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生成AIとは、深層学習や機械学習の手法を駆使して、人が作り出すようなテキスト、画像、音楽、ビデオなどのデジタルコンテンツを自動で生成する技術です。
この技術の核心は、大量のデータからパターンを学習し、それを基に新しい、オリジナルのコンテンツを創出する能力にあります。生成AIは、単に既存のデータをコピーするのではなく、学習したデータを基にして新しい創作物を生み出します。
これにより多様なコンテンツ生成が可能となり、クリエイティブな分野だけでなく、ニュース記事の作成、ゲームの環境設計、さらには広告の制作など、幅広い応用が期待されています。この技術は、人間の創造性を模倣し、拡張することで、ビジネスや芸術の新たな地平を切り拓く可能性を秘めています。
本記事では、そんな生成AIの基本概念、仕組み、そしてその可能性と課題について、詳しく解説していきます。
※以下の動画では、生成AIの意味と概要を「1分」で解説しています。記事を読む時間がない方は動画をご覧ください。
生成AI(または生成系AI)とは、「Generative AI:ジェネレーティブAI」とも呼ばれ、学習済みのデータを活用してオリジナルデータを生成するAIを指します。読み方は「セイセイエーアイ」。
近年では生成AIが世界中で注目を集めており、テキスト生成AIの「ChatGPT」や画像生成AIの「DALL-E 」をはじめとした多種多様な生成AIがビジネスシーンやDX・日常生活で活用され始めています。
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生成AIが新しいコンテンツを生み出すためには、大量の学習データを与える必要があります。生成AIに活用されているデータ分析手法は主に「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる機械学習の手法であり、与えられた学習データをもとにAI自身が最善の回答を探し出していくことによって「0から1を生み出す」ことができ、より高度なコンテンツを創造できるようになります。
これまでの機械学習では「教師あり学習」と呼ばれる手法が主に使われていたので、人間がAIに対して明確な回答をあらかじめ提示し、AIはその回答を記憶・知識化することで「予測」できるようになっていました。
しかし、ディープラーニングを活用することによってAIは「自ら」学習を重ねられるようになり、あらかじめ学習データを与えずともAI自身がオリジナルコンテンツを生み出せるようになりました。これが「生成AI」誕生の経緯です。
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「AI」と「生成AI」の違いは、一言で表現すると「オリジナルコンテンツ創造の可否」にあります。
従来のAIは「学習済みのデータの中から適切な回答を探して提示する性質」を持っていましたが、生成AIは「0から1を生み出す」性質が特徴的です。すでに学習したデータを参考に予測した答えを返すのではなく、AI自身が自ら学習し続け人間が与えていない情報やデータさえもインプットし、新たなアウトプットを人間に返すことができます。
生成AIは「AIが考えた新たな知識を人間が受け取る仕組み」ともいえるでしょう。
これまで0から1を生み出す作業は人間にしかできないものでしたが、生成AIの登場によって「アイデア創出」さえもAIに任せられるようになり、より創造性の高い作業も自動化できるようになりました。
ビジネスシーンで活用される例も増えてきており、多くの企業や組織が生成AIを日々の業務に取り入れています。
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また、「AI」は人工知能そのものを意味し、「人間が行う知能的な作業を代替するためのプログラムを作る技術」を指します。つまり「AI」は総称であり、生成AIはAIの一種ということになります。
加えて、機械学習はAIの知能を伸ばすための学習方法を指す言葉です。AIは機械学習を行うことによって新たな知識を身につけて成長し、より複雑な処理を行えるようになります。
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「そもそもAIの定義が曖昧で、全体像を理解できていない」という方は、事前に「AI」の概要を俯瞰的に把握した方がいいかもしれません。以下の記事ではAIについて分かりやすく解説しているので、あわせてご覧ください。
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補足ですが、特定のタスクに特化したAIは「弱いAI」と呼ばれ、一方で人間の知性と同等かそれ以上の汎用的な知的能力・自己意識を持つAIは「強いAI」と呼ばれます。特定のタスクに特化する生成AIはまだまだ弱いAIではありますが、今も目まぐるしい変革を遂げている生成AIはいずれ、強いAIに分類される時が来るかもしれません。
強いAIの代表格である「AGI(汎用人工知能)」と呼ばれる人工知能についてもトレンドになりつつあるので、以下の記事も参考にしながらAGIの概念についてもあわせて押さえておくとよいでしょう。現時点ではAGIはまだ出現されていないですが、2045年にはシンギュラリティ(技術的特異点)が発生し、AIが社会に予測不可能な影響を及ぼすと仮説が一部なされています。
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生成AIには、テキスト生成や画像生成、動画生成、音声生成などさまざまな種類があります。それぞれの性質に適した活用方法を選択することで、これまで人間の手で行っていた作業を大幅に効率化したり、思いつかなかったアイデアを形にしたりすることが可能になります。
ここでは、生成AIが消費者や企業にもたらす価値を解説します。
テキスト生成AIは、フォームに入力した「プロンプト*」と呼ばれる文章を送信すると、自動的にテキストが生成されるAIのことです。OpenAIが開発した「ChatGPT」やGoogleが開発した「Bard」が該当します。
