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DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するには、企業変革のためのデジタル化に対する要件を形にするエンジニアの存在が必要不可欠です。エンジニアがいなければ、社会実装に繋がっていかないため、いくらDXと言っても絵に描いた餅となってしまいます。いわばDXの生命線はエンジニア人材であると言っても過言ではなりません。
その一方で、日本社会ではエンジニア不足が深刻化しています。
今回の記事では、エンジニア需要の高まりと供給不足について整理したうえで、「どのようなエンジニア」がDXの実現に必要となるのかご説明します。
▼DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧ください
「DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?意義と推進のポイント
IT人材の不足によって、日本経済に多大な損失を生むリスクが存在しています。経済産業省の調査結果を参考に、IT人材不足の現状と「2025年の崖」と呼ばれる危機的な未来予測について説明していきます。
経済産業省が調査を実施した2018年時点で、既にIT人材の供給は需要に対して22万人不足しています。その後は供給も需要も拡大するものの、需要の伸びが大きいと仮定した場合、2030年時点で最大約79万人にまで不足が拡大すると見込まれています。
さらに深刻なのが、AIやIoTを活用したITサービスの市場=「先端IT市場」に従事する人材の不足です。従来型ITシステムの受託開発、保守・運用サービスなどに関する市場=「従来型IT市場」に従事する人材が、先端IT人材としてスキル転換を図らない限り、2030年時点では需要の半分程度しか満たせないとの予測が出ています。
今後の需要や供給推移については推測でしかありませんが、いずれにしてもエンジニアを含めたIT人材の不足が解消されない可能性は高いと考えられます。
先端IT人材の不足は、DX推進の阻害要因になりえます。DXを推進するためには、会社の製品・サービスやビジネスモデル、市場構造のみならず、最新のIT動向にも精通したマルチな知識をもった人材が欠かせないためです。ネームバリューのある企業でもこうした人材の採用は困難であり、そうかと言って社内で育成するのも容易ではありません。
結果として、DXを見据えてITシステムを再構築したくても、社内の人材不足で実現できない企業が多くなると考えられます。経済産業省によると、何十年も前に導入された「レガシーシステム」を刷新できず、負担となっている企業が少なくありません。
経済産業省は、既存システムのブラックボックス化を問題視しています。既存システムが事業部門ごとに構築されて全社的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズで複雑化していたりすることで、DXが進みにくいのです。
こうした問題点を解決できない場合、2025年以降に最大で年間12兆円もの経済損失を発生させる可能性があります。これを「2025年の崖」と呼び、日本企業がDXを実現できないリスクとしています。なお、現在でもシステムの維持管理費の高騰やセキュリティリスクの高まりなどにより、年間4兆円の経済損失につながっていると試算しています。
DX推進にはスキルのあるIT人材が欠かせず、推進できずにビジネスモデルを転換できない場合、一企業の枠を超えて日本経済の機会損失になりかねないのです。
【関連】DXを実現できないと転落する「2025年の崖」とは?政府の恐れる巨額の経済損失
IT人材が必要と言っても、過去から職種として存在する既存のITシステムの運用者、PCなどのキッティングを行っているようなシステムエンジニアだけを集めればいいわけではありません。DX推進のためには、システムエンジニアの知識が基本前提にありつつ、エンジニアを含めた多様なIT人材・デジタル人材が必要となってきます。
情報処理推進機構(IPA)の調査では、DX推進に必要な人材を6種類に定義しています。
人材の呼称例 | 人材の役割 |
プロデューサー | DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材(CDO含む) |
ビジネスデザイナー | DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進などを担う人材 |
アーキテクト | DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計できる人材 |
データサイエンティスト/AIエンジニア | DXに関するデジタル技術(AI・IoT等)やデータ解析に精通した人材 |
