも交えて、3社で今回のプロジェクトを進めてきました。

HRD株式会社・水谷 壽芳氏(以下、水谷氏) HRDの水谷です。人材アセスメントデータを活用して、組織の中で各個人が高いパフォーマンスを発揮することを支援をする「パフォーマンスコンサルタント」を務めています。今回の営業生産性プロジェクトでは、営業人材像の定義、人材アセスメントデータの分析と結果報告、そして、営業の方々の生産性を高めることを目的としたワークショップに関わらせていただきました。

株式会社ブレインパッド・王 琦(以下、王) 今回、プロジェクトで活用させていただいた拡張分析ツール「BrainPad VizTact(ブレインパッドビズタクト)」(以下、VizTact)のプロダクトマネージャーを務めている、ブレインパッドの王です。今回のプロジェクトでは、分析データの調整やVizTactの操作説明と活用のサポートを行いました。

DOORS では最初に、鈴木様から「営業生産性向上Project」の概要を説明していただけますか。

鈴木氏 当社では営業員がいかに営業活動に集中できる環境をつくるかということがそもそもの課題としてありました。そこに新型コロナウイルス感染症の流行による社会や経済活動の変化が急速に進み、在宅勤務やWeb活用が本格化し、営業の体制や仕組みを見直さないといけないと強く認識するようになりました。DXの活用はもちろんのこと、人材の活用面でも「生産性の高い人材とはどんな特徴があるのだろう」、さらに全体的に営業の底上げを図るにはどうしたらいいだろうということが特に大きなテーマでした。

来店されるお客様がコロナ禍で急激に少なくなったことや、今まで対面でしかできなかったことがWeb上でできるようになったことで、店舗は本当に必要なのかといったことも含めて議論になりました。そんな中で、営業員がいかに効率的に営業に集中できれば営業生産性が向上するか、また人手や時間が削減できるかを中心に検討してきました。

DOORS 「営業がいかに集中しやすく」というお話がありましたが、逆に「営業に集中できない」要因にはどういうものがあると考えておられたのでしょうか。

鈴木氏 現在当社で推進しているデータベースマーケティングもその1つの解決策なのですが、多数のお客様の中からどこにアプローチすべきなのか、何をご案内すべきかがわからないというのが、特に大きな要因だと思います。また若手社員も多いので、どうすればベテラン営業員の経験や知見をわかりやすく伝えられるのかということもありました。

DOORS そうした阻害要因が何なのかも、今回の分析の対象だったということですね。では、本プロジェクトが発足したきっかけをもう少し詳しく教えてください。

鈴木氏 「262の法則」、すなわち優秀な人が2割いて、平均的な人が6割ということがよく言われますが、その6割の人材のどの部分をどう修正すれば全体の底上げにつながるか。その入り口として、当社のハイパフォーマーは、他の人材とどんな点が違うのかが最初の議題になりました。

実は、以前にもハイパフォーマー分析に取り組んだことがありました。行動履歴から電話件数や訪問件数などの差異は取れるのですが、ハイパフォーマーはなぜそれだけの件数をこなせるのか、あるいはその件数が成果につながるのかなどを明確に結びつけられませんでした。今回のプロジェクトでは、外側から見える行動の部分と外側からは見えない個々人の内面の部分の両方から営業成績との関連を探る取り組みをしました。

DOORS 収益が下がってきたからといった直接的な理由ではなく、今後の貴社のあり方を考えるうえで、営業生産性を向上していかないといけないという課題感が経営層にあったということでよろしいでしょうか。

鈴木氏 その通りです。


パートナー選定とチーミング

DOORS 本プロジェクトを進めていく上でのパートナーを選定されたわけですが、どういう観点で選定されたかを教えていただけますか。

鈴木氏 ブレインパッドの他にも数社からお話をいただいたのですが、VizTactという分析ツールの影響は大きかったと感じます。人を評価する場合に属人的な判断や評価がどうしても多くなるのですが、データを使って、しかもわかりやすく表現できるのが印象的でした。本社部署の仕事ではデータを取り、仮説を立て、検証することが多く、とても労力がいる作業です。VizTactは分析結果を言語化してくれるため、人の目では気づかない点に気づきを与えてくれます。