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テキスト生成AIを活用すると、長文の要約やキャッチコピーのアイデア創出、プログラミングのコード生成などさまざまな作業を自動化できます。
*プロンプトについて:ChatGPTなどを始めとするLLMには通常の会話のように指示を出すことができます。そのような自然言語による指示を「プロンプト」と呼び、LLMをより上手に使うための”良い”プロンプトの書き方が、世界中で日々報告されています。そのようなプロンプトの構成の仕方は「プロンプトエンジニアリング」と呼ばれています。
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画像生成AIは、テキストで指示するだけで、イメージに近いオリジナルの画像を生成できるAIです。世界的に利用されている画像生成AIとしては、「Stable Diffusion」や「Midjourney」、「DALL·E 」などが有名です。
例えば2023年9月にOpenAIが開発した画像生成AI「DALL·E 3」では、テキストでプロンプト(テキストによる指示)を送ると自動で画像を生成します。以下の画像は「生成AIを象徴する横長の画像を制作してください」と指示して生成された画像です。
動画生成AIは、テキストで指示したイメージに近い動画を生成するAIです。動画生成AIはAIの中でも開発の難易度が高いといわれていますが、2023年3月にはアメリカのRunway社から「Gen-2」と呼ばれる動画生成AIが登場しており、クオリティの高い動画を生成できるようになっています。
現時点では数秒ほどの短い動画を生成することができる程度にとどまっていますが、技術が進歩すれば、さらに長尺の動画も生成できるようになると考えられます。将来的には、簡単なプロモーションビデオの作成などにも活用できる可能性があります。
音声生成AIは、音声入力やテキスト入力によって新たな音声を生成するAIです。たとえば、ある一人の声を大量に学習させると、その人の声質と全く同じ声で、さまざまな文章を自由に話す音声を生成することが可能になります。
音声生成AIを活用することで、本人の声を収録せずに任意のナレーションを読み上げたり、アバターに手軽に音声を付加したりできます。
生成AIに用いられるモデルとして、GPTやVAE、GAN、拡散モデルなどがあります。これらのモデルはそれぞれ画像の生成方法が異なり、用途も少しずつ違っています。
テキスト生成AIなどの自然言語処理にはGPTが活用されています。画像生成AIにおいては、複雑性の高いデータ生成にはVAE、高解像度な画像の生成にはGANや拡散モデルが使用される傾向にあります。
ここでは、代表的な4種類の生成モデルについて解説します。
GPTとは、アメリカのOpenAIが開発した自然言語処理モデルです。2023年6月時点では「GPT-4」まで公開されており、非常に高い言語処理能力を有しています。
GPTが活用されている最も著名なサービスは、同社が開発している「ChatGPT」です。GPTの高精度な自然言語処理を活用して、人間が書いているかのような自然な文章を出力することが可能です。
近年ではMicrosoft社の検索エンジン「bing」と提携し、検索エンジン上でGPT-4を融合したAIを使用することもできるようになっています。
VAE(Variational Auto-Encoder)は画像生成AIに採用されている生成モデルの一つです。「変分オートエンコーダー」というディープラーニング技術が活用されています。AIに与えた学習用データの特徴を抽出し、そのデータの性質を持った新たな画像を生成できる点が特徴です。
たとえば、あるイラストレーターの作品を大量に学習させると、VAEはそのイラストレーターの作品の絵柄を持った新たなイラストを生成できるようになります。著作権侵害の懸念や問題はありますが、利便性の高いモデルです。
GAN(Generative Adversarial Networks)も画像生成AIに活用される生成モデルですが、VAEとは画像を生成する際の流れが異なります。GANは「Generator(生成器)」と「Discriminator(識別器)」の2種類のネットワーク構造を競わせることで、より高度な画像を生成する仕組みです。
ランダムに生成された画像であるGeneratorは、学習用の正しい画像であるDiscriminatorに近づこうとして精度を高めていきます。何度も繰り返しGeneratorとDiscriminatorを比較することで、解像度の高い画像を生成します。
拡散モデルはGANの進化系ともいえるモデルです。
学習用の画像に追加したノイズを徐々に取り除き、もとになる画像を復元することで画像生成のプロセスを学習していきます。ノイズを除去した後の画像を元画像にできるだけ近づけるプロセスを何度も繰り返すことで、より高精度な画像を生成できます。
後述する画像生成AIの「DALL-E 3」など、多くの画像生成AIサービスにも拡散モデルが活用されています。
生成AIを活用したサービス例や技術は、次のとおりさまざまに存在します。
これらの詳細を紹介します。
ChatGPTとは、OpenAIが開発したテキスト生成AIです。同社が開発した自然言語処理モデルの「GPTシリーズ」が組み込まれており、2023年6月現在は無料版に「GPT-3.5」、有料版のChatGPT Plusに「GPT-4」が活用されています。
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テキストボックスに任意の質問(プロンプト)を入力して送信すると、ChatGPTが最適な回答を考案し、自動的に返信してくれるという仕組みです。日本語にも対応しています。
GPT-4の言語処理精度は非常に高く、アメリカの司法試験に合格できるほどの知能を有しています。
ChatGPTの使い方や活用事例について知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
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ChatGPTとは?使い方・始め方・仕組み・最新の活用事例を一挙ご紹介! | DOORS DX
