パーソナライズとは、顧客の属性・行動履歴といったデータを基にニーズを把握し、適切な商品・サービスなどを提供する手法のことです。自社のデジタルマーケティング戦略においてパーソナライズを適切な形で活用するためには、何を意識すればよいのでしょうか?
この記事では、パーソナライズとは何か、メリットや活用方法などを解説します。活用の具体例も紹介するので、自社のマーケティング活動にお役立てください。
パーソナライズとは
先述のとおり、パーソナライズとは顧客の属性・行動履歴といったデータを基にニーズを把握し、適切な商品・サービスなどを提供する手法のことで、顧客満足度の向上や顧客単価の向上などを目的として行われます。
パーソナライズが重要になった背景
パーソナライズが重要になった背景の一つとして、マスマーケティングの限界があげられます。従来は、テレビなどで不特定多数の顧客に対して情報を発信することで、商品やサービスなどを販売していました。最近では、インターネットが普及したことで、さまざまなサービス製品が乱立。顧客側にとっては選択肢が増え、複数の商品やサービスを顧客自らが比較できるようになりました。
また、技術面での進歩も影響していると考えられます。AIや機械学習、データサイエンスがビジネスに取り入れられたことで、ある程度顧客の行動を機械的に推測したりパターン化できるようにもなりました。ただ、顧客側もざまざまな体験をする中で慣れが生じてきています。単なるレコメンドでは顧客の心を動かすことも難しくなっています。そのような背景から顧客の行動パターンやニーズ・嗜好性に合わせてマーケティングを行うパーソナライズに、注目が集まるようになりました。
BtoCでのパーソナライズ活用
BtoCでのパーソナライズの活用例として、ネットフリックスなどの動画配信サービスの「レコメンド」があげられます。レコメンドとは、顧客の購買履歴、視聴履歴などのデータを基に、関連商品を「おすすめ」として紹介する手法のことです。個人消費者に向け、離脱されることなく、継続的な購入を促すための戦略として活用されています。
関連:レコメンドとは?マーケティングで活用できるレコメンドシステムを徹底解説
BtoBでのパーソナライズ活用
BtoBのマーケティングとして、営業マンが飛び込みで訪問して営業するアウトバウンド型のスタイルから、見込み顧客を育成するインバウンド型のスタイルに変更する企業が増えています。メールマガジンや自社メディアで有益な情報を発信し、見込み顧客のニーズを把握し、優良顧客へと育成するための戦略として活用されています。
パーソナライズと「カスタマイズ」「レコメンド」の違い
パーソナライズとカスタマイズやレコメンドを混同している人も少なくありません。しかし、この三者には明確な違いがあります。
パーソナライズとは、企業側がそれぞれのユーザーの属性、趣味嗜好、行動データ履歴といったデータにあわせて情報提供することを指します。一方カスタマイズとは、ユーザーが自分自身で必要な情報などを設定します。レコメンドとは、いわゆる「おすすめ」のことです。ユーザーの属性などをもとにして、同じ傾向にある人へ情報提供します。
詳細については、下記の記事にて紹介していますので併せてご覧ください。
関連:レコメンドとは?マーケティングで活用できるレコメンドシステムを徹底解説
パーソナライズと従来のマーケティング手法との違い
従来のマーケティング手法とパーソナライズにはどのような違いがあるのでしょうか。以下で、従来のマーケティングとの違いを解説します。
マスマーケティングとの違い
マスマーケティングとは、テレビCMなどのように企業側が伝えたい情報を不特定多数のユーザーに発信するマーケティング手法です。これまで、ユーザーは企業から与えられる情報を受け取るだけでしたが、インターネットやスマホなどの普及によって、ユーザー自身による情報選択が可能になりました。そのため、マスマーケティングだけでは商品・サービスなどが売れにくくなっています。
マンパワーによるマーケティングとの違い
見込み客の発掘は従来、ダイレクトメールの送付や展示会・イベントの開催などのマンパワーを利用したものが主流でした。しかし、インターネットが発達したことにより顧客の購買行動は多様化しており、従来の見込み客発掘手法が通用しにくくなっています。パーソナライズは顧客一人ひとりのニーズにあったアプローチが可能なため見込み客の発掘、育成に効果的です。
パーソナライズすることのメリットとは?