またブレインパッドにパートナーとして紹介いただいたHRDの提案に関しては、人材アセスメントにより個々人で違う営業の資質を数値化できるところに魅力を感じました。私も支店長のころは一人ひとりの資質や特徴を自分なりに意識しましたが、感覚的で定性的な表現しかできません。営業員の得意・不得意が数値として見えるといいなと当時から思っていました。
水谷さんが野球に例えてくれたのですが、「投手は肩が強く速い球が投げられる」「セカンドは軽快な動きができる」など社員のみなさんにもそういった特性があるのではと聞いて、なるほどと思いました。そうした目線で営業員全員に対して特徴を数値化することで、本人たちの納得感も高まり、会社全体の最適化にもつながるのではないかと感じました。

まとめると、属人的な定性評価ではなく、データに基づいた数値的な人材評価と人材分析ができる=「ブレインパッドとHRDの2社連合による支援」をお願いしたということです。

土井氏 他社の場合、こちらから渡したデータを分析して「レポートができました」で終わってしまうイメージがありました。レポートをもらって終わりではなく、その後も継続していくこと、またそういった体制を作っていくことが大事だと思っていました。このプロジェクトはVizTactを使って営業員のデータを自分たちでも分析できるようになるというのはかなり魅力的な話でした。

DOORS 水谷様と王さんは、パートナーとしてこのプロジェクトをどのように支援してきたのでしょうか。

水谷氏 私たちの提案はシンプルに1つでした。「人の特性は測定できて、そのことで人の心が動かせる」ということが提案の骨子です。

例えば今回、リテールカンパニー、ウェルスマネジメントカンパニー、マルチチャネルカンパニーという3つのユニットで人物像を定義したところ、はっきりとした違いが出ました。それぞれの特徴において、最初に東海東京証券が持っていたイメージと合致したことが、経営幹部のみなさまやプロジェクト関係者の心を動かすことに繋がったと振り返っています。

また、今回は分析結果の一部を現場の営業のみなさまに共有させていただき、具体的な成功行動をお伝えさせていただきました。現場のみなさまの納得度が次の日から行動を変えてみようという心の動きに繋がっていると思います。

DOORS プロジェクト支援に際して、東海東京証券と課題感はしっかり共有されていたのでしょうか。

水谷氏 先ほど鈴木様からも話がありましたが、訪問件数や電話件数といった行動履歴は残っているのだが、なぜこの人はこんなに訪問できるのだろうか、電話をかけられるのだろうかといったアクションの背景を明らかにしたいのだとおっしゃっていたのです。課題をしっかり特定されていらっしゃいますし、目的に対する熱量が伝わってきたことを記憶しています。

DOORS 王さんはどのような支援をしたのですか。

 私はVizTactによる分析を支援しました。ワークショップ形式の研修で、実際のデータを使ってどんな結果が見えるのかを様々な機能を使って実演しました。最初は主に土井様や営業統括部のみなさまに受講していただき、その後他の方にも操作してもらいながら、結果を一緒に読み解いていきました。

DOORS 分析そのものに関する課題感はありましたか。

 ありませんでした。通常、分析用のデータを作るところが難しい、結果の読み解きができない、分析のアルゴリズムがわからないと引っかかることが多いのです。しかし今回は、HRDの人材アセスメントデータがクレンジング不要のとてもきれいなデータでした。また、東海東京証券の営業に関するこれまで蓄積してきたデータがとてもきれいだったのが大きく影響していると思います。

また、土井様がすでに分析のノウハウを持っているのがとても有利に働いたと思います。ツールの操作もすぐ覚えてくださいましたし、こちらとしてはまったく苦労がありませんでした。

