カゴ落ちとは、ECサイトに訪れたユーザーが商品を買い物カゴ(カート・バスケット)に入れたが、精算せずにサイトから離れてしまい、購入に至らなかったことを意味します。ECサイトの売上が伸びない原因の1つに「カゴ落ち」があります。常にカゴ落ち対策に苦慮したりしているECサイト担当者も多いでしょう。この記事では、カゴ落ちの原因や対策について詳細に解説します。
カゴ落ちの基礎知識~カゴ落ちの実態~
カゴ落ちをまだ知らない人、どれだけのロスが発生しているかを把握できていない人もいるのではないでしょうか。まずは現状を解説します。
カゴ落ちとは
先述のとおり、カゴ落ちとはECサイトに訪れたユーザーが商品を買い物カゴ(カート・バスケット)に入れたが、精算せずにサイトから離れてしまい、購入に至らなかったことを意味します。カゴ落ちは、多くのECサイトに共通する問題であり、改善しなければ売上ロスが生じます。ユーザーは、1度は商品を買い物カゴに入れたので、まったく購入意欲がないわけではありませんが、様々な要因によってカゴ落ちは発生してしまいます。その原因を述べる前に、カゴ落ちについての調査について見ていきましょう。
カゴ落ちの現状
カゴ落ちの現状を調査したアメリカのBaymard Instituteの資料「41 Cart Abandonment Rate Statistics」によると、世界のECサイトのカゴ落ち率の平均値は「69.80%」です。ここ10年ほどずっと平均7割がカゴ落ちしているというデータもあり、年々上昇傾向にあると言われています。
国内での現状をみると、株式会社イー・エージェンシーが行った「ECサイトのカゴ落ちによる機会損失状況の調査」では、ネットショップの機会損失額は、売上の約2.5倍にのぼるとされています。
これらの調査からカゴ落ちはどのECサイトで起こりうる現象であるとともに、カゴ落ちによる損失も大きいことがわかります。まず大切なのは、自社サイトでどれだけカゴ落ちが発生していてどれくらい機会損失しているかを把握することです。それらを分析できるツールも多くあるため、まずは自社ECサイトのの現状を把握することからはじめることを推奨いたします。
※参考:41 Cart Abandonment Rate Statistics | Baymard Institute
※参考:ECサイトのカゴ落ちによる機会損失状況の調査 | 株式会社イー・エージェンシー
12のカゴ落ち原因
次に、なぜカゴ落ちが起きてしまうのか、ECサイトでのカゴ落ちの原因としてよくある例を12個挙げて解説します。
1.想定外の追加費用
ユーザーは、商品ページで商品と価格を確認します。「税抜き価格の誇張」「送料が決済まで分からない」「手数料などがかかる」など決済段階で想定外の追加費用があると、お得感がなくなり、離脱してしまうケースが多いようです。
2.購入完了までのプロセスが長い
買い物カゴに入れて、決済へと進む段階では、ユーザーが案内に従って必要項目を入力します。しかし、男女の区別や年齢、勤め先など買い物に不要だと思える入力項目があると、不信や面倒さを感じさせることとなりカゴ落ち原因になります。
3.決済のプロセスが複雑で分かりにくい
決済のプロセスが複雑で分かりにくければ、カゴ落ちの原因になります。クレジットカードで決済したいのに、決済方法が多くて分かりにくかったり、入力の項目が多すぎたりするとユーザーは不信感や面倒さを抱き離脱してしまいます。
4.購入前のアカウント作成がネック
商品を買い物カゴに入れて、決済する前にアカウントの作成を義務付けることもカゴ落ちの原因になります。ユーザーは個人情報を預けることに躊躇する傾向があったり、作成したアカウントの管理が面倒に感じたりもします。
5.クレジットカード情報を入力するに足る信頼感がなかった
