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2022年版ものづくり白書の内容のうち、製造業および人材動向やデジタル技術・DX、カーボンニュートラルに関わる記述をご紹介します。製造業におけるDXやデジタル技術の活用が進んでおり、「活用するか否か」ではなく「どのように活用するか」が重要になってきています。また、セキュリティ対策も大きな課題です。製造業におけるデジタル関連の現状・可能性・課題などについて解説します。
※2021年版ものづくり白書はこちらからお読みいただけます。
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まずは製造業全体の業績動向を整理します。DXには決して小さくない投資が求められるため、業績動向がDX推進に大きな影響を与えると考えられます。
全国企業短期経済観測調査(短観)の業況判断DIは、2022年に入って減少傾向にあります。2020年上半期の急激な落ち込みの反動として、2020年下半期から2021年にかけて大企業を中心に回復傾向でした。この回復傾向が落ち着き、逆に減少に転じつつあります。
一方で、営業利益は回復傾向が続くと考える企業が多くなっています。2021年度には半数近くの企業で回復に転じ、今後3年間の営業利益も約半数の企業において増加する見込みです。
鉱工業生産指数は2020年5月の底打ち後、回復基調にあったものの、2021年後半からは世界的な半導体不足をはじめ原材料価格の高騰、新型コロナウイルスの感染拡大などの要因により悪化に転じました。
特に半導体不足については、白書のなかでページを割いて解説されています。米国調査によると、製造業が確保する半導体の在庫量中央値は、2019年の40日から2021年には5日未満に減少しています。わが国の製造業の6割以上が「どちらかというと、マイナスの影響を受けた(受けている)」と回答するなど、生産への影響が顕在化しつつあります。
設備投資額は2020年前半に大きく落ち込んだ後、2021年度にかけて回復基調にあります。現在でも2019年のピーク時に比べると10兆円ほど低い水準が続いてはいるものの、国内・海外とも今後3年間で設備投資の見通しを「増加」「やや増加」とする企業の割合が増えています。
以前と比較するとDX関連の設備投資が増えている傾向にあります。2015年と2020年の設備投資目的と比較すると、特に無形固定資産において「DX関連(工場のIoT化等)」「DX関連(テレワーク等)」と回答する企業の割合が10ポイント前後伸びています。
新型コロナウイルスの感染拡大やウクライナ情勢などを受け、製造業にも逆風が吹き付けています。その一方でDXやカーボンニュートラルなど、変革のチャンスも出てきています。事業環境の変化について白書の内容をご紹介します。
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一大産油国であるロシアのウクライナ侵攻により、原油先物価格が2022年に入って高騰しました。原油の大半を輸入に依存している日本、特に原油を直接原材料として利用している素材系業種にとって生産コストの増加につながりました。
また新型コロナウイルスの感染拡大による工場閉鎖、米中の対立による調達リスクの増大などの要因により、2020~2021年頃から世界的に半導体不足が顕著となりました。ほかにもハーネスや尿素など、さまざまな部素材不足が発生して日本の製造業事業者にも幅広く影響を与えています。
これら原油価格の高騰や部素材不足は、製造業者の利益の圧迫や生産量の抑制などマイナスの影響をもたらしかねません。政府は新たな調達先の確保やサプライチェーンの強靱化など、問題の長期化も視野に対策を検討・実施しています。
製造業でもデジタル化の重要性が広く認識される一方で、IT投資自体は横ばいが続いています。しかしIT投資で解決したい課題として「働き方改革」「社内コミュニケーション強化」といった従来の内容から、「ビジネスモデルの変革」が増加しており経営者の意識の変化が伺えます。
デジタル化の進展によって、サイバーセキュリティ対策の強化も急務です。企業・団体におけるランサムウェア被害件数が2020年下期から2021年下期で4倍以上と急増しているのに対し、中小企業を中心に対策が不十分であるという課題が浮き彫りになっています。
関連:DX時代に求められるサイバーセキュリティの体制構築&人材確保の方法とは?
