CX(カスタマーエクスペリエンス)とは、日本語にすると「顧客体験」という意味になり、ビジネスシーンにおいては「CX」と略されることが多いです。
CXは、顧客が企業やブランドと接触するすべての段階で感じる総合的な体験、主に製品やサービスの品質、カスタマーサービス、購入プロセス、アフターサービスなどを含む、すべての段階で感じる総合的な体験を指し、顧客満足度、ロイヤルティ、ブランド価値に直接影響を与えます。
2000年ごろからインターネットの普及とともにより顧客の情報アクセスが容易になり、顧客の期待が高まったことから、CXが注目されるようになりました。それに伴い従来の製品中心のマーケティングから、顧客中心のマーケティングへのシフトが進みました。
本記事では、マーケティング従事者に向けてCXの基本的な概念をご説明したうえで、CXを向上させるためのポイント、CX改善事例などをご紹介します。
目次
CX (カスタマーエクスペリエンス) とは?
まずは、CXの意味を解説します。似たような用語との違いも確認しましょう。
CX (カスタマーエクスペリエンス) の意味は?
カスタマーエクスペリエンスは、英語では「Customer Experience」と書き、直訳すると「顧客体験」という意味になります。ビジネスシーンにおいては「CX」と略されることが多いです。
これは顧客が商品やサービスを体験して、顧客視点でその価値を評価することを意味します。ここでの「価値」とは、商品やサービスを購入する前の対応から購入後のサポートまで、顧客が自社商品に関して体験したすべてが対象です。
CXマネジメントとは?
CXを意識して業績を上げる取り組みのことをCXマネジメントといいます。顧客目線で自社の課題を抽出して、より顧客に満足してもらえるような体制を整えていきます。顧客データを取り扱うため、ITシステムと連携して実施することがポイントです。
CXと他のビジネス用語との違い
似たような用語もいくつかあるため、それぞれの違いを正確に理解しましょう。
カスタマーサティスファクション(CS)との違い
カスタマーサティスファクションは、顧客の満足度の維持や不満を解消することを目的として行われます。活動の対象は主に企業のコールセンターです。一方、カスタマーエクスペリエンスは、マイナス要因をなくすことや満足度を維持することに重きを置くのではなく、顧客の期待を上回るような価値を提供します。
ユーザエクスペリエンス(UX)との違い
ユーザエクスペリエンスとは、自社の商品やサービスを利用した結果、得られる体験のことです。カスタマーエクスペリエンスとの違いは、対象数にあります。ユーザエクスペリエンスは、単一の商品やサービスなどが対象です。一方、カスタマーエクスペリエンスはコールセンターの対応など、購入前から購入後までに顧客が体験するすべての要素が対象となります。
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なぜCXが重要視されるのか
ではなぜCXが重要視されているのでしょうか?
競争の激化
現代の市場では、製品やサービスの品質や価格だけで他社と差別化するのが難しくなっています。顧客体験が優れた企業は、他社と差別化するための強力な武器となります。
顧客の期待の変化
インターネットやSNSの普及により、顧客は迅速でパーソナライズされた対応を期待するようになりました。顧客体験が良いと感じた企業に対してリピートにつながりやすくなります。
口コミと評判
良い顧客体験は口コミやオンラインレビュー、またSNSを通じて広がりやすく、逆に悪い体験も同様に広がります。ポジティブな口コミは新規顧客の獲得に繋がります。
顧客ロイヤルティ
顧客ロイヤルティが求められる背景としては、日本の人口減少やマーケットの競争激化などによる新規顧客獲得の難化です。
優れた顧客体験は顧客の満足度を高め、リピート購入を促し、クロスセルやアップセルの機会を増やします。結果として顧客ロイヤルティを向上させます。ロイヤルティの高い顧客は、長期的に企業に利益をもたらします。
デジタル化の進展
デジタル技術の進展により、顧客との接点が増え、データを活用して顧客体験を向上させることが可能になりました。これにより、よりパーソナライズされたサービスを提供することができます。
これらの理由から、CXは現代のビジネスにおいて非常に重要な要素となっています。
CX向上によるメリットとは?