パーソナライズすることで、どのようなメリットがあるのか具体的に解説します。
ユーザーのニーズに答えられる
顧客の属性や購買履歴などのデータを分析することで、顧客の関心が高い情報を得られます。発信した情報に対して顧客からのフィードバックがあると、それらを基に顧客のニーズに合った商品開発が可能となります。
顧客の中には「自分は何が必要なのか」を理解していない人もいます。パーソナライズを活用することで、顧客が必要な商品やサービスを気付かせてあげることも可能です。潜在顧客を発掘することで、売上の向上につながります。
顧客との信頼関係を構築できる
パーソナライズでは、顧客それぞれの属性や行動、ニーズなどにあわせた情報提供が可能です。パーソナライズ化された情報を提供し続けることで特別感が高まり、顧客体験(CX)や顧客満足度の向上にもつながります。また、ユーザーからのフィードバックを受けて、顧客の要望に沿った商品・サービス開発も可能です。これにより、顧客の信頼感も高まります。
関連:カスタマーエクスペリエンス(CX)とは何か?成功事例や向上のポイントも解説
効率的なマーケティング施策ができる
効率的なマーケティングには、ターゲットとなるユーザーの情報が必要です。パーソナライズでは、顧客それぞれに対して最適化した情報を発信するという特性上、活用するほど多くの情報を蓄積していきます。不特定多数の顧客ではなく個人に注目することで情報の精度は高まり、顧客一人ひとりが必要とする情報・コンテンツを提供できるようになります。
ユーザーの継続利用が期待できる
ユーザーのデータを基に顧客のニーズに合った情報が配信され、継続して商品やサービスを利用してもらえることが期待できます。顧客が関心のない広告を繰り返し配信して、悪いイメージを与えることなどによる離脱を避けられます。継続的に顧客に対して有益な情報を提供することで信頼関係を築き、ファン化させることで、売上の安定にもつながります。
顧客の囲い込みがしやすくなる
顧客と良好な関係を築くことで、継続的な商品・サービスの利用や顧客単価のアップなどが見込めます。既存顧客を効率的に囲い込めるため、安定的な売上や利益につなげやすいことは大きなメリットです。また、パーソナライズの活用で潜在顧客から見込み顧客、既存顧客へのナーチャリングを従来よりも少ない手間でおこなえます。
パーソナライズのデメリットとは
さまざまなメリットのあるパーソナライズですが、デメリットも存在します。ここでは、3つのデメリットについて解説します。
顧客が望んでいる情報とは限らない
パーソナライズでは、顧客の詳細なデータを収集・分析して顧客一人ひとりのニーズにあった情報を提供しますが、それが必ずしも顧客が望んでいる情報とは限りません。人の好みは常に同じではなく、時間の経過やタイミングによって変化することもあります。そのような変化に気づかずに情報を提供し続けることで、信頼感が低下し顧客が離れてしまう可能性もあります。
顧客が取得できる情報が偏る
パーソナライズは顧客の趣味嗜好、属性などにあった情報提供ができることが強みですが、設計によっては提供する情報が偏る可能性もあります。同じような情報ばかり提供してしまい、顧客が受けとる情報の幅が狭くなってしまうケースも少なくありません。情報が制御されていると思われることで不信感を抱かれて、顧客が離れる場合もあるため注意しましょう。
検索エンジン対策(SEO)とのバランスには注意が必要
多くの人に自社コンテンツをみてもらう目的で、検索エンジン対策(SEO)するケースも多いでしょう。しかし、上位表示されることを重視してSEO対策(例:対策するキーワードをコンテンツに盛り込むなど)をおこなった結果、ユーザーが必要とするコンテンツ内容から離れてしまう可能性もありますので注意が必要です。
パーソナライズの成功事例
企業の中には、パーソナライズにより顧客の安定的な確保につなげているケースもあります。ここでは、その事例を詳しく紹介します。
レコメンド機能でおすすめ「Amazon」