また、ChatGPTは「特定の領域やタスクに特化させる」こともできます。例えば、ネットには載っていない非公開情報である「社内文書」は、通常のChatGPTでは知り得ない情報になりますが、「ファインチューニング」と呼ばれる技術を用いることで、社内文書に対するデータが蓄積されたChatGPTを生み出すことができます。
詳細は以下の記事で書かれています。
【関連記事】
社内文書に特化したChatGPT ファインチューニング実践編
【参考】ChatGPT
Geminiは、2023年12月6日に発表されたマルチモーダル生成AIモデルです。従来の生成AIモデルがテキストや画像などの単一のデータタイプを扱うのに対し、Geminiはテキスト、画像、音声、動画、コードなど複数のデータタイプを理解し、それらを組み合わせて操作することができます。
Gemini は Google と DeepMind によって共同開発された最先端のマルチモーダルAIモデルであり、多種多様なデータモダリティ(テキスト、画像、音声、動画)を横断的に学習し、それぞれに対する高度な理解力と推論能力を持ち合わせています。学習の段階からネイティブにマルチモーダルな学習が行われているという点は、これまでの生成AIモデルにはなかったユニークな点であると思われます。
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Google の新たな生成AIモデル Gemini を技術的観点で解説
【参考】Gemini
数多くのクリエイティブツールを提供されているAdobeでは、生成AIを活用した画像生成サービス「Firefly」がリリースされました。
AIによる画像生成サービスは他にも複数存在しますが、一般的な画像生成AIは「データの学習元が曖昧」であることがしばしば問題視されています。そのため、例えば著作権問題に抵触する恐れのある画像が生成されるリスクがあります。
しかしFireflyで使用されるクリエイティブは、Adobeのストックフォトである「Adobe Stock」から抽出しているため安全にサービスを利用することができます。
【参考】Adobe Firefly
ノンコードで直感的に制作できるオンライングラフィックデザインツール「Canva」では、生成AIを活用した拡張機能が次々とリリースされています。
といった機能が実装されており、利用者があまり手を動かさずともクリエイティブやコンテンツを制作できるようになっています。
活用方法の一例として、筆者も時折Canvaを利用することがありますが、一からの制作が難しい場合は「生成AIによるアウトプットを叩きとしながらインスピレーションを養ってみる」というような活用を試しています。
【参考】生成AI – Canva
2023年5月、Googleによる新しい検索機能「SGE(Search Generative Experience)」が発表され、現在では海外国内ともにGoogle検索上でSGEが試験的に運用されています。
SGEは「生成AIによる検索体験」で、Googleで検索されたキーワードの検索意図に沿った回答をGoogleが自動で生成する機能です。従来では、検索のヒントになりそうな情報がまとめられたウェブサイトを検索者が発見し、自ら情報を取得しに向かわなければなりませんでしたが、SGEはその「情報の取捨選択による負担」を解消することになります。
Midjourneyは、現在の生成AIブームの火付け役ともいえる画像生成AIです。音声通話アプリの「Discord」と連携して使用でき、指示したプロンプトに応じて自動的に画像を生成することができます。
日本では2022年にブームが到来し、まだ登場したばかりだった画像生成AIの利便性を広く知らしめるきっかけとなりました。Midjourneyを開発したのはデビット・ホルツ氏が立ち上げた研究チームであり、DALL·E 3と並んで画像生成AIの先駆けともいえるサービスです。
【参考】Midjourney
テキスト生成・画像生成・動画生成・音声生成を担う生成AIの活用例は次のとおりです。
アイデア次第でさまざまな応用が可能な生成AI。業務効率化やクリエイティブ業務のサポートなど多様な業務に活かせます。
※生成AIやLLMの本格的なビジネス導入・適用を考えている方は、以下の記事もあわせて参考にするとより専門的な理解を深められます。
【関連記事】
生成AI・LLMをビジネス適用するための検討ポイントおよびユースケース
弊社ブレインパッドでは、生成AIやLLMに関する研究プロジェクトが立ち上げられ、そこでChatGPT APIを応用した開発がいくつか行われています。その中の一つに「社内データについて質問すると回答してくれるSlack BotおよびWebアプリケーション」があり、生成AIをビジネス活用した事例として紹介させてください。
例えば調べものをしたいときに社内データへアクセスしようとする場合、データ量が多ければ多いほど、調べたい情報へのアクセスが難しくなりますよね。そこで「調べたいこと」を質問すると、必要な情報を自動で洗い出し・アウトプットされる仕組みを生成AIで開発しました。
【関連記事】
ChatGPT APIで社内データについて回答するSlack BotとWebアプリを作った
このようにブレインパッドのPlatinum Data Blogでは、LLM研究プロジェクトの活動の一環として、生成AIの技術やビジネス実装に関するブログ記事の執筆を積極的に行っています。生成AI・LLMを用いたより専門的な技術や開発に関する情報にキャッチアップできますので、よろしければご覧ください。
【関連記事】
生成AI カテゴリーの記事一覧 – Platinum Data Blog by BrainPad
テキスト生成AIを活用すると、文章の要約が可能です。要約したい文章を入力して「この文章を要約してください」と指示するだけで、長文の要点をくみ取ってコンパクトな文章にまとめてもらえるので、会議資料の作成時などに重宝します。
また、Webサイトに掲載されているニュース記事などの要約を依頼して要点を押さえるなど、情報収集に活用できる側面もあります。ただし、出力された情報が誤っていないかどうかは慎重に検証することが大切です。
