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2045年問題とは?シンギュラリティの意味や仕事への影響を解説

公開日
2024.01.05
更新日
2024.05.10

AIの発展に伴い、「シンギュラリティ」や「2045年問題」を主張する論者が出てきています。本記事では2045年問題の意味と概要をご紹介するとともに、AIの発展に伴う影響を「雇用」や「仕事」の面から解説します。

AIによって仕事が奪われるとも言われる中で、自分のキャリアをどう進めていけばよいのか不安な方もいるかも人も多いかもしれません。今回の記事を参考にキャリア再考のきっかけにして参考にしていただければ幸いです。

2045年問題とは

最初に2045年問題の概要について、「シンギュラリティ 」や「AGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能 ) 」といったキーワードを用いながら解説します。

AIの発展に伴いシンギュラリティが発生

2045年問題とは、端的に言うとAI(Artificial Intelligence:人工知能 )が発展を続けて人間の知能を完全に超越する「シンギュラリティ」が発生することで、社会に予測不可能な影響を及ぼすとされている仮説です。

AIは2020年代でも急速な発展を続けており、ChatGPTに代表される「生成AI」がビジネスや生活に大きな影響を与えるようになりました 。こうした発展がさらに加速し続けることで、2045年頃には完全に人間の知能を超えるとされています。

そうなると、社会のみならず雇用や人体にもAIの影響がおよび、ポジティブ・ネガティブ双方を含めて何が起こるかわからないのが現状です。こうした不確実なことも 含めて、「2045年問題」と呼ばれています。

AGIの出現

2045年問題とAIの発展を考える際、「AGI(Artificial General Intelligence : 汎用人工知能) 」を避けては通れません。AGIとは、名称に「汎用」とついている通り、 あらゆるタスクを処理できる人工知能であり、特定領域のタスクだけを処理できる特化型AIとは根本的に異なる存在といえるでしょう。

現時点では人間たちが指示したことに忠実に対応できる完全なAGIは登場していませんが、ChatGPTのようにテキスト生成のみならず画像の自動生成や分析、音声コミュニケーションをこなせる生成AIはAGIの特徴を断片的に備えていると考えられます。

このように、AGIに近い存在が社会に登場したことも2045年問題への注目を集めるきっかけの一つと考えられます。AGIや生成AIの詳細については、以下の記事をご参照ください。

【関連記事】
AGI(汎用人工知能)とは?AIやChatGPTとの関係性・社会的課題
生成AI(ジェネレーティブAI)とは?ChatGPTとの違いや仕組み・種類・活用事例


シンギュラリティ(技術的特異点)とは

2045年問題と不可分なキーワードであるシンギュラリティについて、もう少し深掘りして解説します。明確な定義を持つキーワードではないだけに、その内容や是非についてさまざまな議論が生まれています。

シンギュラリティとは日本語で「技術的特異点」とも呼ばれ、「AIが人間の知能を超越する転換点」を指します。それが2045年頃に起こると考えられることから、2045年問題が叫ばれるようになりました。

AIがIQ(Intelligence Quotient:知能指数)のような量的な意味で人間を超えるのみならず、AIが高度な自己学習能力を持つことで新たなテクノロジーや知識を人間抜きで創造するようになり、人間によって制御しきれなくなる可能性があるともされます。

プレ・シンギュラリティの到来(2030年頃)

2045年に到来するとされるシンギュラリティの前に、「プレ・シンギュラリティ」が到来するとも言われています。2020年代の段階でAIは急速に発展を続けており、 2030年頃に「社会」「人間」「倫理」に大きな変化が生じるという仮説です。

具体的には

  • 人間の労働が不要になる
  • 貨幣が不要になる
  • エネルギー問題が完全に解決される

などの未来像を提唱する論者もいます。

「シンギュラリティは到来しない」という主張も

シンギュラリティの根拠は「AIがこれまで以上の速度で発展を続けたら、とてつもないことが起こるに違いない」という仮説です。必ずしも全ての論者がシンギュラリティの到来可能性を支持しているわけではありません。

たとえば、2011年から5年間「ロボットは東大に入れるか」と呼ばれる人工知能プロジェクトを率いてAIの可能性と限界を調査した新井紀子氏は、シンギュラリティを「神話」として否定的に述べています。AIへの期待感が強すぎる現状を見て、クールダウンするべきとの立場を明らかにしています。

参考:人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」

シンギュラリティはあくまでも未来予測の一つです。AIの発展度や社会構造など不確定な要素を多く含むため、到来するのかしないのか、どんな影響が起こるのか起こらないのか議論が進んでいるとは言えません。


レイ・カーツワイル博士の述べる2045年問題の根拠

レイ・カーツワイル博士によると、2045年問題が発生すると考える根拠として「ムーアの法則」「収束加速の法則」 があります。この2 点について解説 します。

ムーアの法則

「ムーアの法則」とは、半導体チップ上のトランジスタの数が 18~24カ月 ごとに2倍に増加するというものです。米インテルの共同創業者であるゴードン・ムーア氏によって1965年に提唱された法則で 、その後半導体技術はムーアの法則を立証するかのように指数関数的な発展を続けてきました。