商品は気に入って買い物カゴに入れたが、サイトに信頼性を感じないため、決済の段階でクレジットカード情報を入力するのに躊躇してカゴ落ちするケースもあります。ECサイトのセキュリティレベル・完成度が低いなどで不安を感じることが原因です。
6.購入金額の合計を購入中に知ることができない
購入中に合計が分からないシステムでは、予算をオーバーしても決済段階でしか分かりません。予算を超えた買い物の場合は、カゴ落ちの可能性が高くなります。ECサイトで、電卓などの計算機を使った買い物はありえないためキャンセルとなるのです。
7.配送が遅い
商品を購入したユーザーは、できるだけ早く入手したいと思うのが一般的です。決済を済ませた後、発送までに日数を要するのなら、キャンセルして違うECサイトで同じ商品を購入するかもしれません。すぐに発送しても、到着まで10日以上かかるような海外便も同じです。
8・買い物途中でエラーが起きた
買い物中にエラーが出れば、購入意欲が下がり、カゴ落ちの原因となります。システムエラーだけでなく、インターネット環境も含まれるため、エラーに気付かずに決済ができないと判断して、購入を断念するユーザーもいるのです。
9.クレジットカード決済ができなかった
クレジットカードで決済できないケースもカゴ落ちの原因です。ユーザーの入力エラーやシステムエラーなどで決済できなければ、購入を断念するケースがあります。
10.支払い方法が少ない
希望する支払い方法がない場合もカゴ落ちの原因となります。支払い方法の選択肢を最低限度準備しなければ、ユーザーに不信感を抱かせるかもしれません。
11.サイトの返品ポリシーに納得できなかった
ECサイトによっては、返品リスクの軽減のためユーザー目線の返品ポリシーになっていないケースがあります。保証期間が短い・開封後の返品不可・送料がユーザー負担など、販売者側に有利な返品ポリシーだと購買意欲が下がってしまいます。
12.買う準備をせずに買い物カゴにいれただけ
ユーザーの中には、なんとなくネットサーフィンしていて、お気に入り感覚で買い物カゴを利用するケースもあります。また、他のECサイトと比較するために一旦カゴに商品を入れておくといったケースがあります。これに関しては、マーケティング施策を駆使すれば、購入につなげられるチャンスと捉えましょう。
カゴ落ち対策で購入率を上げる
カゴ落ちの原因が分かりましたら、対策を講じて購入率を上げることが可能です。ここでは、カゴ落ち対策について解説します。
想定外の追加費用によるカゴ落ち対策
追加費用の発生によるカゴ落ち対策には以下のような方法があります。
・税込み商品価格を大きく打ち出し、商品説明に送料を明示する
・送料のアナウンスとして商品説明に送料一覧を掲載する
・追加費用を極力減らすために送料無料を採用する
・一切追加費用が出ない価格表示へ変更(税込み・送料込み価格など)する
・「あと〇〇円で送料無料」などを表示する
決済プロセスとアカウントついての対策
決済プロセスとアカウントについての対策には以下のような方法があります
・アカウント登録なしで購入できるように変更する
・購入に必要な住所・氏名・電話番号のみの入力に変更する
・匿名配送を導入しユーザーが選択できるようにする
・決済までのプロセスを簡略化しなるべく減らす
・購入プロセス・フローを簡単明快に変更し、ユーザーが分かるように掲載する
・送り先は一度入力すれば次回からは簡略化できるようにする
クレジットカードに関する対策
クレジットカードに関する対策には以下のような方法があります。
・信用を損なう原因を追求し、ユーザーがクレジットカードで安心して購入できるようにする。
・セキュリティ対策への取り組みをサイト上で表示し、カード情報が漏洩しないことを明示(SSLサーバ証明書や常時SSL対応など)
・クレジットカードの決済プロセスへ移行する前にセキュリティが万全であることを記載
・特定商取引法に基づく表記を正確に記載し、ユーザーが確認しやすいように工夫して信頼度を上げる