テキスト生成AIは、新たなアイデアを求めているときにも役立ちます。商品やサービスのキャッチコピーが思い浮かばないときに「○○の商品につけるキャッチコピーのアイデアが欲しい」と指示するだけで、軽く手直しすれば使えるようなキャッチコピーの候補をいくつか提示してくれます。
これまでは自分で考えなければならなかったアイデアも、文章生成によって簡単に生成できるため、クリエイティブな業務にかかる時間を短縮できます。
画像生成AIを使うと、Webサイト用の背景素材を作成することもできます。Webサイトのイメージに近い内容をテキストで指示すると、すぐに使える背景素材を生み出せます。
2023年6月時点では、多くの画像生成AIにおいて、著作権を侵害していない画像であれば自由に自身のコンテンツに使用することが可能です。背景素材を作成する時間を短縮して、コンテンツの内容を充実させるために活用すると良いでしょう。
同じ要領で、SNS用のオリジナルアイコンなども生成できます。
テキスト生成AIのChatGPTなどでは、プログラミングのコード生成やデバッグを行うことも可能です。コードを新たに生成する際は、生成したいコードの内容をできるだけ詳細に指示すると、コピー&ペーストするだけですぐに使用できる精度のコードが創出されます。
また、記述済みのコードが動作しないときは、「このコードの間違っている部分を教えてほしい」と指示するだけでコードの誤っている部分を指摘してくれるため、デバッグにも役立ちます。
文字起こしAIに会議の内容を録音した音声データを入力すると、音声データの内容を自動的にテキスト化することができます。これまでは音声データを聞き返しながら手動で文字起こしを行っていた作業を自動化できるため、議事録作成などの手間がかかる作業の効率化につながります。
会議が頻繁に開催される職場など、テキスト化しなければならない音声を大量に扱っている現場において特に重宝するでしょう。
生成AIの活用余地がある領域は
の二点。それぞれ具体的にどのような活用シーンを指すのか、以下で解説します。
生成AIの主なビジネス活用領域の一つが「コミュニケーション領域」です。
生成AIによって今後、コミュニケーションが関わるビジネス領域は特に恩恵を受けることになるでしょう。
例えば
など、社内外問わず、人間とのコミュニケーションが必須とされている領域です。これらは生成AIの活用によって、フィジカルリソースの軽減・解消を実現できる可能性があります。
ビジネスシーンにおいてコミュニケーションが生じる機会は無数にあると思いますが、そこには生成AIの活用余地が存在すると言えるでしょう。
生成AIのもう一つのビジネス活用領域が「創造領域」です。
これまで人間の手によって開発・制作されてきたものが、今後は生成AIによって生み出せるようになると言われています。
など。生成AIは現在「簡単な画像が作れる」「文章が要約できる」といった「業務改善・業務効率化レベル」の切り口で語られることが多いですが、あらゆるビジネス領域におけるより高度な創造を担うポテンシャルが、生成AIには秘められています。
例えば、富士通株式会社と国立研究開発法人理化学研究所は、共同研究によってAI創薬技術を2023年1月に開発。これにより、従来の手順に比べて10倍以上高速に、大量の電子顕微鏡画像からタンパク質の形態と構造変化の推定が可能になりました。
【参考】富士通と理化学研究所、独自の生成AIに基づく創薬技術を開発 富士通と理化学研究所、独自の生成AIに基づく創薬技術を開発
生成AIに関する概要をここまで解説しましたが、ここからは生成AIをビジネスに取り入れた実際の活用事例について紹介します。
まずは日本国内における生成AI活用事例から見ていきましょう。
製品や従業員の満足度調査では、選択式と自由記述のアンケートが定番です。選択式の回答は傾向を数値化できる一方、自由記述の回答は全体像の理解が非常に厄介です。東京電力エナジーパートナー株式会社様は、人財戦略・育成推進室が組織診断アンケートの自由記述欄の解析に苦労していました。
こういった大変なプロセスを、LLMを通じて業務効率を飛躍的に向上させるべく取り組み続けています。当事例の詳細は以下の記事からご覧いただけます。
【関連記事】
ChatGPTで記述式アンケート解析がゼロコストに|LLMを経営効果に変えた!東京電力エナジーパートナーの生成AI活用事例
当メディア「DOORS DX」には、DX・データ活用や生成AIに関するナレッジ・事例をまとめた約500記事が掲載されていますが、記事数が膨大な分、必要な情報へのリーチが煩雑になりつつあります。
そこでそれらすべての記事をLLMに学習させ、当メディアにファインチューニングしたChatGPTを実装しました。※今ご覧になっている右下に、チャットボットのアイコンが露出されていると思います。
などが可能で、新しい情報リサーチ体験を提供しています。
ヤフー株式会社の運営するフリマアプリ「PayPayフリマ」では、OpenAIの生成AIを取り入れたサポート機能(β版)を提供開始しています。ヤフー株式会社のサービスにおいて、OpenAIのAPIを初めて利用した機能です。
フリマアプリにおける一つのハードルとして「商品出品時の説明文作成」が挙げられます。どのような商品説明が適切なのかを都度考えることは、それなりの時間を要することになります。
そこで、出品時に商品名とカテゴリを追加することで生成AIが自動で商品説明文が作成される機能を実装しました。これにより、あまり時間をかけずに商品出品ができるようになります。
【参考】PayPayフリマ、出品時の商品説明文の作成を生成AIがサポートする機能を提供開始
2020年から3度にわたって「DX銘柄」に選定される等、データ活用推進を高く評価されている、りそなホールディングス。生成AI、LLM活用に関してもいち早く取り組みを開始し、すでに独自の活用法を見出しつつあります。
2023年8月に、ブレインパッドとともに共同研究プロジェクトを開始。さまざまなディスカッションを経て、1段階目では必要な準備物と役割分担整理や取り組み方針の決定、またLLMテーマの決定を行いました。2段階目を本格的な取り組み開始とし、りそなホールディングスのデータサイエンティストが、LLMを活用して業務適用を検討できる人材にアップデートできるよう、ブレインパッドとともに取り組みを進めています。
【関連記事】
銀行業務での適応領域を探索。りそな×ブレインパッドのLLM共同研究プロジェクトで見えてきた世界観とは?