今後もムーアの法則が主張するような急速な技術発展が半導体の領域で継続されれば、その分だけコンピュータの演算能力も向上し、シンギュラリティの到来につながるかもしれません。一方で技術発展が物理的な限界に近づいているとの声もあり、ムーアの法則が今後も成立するかどうかは明確ではありません。

収穫加速の法則

「収穫加速の法則」とは、テクノロジーの進歩が継続的に加速するのみならず、一つの進歩が他の領域の進歩と結びつくことにより、新たなイノベーションにつながるとする仮説です。2045年問題と同じく、レイ・カーツワイル博士によって主張されました。

コンピュータ技術の進歩が生物学やエネルギー問題など他の領域と影響し合い、イノベーションの生まれる速度も加速する、結果としてシンギュラリティが到来するというのがレイ・カーツワイル博士の考えです。

2045年問題によって生じる影響や実現されること

2045年問題に関連する影響について 生活環境・社会制度や人体・雇用の3点から解説していきましょう。

生活環境・社会制度の変化

シンギュラリティの到来によってAIが全ての生産活動を行うようになると、人間が仕事から解放され、生産性によらず全ての人たち が一定の資金を受け取る「ベーシックインカム」という制度 の実現が現実味を帯びてきます。

ベーシックインカムによって個人が経済的な安定を手に入れると、リスクを取って新たなアイディアの探究や起業などをしやすくなると考えられます。これにより、新たな産業やイノベーションが促進されるかもしれません。

人体の変化

シンギュラリティによる可能性の一つとして、AIや生体工学の発展によって人間の制約や限界が拡張されるというものがあります。例えば 、脳にAIを埋め込んで脳の活動をコントロールし、障がい者の移動能力や認知能力を向上させるような研究が進んでいます。

また、細胞の修復や遺伝子編集といった生命科学領域のテクノロジー進化によって、老化や病気といった不可避の事象に対する治療方法が飛躍的に進歩するかもしれません。

雇用の変化

2045年問題に関連して、よくAIの発展によるネガティブな影響として指摘されるのが雇用です。AIは人間のこなしてきたタスクを自動化するのに長けており、こうしたタスクに従事している人々は働き場所を喪失するリスクがあると考えられています。

また、ChatGPTに代表される生成AIの登場によって、影響がブルーワーカー(肉体労働者)のみならず事務作業や分析、考察、提案などを行うホワイトワーカーにまで及ぶかもしれないと考えられるようになりました。人間の仕事の多くがAIに奪われ、労働者は新しい領域での仕事を促される必要があります。

一方で、AIの導入によって新たな雇用機会が創出されることへの期待感を持つ論者も少なくありません。なぜなら、データ分析やプログラミング、あるいはAI自体の監視や保守などのスキルに対する需要が増すことも考えられるためです。

では、人間の仕事は奪われるのか

AIの発展によって、自分の仕事がなくなってしまうのではないかと心配な方人もいるかも知れません。シンギュラリティによってAIに代替される仕事や生まれる仕事について、どんな予測が存在するのかご紹介します。

シンギュラリティで失われる仕事・失われない仕事の予測

2013年にオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授(当時)がカール・ベネディクト・フライ博士とともに『雇用の未来(The Future of Employment)という論文を発表して注目を集めました。

この論文では、700あまり存在する全ての職種についてコンピュータ化(Computerisation)によって失われる可能性を検討しています。例えば、 レジ係や電話のオペレーターなど、具体的な仕事が98%以上という確率でコンピュータに置き換えられると指摘されており、産業界に強いインパクトを与えました。

また、野村総合研究所はマイケル・A・オズボーン准教授およびカール・ベネディクト・フライ博士との共同研究で日本におけるコンピュータによる代替可能性を検討し、スーパー店員や受付係をはじめ、日本の労働人口の約49%が就いている職業において、コンピュータによる代替が可能であるとの研究結果を発表しました。

いずれにおいても、特別な知識やスキルが求められない職業、データの分析や秩序的な操作を求められる職業についてはAIなど で代替できる可能性が高い傾向にあるとされました。一方、芸術や哲学・神学などのように抽象的な概念を扱う職業や、他者との協調やネゴシエーション、他者へのサービス志向性の求められる職業はAIなどによる代替が難しいと確認されています。

シンギュラリティで生まれる仕事

AIの発展に伴い、新たに創出される仕事もあると考えられています。独立行政法人経済産業研究所(RIETI) の論文によると、AIと補完的な関係にある労働の出現が主張されています。 例えば 、AIを教育する職務、AIの出した結論を顧客に説明する職務、AIのパフォーマンスを監視する職務などがあります。

