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2025年の崖とは?経産省が示す日本企業DXの現状と課題・対策

公開日
2022.05.20
更新日
2024.08.26

こんにちは。データ活用によるDX推進を支援する「株式会社ブレインパッド」の近藤です。当メディア「DOORS」の編集長を務めています。

2025年の崖とは、日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進まなかった場合に予想される2025年以降の経済損失を指します。

既存のITシステムの課題を各企業が克服できず、DXを推進できなかった場合、2025年以降に懸念される巨大なリスクが発生するのです。

本記事ではこの「2025年の崖」の内実を解説するとともに、2025年の崖を克服するためのDX推進方法について、経済産業省のレポートを参考にしながら考えていきます。

目次

「2025年の崖」とは?

「2025年の崖」は、日本企業のDXが進まなかった場合に予想される2025年以降の経済損失を指しています予測されている経済損失は最大で「年間12兆円」。

DX化が推進されなければ、2025年以降、毎年12兆円もの経済損失が生じるとして経済産業省は強く警鐘を鳴らしているのです。

【参考】DXレポート(サマリー)|経済産業省

【関連記事】【図解】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味・定義や事例を解説

企業のDX化が進まない要因としては

  • 既存のITシステムが老朽化して保守・運用にリソースを費やしている
  • 新システムへの移行を決断できない

などが挙げられ、DXが先延ばしされているという背景があります。

「2025年の崖」という言葉は、経済産業省のDXレポートにて、DXの必要性を強調するための概念を表現するために用いられるようになりました。

DXレポートとは、経済産業省で設置された「DXの加速に向けた研究会」が2018年にまとめた、日本の企業がDXを推進するための知見が記載された報告書です。いわば、DX推進に対する日本の方針となります。

【参考】DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~

DXを実現していく上でのITシステムに関する現状の課題やその対応策、今後の方向性が中心に整理されているので、ぜひ一度お目通しください。

補足:SAP ERPの一部サービスが2027年までサービス延長

2025年の崖やDXに関連して補足したい話題として、日本企業を含め世界中でトップシェアを誇るERP(Enterprise Resource Planning,統合基幹業務システム)であるSAPのサポート終了問題が挙げられますが、そんな「SAP ERP」がサポート期限を「2027年末」まで延長することになりました。

【参考】SAPが「SAP ERP」のサポートを2年間延長、2027年末までに

もともとSAP ERPのメインストリームサポートは2025年に終了するとされていましたが、日本国内では2,000社ほどがSAP ERPを導入していると予想されることから、このサポート終了が与えるインパクトは大きいです。

そういった背景から

  • サポート終了による業務への影響ボリュームが大きいこと
  • DX推進のための対応策がまだ検討できていないこと
  • DX推進のための時間的猶予が欲しいこと

といったSAP ERPユーザの現状を踏まえ、延長が発表されたのだと考えられます。

しかしながらサポートが終了すること自体は確定しており、ユーザ企業は移行の決断を迫られていることに変わりはありません。

SAP ERPをめぐる「SAPの2027年問題」とその対応策については、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】DX推進のための基幹システムの要件とSAPユーザの対応方法


「2025年の崖」に対応できないと日本や企業はどうなる?

「2025年の崖」までにDXが進まなかった場合、国単位で見ると、前述の通り年間で約12兆円という巨額の損失が日本経済にのしかかることになります。

企業単位で見ると、

  • 老朽化したシステムが「技術的負債」となる
  • システムが基盤として支える業務の維持・継承に困難が生じる
  • 古いシステムの脆弱性によるシステムトラブルやデータの滅失・流出などのリスクが高まる

こういった展開が予想され、企業はデータを活用できずにデジタル競争に敗れることになります。したがって各企業は、本気でDX推進に取り組んでいかなければなりません。


日本のDXの現状および他国との比較

日本のDXないしデジタル進捗の度合いは、国際的にどれくらいなのでしょうか。ここでは、スイスの名門ビジネススクールでありシンクタンクである国際経営開発研究所(IMD:International Institute for Management Development、以下IMD)および一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の調査結果から、日本の国際的な位置づけについてご説明します。