株式会社ベルシステム24はコンタクトセンタービジネスの変革に向け、日本マイクロソフト株式会社とGoogle Cloudの生成AIを活用した、コンタクトセンター業務の実証実験を各企業と共同で実施。結果的に、応対1件あたりにかかる処理時間の大幅な削減が実証できました。
当実証実験を通じ、「ヒト」と「AI」の連携による「ほぼ自動化」を実現するハイブリッド型のコンタクトセンターオートメーションの構築を推進しています。生成AIによってコンタクトセンターの業務効率化を図り、労働人口の減少に伴うアウトソーシングニーズの吸収にも繋がる取り組みになります。
【参考】ベルシステム24、日本マイクロソフトとGoogle Cloudの生成AIを活用したコンタクトセンター業務の実証実験を完了、事業化へ
旭鉄工株式会社では、現場で働く従業員によって蓄積された何万というノウハウやアイデア・カイゼンをChatGPTに学習させ、会話形式でそれらをインプット・アウトプットできるようにしました。
例えば従業員が『電力削減の事例を教えて』と聞けば、ChatGPTが膨大なカイゼンのアイデアリストから、その従業員の担当する部門や業務に最適な事例を提示してくれるようなイメージです。
【参考】製造業での活用 〜カイゼンノウハウは生成AIに聞け!〜
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生成AIで変わる働き方を議論する「Work Wonders Conference」SESSION3:こんな使い方あったんだ「生成AI活用ショーケース」
ここからは、生成AIがビジネスに活用された海外事例を紹介します。活用が進む海外の活用事例を知ることで、自社ビジネスへの応用イメージも膨らむようになると思います。
アメリカのスーパーマーケットチェーンであるウォルマートは、人工知能を搭載したソフトウェア(チャットボット)を導入し、自動交渉AIが実現されています。このAI活用を通じて、人間が数週間ないし数ヶ月を要していた商談を数日で行えるようになりました。
ウォルマートは10万を超えるサプライヤーと取引をしていますが、膨大な数ゆえに全てのサプライヤーと交渉できないことが課題として挙げられています。かと言って、交渉人員となるバイヤー人材の増員はコストの膨張になるため、良策とは言えません。
以上のような背景から自動交渉AIが打ち手として検討され、実現に至りました。
【参考】ウォルマートは調達交渉の自動化をどのように実現したか
ドイツのテクノロジー企業であるシーメンスはマイクロソフト社と共同で、生成AIに基づいたアプリケーションの開発を開始しました。このアプリケーションによって工業組織のイノベーション・効率化を図る見込みです。
工業組織には設計エンジニアや現場作業員などさまざまな部署が存在しますが、例えば製造作業員が、生成AIが搭載されたアプリケーションに自然な言語で問いかけるだけで、製品の設計や品質に関する懸念事項がまとめられたレポートが自動でアウトプットされることで、
各部署間における連携やフィードバックの共有がより迅速に行われることを目指しています。
【参考】シーメンスとマイクロソフト、生成型AIで工業生産性向上を目指すと宣言
アメリカのオンライン旅行会社であるエクスペディアでは、自社サービスにOpenAIのプラグインを導入しました。一つは「ChatGPTを通じたシームレスな予約体験」を可能にするプラグイン、もう一つは「アプリケーション内での会話を通じた多様な旅行プランニング」を可能にするプラグイン。いずれも3〜4週間ほどで実装されました。
旅行業界におけるパーソナライゼーションをさらに促しうる生成AIではありますが、導入の初期段階ではまだまだ課題も多く、さらなる改善が求められているようです。
ここからは、生成AIがこれからの企業や組織にもたらす変化をいくつか紹介します。なお、ここで紹介する内容は、生成AIのビジネス活用や働き方の未来を議論する「Work Wonders Conference」で解説された内容をもとに記載しています。
インクルージョン・ジャパンのシナリオ・プランニングによると、生成AIを導入により以下のような経営パターンが誕生しうると言われています。
特に3点目や4点目は近未来的な組織のあり方のように思います。現在はAIをいかにうまく「使いこなすか」に焦点が当てられがちですが、数十年後には「AIの意思決定に従う」「AIが経営者を代替する」ことが当たり前になっているかもしれません。
【出典記事】
生成AIで変わる働き方を議論する「Work Wonders Conference」SESSION1:生成AIで経営が変わる「未来の組織と経営」
生成AIが浸透することで、組織は以下の4象限に分類されると言われています。
今は既存業務の「効率化」や、社員業務の「支援(サポート)」という役割を生成AIに担わせている使い方がまだまだメジャーだと思います。しかし今後は、効率や支援にとどまらず、業務「刷新」や社員の「代替」に繋がってくるでしょう。
1に関連した事例として、日精食品では、2023年7月時点で、グループ外資も含めて4,800人が実際に営業領域で年442時間(労働時間の22%)を削減しました。今後、大半の社員の既存業務の効率化が望める可能性が高いといえます。