DOORS 今回VizTactが選定されましたが、理由として思い当たることはありますか。

王 「速さ」ではないでしょうか。VizTactと競合する他のツールは分析にビッグデータが必要という理由もあるのですが、いずれにしても実行して結果が出るまでにかなり時間がかかるうえに、結果を読み解く際も相応の専門知識を持っていないと時間がかかります。
VizTactはまずスモールデータで分析ができ、その場合は結果が本当に一瞬でブラウザの画面に表示されます。結果も自然言語やグラフで表現してくれるので、読み解きも一瞬で可能です。

土井氏 結果を言語化してくれるのはとても助かりますし、レスポンスが速いのも事実ですね。

水谷氏 東海東京証券のカルチャーが良い意味で特徴的だと感じています。大きな方向性として「異次元の世界」を目指されていて、プロジェクトで関わる方々、現場の方々、例えば鈴木様や土井様から、キーワードとして会話の中で触れられているので、そのことを本気で実現しようと考えているということが特徴的だと思いました。

また様々な業界の方々と仕事をさせてもらってきましたが、ベンダーとの間に垣根をつくる会社はあるんですね。「ベンダーだから言われたことをやれ」というものです。そのような垣根を、東海東京証券からはまったく感じませんでした。一緒に目的を達成しようというみなさまの姿勢が私たちのモチベーションになって、東海東京証券のために、そして鈴木様と土井様のために何ができるのだろうという気持ちにさせてもらえたのです。

今回、営業員への分析結果のフィードバックにあたりグループ会社の東海東京アカデミーの方々にもご尽力いただきましたが、会議が始まる前に「家族だと思っているから」といった言葉もいただきました。もしかすると、我々をその気にさせるためのパフォーマンスかもしれません。例え社交辞令であってもそのようなお言葉をいただけると、不思議とこちらも頑張ろうという気持ちになります。

 確かに、東海東京証券には関係の近さのようなものを感じます。分析をしながら打ち合わせをすることが多かったのですが、仕事が速いと感じると同時に、距離感が近くて一緒に仕事をしているという実感があるのです。そこにさらに人間的な温かみも感じて、一生懸命この案件に取り組みたいという気持ちが湧いてきます。

経営幹部が勢揃いしている大人数の会議に呼ばれたときも距離の近さを感じました。私が携わっている仕事はツール導入・活用の支援なので、現場の方々が分析した結果を経営層に報告することが最も多いのですが、東海東京証券の場合は、役員の方々が自分たちも直接案件に関わりたい、だから結果も直接聞きたいという積極性や一体感を感じ取ったのです。

水谷氏 プロジェクトの中でモデル設計のミーティングをさせてもらいました。それぞれのカンパニーでハイパフォーマーの人物像が違うという前提があって、現職者でどういう方が活躍しているのか、経営者が何を望んでいるのかという情報を入れてひとつのモデルを作るというミーティングです。

経営幹部の方々に参加していただいて直接ご意見を伺ったのですが、ご発言の熱量が印象的でした。今回は大きく2度、細かくは数回のお時間を頂戴したのですが、回を重ねるごとにご期待をいただいていることが、ひしひしと伝わって参りました。ある幹部の方が「人物像についての発見が毎回ある」と言ってくださったことが印象的でした。

鈴木氏 会社として何かに取り組むにあたり、「ミツバチの巣」や「シマウマの団結」といった動物の行動に例え「すぐに集まる」会社の文化があるので、人への期待も自然と表明できるし、人当たりも良くなるのかもしれませんね。

DOORS 元々きれいなデータをお持ちだという話も出ましたが、部署を横断してデータを集めるのはやはりたいへんな部分もあったと想像します。いかがでしょうか。

土井氏 会社の業績や取り組みについて経営陣から社員に向けて話す場が毎週あります。その場で当時の佐藤社長(現会長)から「営業生産性向上Projectのために人材アセスメントデータの取得に協力してほしい」というメッセージを発信してもらい、とてもやりやすくなりました。