CXを向上させるメリットを紹介します。
ロイヤルカスタマー・リピーターの獲得
顧客にとって満足のいく価値を提供することで、ロイヤルカスタマーやリピーターの獲得につながります。「またこの企業の商品を使いたい」と感じてもらうことが重要です。一度リピーターになってもらうと売上の安定化にもつながるでしょう。
クチコミ効果
顧客に価値を提供し、信頼関係を構築することができれば、口コミをSNSなどで書いてくれる可能性も高くなります。口コミによってよい評判が広がることで、多くの人に自社の商品やサービスを認知してもらえます。
顧客離れの抑制
商品やサービスの質が低下すると、ブランド離れやユーザー離れに直結します。CX向上を図ることで、顧客の満足感が高まり、顧客離れの抑制につながります。
競合との差別化
CXの向上は、自社商品やサービスのブランディングにもつながり、他社商品やサービスと差別化を図ることができます。インターネットの普及により、顧客自身が情報収集し、商品やサービスを比較できるようになった現在では、競合他社との差別化も意識することが大切です。
顧客ロイヤルティの向上
CX向上を意識することで、顧客ロイヤルティの向上も見込めます。
顧客が商品やサービスを利用する際の満足度が高まります。満足度が高い顧客は、再度その商品やサービスを利用したいと感じるため、リピート購入が増えます。
良い顧客体験は、企業と顧客の間に信頼関係を築く助けとなります。信頼関係が強固になると、顧客は他の競合商品やサービスに目移りしにくくなります。
満足した顧客は、友人や家族、SNSなどでポジティブな口コミを広める傾向があります。これにより、新たな顧客を獲得するだけでなく、既存の顧客のロイヤルティも高まります。
CX向上の一環として、顧客からのフィードバックを迅速に収集し、問題を早期に解決する体制を整えることが重要です。問題が迅速に解決されると、顧客は企業に対する信頼感を持ち続けます。
顧客のニーズや嗜好に合わせたパーソナライズされたサービスを提供することで、顧客は自分が大切にされていると感じます。これが顧客ロイヤルティの向上につながります。
CXを重視することで、顧客との長期的な関係を築くことができます。長期的な関係は、顧客が他の選択肢を検討する際の障壁となり、ロイヤルティを高めます。
これらの要素が組み合わさることで、CX向上が顧客ロイヤルティの向上につながるのです。
CXを向上させるためのステップ
CXを向上させるためのステップを簡潔に解説します。
1. 顧客の声を集める
- フィードバックを収集: アンケートやレビュー、SNSのコメントなどで顧客の意見を集めます。
- フィードバックを分析: 集めた意見を分析して、問題点を見つけます。
2. 顧客分析し理解する
- 顧客ペルソナを作成: 典型的な顧客のプロフィールを具体的に設定します。
- 顧客ジャーニーマップを作成: 顧客が製品やサービスを使う際の体験をステップごとに描きます。
3. 顧客対応を改善する
- カスタマーサポートを強化: スタッフのトレーニングやチャットボットの導入で対応を迅速にします。
- オムニチャネル戦略: どのチャネルでも一貫した体験を提供します。
4. 製品・サービスを改善する
- 顧客の声を反映: 顧客の意見をもとに製品やサービスを改善します。
- イノベーション: 新しい技術やトレンドを取り入れて新しい価値を提供します。
5. 顧客ロイヤルティを高める
- 顧客のロイヤルティを高めます。例えば、ポイント制度や会員特典など
- パーソナライズ: 顧客のデータをもとに個別にカスタマイズした体験を提供します。
6. 継続的に改善する
- KPIの設定とモニタリング: 顧客満足度やネットプロモータースコアなどの指標を使って成果を測ります。
- PDCAサイクル: 計画、実行、評価、改善のサイクルを回して継続的にCXを改善します。
これらのステップを実行することで、顧客体験を向上させ、顧客満足度やロイヤルティを高めることができます。
CX向上に必要なキーワードとは?
