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エグゼクティブサマリ
▼「2024年問題」で日本の物流になにが起きるのか、より深く知りたい方はこちらもご覧ください。
本メディアに掲載している、運送業界の「2024年問題」とは?業界の現状から考える解決法記事では運送業界における2024年問題と呼ばれる働き方改革関連法および改善基準告示の改正による影響や、各事業者における取組について解説しました。
本稿では、法規制や改善基準告示の改正による運送業界への影響を具体的に理解するべく、トラックドライバーの拘束時間やトラック台数の違いによって生じる変化について、配送計画作成アルゴリズムを用いたシミュレーション(配送シミュレーション)による実験を行い、定量的に評価、検証を行いました。
改めて、運送業界における2024年問題の要因をまとめると次の点となります。
このうち、「1. 時間外労働の上限規制」および「2. 改正改善基準告示」については2024年(令和6年)4月1日より、「3.時間外賃金割増率の引き上げ」については2023年(令和5年)4月1日より適用されます。
改善基準告示とは、平成元年に当時の労働省により告示された「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」のことで、これによりドライバーの長時間労働を抑制するために拘束時間や休息期間などの基準が定められています。
今回、この改善基準告示が改正されることで、ドライバーの1日あたりの労働時間がどのように変化するかを、以下表1にまとめました。
この改善基準告示について法的な拘束力はないものの、違反した事業者に対しては、対象車両のナンバープレートを一定期間外さなければならない車両使用停止などの行政処分の対象となる可能性があります(図1参照)。
法規制や改善基準告示の改正による直接的な影響としては、トラックドライバーの拘束時間の減少が考えられます。その結果、トラック1台当たりで配送できる店舗数が減少することが想定され、これまでと同じ物量を配送するためには、確保すべきトラック台数が増加することとなります。トラック台数の変動幅については、配送するエリアの規模や着荷主側の受け入れ時間などの様々な制約条件による影響を考慮した上で、定量的に評価することが重要です。
ドライバーの拘束時間の制約がトラック台数に寄与する影響を考えるため、国土交通省の実態調査結果をもとに、ドライバーの拘束時間の内訳を見てみましょう(図2参照)。
令和2年度の調査結果によると、実際に物品を運んでいる運転時間が最も大きく全体の約62%を占めますが、次いで荷役時間(荷下ろし・荷積み)の時間が全体の約13%程度を占めています。
平成27年度の調査結果では、この荷役時間が約23%程度を締めていたことと比較すると、働き方改革の流れにより時間が短縮されていることがわかり、今後もこの傾向が続くと予想されます。
また、この荷役時間の存在により、トラックドライバーの運転時間そのものが制限されることとなり、結果としてトラック1台当たりで配送できる店舗数が少なくなってしまうことが考えられます。このことから、作業の効率化により荷役時間の短縮を実現することで、トラック1台当たりで配送できる店舗数を増やし、一事業所に必要なトラック台数を削減することが期待されます。
また、店舗には荷物の搬入を受け付ける時間帯が定まっていることが多いと思います。荷役時間の短縮により運転時間が確保できても、受け入れ時間帯が短ければ結局荷待ち時間等が発生することになり、トラック台数は高止まりしたままとなる恐れがあります。
着荷主側からの配送の時間帯指定は配送事業者の都合による変更が困難であるのが実情ですが、例えば、配送指定時間枠を緩和することによって、効率的に配送ルートが組め、トラック台数の削減が可能と想定されます(図3参照)。
しかしながら、トラックドライバーの拘束時間や店舗の荷物受け入れ時間の変動によるトラック台数への影響を推定するのは簡単でなく、それ故、事業所は過度に簡略された推定に基づく効果の過剰な見積や、定性的な評価に依拠したリーダーの”腹決め”や”決断”に頼る、などといったリスクのある意思決定を行いがちです。
この問題を解決するためには、法規制による影響や、時間制約の違いによって生じる変化について、データ・アルゴリズムを活用して評価・分析することで、各事業者の経営状況に合わせた適切な打ち手・施策を定量的に評価しながら、精度の高い立案・意思決定ができるようになると考えられます。