2の事例では、既存業務の効率化がある程度望めるクリエイターの職種では、社員の業務の代替も可能です。たとえば、全体的な設計はできなくても一部を任せる、社員が不在な場合でもある程度の精度の成果物を出すことも不可能ではありません。プロンプトや生成AIを組み合わせていくことによって、社員の業務代替も可能となるでしょう。
3に関連した事例では、旭鉄鋼株式会社の「カイゼン」指導(業務見直しによって改善を行っていく考え方)が代表的です。従来では、他の社員を見て学ぶ方法でしかなかったものの、生成AIによって行っています。
最も実現が難しい4の事例にふれると、経営者、管理職、コンサルタントのコピーを生成AIによる生成ができるようになりました。クローンAIを目指すDelpiは、YouTubeやテキスト、文書から原則や思考パターンを分析し、ウォーレン・バフェット氏やジェフ・ベゾス氏などのクローン化を済ませています。
それぞれの難易度はあるものの、変化に対応しなければ時代に淘汰去れる可能性があるといえるでしょう。
【出典記事】
生成AIで変わる働き方を議論する「Work Wonders Conference」SESSION1:生成AIで経営が変わる「未来の組織と経営」
インクルージョン・ジャパンが上場企業184社・2,724名に実施した、「生成AIの活用状況」に関するアンケートの結果を見てみると、約80%は「利用を推進している」スタンスであることが分かりました。
生成AIがリスクなく適切に利用されるよう、生成AI利用に関するルールが設けられている企業もあるようですが、全体的に「生成AIの活用に関しては前向き」であると言えるでしょう。
【関連記事】
生成AIで変わる働き方を議論する「Work Wonders Conference」SESSION2:上場企業184社に聞いた「生成AI活用のリアル」
生成AIの現状の課題や危険性として、事実の真偽性や著作権問題、情報漏洩、サイバー攻撃への悪用などが考えられます。生成AIは便利なツールですが、危険性に注意して使用しなければ、思わぬトラブルに見舞われる可能性もあります。
法的懸念やガバナンス面の観点で見たとき、生成AIの利便性の裏には課題や危険性も多く存在するのです。
そこでここからは、現在考えられる生成AIの4つの課題や危険性について解説します。
※実際に弊社ブレインパッドでは、生成AIを安全かつ効果的に活用できるよう、社内ガイドライン策定におけるプロセスやポイントを押さえています。社内で誤った使い方をしてしまわぬよう、以下の記事も参考にしていただけると幸いです。
【関連記事】
生成AI・LLMの社内活用におけるガイドライン策定のプロセスとポイント
生成AIを活用して出力された情報は、必ずしも正しいとは限らないため、事実の真偽性を慎重に必ず確かめることが大切です。
特に、最近ではビジネスに活用される機会も増えてきているChatGPTの無料版では、2021年9月までの情報を学習しており、最新の情報が反映されていないため、近年の情報やリアルタイム性の高い情報を回答することができません。
真偽性を確かめずに出力された情報をそのまま使用すると、自身の信頼性を大きく損なうおそれもあるため、十分な注意が必要です。
画像生成AIや音声生成AIにおいては、著作権問題に発展する懸念もあります。
たとえば、画像生成AIなら、有名イラストレーターの作品をAIに多数学習させることで、イラストレーターの絵柄とそっくりなイラストを生成できてしまうのです。結果的に学習元となったイラストレーターの著作権を侵害するおそれがあるだけでなく、イラストレーターの知らないところで自身の作品であるかのようなイラストが拡散されてしまい、風評被害を受ける可能性もあります。
入力する情報によっては、情報漏洩やセキュリティ上の懸念もあります。
たとえば、テキスト生成AIのChatGPTに社員の個人情報を入力すると、ChatGPTは入力された情報をデータベースに記録します。その後、他のユーザーがChatGPTに質問した際に、何らかのタイミングで記録された個人情報が表示されてしまう可能性があるのです。
また、自社の会議用資料を作成する目的でChatGPTに文章の要約を指示すると、その文章の内容が記憶され、他のユーザーへの回答として表示されてしまうおそれもあります。
テキスト生成AIは、新たな文章を自動的に生成することに長けています。その性質を悪用して、フィッシングメールの文面を生成したり、サイバー攻撃用のプログラムのコードを生成したりする目的で使われる可能性もあります。
2023年6月時点、生成しようとしている文面やコードが悪意を持ったものであるかどうかは、生成AI自身が判断できません。そのため、利用者側の意識次第でサイバー攻撃へ悪用されてしまい、サイバー攻撃の激化につながることも考えられます。
生成AIは、人の業務を支援する業務効率化、業務刷新化のほかにも、そもそも人自体を代替する可能性も大いにあります。例えば、とある企業では大量のログデータをChatGPTに学習させ、もう一人の経営者を作り経営戦略を立案させているというケースもあります。
生成AI活用がどんどん進むと人の代替、つまり「経営者はいらない」「現場社員をリストラする」といった議論も増えてきそうです。人の価値、能力をどう発揮すべきかをより考える必要があります。
補足として、生成AIができないこと・苦手なこともご紹介します。以下に挙げた項目は、生成AIで制御することはできません。
人間のように、感情の理解や解釈・表現に関する能力はありません。学習したデータからパターンを見いだし、そこから感情を「予測」できる可能性はあるかもしれませんが、人間独特の感情を抱くようなことはありません。