CX向上のために把握しておきたい8つのキーワードとその内容を以下に分かりやすく説明します。
1. パーソナライゼーション(Personalization)
- 内容: 顧客一人ひとりのニーズや好みに合わせたサービスや製品を提供すること。
- 例: 過去の購入履歴や行動データを基に、顧客に最適な商品を推薦する。
2. オムニチャネル(Omni-channel)
- 内容: 複数のチャネル(オンライン、オフライン、モバイルなど)を統合し、一貫した顧客体験を提供すること。
- 例: オンラインでカートに入れた商品を、実店舗で購入できるようにする。
3. エンゲージメント(Engagement)
- 内容: 顧客との継続的な関係を築き、積極的に関与してもらうこと。
- 例: ソーシャルメディアでの対話や、定期的なニュースレターの配信。
4. フィードバック(Feedback)
- 内容: 顧客からの意見や評価を収集し、サービスや製品の改善に活かすこと。
- 例: アンケートやレビューの収集と、それに基づく改善策の実施。
5. カスタマージャーニー(Customer Journey)
- 内容: 顧客が製品やサービスを知り、購入し、利用するまでの一連のプロセスを理解し、最適化すること。
- 例: ウェブサイトの訪問から購入、アフターサービスまでの流れをスムーズにする。
6. データ分析(Data Analytics)
- 内容: 顧客データを分析し、インサイトを得て、CX向上のための戦略を立てること。
- 例: 顧客の行動データを分析して、どのポイントで離脱が多いかを特定し、改善策を講じる。
7. 迅速な対応(Responsiveness)
- 内容: 顧客からの問い合わせや問題に迅速に対応すること。
- 例: チャットボットや24時間対応のカスタマーサポートの導入。
8. エンパシー(Empathy)
- 内容: 顧客の立場に立って考え、共感すること。
- 例: 顧客の不満や問題に対して、真摯に耳を傾け、解決策を提供する。
これらのキーワードを理解し、実践することで、顧客体験を向上させることができます。
CXが向上した成功事例をご紹介
CXの重要性を認識している企業は増えているのが実情です。CXを実現したことで、安定した顧客の確保や自社製品のブランド化に成功した企業も存在します。ここでは、企業の成功事例を紹介します。
株式会社ファンケル様
お客様に購入してもらうだけではなく、ファンになってもらい、長期的な関係性構築のためにはパーソナライズが不可欠。
自社ECサイトのファンケルオンラインは、直販通信販売の売上の半数程度を占めるようになり、さまざまなお客様に活用いただいています。これまでお客様の多くは「買い物をするため」だけにこのサイトに訪れ、必要なものを買った後は離脱していく傾向にありました。
ただ、近年は「ロイヤリティの高いお客様を大切にするべき」「LTVを重要指標として追いかけていくべき」といったことがよく言われるようになってきています。いかにロイヤリティの高い方々に納得いただいた上で継続して自社サービスを使っていただくか、買い物以外の楽しさや新しい発見を提供していくことができないかといったことを考える機会が増えました。
株式会社横浜銀行様
お客様のニーズを理解することで、より深い絆でお客様と結ばれる横浜銀行でありたいと考えています。
非対面なダイレクトチャネルの課題は、お客様と対面するリアルチャネルと比べて、お客様一人ひとりにあわせたご提案が難しいことです。そんな中、横浜銀行様では2019年4月に「ログイン専用ページ」を「マイページ」にリニューアル。実店舗における顧客対応と同じように、Webサイトにおいてもお客様のニーズに寄り添ったOne to One対応を実現するためのCX改善のプロジェクトに着手することになりました。
株式会社フェリシモ様
フェリシモは以前はカタログを中心にビジネスを展開してきましたが、生活者の嗜好性が細かくなってきていることに合わせて、細分化したコミュニケーションを大切にした活動へ移ってきました。デジタルマーケティングの浸透によってお客様に寄り添った施策が行える環境が整ってきたことも、後押しになっています。
では、どのようなマーケティングを展開してきたのでしょうか?
単にニッチなものを提案するだけではなく、独自性のある新しい価値提案を行っています。各個人の喜びの源になるニーズをしっかりと切り取って、そこからマーケティングを展開しています。
まとめ
CX向上を意識することで、顧客ロイヤルティの向上が見込めます。
顧客満足度が高まることでリピート購入が増え、企業と顧客の信頼関係が強化されます。満足した顧客はポジティブな口コミを広め、新たな顧客獲得と既存顧客のロイヤルティ向上に寄与します。迅速な問題解決やパーソナライズされたサービス提供により、顧客は大切にされていると感じ、長期的な関係が築かれます。これらの要素が組み合わさることで、CX向上が顧客ロイヤルティの向上につながるのです。
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ぜひCXの向上にぜひご活用ください。
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