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2021年6月7日、経済産業省が東京証券取引所と共同で「DX銘柄2021」と「DX注目企業2021」を発表されました。企業のDXを促し、先進的な取り組みを行う企業を称えることを目的として2020年から開始されたもので、今回で2回目となります。
今回の記事では、DX銘柄およびDX注目企業の選定方針や企業の顔ぶれをチェックし、前回からの変更点や傾向などを整理します。なお、DX銘柄2020については、以下の記事を参照してください。
DX認定制度&デジタルガバナンス・コードとは?概要と認定を受けるメリット
政府は「DX銘柄」をなぜ選んだのか?DX銘柄2020の内容と選定企業の傾向
(DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧下さい)
【関連】「DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?意義と推進のポイント
まずは、DX銘柄2020とDX銘柄2021を比較し、選定方法の変更点や企業の顔ぶれの違いを見ていきましょう。この1年間で企業のDX推進に関する環境整備がいくつか進んでおり、評価基準など変更された点もあります。
DX銘柄2021の1次審査にあたっては、経済産業省の策定した「デジタルガバナンス・コード」に準拠する形で評価項目が定められています。デジタルガバナンス・コードは、DX推進に際して企業価値向上に向けて実践すべき事柄を取りまとめたものです。経済産業省は経営者のリーダーシップやコミットメントを重要視しており、このデジタルガバナンス・コードにも経営者に求められる取り組みが記載されています。
1次審査における評価項目の章立ては、以下の通りです。
Ⅰ.経営ビジョン・ビジネスモデル
Ⅱ.戦略
Ⅱ-①.戦略実現のための組織・制度等
Ⅱ-②.戦略実現のためのデジタル技術の活用・情報システム
Ⅲ.成果と重要な成果指標の共有
Ⅳ.ガバナンス
また、2次審査もデジタルガバナンス・コードに対応しており、大きく「企業価値貢献」と「DX実現能力」の2つの観点からの評価が行われました。企業価値貢献については「既存ビジネスモデルの深化」と「業態変革・新規ビジネスモデルの創出」の2つがあり、特に後者を高く評価すると明記されています。DXの概念がトランスフォーメーション、すなわち企業のビジネスモデルやサービス・製品の変革を意味するために、こうした評価基準になっているのでしょう。
以上のような2段階の審査でDX銘柄2021が選定されました。評価項目のとおり、IT要件よりもビジネス要件が多いです。経済産業省は、かねてより「ビジネス戦略ありきでIT戦略を考えるべき」と主張しており、評価項目にもこの点が反映されています。
デジタルガバナンス・コードの詳細については、以下の記事をご参照ください。
【関連】DX認定制度&デジタルガバナンス・コードとは?概要と認定を受けるメリット
2015年以降6年間に渡ってDX銘柄、あるいは前身の「攻めのIT経営銘柄」に選ばれておらず、DX銘柄2021へ新たに選ばれた企業は以下の7社です。
もともと選定対象は東京証券取引所(一部、二部、ジャスダック、マザーズ)上場の企業に限られることから、規模の大きな企業が大半です。DX関連の取り組みは2020年以前から行っていたものの、審査委員会の調査に回答していなかったなどの理由で選定漏れしていた企業も少なくないと考えられます。上記の7社に限らず、DX銘柄2021に選定された企業は、2020年以前からDX、あるいはDXに相当する企業変革に着手しています。
DX銘柄2021の大きな変更点として、「コロナ対応部門」の新設が挙げられます。従来はDX銘柄およびDX注目企業を選定するだけでしたが、今回からDX銘柄の選定とは切り離す形で、新型コロナウイルス感染症に対して優れた対応を実施した企業を「デジタル×コロナ対策企業」として選定しています。
DX銘柄やDX注目企業、さらにはデジタル×コロナ対策企業に選定された企業は、どのような取り組みを行っているのでしょうか。
グランプリ2社を含み、DX銘柄2021には28社が選ばれました。選定企業一覧は以下の通りです。
過去と同じように、幅広い業界から大手企業が選定されています。前述のように新規選定企業が7社ある一方で、今回を含んで7回連続で選定されている定番企業も5社あります。
DX銘柄にはややおよばないものの、取り組みを高く評価されたDX注目企業2021が20社選定されました。一覧は以下の通りです。