【参考文献】World Digital Competitiveness Ranking

世界デジタル競争力ランキングでは順位下落傾向

IMDは、毎年世界デジタル競争力ランキング(World Digital Competitiveness Ranking)を発表しています。デジタル技術の利活用能力を、(1)知識(Knowledge)、(2)技術(Technology)、(3)未来への対応(Future Readiness)から評価したものです。

その2022年版によると、日本は63カ国・地域中29位になりました。前回から1つ順位が下がり、過去最低でした。

特に「国際経験」(知識)と、「ビッグデータ活用・分析」「ビジネス上の俊敏性(Business Agility)」(未来への対応)の項目では、調査対象である6カ国・地域の中で最下位とされています。

デンマーク・米国・スウェーデン・シンガポール・スイスが上位を占めました。また、東アジアでは韓国が8位、台湾が11位、中国が17位となり、日本よりも高い順位でした。

「2025年の崖」が近づく中で、日本のDX推進度が他の先進諸国と比べて遅れている現状が伺えます。

日本企業はDXにつながる「攻めのIT投資」ができていない

一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、2020年に日米企業のDXについて調査しました。

当調査によると、アメリカと日本は両国とも「IT投資を増やす考えを持つ企業が大半を占めて」います。

一方、アメリカは「外部環境の把握にIT予算を投じる企業が多い」のに対し、日本は「社内の業務改善を目的とする企業が多い」という、投資の方向性における傾向の違いが見られました。

つまり、アメリカでは外部に目を向けた「攻めのIT投資」が多いのに対し、日本は内側に目を向けた「守りのIT投資」が多い特徴があるということになります。

【関連記事】

この調査結果の詳細については、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】DXに対する日本企業のIT投資傾向と立ち位置の違い~日米比較調査から読み解く~

「2025年の崖」が示す問題点・課題

DXレポートには、日本を「崖」へ引きずり込むITシステムおよび産業の課題が記載されています。ここでは、それらの課題を7つにまとめてご紹介します。

1.経営戦略の不在で具体的なDXを進められない

経済産業省は、DXを活用したビジョンや経営戦略の欠如を問題視しています。

もちろんDXの必要性に対する認識が高まっており、その調査や推進に向けた組織を立ち上げるような動きはあるのですが、「具体的なDXの方向性を模索するにとどまっている企業が多い」との指摘をしています。

単に「AIを使って何かできないか」といった抽象的な指示が経営層から下りてきても、ビジネスの変革につながる可能性はほとんどありません。DXによってビジネスやサービス・製品をどのように変革したいのか、経営層の中で確固としたビジョンがあって初めて全社的なDXへの気運が高まるのです。

【関連記事】【シリーズ】データガバナンスがもたらすもの-第4回 組織組成・人材育成とデータガバナンス(前編)

2.既存のITシステムが老朽化・肥大化してDXを阻害

前述の通り、長い間稼働を続けるITシステムが日本企業には数多く存在します。稼働しているから良いというわけではなく、老朽化・肥大化が進行してDXの妨げとなってしまっています。

例えば、技術的にも古いシステムであるため蓄積できるデータの量が極めて小さかったり、場当たり的な改修を続けてきたためプログラムのロジックが極めて複雑だったりすると、改修が難しいのです。

こうした既存システムを再構築しようにも、万が一失敗した場合の業務的なリスクが大きすぎるため、DXを推進するのに躊躇してしまいます。

【関連記事】DXを実現する「攻めのIT」とは?「守りのIT」と根本的に異なる2つのIT投資の視点

3.DX推進に不可欠なDX人材・IT人材の枯渇

DXを進めるには、最新のIT事情のみならず既存システムの仕様にも詳しい「DX人材」が求められます。しかしながら、そうしたIT人材を容易に育成・採用できるわけではありません。

そもそも、多くの企業ではITシステムの開発や改修、保守・運用を外部のベンダー企業に業務委託という形で依存しているのが一般的です。そのため、社内にITシステムのノウハウが蓄積されず、自社でシステム再構築へ向けた動きを起こせなくなっています。