今回は、「2024年問題」が配送費(コスト)に与える影響について、配送計画作成アルゴリズムを用いたシミュレーション(配送シミュレーション)による実験を行い、定量的に評価、検証を行いました。
「2024年問題」がもたらすトラックドライバーの運行に関する変化に応じて、配送エリア規模や着荷主側の受け入れ時間といった具体的な条件の違いと配送費(コスト)の関係を定量的に見てみましょう。
現実には、運送事業者と顧客との契約体系によって配送費(コスト)は変動しますが、今回はトラック一台あたりの料金=車建て料金を想定し、トラック台数を一つの指標として扱います。
正確なトラック台数を評価するためには、与えられた条件下でどのトラックがどの店舗に配送を行うかといった、配送計画のシミュレーションが必要です。そこで、数理最適化と呼ばれる技術を用いてアルゴリズムを構築し、各条件下での配送計画を自動作成し、その結果を集計することで必要なトラック台数を推定します。
本稿では、数理最適化の技術的なトピックについては割愛しますが、ご興味のある方は関連記事をご覧ください。
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【前編】数理最適化の新時代到来 ~最適化→予測でDXは加速する~
【後編】数理最適化の新時代到来 ~最適化→予測でDXは加速する~
配送シミュレーションでは、トラックが荷物を配送する際の種々の制約条件を満たしつつ、すべての荷物を配送するために必要なトラック台数が最小となるルートを生成します。今回の実験では、物流センターから小売店へのルート配送を想定しています。物流センターを出発してから店舗へ荷物を配送し、物流センターに帰着するまでのルートを探索します。
今回の実験における主な制約としては、下記を想定しています。¹
¹時間の制約の変化がトラック台数に与える影響を直接的に評価するため、シンプルな制約条件を設定しています。より現実的な状況をシミュレーションする上での検討課題については、本稿下部の補論を参照ください。
上記の制約を定量的に表現するために、店舗やトラックの情報や、荷役時間・店舗間の移動時間などが必要となります。
なお、今回のシミュレーションにあたっては、センターや店舗の位置や配送する荷物の量、納品の締切時刻は実験のためにランダムに生成したものを使用します。
この配送計画シミュレータのモデルを用いた実験により、様々な条件下でのトラック車両台数の変化を評価します。(表2)
配送エリアサイズと対応イメージは表3をご参照ください。ただし、店舗はランダムに配置されるため、実際の店舗とは関係がないことにご留意ください。
配送計画では、それぞれのトラックの各店舗への到着時間・出発時間が計算されます(表4)。それをもとに合計のトラック台数、移動や荷役などそれぞれの稼働時間を集計します。
この配送シミュレーションを通じて、トラックドライバーの拘束時間の制約によって必要な配送トラック台数がどのように増減するかを実験します。
今回対象としたシミュレーションパターンにおける固定パラメータと変動パラメータの組み合わせを表5に示します。
表5に記載した順に沿って、それぞれの結果を確認していきましょう。
まず、各制約条件を加えた場合の変動を見る際の基準として、次の”標準的な”条件における配送エリアサイズとトラック台数の関係性を確認します(図6参照)。
配送エリアサイズに相関し必要なトラック台数が増加していくことが確認できます。
このシミュレーションの条件(配送先:100店舗)においては、配送エリアサイズが200kmから250kmに広がると、必要台数が急激に増加し(図6内①)、300 kmの場合30台以上となることが分かります(図6内②)。
このシミュレーションで得られたトラック台数とエリアの関係性を基準(ベースライン)として、トラックドライバーの拘束時間制限の影響や、配送効率を向上させるための対策を講じた場合の影響についてみていきましょう。
改善基準告示改正に伴うトラックドライバーの拘束時間の制限による影響の評価を行います。
改正案においては、以下のようにトラックドライバーの1日の拘束時間について、最大拘束時間が1時間短縮されているほか、拘束時間の延長の限度や回数への要求が強化されています。
上記拘束時間上限について、16時間から13時間に短縮した場合の実験を行い、必要台数の変化を確認しました(図7参照)。