DOORS すごいですね。ちなみに、トップがそのような発信をしても、現場が抵抗するという話をよく聞くのですが・・・。

鈴木氏 各カンパニーのトップに対しては、早い段階で私のほうからしっかり説明しました。その説明の前に、ホールディングスの副社長や人事担当役員に人材アセスメントにご参加いただきました。すると「これ、当たっているね」という反応がありました。私自身もやってみたのですが、確かにこんな性格だなと思い当たることばかりでした。そのことを各カンパニーのトップに話したところ、その方々もよく知っている人たちのデータだったので、「ぜひやろう」という雰囲気になったのです。これは大きかったです。


拡張分析によるアウトプット

DOORS ここからは、本プロジェクトで大きな役割を果たした拡張分析ツール「VizTact」に関して掘り下げていきます。
先ほどレスポンスが速いとか結果の読み解きが簡単、あるいは思考を停めずに分析を深掘りしていけるといったことが選定理由として挙がっていました。実際に使ってみてどうだったのでしょうか。

土井氏 人材アセスメントデータとVizTactの親和性は極めて高いと思います。例えば「Aさんと資質が近いのは誰だ」というのがVizTactで簡単に出せるのです。画面を見ながら、これは面白いと感じました。

水谷氏 データを見て、「なるほど」や「面白い」といった感動がないと行動につながらないと思います。当社でもVizTactを活用しているのですが、生のプロファイルデータを入れていくと、VizTactがストーリーのように動きのあるビジュアルを伴ったレコメンドをしてくれるのです。

再び野球に例えると、「右利きのピッチャーで先発完投型を表示せよ」といった指示を入力するとします。普通は該当する人の名前がハイライトになるぐらいだと思うのですが、VizTactは鮮やかな色合いでとても印象的な表示の仕方をするのです。嫌でもその人に興味が湧きますよね。「これっていったい誰なんだ?」と思って、キーを叩くと付随する情報が出てくるようになっていて、「ならばドラフトで指名しよう」といった意思決定につながっていくわけです。そういうことがとてもスムーズにできるのがVizTactの特長です。

鈴木氏 この人材に近い資質の者はいないかという課題にVizTactを使えばすぐにリストアップできますし、それ以外にも幅広い活用ができると考えています。

DOORS 先ほど王さんから話があったように、東海東京証券にデータが蓄積されていて、しかもきれいだったこと、またプロファイルズの人材アセスメントデータもきれいだったこと、担当の方に分析のリテラシーがあったこと、そしてその方が協力的だったことなどが、今回分析に関して苦労がなかった理由ということでした。

逆に分析に苦労している会社はこれらが逆ということなのでしょうけれど、その他にも要因はありますか。

 そもそもデータが集められないということや、データが集まっても加工や分析をするスキルがないというケースが多いです。あとは活用のイメージがないということもあります。分析はしてもゴールが見えないというケースがあります。

東海東京証券の場合は、ゴールを見据えたうえでの分析で、施策がある程度見えている状態で始まっているというのが失敗している会社とは違うところだと思います。分析する側と施策を実行する側が一体になっているんですね。私がサポートしているのは分析チームではあるのですが、実行チームと一丸になって進んでいるので、スムーズに連携できているし、分析を早く実績につなげられると思います。

DOORS 今回、分析に関しては土井様が大部分を担われたと伺っています。どのような点を意識して、VizTactを活用した分析を実施したのでしょうか。

土井氏 私が大部分というよりも実質は王さんたちに協力してもらいながらチームで進めていたイメージです。今回は営業員の社内評価に直結する要因は何かにターゲットを絞って探索しました。もちろん他にもターゲットはあるのですが、社内評価だけに絞った結果、分析結果もシンプルになり、フィードバックされる営業員もシンプルに受け止められます。

これまでやってきた分析は、変数が多くあって理解が難しかったのですが、今回はこれだと言い切れるのでわかりやすい。こんなにシンプルでいいのだろうかとやる前は思いましたが、受け取りやすい、理解しやすいということが大事だとわかりました。

DOORS なるほど。社員のどのような資質や行動が業績を押し上げるのか特定することに成功したということですが、説明していただけないでしょうか。

鈴木氏 横軸はジョブマッチが高い、つまり適性があるということです。縦軸は業績評価ポイントで平均が100になっています。適性があって成果もあがっていると右上にプロットされます。この人たちがまさにトップパフォーマーです。