UXデザイナー | DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材 |
エンジニア/プログラマ | 上記以外にデジタルシステムの実装やインフラ構築などを担う人材 |
このように、プロジェクトリーダーとなるプロデューサーから実装担当のエンジニア/プログラマまで、多様な人材を揃えてこそDXの推進が可能となります。
このうち、いわゆるエンジニアと呼ばれる役割は「データサイエンティスト/AIエンジニア」と「エンジニア/プログラマ」の2つであると考えられます。実装やインフラ構築、DXに関するデジタル技術の導入やデータ解析がDXには必要です。
経済産業省が先端IT人材と従来型IT人材の2種類にIT人材を分けていたように、DX推進に際しては、一般的なエンジニアはもちろんですが、AIやIoT、データ解析に通じた人材もプロジェクトに加えるべきでしょう。
DXを推進するには、エンジニアだけ揃えればよいわけではありません。先ほど紹介した6種類の人材のように、DXの概要を企画・設計する人材、それを詳細設計に落とし込む人材、実装する人材など、多様な人材の採用・育成が求められます。
どのようなDXを推進するかによって、プロジェクトに加えるべき人材のタイプも変わってきます。
DX推進に貢献できるエンジニアは数多く存在しますが、ここでは例として「インフラエンジニア」、「機械学習エンジニア」、「セキュリティエンジニア」の3種類のエンジニアのタイプを紹介します。
インフラエンジニアは、ITシステムの土台であるサーバーやネットワーク、データを格納・蓄積するデータベースやDWH(データウェアハウス)など、システムのインフラに相当する部分に従事するエンジニアの総称です。
先に紹介した6種類の役割の中でも、エンジニア/プログラマの役割として「インフラ構築」とあります。DX推進に際しても、既存のITシステムと同様にインフラの整備や再構築が欠かせません。最新のデジタル技術やデータ解析を円滑に行うためにも、有能なインフラエンジニアを一定程度揃える必要があります。
関連:DWHをデータ処理基盤として利用する~DXプロジェクトで欠かせない大量データの扱い方~
関連:企業DX推進に必要な4つの基盤と橋渡し役の存在
機械学習エンジニアは、コンピューターにデータ解析させる内容を設計・実装したりAIを開発したりするエンジニアの総称です。解析したいデータの特徴を確認して加工し、その特徴や解析の目的に応じた機械学習のアルゴリズムを選定して、パラメーターの調整を繰り返しながら解析結果の評価を行います。
AIやビッグデータ解析技術の発展によって、DX=ビジネスモデルの変革につながるようなデータの蓄積・分析が行いやすくなっています。金融や保険、エンターテインメントなど多種多様な業界で機械学習の利用が進んでおり、機械学習エンジニアの需要は高まっています。DX推進において、中心的な役割を担うことの多いエンジニアと言えるでしょう。
関連:機械学習プロジェクトを推進するにあたって大切なこと~DX推進時の「企画・PoC 」フェーズの落とし穴にはまらないために~
セキュリティエンジニアは、ネットワークやハードウェア、ミドルウェア、アプリケーションを外部のサイバー攻撃やコンピューターウイルスなどから守る役割を担うエンジニアです。システムの脆弱性を調査したり、新たなセキュリティ機器・アプリケーションの導入を行ったりと、セキュリティに関して広範囲な業務を行います。
DX推進のためのITシステム構築に際しては、システムが高度かつ複雑になることも多いため、セキュリティの担保が必要不可欠です。一度不正アクセスや攻撃を受けると影響範囲も大きいため、セキュリティエンジニアの存在は極めて重要と考えられます。
上記3種類のエンジニア以外にも、推進するDXの内容によっては多様な役割のエンジニアを必要とする可能性があります。しかし、いずれにしても求められるのは製品・サービスやビジネスモデルのように、ビジネスについても知識や経験を持つ人材です。
エンジニアは主に実装を担当しますが、DXは製品・サービスやビジネスモデルの変革という大きな目的を持っています。それらの部分について知識も関心もないと、DXが何のためのものなのかという根幹の部分が抜けて、ITシステムの構築自体が目的化してしまうかもしれません。繰り返しになりますが、目的があってこそのDXであることをエンジニアも理解する必要があります。
IT人材の不足がDXの阻害につながりかねない中で、スキルのあるエンジニアの確保は企業にとって非常に大切なことです。実装を担うエンジニアの種類も多様であり、さらにDXプロジェクトを推進するためには、エンジニア以外のさまざまなIT人材も必要であることを理解した上で、自社のDX推進に必要な人材を外部から採用したり内部で育成したりと、確保のための動きを戦略的に進めることがポイントです。
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