生成AIはオリジナルコンテンツを生成できますが、人間のような創造性や直感を持ち合わせていません。あくまでこちらのプロンプト通りに動く人工知能であり、「指示せずともその場に置かれた状況に対して臨機応変なアウトプットを返してくれる」ようなことはありません。
ただし、こちらも最近では「東京都同情塔」(新潮12月号)で芥川賞を受賞した作家・九段理江さんが執筆活動の一部で、生成AIを活用していると話したことが注目されました。
苦手と思われた当領域でも生成AIがどんどん活用されてきており、今後の動向に注目です。
生成AIには感情に関する能力がないので、同様に「倫理的判断」「道徳的判断」も不可能です。倫理や道徳が伴うタスクの処理・意思決定を生成AIが担うことは難しいと言えます。
生成AI台頭により、「失われる仕事」「誕生される仕事」が徐々にすみ分けされる展開が予想されます。そんな現代を生き抜くためのビジネスマンが身に付けるべきスキルや、AIに淘汰されない人材育成・事業変革を実現するための企業のあり方についてまとめます。
参考:生成AIに淘汰されない人材スキルと組織のあり方を経済産業省が解説
AIが稼働することで、モノを形にするための技術は今後も著しく発達していくことでしょう。そうすると、AIを用いる人間に求められるのは「クリエイティビティ(創造性や発想力)」となります。
このクリエイティビティをさらに掘り下げると、言語化の能力や対話力、分析する力、問いを立てる力、仮説を立て、検証する力と表現できます。生成AIによるビジネス変革が進むにつれて、業務の自動化が進み、人間に求められる役割や仕事のやり方が徐々に移ろい、今後は人間にしかできない・より創造性の高い役割が増えていくと言われています。
AI活用を事業や経営に取り入れるには、すなわちAI活用による変化を受け入れる組織の文化醸成が必要条件であると言えます。変化が起こりにくい組織ほど、「新しい習慣を取り入れることに抵抗を抱く」体質から抜け出せず、結果的に先端技術へのキャッチアップに手間取ってしまうことになります。
すなわち「失敗を許容する文化」が、今後は求められることになります。生成AIの活用もDXも、試行錯誤なくては実現することはできません。失敗は当然として受け入れ、それを糧(かて)に成長しようという理念が今後は重要になるでしょう。
LLM、および生成AIに関する技術革新は日々進んでおり、それを取り巻く社会情勢もめまぐるしく変化しています。
これらの技術の社会実装に向けた取り組みや企業への支援を強化するため、ブレインパッドではLLM/生成AIに関する技術調査プロジェクトが進行しており、最新トレンドの継続的なキャッチアップを行っています。
ここではプロジェクトの勉強会から、ビジネスに関わりの深いLLM・生成AI最新トピックを取り上げ、AI活用の現場に携わるコンサルタントが解説した連載記事をご紹介します。
ブレインパッドでは、生成AIやLLMに関する研究プロジェクトが立ち上げられ、データサイエンティストやエンジニアが定期的に技術動向や研究内容を発信しています。DX推進のパートナーとしてブレインパッドが継続してお客様に価値を提供していくためには、生成AIやLLMの知見を着実に獲得し、社会実装に向けた検証ができる体制を整えることが必要であると判断し、本プロジェクトが立ち上がる運びとなりました。活動内容は以下の通りです。
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LLM/Generative AIに関する研究プロジェクトを立ち上げます
ここで紹介している記事は、主に生成AIやLLMを応用しながらプロダクト開発・サービス提供に寄与する技術者向けに作られています。ビジネス領域だけでなく、技術領域における情報がまとめられているので、あわせて参考にしてみてください。
生成AIやLLMに関する技術動向をまとめた情報を、ここではご紹介しています。
生成AIやLLMの技術を実際に用い、検証結果や応用結果についてまとめた記事が以下になります。
生成AIをビジネスに応用しようとする動きはかなり増えてきています。一方で、生成AIのビジネス活用にはドメイン(特定の業界や分野)に特化した生成AI・LLMの開発が不可欠です。
例えば生成AIを用いたカスタマーチャットボットや法律文書自動生成には、それぞれの専門領域を学習した生成AIを生み出さなければならないでしょう。
また、ドメインに特化したLLMの運用に先立って信頼性の評価も極めて重要です。そのためには専門用語理解、タスク遂行能力、倫理的観点などを正確に測定できる独自の評価フレームワークの構築が求められます。
ところが、昨今の生成AI技術の進化の速さもあり、評価フレームワーク構築について議論が追い付けていないのが現状です。正確な評価の欠如は、AIによる提案や意思決定補助が人間のニーズや倫理基準と乖離し、重大なインシデントを引き起こすリスクとなります。したがって
などについて、あらかじめ知っておく必要があるでしょう。
ChatGPTのように一般ユーザーが利用できるLLMサービスの基盤モデルは、法律や医療などのドメインに特化していないため、専門知識を要するタスクには対応できません。そのためビジネス活用においては、特定ドメインに特化したLLMが必要となります。