・主要取引先がなどを明確に記載して信用度を上げる
・クレジットカード決済でエラーが出ないようにシステムを改善する
・クレジットカードの入力は1度だけで済むことをユーザーに知らせる
購入金額の合計をリアルタイムに表示させる
購入金額の合計をリアルタイムに表示させてカゴ落ちを防止する対策もあります。
・合計金額リアルタイムに表示されるとユーザーは安心して購入できる
・買い物カゴに追加した商品をサイト上で分かるように表示する
・買い物カゴのアイコンに合計商品点数を表示する
・合計金額表示に併せて、あといくらで送料が無料になるのかも表示することで追加購入が期待できる
配送方法の選択肢を増やす
配送方法の選択肢を増やしてカゴ落ちを防止する対策には以下のような方法があります
・匿名配送や複数の配送業者から選べるなど配送方法の選択肢を増やす。
・配送方法や配達指定日などをユーザー自身が選ぶシステムにする。
・発送日を明確に表示する
・すぐに商品がほしいユーザーにむけて特急オプションを設ける。
買い物途中でのエラー対策だけでなくスピードも改善する
システムエラーだけではなくスピードを改善することもカゴ落ち防止策になります。
・システムエラーをできるだけなくし、重いや固まるというような現象も改善する
・競合他社サイトと比較してスピーディに買い物ができる工夫を施し検証する
・必要最低限度の入力フォームへ変更し最適化を図る
・サーバーを強化してエラーを未然に防ぐ
サイトの返品ポリシーはユーザー目線で
返品ポリシーを改善することもカゴ落ち防止対策になります。
・販売者側に有利な返品ポリシーをユーザー目線の返品ポリシーに変更する
・自社での買い物が、競合他社サイトと比較して安心できるかを検証する
購入する気にさせる工夫を施す
カゴ落ち寸前でもユーザーへの対策を講じることで、購入率を向上させることも可能です。
・他サイトへ移動する際に確認のメッセージを表示してカゴ落ちを思い留まらせる。
・購入方法が分からないユーザーには購入サポートがあることを訴求して安心させる
・他サイトへ移動後すぐに、インターネット広告で買い物カゴに放置した商品を表示させて自社サイトに再誘導する
アプリプッシュ通知やカゴ落ちメールの活用
カゴ落ちしたユーザーに対しても対策を講じれば、再訪問・購入へと結びつかせることが可能です。
・無料メールをカゴ落ちユーザーに個別配信し再度興味を抱かせる
・離脱したユーザーに自社サイト外でアプローチする
・クーポン配信や情報更新などで興味を再喚起させる。
詳細な事例がありますのでぜひご確認ください。
・「買い忘れアイテム」をメールで送り、購入プロセスの完了を促す
カゴ落ち対策には顧客の行動データの蓄積が必要
多種多様なカゴ落ち対策が解説しましたが、どのような対策も基になるのは顧客の行動データです。行動データを蓄積・分析・活用することで、これまで解説したカゴ落ち対策を実現させられます。顧客の行動データの活用でできることは以下です。
・トップページにカゴ落ち商品や未購入商品を優先表示
・関連商品をレコメンドしてクロスセルを実現
・カゴ落ち商品のプッシュ通知
・自社ECサイトへの再誘導
まとめ
カゴ落ちでの売上損失は、ECサイトにとって大きな問題です。カゴ落ちの原因を追求し、顧客データを活用した施策を行えば、カゴ落ちを食い止め、購入率を向上させられます。
Rtoasterは、カゴ落ち対策に必要なデータの蓄積・分析・活用が可能なCDP・レコメンド基盤です。蓄積したデータを基にメールやLINE、アプリへのプッシュ通知など外部チャネルへのパーソナライズ発信を実現できます。
連携先も豊富なため、現在活用されているツールやシステムとの組み合わせも可能です。ぜひお気軽にお問合せください。
記事公開日:2021年8月13日
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