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大都市圏はもちろん、地方ではさらに深刻な形でDX推進の遅れが指摘されています。その一方で、高齢化と人口減少によるデメリットをデジタル技術の力で補おうとする気運も高まってきました。
今回は、こうした気運に乗る動きのひとつとして「ふるさとCo-LEADプログラム」をご紹介します。プログラム概要を把握することで、国策によるDX・デジタル化と地方振興の動きに目を向けていただければ幸いです。
「ふるさとCo-LEADプログラム」は、地方振興とデジタル化に着目した取り組みです。まずはふるさとCo-LEADプログラムの背景にある課題、目的についてご紹介します。
経済産業省では、2010年代後半から国内企業と社会のDX推進の遅れに対して警鐘を鳴らすと共に、DX支援施策をいくつも打ち出してきました。また、2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、接触のないオンラインサービスの開発・導入など、社会のデジタル化の動きも加速してきています。
しかしながら、これらは首都圏を含む大都市に限られた話であり、経産省には「地方においては限定的」との課題意識がありました。地方ではデジタル化へ対応できる人材=高度デジタル人材の数が限られ、デジタル化推進の具体的な動きを取れない企業や自治体が多かったのです。
ふるさとCo-LEADプログラムは、こうした地方におけるデジタル化の遅れを受けて始められた取り組みです。具体的には、高度デジタル人材が地方の中小企業のデジタル化を支援できるような仕組みの構築が目的となっています。
経産省では、高度デジタル人材のなかで副業・兼業を含む多様な働き方への意識の醸成が進み、大都市以外の地方で新たな活躍の機会を模索する人材も増加しているという期待があります。
以上を踏まえて、新たなプログラムによって地域中小企業と高度デジタル人材のマッチングの場を提供し、両者がデジタル技術の活用による新たなビジネスモデルの作成を協働で行うプログラムを通じて、地方のデジタル化を促進したいとの目的があります。
ふるさとCo-LEADプログラムは、高度デジタル人材による地方のデジタル化推進を目的として開始されました。具体的な事業内容としては、主に以下の3点が挙げられます。
地域中小企業と高度デジタル人材が出会う機会として、「ミートアップイベント」と「フィールドワークツアー」を実施しています。
ミートアップイベントは、選定された北海道北見市、三重県桑名市、沖縄県を舞台に高度デジタル人材を募集する形で2021年10月に行われ、16名が参加。地域の魅力や課題、企業を紹介するのに加え、高度デジタル人材が自らをPRするセッションを設けることでマッチングの機会としています。
一方のフィールドワークツアーは、高度デジタル人材が実際の企業の現場を視察するツアーを指します。詳細は公表されていませんが、2021年10月から11月にかけて行われたと考えられます。
ミートアップイベントやフィールドワークツアーを通じて選定地域と高度デジタル人材のお互いに対する理解を深めたあと、新たなビジネスモデル案を作成します。2021年11月頃から2022年1月末頃にかけて作業が行われ、2月に最終報告が行われました。
ビジネスモデル案の詳細は2022年4月現在公表されていませんが、ドローン・3Dプリンター・ロボットを活用した地域イノベーション創出の場づくり(北海道北見市)、老舗食品製造業のマーケティング戦略立案とデジタルの活用(三重県桑名市)、テーマパークにおけるデータドリブン経営への変革(沖縄県)が取り組みテーマ例とされています。
地域コミュニティが主体となって、高度デジタル人材の実績等を見える化することで、こうした人材にリーチできる仕組みの提案が予定されています。具体的には、高度デジタル人材を紹介するWebサイトの構成案の想定です。
ふるさとCo-LEADプログラム以前から、地方のデジタル化を促すための取り組みを経産省は実施してきました。「地方版IoT推進ラボ」を中心に、そうした取り組みをまとめます。
ふるさとCo-LEADプログラムに参加する自治体は、「地方版IoT推進ラボ」から選定されました。この地方版IoT推進ラボは、経産省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によって選定された、地域におけるIoTプロジェクトを創出する取り組みです。2016年から開始され、2021年度までに全国105の地域が対象として選定されました。
この地方版IoT推進ラボの前身として、2015年に設立されたのが「IoT推進ラボ」です。IoT・AI・ビッグデータに関するプロジェクトの立ち上げ期において、資金・規制・企業連携などの形で官民の支援を行っていました。
2018年度までで活動目的をある程度果たしたと判断され、より地方の取り組み支援に注力する形で地方版IoT推進ラボに活動が一本化された経緯があります。そのため2021年下半期に実施されたふるさとCo-LEADプログラムは、地方版IoT推進ラボの活動の一環と言えます。
企業のDXに向けて経営者に求められる対応を取りまとめたデジタルガバナンス・コードの公表や、DX銘柄・DX認定制度など、経産省では企業のDX推進を支援する取り組みを行ってきました。
こうした取り組みが上場企業を主に対象としていたことから、新たに中堅・中小企業を対象としてDXの優良事例(「DXセレクション」と題されています)の選定が決まりました。モデルケースを公表することで、中堅・中小企業でも参考にしてほしいとの意図があります。DXセレクションとして選定対象となるのは、地方版IoT推進ラボに参画している企業に限られます。
そして「DXセレクション2022」は、2022年3月に公表されました。経営ビジョンやビジネスモデル、戦略などの評価項目を基準に、16社が選定されています。グランプリとなった企業は資本金2億円・従業員260名の製造業者であり、国の定める中小企業の定義に当てはまる規模感でした。
DXセレクションに選定された16社の取り組み内容を見ると、ある程度共通する点が見られます。
第一に、単なるツール導入の範疇にとどまらず、経営層が主体となって全社的な経営改革を進めていることです。グランプリ企業では工場だけではなく、開発や営業なども含めた分野でデジタル技術の活用を進め、目指す姿の実現を目指しています。
第二に、外部パートナーとの連携です。パートナー会社や研究機関、自治体と協働でデジタル技術の活用や地域DXの推進などを目指す企業が目立ちます。企業規模が小さいだけに、外部との業務連携がDX・デジタル化推進のポイントになると考えられます。
ふるさとCo-LEADプログラムは2021年度下半期の新たな試みであり、地方におけるDX・デジタル化推進の取り組みのひとつと言えます。地方におけるデジタル化の遅れは大きな課題であり、地方版IoT推進ラボを中心に当プログラムも含めて数々の施策が打ち出されることが予想されます。
課題が多いだけに、企業にとってはビジネスチャンスでもあります。デジタルガバナンス・コードをはじめ経産省による支援策を活用しつつ、自社のDXを実現することが他社・地域へのDX支援サービスのような新ビジネスにつながるかもしれません。
ぜひ国や自治体による「DX・デジタル化支援×地方振興」の動きを注視していただければと思います。
▼DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧ください
「DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?意義と推進のポイント
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