右下のハイポテンシャルグループは、適性はあるのになかなか成果があがらない人たちで、この人たちに何をしてあげたらトップパフォーマーに移行するのか視角を考えるのが「分析視角②」です。

左下はチャレンジグループということで、ジョブマッチが低く、成果も低い人たちです。場合によっては、配置替えをしたほうが成果があがる可能性もあります。この方々にどんな課題を与え、改善を促すことで会社全体の底上げにつながるのかを考えるのが「分析視角①」です。

要するにトップパフォーマーとそれ以外(ハイポテンシャルグループとチャレンジグループ)の差異をしっかり見極めたということです。

DOORS ハイポテンシャルをトップパフォーマーに引き上げたいとのことでしたが、ボトムパフォーマーをトップパフォーマーに引き上げていこうという考えはあるのですか。

鈴木氏 人間の資質はそうそう変わるものではないと考えていますので、ボトムパフォーマーについてはどのような行動を変化させることで、全体の底上げにつながるかという方が正しいと私は思っています。あまりにも資質が営業に向かないということであれば、その人の資質を活かせる場所はないか探すことも含めて、今後は取り組んでいきたいと考えています。

DOORS この図以外に得られた大きな示唆はありましたか。

鈴木氏 本人たちが自分の人材アセスメント結果を手元に置いてフィードバックを受けるワークショップをやってもらったことで、自分の足りない部分が見えたからでしょう。事実、東海東京アカデミー主催の社内研修の参加者も増えてきているのです。

水谷氏 それは客観的に見ても、とても素晴らしい成果ですよね。学びたいという気持ちが自発的に生まれているということですから。

鈴木氏 これも水谷さんの言っている「人の特性は測定できて、そのことで人の心が動かせる」の一例ではないかと思います。

私自身も人材アセスメントを受けて、周りからはどう見えているかはわかりませんが、自分で気を付けて行動でカバーしている部分があることに気づきました。おそらく、みなにもそういう気づきがあったのではないでしょうか。それで足りないことを学びたいとか強みをもっと強化したいという気持ちが生まれてきたのでしょう。

水谷氏 そういった心の動きも追いかけていくといいように思います。

DOORS 人の心を動かすことに繋がっているのですね。ずばり、ここまででプロジェクトは成功したという評価なのでしょうか。

鈴木氏 成功か失敗かも含めて、これからですね。

DOORS それだけ長いスパンで見ているということですね。当面の成果としては、人材グループを分けて比較でき、本人たちも自覚ができて自発的な努力を始めるようになったというところでしょうか。

鈴木氏 はい。今回のプロジェクトを通じて、得意分野や強みを適材適所で活かすことでもっと会社一丸となって強度を高めていきたいです。

DOORS 営業担当者向けワークショップの概要や成果を教えてください。

鈴木氏 ワークショップも成果が出てくるのはこれからだと思います。とはいえ、課題に対してどんなアプローチをしていけばいいか、何が強化ポイントなのかといったあたりが東海東京アカデミーと共有できたのは大きいと感じています。グループの人材育成や研修を東海東京アカデミーが担っていますので、人材の資質や行動を知ることで教育に関する施策が打てるようになり、グループ全体にとっても有益なプロジェクトになったのではないかと思います。

継続性=内製化

DOORS 前回の社長鼎談インタビューでも、みなさん異口同音に「分析のための分析で終わらせない」とおっしゃっていました。そのために留意したことがあれば、教えてください。

鈴木氏 留意していることは特にないのですが、継続性という意味では内製化ができていることが大きいです。土井を中心に、自社で分析ができるようになったことですぐに動くことができ、スピード感が生まれています。また、自分たちでデータを加工して分析ができることから、様々な観点からの分析を実施し、継続性を高めていきます。