ECサイトの「レコメンド機能」としては、Amazonが代表的な例と言えます。顧客がある商品をAmazonで購入する際、関連商品や一緒に売れている商品が表示されます。Amazonが提供しているプライムビデオにも、「おすすめ機能」があります。1つの作品を視聴すれば、その作品と関連度の高い作品が次々と紹介される仕組みになっています。
顧客に合ったクーポン表示「日本旅行」
旅行代理店の日本旅行では、旅行計画を立てるために同じサイトを複数回訪問した顧客に対して、限定クーポンを配布する戦略を実施しました。これは「顧客のタイミング」をパーソナライズ化した戦略と言えます。顧客の訪問データを基に、クーポンがサイト上に表示される仕組みで、この機能により顧客の購買意欲が高まる効果が得られています。
「香り」に基づく商品レコメンド「SABON」
SABONでは、ECサイトでも実店舗と同じ体験を顧客に提供できるように、「香り」に基づく商品のレコメンドを行なっています。商品の詳細ページに、同じ香りを持つ商品をおすすめすることで、香りのイメージ化がはかれています。
この戦略はコールセンターで「この香りと同じ商品のものはないか?」という問い合わせがあったことをきっかけとして始められました。この機能により、顧客が好きな香りを簡単に見つけ購入できます。
その他、パーソナライズの事例についてはこちらの記事もぜひご覧ください。
【業種別】パーソナライズの成功事例10選!活用方法と効果を解説
パーソナライズを活用する方法
パーソナライズを活用する方法はいくつかあります。ここでは、具体的な方法を挙げていきます。
ECショップ
ECショップでは、顧客の購買履歴を基におすすめの商品を紹介する「レコメンド機能」を活用できます。ECショップ内で数多くある商品の中から自分に合った商品を見つけ出すのは、時間と手間がかかります。レコメンド機能を使えば、顧客の興味のある商品を絞り込んで紹介できます。
メールマガジン
メールマガジンは今やビジネスに欠かせないツールです。顧客にきちんと読んでもらえるメールマガジンを配信するためには、顧客が関心のある情報を提供する必要があります。そのためには、登録読者全員に同じ内容を配信するのではなく、年齢・性別・地域といった情報に基づいた情報を配信します。
動画配信
スマートフォンが普及し、動画を視聴する人が増えてきました。顧客一人ひとりに合わせた最適な動画配信が行われるなど、パーソナライズ化された動画は訴求効果が高く、自社の商品やサービスなどを認知してもらえる可能性が高くなります。メールマガジンと同じく動画配信でも購入履歴・性別などのデータを基にニーズを把握した上で配信される必要があります。
SNS
LINEのタイムラインやFacebookなどのSNSでもパーソナライズが活用されています。過去に顧客が閲覧・購入したことのある商品が、SNS上で表示され、さらなる購入を促します。Twitterでフォローしている人のデータを基に、イベントやニュースが配信されるのもパーソナライズの活用です。
まとめ
インターネットが普及し、消費者の価値観が多様化している中で、商品やサービスなどの購入につなげるためには、顧客に合った情報を提供することが重要です。顧客のデータを基にパーソナライズ化された施策をすることで、顧客満足度や売上の向上につながります。
パーソナライズの実施には、顧客情報を一元管理するCDP/プライベートDMPが必要不可欠です。「Rtoaster」は、パーソナライズに必要な顧客データの収集・蓄積から分析、活用までの機能を取り揃えたCDP/プライベートDMPです。機械学習を用いた高度な分析サービスで、顧客の行動を正確に把握できます。多くの上場企業に導入いただいております。これからパーソナライズ化を行うなら、多様な機能を搭載した「Rtoaster」をご活用ください。
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最終更新日:2022年9月6日
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