情報処理推進機構は、中小企業のセキュリティ対策に必要不可欠な「システムの異常監視」「緊急時の対応支援」「簡易サイバー保険」「相談窓口」といったサービスをワンパッケージで安価に提供することを要件としてまとめました。こうした要件を満たす民間サービスを「サイバーセキュリティお助け隊サービス」として登録・公表しています。
製造業に関連する近年の重要キーワードとして、カーボンニュートラルが挙げられます。既に150を超える国・地域が将来的なカーボンニュートラルの実現を宣言しており、日本も2050年までに実現することを宣言しました。
カーボンニュートラルのような気候変動への対策を、コストではなく経済成長の機会と捉え、日本は「グリーン成長戦略」を策定して「経済と環境の好循環」を目指しています。エネルギー関連産業、輸送・製造関連産業、家庭・オフィス関連産業を中心に重要14分野を挙げ、各分野で目標を示した上で、民間企業支援を行っていくことを表明しています。
製造業でも、サプライヤーを含めたサプライチェーン全体の脱炭素化やCO2排出量・削減量を可視化する取り組みが広まっています。
関連:カーボンニュートラルとは?2050年に日本が実現を目指す環境目標と進め方
デジタル化やDXの大きな課題として組織づくりや人材確保・育成があります。予算を投じても、専門知識を持った人材がいなければデジタル技術を使いこなし企業変革を実現することは難しいためです。製造業をめぐる雇用の現状と能力開発について整理します。
製造業と人材というテーマで見ると、就業者の減少と高齢化が課題です。約20年間で157万人減少しており、特に34歳以下の若年就業者が121万人減少しています。一方で65歳以上の高齢就業者は33万人増加し、割合も4.7%から8.7%へと2倍弱に上昇しました。
この点を背景に、人材育成において「指導する人材が不足している」と回答した企業が6割を超えており、技能継承が課題であると推測されます。技能継承の取り組みとして、現役社員ではなく選抜した退職者を雇用延長・再雇用によって指導者とするケースも増えています。
製造業でもデジタル技術の活用は進展しており、3分の2がものづくりの工程・活動において「活用している」と回答しています。そのうち5割を超える企業が「生産性の向上」に効果が出ていると回答しています。
人材関連で見ると、「自社の既存の人材に対してデジタル技術に関連した研修・教育訓練を行う」が約5割、「作業標準書や作業手順書の整備」、「OFF-JTの実施」と回答した企業がそれぞれ約4割となっています。
デジタル技術の活用によって既存の工程を省力化できるのみならず、製造業における大きな課題である職人技術の継承もできるようになっています。白書には、「職人のカン」をデジタル技術によって可視化して品質の平準化と技能の継承を実現している企業や、現場業務に精通した社員がデジタル技術導入の中心となっている企業が事例として掲載されています。
技術伝承事例:AIが導く“伝統工芸品の技術伝承”
DXやデジタル領域に関わる人材育成支援として、白書では「数理・データサイエンス・AI教育の推進」「マイスター・ハイスクール」「DX等成長分野を中心としたリカレント教育の推進」の3つが挙げられています。
数理・データサイエンス・AI教育の推進とは、教育体制の強化と学校の教育プログラムの認定の2つがあります。モデルとなる教育カリキュラムの普及・展開や、国際競争力のある博士課程教育プログラム構築などを推進するとともに、大学・高等専門学校が実施する教育プログラムを文部科学大臣が認定する制度が検討されています。
マイスター・ハイスクールは、高度な職業人材を育成する専門高校の指定と教育課程の刷新を指しています。最先端の職業人材育成を推進するため、専門高校と産業界、地方公共団体が一体となって取り組みを進めます。2021年度には、13校をマイスター・ハイスクールに指定しました。
リカレント教育の推進は、特に新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた就業者・失業者等に対して、DXをはじめとする成長分野についての再教育を実施します。
関連:リスキリングとは?DX時代の人材育成に必要な考え方と方法論
2022年ものづくり白書では、「ポストコロナ」を見据えた記述が増えています。そんななかでもデジタル技術やDX、カーボンニュートラルは重要項目であり続けており、製造業事業者にとっても引き続き取り組みが求められています。激しい環境変化に合わせて自社を変革するチャンスがこうした領域には存在します。
ものづくり白書を一読して製造業をめぐる大きな流れを把握し、自社の方向性を見極める参考にすることをおすすめします。
▼DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧ください
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