DOORS VizTactを導入して、それに人材アセスメントのデータを投入して自分たちで分析している時点で、分析のための分析では終わっていないということですね。

土井氏 1回きりで終わらない仕組みができたのは大きいですね。あとはずっと継続的に使っていくための体制をしっかり作っていかねばと思っています。

DOORS ベンダーサイドから見て、継続的なデータ活用を実現していく上で重要と考えていることはありますか。

水谷氏 データがあって、それを解釈して、メッセージ化するというサイクルが重要だと思います。
今回のプロジェクトで言えば、データは東海東京証券が持っている既存のデータと人材アセスメント結果の新しいデータが出てきました。解釈に関しては、VizTactというプロダクトがそのスピードを飛躍的に高めてくれました。また、モデル設計ミーティングを行うことで、経営幹部のみなさまを含めた関係者全員で解釈を熟成させることができました。メッセージについては、経営陣、東海東京アカデミーも含む人事部門、そして営業員の3つの層に向けてそれぞれ発信をすることができました。今後は、営業マネジャーのみなさまにもこの取り組みを加速させるメッセージを届けようということを相談させていただいています。

DOORS 王さんから付け加えることはありますか。

王 先ほども言いましたように、分析側と現場側が一体となって、分析だけで終わらずに活用までつながったことがポイントだと思います。

一般的に、分析結果を伝えるのが苦手な分析官が多く、アルゴリズムやデータ項目の話に終始してしまい、分析結果を使って何をするのかを言葉で表現できていないケースが多いのです。その点、現場と一緒に考えている鈴木様・土井様が分析しているので、先ほどの水谷さんの説明で言えば、「メッセージ」の部分が特にうまくいったのではないかと考えています。

DOORS 最近ブレインパッドでは「内製化支援」を強く打ち出しています。内製化が進むとベンダーは仕事が減って困るのではと言う人もいますが、「真の内製化は、継続的な成長を続けるためのビジネスパートナー選び」だと思います。

東海東京証券では内製化が今後も進んでいくと思うのですが、鈴木様は内製化の先のベンダーとの関係についてどのように考えておられるのでしょうか。

【「DX 内製化」に関する記事一覧】
https://www.brainpad.co.jp/doors/tag/theme/insourcing/

鈴木氏 技術は日進月歩ですから、我々が補いきれない部分に関してはパートナーから知恵をもらって、それによって我々も成長していくというお付き合いを今後もしていきたいですし、するべきだと思っています。

DOORS 前回の社長鼎談で東海東京証券・北川社長が、今回のプロジェクトが成功裏に終わった大きな要因として鈴木様の頑張りを挙げていました。DX推進の内製化においてはリーダーの良し悪しが重要と言われます。鈴木様はリーダーとして、どのような点を意識して進めてこられたのでしょうか。

鈴木氏 私は当部署に来て2年程度なので、本当に現場感覚しか知らない人間です。逆にそれが良かったのかもしれません。「現場でこんなことができたらすごくいいな」という観点でまず第一に考え、そういう伝え方を自然としているので、もしかしたら現場からも受け入れられやすいのかもしれません。経営層や本社部署の人たちに対しても、「こんなことができたら現場はすごく良くなりますよ」と自信を持って言えるのもいいのかもしれません。しかしながら思い通りにいかず、トライアンドエラーを繰り返しているプロジェクトもたくさんあります。

DOORS 本社に来てからも、現場には足繁く通って話をされてきたのでしょうか。

鈴木氏 そうですね。逆に現場からの相談もたくさんいただけます。

DOORS 続いて土井様にお伺いします。内製化ということでご自身で分析をされるわけですが、ここは自分たちでやらないといけない、ここはパートナーを頼りたいという線引きがあると思うのです。どのように判断しているのでしょうか。

土井氏 そもそも内製化ができているという基準をどこに置くかは、なかなか難しいと思っています。一度やったことを同じように再現できるのがそうだと言われれば、それほど難しいことではないと思うのです。しかし、まったく新しいことを自分たちだけでできるかというとなかなか難しい。やれたとしても時間がかかります。