配送エリアサイズの規模によって、この上限の規制によるトラック台数への影響の違いが見られましたが、規模によって大きく2つの傾向があります。
今回のシミュレーションにおいて、ある程度小規模の配送ではトラックドライバーの拘束時間を短縮したとしても、トラック台数の増加なしに各種の制約条件(拘束時間、店舗の配送指定時間帯)を満たした配送計画の作成が可能であることがわかりました。
これは、小規模の配送においては拘束時間の中における待機時間(非労働時間)に十分な余裕があるため、拘束時間を短縮した場合に生じるトラック台数の増加分を吸収できているためと考えられます。
実際にトラックドライバーの拘束時間の上限を16時間に設定した場合の拘束時間の内訳を、配送エリアサイズごとに集計した結果をみると、30, 60kmの場合では待機時間が3時間以上ある一方で、100km以上の配送エリアサイズでは長時間の運転による影響で待機時間が1時間半以下になっていることがわかります(図8参照)。
その結果、100kmの規模を超えると、時間短縮によって守ることができない制約条件が出現し、追加のトラック台数を確保する必要が生じたと考えられます。
この結果を踏まえ、次は法規制による制限の強化によってトラック台数が増加する場合、荷役時間と配送指定時間枠を変化させた場合のトラック台数削減効果について検証を行います。
実験①では法規制による拘束時間への制約によって、一定の条件下でトラック台数が増加することを確認しました。ここからは、運用の工夫によって台数増加を抑制することが可能か検証します。具体的には、トラックドライバーの荷役時間の短縮や配送指定時間枠の拡張について検討を行います。
小規模な小売店への配送では、主にベタ積み=(パレット(荷役台)を使わず、荷物を直接トラックの床面に乗せていく積み方)の方式が採用されていますが、カゴ台車の導入によって荷下ろし作業の時間の短縮が期待されます。ここでは、荷積み・荷下ろし作業の効率化が、トラック台数に与える影響をシミュレーションします。
実験の進め方としては、実験①で検証した拘束時間上限13時間の制約を適用した状態で、表5に示した通り荷役時間を16%(1/6)ずつ短縮していき、それによる台数変化を確認しました(図9参照)。
図9より、荷役時間の短縮によって配送エリアサイズにより次のような特徴があることがわかります。
²今回シミュレーションを実施した環境では、計算実行時間の上限が設定されており、それが原因で計算の打ち切りが発生したため、台数が1台増加したと想定されますが、配送エリアサイズが60kmの場合と同様に、台数の変化はないと考えられます。
このように、荷役時間の短縮によって得られるトラック台数の削減効果には、配送エリアの広さによって感度が異なる結果となることがわかりました。
配送エリアが広く・店舗の間隔が大きい領域である250kmと300kmを比較すると、荷役時間の短縮による台数の削減効果が250kmでは16%から33%短縮で頭打ちとなっている一方で、300kmでは33%から50%短縮となるまで十分な削減効果が得られていることがわかります。
これは、荷役時間の短縮により捻出される余剰時間が、1店舗当たりの移動時間を上回るトラックが増えることで、複数の配送コースが統合される可能性が高くなったためと考えられます。ただ、配送エリアの広さや店舗の間隔のパターンによって、その上がり方に違いがあるとも考えられます。言い換えると、”配送ルートに余裕が生まれるトラック”の台数の増加の違いが影響を与えていると考えられます。
そこで、荷役時間が通常の場合における、余剰時間と1店舗当たりの移動時間の大小関係を比較し、余剰時間が移動時間を上回るトラックの台数の変化として見てみます。ここでは荷役時間の短縮により捻出される余剰時間を次の通り定義します。
余剰時間 = 待機時間 + 短縮された荷役時間(16%, 33%, 50%)
250kmと300kmの場合における荷役時間の短縮度合いと「余剰時間 > 1店舗当たりの移動時間」となるトラック台数が全体に占める割合の変化を見ると、250kmの場合では33%から50%短縮においては約10%しか増えていないことに対して、300kmでは約30%以上も増加していることがわかります。(図10左参照)。
「余剰時間 > 1店舗当たりの移動時間」となるトラック台数が増えることにより、必要なトラック台数が削減され、配送コース数も削減されることがわかります。それを示すプロットを図10右に示します。