また、少子高齢化に伴う労働人口の減少によって、そもそもDX・IT人材の採用も難しくなっていると考えられます。社内の人材を再教育(リスキリング)しようにも、ITスキルやノウハウが社内になければ、再教育のためのカリキュラムを自前で作ることはできません。結果として、DX推進に適した人材が枯渇している状況を生み出しています。

▼リスキリングの意義などをより深く知りたい方はこちらもご覧ください。
なぜ今「リスキリング」が必要なのか?DX時代に生き残るための、人材育成の考え方と3つのステップ

リスキリングやDX人材の貴重さ・DX内製化がトレンドキーワードの一部にもなっているのは、以上のような背景が絡んでいるのです。

【関連記事】

4.肥大化したシステムをめぐるユーザ企業・ベンダー企業の軋轢

「既存システムの保守・運用もベンダー企業に任せているのだから、DXへ向けたシステム刷新もまたベンダー企業へ任せればよい」と考える方がいるかもしれません。

しかし、そう簡単に外部企業へ任せてDXを実現できるわけではありません。ベンダー企業としても、失敗リスクを引き受けてまでDX推進に向けたシステム刷新を提案するのはなかなか難しいところがあります。既存システムの保守・運用であれば、売上の見通しも立てやすいのですが、リスクの大きいDX推進の収益性は不透明であり、改革型提案には慎重にならざるをえません。

【関連記事】データドリブン変革を阻む「ベンダーロックイン」とは

5.日本の情報サービス産業におけるビジネスモデルの陳腐化

ここまでご説明してきた諸課題は、単なる一企業レベルを超えて、情報サービス産業の問題にもつながっています。情報サービス産業の既存のビジネスモデルは陳腐化していくため、これを転換させていく必要性が高まっているのです。

レポートによると、日本企業のIT関連費用の約80%は現行ビジネスの維持・運営に充てられています。これは、情報サービスを提供するベンダー企業の側からすると、システム開発や保守・運用の「受託事業が主なビジネスモデル」であることを示しています。

しかしながら、こうしたビジネスの規模は今後縮小に向かうとレポートでは予測しています。大型開発の一巡、企業統合などによる情報資産の共有、クラウド化の進展などから、単に顧客が提示する仕様に合わせて開発を行うだけでは、競争力を早晩失っていく可能性があるとレポートでは指摘されています。

6.ベンダー企業でも人材の枯渇が深刻化

ITシステムの開発・運用を担うベンダー企業でも、課題が深刻化しています。情報サービス業人材不足傾向が強まっており、テクノロジーの進化に合わせたスキルシフトへの対応が困難になりつつあります。

DXに対応するには、ベンダー企業の社員が新しいアプリケーションやアーキテクチャを習得することが欠かせません。デジタル技術は急速に進化しており、その進化にキャッチアップできる人材を活用して顧客に価値を提供することが求められます。

7.ユーザ企業がDX推進に向けて一枚岩でコミットできていない

DX推進の必要性を認識する企業でも、必ずしもDX実現に向けて一枚岩でコミットできるとは限りません。

システムを利用するユーザ企業でも、デジタルを活用してDXを推進できる人材は不足しています。また、老朽化したシステムの仕様を知る人材がリタイアしつつあり、そのシステムのメンテナンス要員も不足する傾向が出てきています。

加えて、ユーザ企業によるベンダー企業への「丸投げ」問題があります。要件を定義する段階からベンダー企業との請負契約を締結して丸投げする文化がユーザ企業側に存在すると、DXを推進しようにも「何を目的としてDXを進めるのか」をユーザ企業で決めることは難しいでしょう。

【関連】ベンダーとのワンチームで“トランスフォーメーションの壁”を突破する

また、経営層がデジタル技術に詳しくなく、DXに対して危機意識が薄いと、なかなかDXは進みません。既存システムを利用する事業部がDXの「抵抗勢力」になるケースをはじめ、事業部門と情報システム部門の役割分担があいまいであるなど、プロジェクトに問題を抱える企業も多くあります。

「2025年の崖」克服に向けた、経産省が示す対策

2025年の崖を回避し日本企業や社会のDXを推進するべく、経産省は数々の施策を打ち出してきました。ここでは、そうした施策について、大きく5点にまとめてご紹介します。