過去にDX銘柄や攻めのIT経営銘柄として選定されたことのある企業が目立ちます。DXは全社的な変革であり、数ヵ月や1年の期間で完了するものではありません。そのため、数年間に渡ってDX関連の施策を進めてきた企業が高い評価を受ける傾向にあります。
今回、新たに設けられたデジタル×コロナ対策企業には、以下の11社が選定されました。
コロナ禍を受けて、デジタル技術を活用して非接触・非対面でのサービス提供に切り替えた企業が主に選定されています。
2021年のグランプリは、日立製作所とSREホールディングスの2社です。
日立の取り組みで特に高く評価されているのが、「Lumada」です。製品やソリューション群である「Lumada Solution Hub」、日立社内やパートナー各社などから専門家を提供する「Lumada Innovation Hub Tokyo」、各パートナーの紹介や連携支援を行う「Lumadaアライアンスプログラム」の3つから構成されており、顧客が日立のエコシステムを活用して課題解決できるよう支援する仕組みです。
SREホールディングスは、ソニーのグループ会社です。業態は「不動産業」ではありますが、不動産業を営む傍ら、そこから得たデータを基に不動産や金融業界向けのAIソリューション・ツールを提供するという特徴的なビジネスモデルを持っています。
この点が「DXのそもそもの意味を問うた時に、日本になかった商習慣を打ち出している」など高い評価を受け、今回のグランプリ受賞につながりました。
2社ともDXに正面から立ち向かい、デジタル技術を活用して自社でしかできないビジネスモデルを打ち出している点が評価されています。
経済産業省は、「DX調査2021」の調査概要と基本的な分析結果を公表し、DX銘柄に選定された企業の特徴を明らかにしています。その中から特筆すべき内容をピックアップし、DX推進に必要な要素やそのメリットなどについてお伝えします。
DX銘柄やDX注目企業の一覧を見ると、誰でも名前を知っているような大企業が多いように見えます。実際、経済産業省の分析結果でも、以下の2点が明らかになっています。
前述の通り、もともと調査対象が東京証券取引所に上場する企業に限られているのに加えて、DXに取り組み、成果を上げる企業はその中でも大規模な企業に限られているのが実情です。
DX銘柄企業とDX認定未申請企業を分析したところ、特にビジネスモデルと戦略の部分に違いがあるが分かりました。DX推進予算や「挑戦を促す仕組み」にも差がありましたが、これはビジネスモデルや戦略の差がつながったものと経済産業省は分析しています。
DX銘柄の共通点は、デジタルによる外部環境を踏まえた形でビジョンを策定している企業であること。さらに、ビジョン実現のためのビジネスモデルを構築しており、ビジネスモデル実現のためのエコシステム・企業間連携を主導している企業。加えて、ビジネスモデルを具体化して戦略に落とし込んでいる企業であるという点です。ビジョン→ビジネスモデル→エコシステム&戦略という流れが明快な企業が高く評価される傾向にあります。
ガバナンスに関連して、DX銘柄・DX注目企業では、DX関連の情報発信やコミュニケーションが活発な傾向にあります。
たとえば、DX銘柄・DX注目企業では、経営トップによるDX関連のメッセージ発信が行われている傾向が強いです。また、経営トップはDX推進責任者と定期的にコミュニケーションを取り、任せきりにしない姿勢を見せる傾向にあります。デジタル・IT関連の課題把握や分析、戦略の見直しなどに経営トップが関与するとともに、取締役会のような経営層の会議においてDX推進の報告や議論が行われている点も共通点です。
経済産業省は、企業に対して経営トップがDX推進のリーダーシップを取ることを要望しており、今回の調査結果はそうした要望に添った内容といえるでしょう。
DX銘柄と名前を変えた調査は今回が2回目であり、来年以降も続いていくことが予想されます。今回のDX調査に回答した企業は、対象の約3,700社中で464社しかありません。DX銘柄に選定されたことは、間違いなくDX推進において日本のトップランナーであることの証明といえるでしょう。来年以降も、評価内容や選定企業に注目したいところです。
(参考)
経済産業省・東京証券取引所「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2021」
経済産業省「デジタルトランスフォーメーション調査2021の分析」
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