自分たちにできない専門的な部分はあるので、そこはやはりパートナーに支援してもらった方が早くて確実です。ただ一度でも一緒にやったことは原則、自分たちでできるようにならないといけないと思っています。

要するに、新たなことは相談させてもらい、学んだことは身につけて、次からは自分たちだけでやるということです。それで内製化ができているということであれば、難しいことではないと私は思っています。

DOORS 土井様が身につけたことを、自分の部下や周りの方に伝えていくことはご自身でされているのでしょうか。

土井氏 はい。例えばデータベースマーケティングに関しては、部下に引き継いでいます。実際に施策を実行するのも現場へのヒアリングや調整もすべてやってくれています。ただ先ほども言いましたように、分析と実行の部隊を分けるという次のステップになかなか行けないというジレンマもあります。

DOORS ちなみに、支援する側から見ると、東海東京証券のように内製化・自走化をあたりまえと思う会社のほうが支援しやすいのでしょうか。それともすべて丸投げのほうが実はやりやすい、あるいは支援しがいがあるといったことがあるのでしょうか。

水谷氏 丸投げされるのはちょっと・・・(笑)。今回のようなかたちで一緒にアイデアや意見を出し合っていくことにやりがいを感じます。先ほどの鈴木様のお話にもあったように、継続性がありません。また私たちが一から証券業界や東海東京証券のビジネスについて詳しく学ぶよりも、私たちの人材アセスメントやVizTactについて学んでもらったほうが、スピードという観点で圧倒的に合理的なのです。学んでいただいたことを起点に内製化を進めていただき、それを元に変化を起こしていくのが私たちのスタイルなので、丸投げされたとしたら、その会社にとって役に立つことはできないのです。

 これまで、データ分析に関しては正直なところ丸投げされることが多かったのですが、現場の方々がデータの意味だったり、どういう経緯でこのデータができているのかを理解していないと、分析しても意味がないことが多いのです。逆にこれらを理解している方々が、自分たち主導で分析をすると、ビジネス成果につながりやすいと言えます。

正しい努力に導くツールとしてデータを活用していく

DOORS 先ほど鈴木様からも顧客満足度の向上はこれからの課題だというお話もありました。そういったことも含めて今回の取り組み結果を、今後どのように発展させていこうと考えておられるのか教えてください。

鈴木氏 社長の北川が目指している全社最適を、東海東京フィナンシャル・グループ全体で本気になって取り組んでいきたいと思っています。なぜこれをやる必要があるのかといったことがデータから明確に導き出せる―そういう考え方を現場にきっちり落とし込みながら、本当の意味での生産性向上を実現したいと考えています。成功する確度の高い努力をデータから導き出して、それを営業員一人ひとりに提供していくということです。正しい努力を継続的に続けないと良い方向にはなかなかいかないので、正しい努力に導くツールとして、データを活用していきたいと思っています。

土井氏 今回の取り組みを、もっと範囲を広げてグループ全体に展開していきたいと思っています。そのためには成功事例を積み上げていくことが足下の課題だと認識しています。その成果を経営層にアピールしながら、人材アセスメントデータの各項目や分析内容を社内で共通言語化していき、みんなが自然とデータを踏まえていく状態にまでもっていけるといいなと思っています。

DOORS 今の鈴木様、土井様の話を踏まえた上で、水谷様と王さんは今後どういう支援をしていきたいと考えていますか。

水谷氏 東海東京証券が「異次元の世界」を目指す中で、社員一人ひとりが自ら成長したくなるようにするお手伝いを今後もしていきたいです。あと個人的には愛知県出身なので、ご支援を通じて、私の地元企業、ひいては地域産業活性化への恩返しができれば最高だと思っています。

 ブレインパッドだからできることを考えると、やはり分析の専門企業ですので、最新の分析知識や技術をいち早くお客様に提供し、それを業務に活かせるように積極的な支援をさせていただきたいと常に考えています。伴走することを今後も続けさせてもらえればと願っています。

DOORS 今回のプロジェクトの意義とみなさまの想いがよく理解できました。本日はお忙しい中、ありがとうございました。


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株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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