1.DX推進ガイドラインの策定

DX推進ガイドラインとは、DX推進のために企業が行うべきアクションプランをまとめたものです。

単に「AIを使って何かしよう」「社内のデータを分析する部署を作ろう」というレベルでは、全社的な変革につながりません。経営層がリーダシップとコミットメントを示し、DX推進の旗振り役となる部署を設け、人材の育成・確保やITシステムの整備を実施しなければなりません。

DX推進ガイドラインは、DX推進に必要な作業をまとめた覚え書きであり、これに従うことでプロジェクトの失敗リスクを下げることができます。DX推進ガイドラインの詳細については、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】DX推進ガイドラインとは?経営戦略とITシステムの再構築で実現するビジネスモデル変革

2.ITシステムの指標化と診断スキームの構築

自社がどれくらいDX推進できているのか、必要な作業を実施できているのかを把握したい経営者も少なくないでしょう。経産省および独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)は、ITシステムを指標化し自己診断できるスキームを構築しました。

それが「DX推進指標」です。DX推進指標について、経産省は以下のように説明しています。

この「DX推進指標」は、DX 推進に向けて、経営者や社内の関係者が、自社の取組の現状や、あるべき姿と現状とのギャップ、あるべき姿に向けた対応策について認識を共有し、必要なアクションをとっていくための気付きの機会を提供することを目指すものである。

本指標は、自己診断を基本とし、各指標項目について、経営幹部、事業部門、DX 部門、IT部門等が議論をしながら回答することを想定している。

出典:「DX推進指標」とそのガイダンス 

DXを実現するために必要なアクションについて認識を共有するとともに、自社の対応策について自己診断できるようにすることがDX推進指標の策定目的となっています。

このDX推進指標の詳細については、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】

3.ITシステム構築のコスト・リスク低減方法の策定

可能な限り安価で工数の少ないシステム構築も求められます。多くの企業では、データ活用しやすい新たなシステムを構築することがDX実現の鍵となっています。老朽化したシステムを維持するにも多大な費用を要し、急激に変化する外部環境へ対応することも困難でしょう。

そのため、システム構築のコストやリスクを低減するための方法論も必要です。先にご紹介したDX推進ガイドラインやDX推進指標は、こうした観点からも有効と考えられます。なぜならDX推進に向けたあるべき手順を踏むことで、不要なコストやリスクを回避できるからです。

こうしたアクションプランの策定は、DXレポートの提言を具体化したものでもあります。DXレポートで「2025年の崖」という問題意識を明確にしたことを受けて、DX推進に必要な作業をまとめたと位置づけることができるのです。今後DX推進に取り組む企業は、これらの資料を読み込む必要があるでしょう。

4.ユーザ企業・ベンダー企業のあるべき関係構築を促す環境整備

ユーザ企業によるベンダー企業への「丸投げ」は、DXレポートでも説明されたように日本のITシステムとビジネスをめぐる大きな問題となっています。

ユーザ企業にはシステム構築と保守・運用に対する当事者意識が根づかず、ベンダー企業も老朽化したシステムの維持に精一杯でユーザ企業にその刷新を提案する余裕を持てません。

DXレポートに始まりDX推進指標やDX推進ガイドラインなどへ連なる施策は、こうしたユーザ企業とベンダー企業の関係を変えることも目的の一つに含まれています。DX推進にはユーザ企業とベンダー企業の対等かつ健全な関係と協業がなくてはなりません。

5.DX人材の育成・確保に向けた環境整備

DX推進には、最新のデジタル技術とビジネスの双方に精通した人材が求められます。IT人材が不足する現状で、そうしたスキルフルな人材を育成・確保することは容易ではありません。

経産省は、日本経済全体でそうしたDX人材を育成・確保すべく環境整備を進めてきました。例えば、以前から存在する情報処理技術者試験や情報処理安全確保支援士といった試験は、専門的な人材を育成し確保することが目的の一つです。また、スキル標準の普及に向けてDX人材の育成・採用に向けた指針として「デジタルスキル標準(DSS)」を2022年12月に公表しています。