特定ドメインに特化したLLMを実現する手法はいくつかあり、かつドメイン特化したLLMの成功には複数のKPIを基にした多面的な評価が欠かせません。
詳しくは以下の記事で語られています。
生成AI(特にLLM)をビジネス活用するうえでカギとなるドメイン特化の必要性と課題、評価アプローチの概要については前述した通りです。ビジネス活用を成功させるための課題のひとつとして、さまざまなKPIを基準とした多面的評価の難しさを挙げました。
生成AIのビジネス活用を成功させるためには、さまざまな観点から評価し、LLMの信頼性の担保に努めなくてはいけません。信頼性の欠如は、AIによる提案や意思決定補助が人間のニーズや倫理基準の乖離を生み、重大なインシデントを引き起こすリスクとなります。
では実際に、ビジネス活用を見据えたLLMの評価を行う際に、この「信頼性」はどのような観点で評価できるかというと、
の8つです。
※参考:Sun et al. (2024)
以下の記事では、複数の研究により徐々に評価方法が整備されつつある観点と、現時点で議論が不足している観点に分け、それぞれビジネス視点での重要性やリスクを深ぼり、具体例や関連研究と併せて詳しくご紹介しています。
LLMによる自動評価技術 (LLM-as-a-judge) の研究が進み、LLMがビジネス活用される流れがより強くなってきています。
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生成AIによる自動評価(LLM-as-a-Judge)のメリットと最新手法をご紹介
LLMをはじめとする生成AIの技術が急速に進む一方で、ハッキングの技術もより巧妙になってきており、そのリスクは顕在化してきています。
言い方を変えれば、LLMの普及によりセキュリティを突破するハードルが下がってきていると言えるでしょう。
ハッキングはプロンプトおよび学習データの漏洩、悪意ある行動の生成、有害情報生成、トークンの無駄な消費、サービス拒否など広い範囲に拡大しています。LLMのビジネス活用においては、想定される多用かつ巧妙なハッキング手法とその目的を可能な限り把握し、未然に阻止する姿勢が大切です。
以下の記事では、リスクが高いとされているプロンプトベースのハッキング手法について具体例や対策と併せて詳しくご紹介します。
また、生成AIのビジネス活用を検討するうえで、「何から始めればいいかわからない」という方は多いと思います。
生成AIをビジネス活用に落とし込むまでの流れはいくつかあると思いますが、ここでは、データサイエンスの専門家集団として生成AIの技術探求のみならず、実用化に向けた壁を突破するために必要な知見を蓄積してきたブレインパッドが、2023年8月に提供を開始した「生成AI/LLMスタータープラン」に沿って、説明していきます。
本プランではビジネス活用の流れを以下のように設定しています。
スタータープランは、「まず簡易に試したい」というお客様のニーズに応えるリーズナブルかつスピーディな環境構築プランです。約1か月間で生成AIの利用環境を構築し、チャット画面を用いた簡易機能を実際に操作することが可能です。
生成AIのビジネス活用を考慮する場合、まずは生成AIの活用イメージを膨らませることが重要です。
また、生成AI/LLM活用の勘所をつかんでいただいた方は、アドバンスプランを通して
といった、生成AIの本格的なビジネス活用施策を具体化する「ロードマップ策定」、もしくは施策を実行に移す「本格システム実装」いずれかのサービスを利用いただけます。
生成AIは利便性の高いツールですが、注意深く利用しなければ、著作権に抵触したり、情報漏洩につながるトラブルを起こしたりする可能性があります。そこで、生成AIを使用する際に「やって良いこと」と「やってはいけないこと」の一例を下記にまとめました。
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生成AI・LLMの社内活用におけるガイドライン策定のプロセスとポイント
基本的に、著作権に抵触しないオリジナルのコンテンツを生み出す行為であれば問題ありません。一方で、イラストレーターのイラストを無断で学習させて似た絵柄の作品を生成するような行為は、著作権に抵触するため注意が必要です。
また、個人情報が含まれる情報を送信したり、悪意のあるコードや文章を生成したりする行為も避けましょう。
加えて、AI使用禁止を明記しているWebサイトに生成AIを使用すると、最悪の場合は訴訟問題に発展するおそれもあるため、クロール先の規定には十分に注意しましょう。
生成AIは、従来のAIとは異なり、自ら学習を重ねて新たなコンテンツを生成できる点が特徴的です。この性質を利用することで、これまでには難しかった「0から1を生み出す」作業が可能になります。
生成AIには、テキスト生成AIや画像生成AI、音声生成AIなど、さまざまな種類があります。ビジネスシーンに活用することで業務効率化を図ったり、クリエイティブな作業をサポートしてくれたりと、多くのメリットがあります。
生成AIは便利なツールではありますが、まだ登場して月日が経過していない技術であることから、事実の真偽性や著作権問題、セキュリティ上の懸念、サイバー攻撃への悪用など、懸念事項も数多く抱えています。「やって良いこと」と「やってはいけないこと」を正しく把握し、安全に利用しましょう。
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