このため、配送エリアが250kmの場合では33%から50%の短縮でも複数のコースを統合可能なトラック台数が増えなかったため、結果として台数の削減効果が望めなかったと考えられます。一方、配送エリアが300kmの場合では、複数のコースを統合できるトラック台数が増え続けていたため、台数削減効果が荷役時間の短縮に対して長く続く結果となりました。
このように荷役時間の短縮というパラメータに対して、配送エリアの状況に応じた台数削減の感度が異なる結果となることがわかりました。
次に、店舗の配送指定時間枠を緩和した場合の影響を検証します。
配送指定時間枠が長くなることで荷下ろしを行うタイミングの自由度が増し、前後の配送店舗の選択肢が増えることが想定されます。その結果より多くの店舗をまわるルートを選択することが可能になるため、台数削減効果が期待できます。
ここでは、実験①で検証したトラックドライバーの拘束時間上限を13時間に制限した条件のもと、配送指定時間枠を1.5時間から3.0時間まで0.5時間(30分)ずつ拡張しながら実験を行い、それぞれの時間枠におけるトラック台数変化の違いをプロットしました(図11参照)。
時間枠を変化させた場合の削減効果について、配送エリアサイズによって次のような特徴がみられました。
配送エリアサイズが100〜 250kmでは、エリアサイズが大きくなるにつれ時間枠拡張の効果が増大していますが、300kmでは効果が小さくなっています。実験②と同様に、300kmでは異なる傾向が確認されました。
この結果について、拘束時間の観点から考察します。前提として、配送指定時間枠を拡張することは、配送ルートを作成する上で選択肢を増やすことが期待できる効果となります。これは、荷役時間の短縮と異なり、トラックドライバーの労働時間には直接的な影響を及ぼしません。したがって、元々の配送計画において、拘束時間上限に対して余裕があるコースが少なければ、削減効果も限定的になると考えられます。
そのため、トラックドライバーの拘束時間を確認するため、配送エリアサイズ、時間枠ごとの分布を確認しました(図12参照)。
配送エリアサイズ250kmでは、配送指定時間枠の拡張によって、配送ルートをうまく組み替えることができ、拘束時間が短く非効率なルートを削減することが出来ていると考えられます。一方で配送エリアサイズ300kmの場合は拘束時間の分布に大きな変化は見られませんでした。
可能性としては、エリアサイズが非常に広い場合、店舗同士の間隔が遠くなっているため、運転に時間が掛かってしまうことから、時間枠の拡張によってさらに良いルートを得られる可能性が低くなっていると思われます。そのため、この違いが削減台数の違いとして現れていると考えられます。
法規制によるトラックドライバーの拘束時間の制約による影響、および、その状況下における荷役時間や配送指定時間枠を変化させた場合のトラック台数について、次の点をシミュレーションから見ることができました。
法規制によって想定されるトラック台数の増加に対して、荷役時間の短縮と荷主側の配送指定時間枠の拡張により、その影響の抑制が可能なことがシミュレーションよりわかりました。
しかし、実際に荷役時間の短縮や配送指定時間枠の拡張を実現するためには、機材の導入や荷主との交渉などに伴うコストが発生します。そのため、取りうる施策とその目標値を適切なバランスで設定することが重要です。荷役時間の短縮や配送指定時間枠の拡張を無計画に(安易に決めたXX%削減の目標設定を含む)行うのではなく、自社の配送先について、どの制約をどれほど変化させれば、どの程度の効果が期待できるかを事前に見積もりを行い、それを踏まえて、設備投資計画や顧客との価格交渉などの”コスト”と、ドライバーやチャーター費用等の配送コストの増加を天秤にかけながら、施策を決定する必要があります。
しかしながら、今回の検証で確認した通り、配送条件の変動によるコスト等のインパクトは単純には推定不能であることがわかりました。したがって、精度の高い意思決定をするためには、数理最適化等のデータ活用技術の活用が必要不可欠となります。
近年物流業務は2024年問題だけでなく、事業従事者の高齢化に伴うドライバーのなり手確保のための待遇改善への対応など、業務の要件が変動・厳格化する傾向にあります。物流機能を管理・実行している事業者は、今後次々に発生するであろう課題に対し、早期かつ正確にそのインパクトを見定めていき、適切なオペレーション戦略を描き、さらに適宜変更を加えていく必要があると思われます。そのためには、現状の把握や将来のシナリオプランニングを行う道具としてのデータ蓄積や、アルゴリズム・シミュレーターの構築がさらに重要性を増してくると考えられます。