AI時代に需要が高まると予測される職業

AIが発展を続ける時代に、需要が高まると考えられる仕事がデータサイエンティストとデータエンジニア です。両者について、需要が高まる理由とともに概要をご紹介します。

データサイエンティスト

データサイエンティストとは、「データから引き出す価値を最大化するために、統計学や数学、プログラミングなどの技術を駆使してデータ活用を実践するスペシャリスト」を指しています。いわば、文字や数字の羅列に過ぎないデータとビジネス現場との橋渡しをする役目です。

消費者行動の予測やマーケティング予算配分の最適化、物流ネットワークの分析など、データサイエンティストの取り組むテーマは多岐にわたります。AIがデータ分析そのものを正確かつ迅速に処理しても 、その意味を解釈し施策提案につなげるのは人間が担う必要があります。だからこそ、AIの発展する時代にデータサイエンティストの需要は高まると考えられるのです。

以下の記事では、ブレインパッド所属の現役データサイエンティストによって直々に執筆された「データサイエンティストのリアルな仕事内容」が解説されているので、あわせてご覧ください。

【関連記事】
【社員が解説】データサイエンティストとは?仕事内容やAI・DX時代に必要なスキル

データエンジニア

データエンジニアとは、データ活用基盤を構築するITエンジニアです。ここでいうデータ活用基盤とは、データ活用を前提としたデータ収集・整理・管理のデータベース、ネットワーク、ワークフローなどを指しています。

データが単に存在するだけでは、ビジネスの示唆につながる分析を行えません。 生のデータを整理・加工して使えるようにするのがデータエンジニアに求められる役割です。中長期的にビジネスに活用したい場合や大量のデータを扱う場合には、データエンジニアが欠かせません。

データを活用できる形へ整備するのがデータエンジニア、活用できるようになったデータを実際に分析するのがデータサイエンティストです。両者とも、シンギュラリティと呼ばれるほどAIが高度に発展した時代においても需要が失われる可能性は少ないといえる でしょう。

以下の記事ではブレインパッド社員がデータエンジニアの役割や仕事内容について詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

【関連記事】
データエンジニアとは~役割、他のエンジニアとの違いなど~

2045年問題に備えるために必要なこととは?

2045年問題がどの程度のインパクトで発生するのか見通しを立てることは困難ですが、今後もAIが技術的な発展を続けることはほぼ間違いありません。日常生活でもビジネスでもAIが当たり前のように活用される時代において、個人および企業は何を求められるのでしょうか?

個人に求められること

まず「個人」に求められるのは、2045年問題に示される未来予測に合わせた「リスキリング」です。特殊なスキルを必要としない単純作業がAIやコンピュータに代替され、AI自体の操作に関わったり、対人スキルを必要としたりする職務が残るのであれば、そうした職種にキャリアチェンジできるよう、スキルを身につけるのです。

リスキリングとは「学び直し」を意味します。時代の変化や需要に合わせ、スキルを再習得する必要性があります。リスキリングの詳しい意味や企業事例については、以下の記事で詳しく解説しています。

【関連記事】
リスキリング(学び直し)とは?意味・事例や導入メリットを解説

また、テクノロジーやイノベーションの動向を幅広くキャッチアップすることも必要です 。これは、必ずしもITやデータに関わる職業だけではなく、それ以外でも必要であると考えられます。ChatGPTのような破壊的なテクノロジーが登場したときに、いち早くそれらを活用して生産性を上げることができれば、今後も市場から高く評価される人材になれるためです。

この点を踏まえると、DX人材の内容と求められるスキルを理解することが有効です。シンギュラリティはまだ未来の話ですが、DX推進は今日の日本企業における 重要な課題となっています。 DX人材に関する以下の記事を参考にして、未来のキャリアパスを改めて見つめなおしてみても良いかもしれません。

【関連記事】
DX人材とは?必要な役割やスキル・適正、育成事例を解説

企業に求められること

企業に求められるのは「AI活用を軸としたDX推進」です。AIやデータ活用の高度化によって、企業によっては既存のビジネスモデルからの脱却や変革を余儀なくされるでしょう。 また、 日本企業にはDX推進の遅れが指摘されており、毎年約12兆円とも言われる膨大な経済損失を招くリスクもあります。

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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?今さら聞けない意味・定義・事例をわかりやすく解説【2023年最新版】

また、人材育成も急務です。個人のリスキリングを会社として促進できるよう、研修プログラムや社外リソースとのパートナーシップ構築などを行い、2045年問題を乗り超える 企業文化づくりを計画的に進める必要があるでしょう。

今後のビジネスマンに求められる「AIとの共存」

シンギュラリティや2045年問題の発生を明言することはできませんが、AIの発展によって既存の産業や職種が大きな影響を受けることは間違いありません。AIを恐れるのではなく、AIを活用して自分の価値を向上させる取り組みに舵を切るのが、これからの時代を生きるビジネスパーソンに求められるでしょう。


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