そのほかに新たな試みとして、「マナビDX」が挙げられます。これはデジタルスキルを身につけるためのポータルサイトで、居住地域や年齢などの条件なく誰でもデジタルに関する知識やスキルを獲得できます。また独創的なアイディアや技術を備えたIT人材発掘・育成機会として、講習会やコンテストを実施する「未踏事業」も経産省やIPAの主催で実施されています。

DX人材に必要なスキルやマインドセット、育成のポイントについては以下の記事をご覧ください。

【関連記事】DX人材とは?必要な役割やスキル・マインド、人材育成のポイントを解説

日本のDX推進を促す政策

日本のDX推進を促すために、経産省やIPAを中心に多種多様な施策が打ち出されてきました。ここまでご紹介した施策以外に、DX銘柄やデジタルガバナンス・コード、あるいは2023年現在の岸田内閣の目玉スローガンである「新しい資本主義」におけるDXの位置づけについてご説明します。

DX銘柄・DXセレクション企業・DX認定企業の選定

DX銘柄とは、DXに取り組む企業を経産省と東京証券取引所(東証)が選定・公表する取り組みです。デジタル化によって企業価値を向上させたと認められる企業を公表することにより、企業のDX推進を強く後押しすることが目的となっています。

また、DX銘柄の中小企業版としてDXセレクション企業もあります。DX銘柄は上場企業が対象ですが、DXセレクション企業は中堅・中小企業を対象としており、業界や地域におけるDXのモデルケースとすることを目指しています。

さらに、DX認定企業という仕組みもあります。これは、次にご紹介するデジタルガバナンス・コードに基づいてデジタル化に取り組む企業を認定する制度です。経産省やIPAが望ましいと考えるDX推進のやり方に沿う企業にお墨つきを与えることで、企業のDX推進を促す目的があります。

これらの取り組みに関する詳細は、以下の記事をご覧ください。

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デジタルガバナンス・コードの策定と活用推奨

デジタルガバナンス・コードは、DX認定制度のために設けられた認定基準です。企業価値の向上に向けて、経営者が実践していくべき内容がまとめられています。対象となる企業は、大企業や中小企業といった企業規模、法人・個人事業主といった形態を問わず、広く一般の事業者です。

デジタルガバナンス・コードは以下の4つの柱から構成されています。

  • ビジョン・ビジネスモデル
  • 戦略(組織づくり・人材・企業文化に関する方策、ITシステム・デジタル技術活用環境の整備に関する方策)
  • 成果と重要な成果指標
  • ガバナンスシステム

企業には、これらの柱を意識してDXを推進することが推奨されます。目的を見失ったり、不必要な作業に工数を割いたりするリスクを回避しやすくなります。

このように、デジタルガバナンス・コードは、企業がDXを進めるための具体的なガイドラインを提供し、その取り組みを評価し、その成果を広く社会に示すことで、他の企業のデジタル化を促進する役割を果たしています。

デジタルガバナンス・コードの詳細については、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】DX認定制度&デジタルガバナンス・コードとは?概要と認定を受けるメリット

「新しい資本主義」におけるDX推進への意識

2023年現在の岸田内閣のスローガンである「新しい資本主義」でも、DXが中心施策の一つとして挙げられています。その実行計画によると、DX投資促進に向けた環境整備としてデジタル市場の環境整備やサイバーセキュリティなどと並び、具体的に「中小企業等のDX」「医療・介護のDX」「建築・都市のDX」の3点が記載されています。

経営課題を診断するツールの普及、電子カルテ情報の標準化、土地や建物に関する固有の識別番号(不動産ID)の活用など、断片的な記述にはなっていますが、DXに向けた岸田総理および政府の強い思いをくみ取ることができます。

DX実現のために今からできる3ステップ

「2025年の崖」の問題と対策の方針についてはあらかたわかったものの、「DX実現とはいえ、具体的に何をすればいいか分からない」という方も少なくありません。そこで、DXの方針をより具体的に定めるために企業ができることを3点ご紹介します。