今回の実験では、物流センターから複数の小売店へ荷物を届けるルート配送を前提としたシミュレーションを実施いたしました。そのため、今回の実験では考慮されなかったいくつかの観点が課題として存在します。その課題として考えられる項目の一部をご紹介します。
トラックなど車両での配送は、道路状況の影響で正確に移動時間を見積もることが難しい配送形態です。実際には、混雑時の遅延を想定し、余裕のある配送計画を立てるのではないかと考えられます。時間にシビアなエリアを担当する事業者においては、運行経路ごとに遅延のリスクを加味し、それに応じた荷下ろし待ち時間となるような設定を加えるなど、発展的な試行錯誤が必要となるかもしれません。
また、運転時間の短縮を実現することは、基本的に困難であるといえます。ただし、物流拠点の立地によっては、高速道路の利用が選択肢として挙がることでしょう。その際は、トラック台数の削減に限らず、有料道路の費用や燃料費等も考慮した総合的なコストの最小化を目指すことになります。最適化技術を用いた配送計画作成においては、有料道路の利用も加味した移動経路情報等、質の高いデータの取得が必要になってきます。
ルート配送ではない、拠点間の配送などでは、トラックが訪れる店舗の組み合わせを考えない一方で、別の課題も浮上してくることでしょう。例えば、実車率を高めるために往路と復路でそれぞれ異なる荷物を運ぶ場合に、最も生産性高く運ぶような運行スケジュールの立案があるかと思います。他にも、長距離運行において休憩時間をどのように取るかといったことも計画する必要があります。最適化技術を用いたシミュレーションによる定量分析や、効率的な配送計画作成の実現を目指していくことが企業競争力を高めることにつながるのではないでしょうか。
今回のシミュレーションでは、休憩時間を加味していません。ルート配送のシチュエーションでは、荷下ろし完了時に適宜休憩を取ることである程度法令に則った休憩時間の取得が可能と考えられ、明示的に制約を加えていません。厳密に制約として実現する場合には、技術的にもチャレンジングな課題となる可能性もあります。ルート配送の最適化に加え、いつ、どこで、どれだけ休憩すればよいのかを決めることになり、計算が非常に複雑になるためです。ビジネス課題の重要性と技術的な難易度のバランスをとり、実用性を重視した配送計画作成アルゴリズムを構築することがポイントです。
改善基準告示には、労働時間について、1か月間合計や2日間平均など、様々な粒度で基準が定められています。勤務終了後の休息時間にも言及されておりますが、この点については1日単位の配送計画シミュレーターでは検討することができません。これらはドライバーのシフトスケジューリングの問題として別に考える必要があります。アルゴリズムで解決できる粒度へ業務を分解した上で、業務の効率化を達成するためにこれらを再統合することが必要になるといえます。
今回の検証では、技術的な制約の関係上、トラックの運行回数を1運行に制限した上で実験を行っていました。そのため、配送エリアサイズが30〜 60kmの場合、トラックドライバーの拘束時間の制約による影響の大きさを確認することができませんでした。
しかし、実際にはそのような規模の配送エリアの場合、1台のトラックが複数回の運行を行うことで、今回の検証で算出した必要台数よりも少ない台数で配送していると想定されます。
そのような場合(1日内の複数回運行を許容した場合)を考慮した上での影響や変化についても定量的に評価を行うため、シミュレーションの高度化を通じた実験を継続する必要があると考えています。
今回は配送業務における時間の制約(トラックドライバーの拘束時間など)に着目し、シミュレーションを通じた定量的な評価を行ってきました。
しかし、配送業務において付随する制約としては、次のような物量や地理的な制約も考えられます。
これらの制約の違いに対する影響の大きさに対しても、シミュレーションを通じて定量的に評価、検証を行う必要があると考えております。
また、次のようなテーマに対しても、今回使用したようなシミュレーションを通じて、検証に取り組んでまいります。
なお、弊社における配送計画作成アルゴリズムを用いた業務効率を改善した実績の詳細や、アルゴリズムを現場に実装していく際に障壁となり得るポイントにつきましては、次の記事をご覧ください。
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