1.他社のDX事例を知る

まずDXのイメージを掴むためにも、自社が所属する業界におけるDXの先端事例を知ることがおすすめです。他社事例のやり方をそのまま自社に適用できる可能性もありますし、自社に合わせてカスタマイズすることで検討ポイントの抜け・漏れを減らすことができるでしょう。

以下の記事では、業界別にDX事例を26個まとめています。まずはこちらの記事をお読みいただき、気になった企業の事例を深く調べるところから始めてみてはいかがでしょうか。DXの具体的なイメージを掴むと、新たなアイディアが思いつくかもしれません。

【関連記事】【業界別DX事例26選】成功事例から学ぶビジネス革新の方法論

2.DX事例から「自社に応用できそうな施策」をブレストする

上にご紹介したような事例記事を見つつ、「自分の企業なら何ができるか」を関係者とブレストするとよいでしょう。そうした議論を通じて、現実的なDX推進のスコープを定めるようにします。

事例記事などを参考に、他社の成功事例を見つつ、「自分の企業なら何ができるか」を考えることは、DXの初期段階で非常に有効です。これにより、自社の強みや弱み、そして可能性を理解し、デジタル化の方向性を見つけることができます。関係者とのブレストを通じて、自社のビジネスモデルや業務プロセスへデジタル技術をどのように活用するのか、方向性を考えられるでしょう。

一方で、DXは大規模な変革を伴うため、全てを一度に変えることは現実的ではありません。そのため、現実的にDXが推進できそうなスコープを定めることが重要です。特定の業務プロセスのデジタル化、新たなデジタル製品やサービスの開発、あるいは特定のデータ分析能力の強化などが挙げられます。

3.DXに取り組むためのチームや人材を確保する

DXを実現するためには、データ分析やデジタル技術の専門知識を持つ人材が必要です。

しかしながらDX人材は市場で非常に高い需要があり、確保が困難な状況が続いています。そのため、企業は自社の人材を育成し、場合によってはDX人材を内部で育成することが求められています。

DX実現のために必要な要素を洗い出し、それを補うためのDX人材を確保すること、そして内製化するのか、外部リソースで補うのかを決めることが重要となります。DX人材の育成と内製化については、以下の記事をご覧ください。

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【困ったときは】DX支援企業と壁打ちしながらDXを推進する

DXを進める過程では、技術的な問題や組織的な課題、人材不足など、さまざまな困難が生じることがあります。そんなときにDX支援企業と壁打ちやディスカッションをしてみるのもおすすめです。

DX支援企業は、多くの企業のDX推進を支援してきた経験と知識を持っています。そのため、直面する問題に対する新たな視点を提供してくれることでしょう。壁打ちを通じて、自社の課題を深く理解し、具体的な解決策を見つけることが可能となります。

また、DX支援企業との壁打ちは、自社のDX推進の方向性を再確認するよい機会です。自社のビジョンや戦略の適切さを第三者の視点から評価してもらうことで、より良いDX推進の道筋を描くことができます。

DXは短期的に実現できるものではなく、試行錯誤を繰り返しながら進めるものです。困ったときは、DX支援企業と壁打ちをして、ともに問題解決の道筋を探してみましょう。

まとめ:「2025年の崖」を回避するためにもいち早くDXを推進しましょう

経済産業省のDXレポートでは、日本企業の多くがDXを実現できなかった場合のリスクを「2025年の崖」と称し、崖を乗り越えるための対応策についてもまとめられている、というのが本記事の内容でした。

DX推進は後回しにされがちな取り組みですし、短期的なプロジェクトにならないことが多いです。また、方向性ややるべきことが見えてきたとしても、今度はそれを推進させる組織体制の構築や人材育成・人材確保などが求められます。

ゆえに、DX推進は「まず何をするべきか」が分からなくなることが多いと言えるでしょう。

そのような際は、情報収集もかねて、弊社のようなデータ活用によるDX推進を支援する企業様と一度ご相談してみてください。業界内でのDXトレンドや他社様の動きなどにキャッチアップしつつ、自社ではどのような舵を切るべきなのかがじんわりと見えてくると思います。

本記事がDX推進の後押しとなっていただけたら幸いです。


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